梯久美子が書き下ろす「アンパンマン」の作者・やなせたかしの本格評伝
栗林忠道、島尾ミホ、原民喜などの評伝を手がけてきたノンフィクション作家・梯久美子が、綿密な取材をもとに知られざるエピソードを掘り起こした「やなせたかし」評伝の決定版。
高知県で生まれた嵩(たかし)は、幼少期に父を亡くし、再婚した母とも別れて伯父の家で育つ。
東京で美術を学び、デザイナーとなるが、徴兵され中国大陸へ。
戦場で飢えを経験したことと、たったひとりの弟が23歳の若さで戦死したことが、のちに「アンパンマン」の誕生につながっていく。
戦後に就職した高知新聞社で「韋駄天おのぶ」とあだ名される元気いっぱいの女性・暢(のぶ)と出会った嵩は、
再度上京し、妻となった暢とともに子どもの頃からの夢だった漫画家を目指す。
たくさんの挫折を経験し、ようやくアンパンマンを生み出すが、
「顔を食べさせるなんて残酷だ」「気持ち悪い」と大人たちからは大ブーイング。
だが子どもたちは、無垢な心でアンパンマンを愛してくれた――。
著者はかつて『詩とメルヘン』編集者として、やなせたかしのもとで働き、晩年まで親交があった。
子ども向けに書いた伝記『勇気の花がひらくとき やなせたかしとアンパンマンの物語』(フレーベル館)はロングセラーとなり、小学校の教科書に採用されている。
2011年の東日本大震災直後、被災地からラジオ局にリクエストが殺到した「アンパンマンのマーチ」。
避難所で大合唱する子どもの姿に、92歳だったやなせは感動し、94歳で亡くなるまで、復興のために力を尽くした。
愛と勇気に生きた稀有な生涯を、評伝の名手が心を込めて綴る感動作。
朝ドラのモデルということでやなせたかしさんについての著作が出ていて、過去に出たものでも読めるものは今読んでおこうと気になった本は手に取るようにしています。
著者さんは小学生の時に「詩とメルヘン」のやなせさんの作品を読んでファンになり、やなせさんと仕事がしたいとサンリオに入社した筋金入りのやなせさんファンの方です(笑)執念が凄い…。そして夢を叶えているんだから本当に凄いなと思います。
やなせさんの生涯については散々読んでいるので知っていることが多かったですが(笑)暢さんのご両親についても書かれていてこちらはあまり知らなかったので興味深く読みました。ドラマでは三姉妹ですが、実際は更にお兄さんがいらっしゃったんですね。
奥手なやなせさんと前向きな暢さんはお互いを尊重して支え合ってきたのだろうなということを読んでいて感じました。まさに内助の功ですね。
奥様が病気となり闘病生活を送られ、そして先立たれるときのお話は、何度聞いても胸が痛くなります。
良い作品でした。
<文藝春秋 2025.3>2025.5.22読了