苗坊の徒然日記

読書とV6をこよなく愛する苗坊が気ままに書いてます。 お気軽にどうぞ。

夏川草介

君を守ろうとする猫の話 夏川草介5

君を守ろうとする猫の話
夏川 草介
小学館
2024-02-28


お前なら、きっと本を取り戻せるはずだ。
幸崎ナナミは十三歳の中学二年生である。喘息の持病があるため、あちこち遊びに出かけるわけにもいかず学校が終わるとひとりで図書館に足を運ぶ生活を送っている。その図書館で、最近本がなくなっているらしい。館内の探索を始めたナナミは、青白く輝いている書棚の前で、翡翠色の目をした猫と出会う。
なぜ本を燃やすんですか?
「一番怖いのは、心を失うことじゃない。失った時に、誰もそれを教えてくれないこと。誰かを蹴落としたときに、それはダメだと教えてくれる友達がいないこと。つまりひとりぼっちだってこと」
ようこそ、新たな迷宮へ。

「本を守ろうとする猫の話」の続編です。こちらがシリーズになるとは思いませんでした。
以前読んだのが2017年なのでほとんど内容は覚えていないのですが^^;こちらの作品に登場した林太郎も大人になった姿で出てきました。結婚して奥様もいて。名前に聞き覚えがあってニヤニヤしてしまいました←
沢山の名作の台詞が出てくるのですが、特に私が好きだったのは『根拠はなくても、希望はよみがえる。希望とはそういうものだ』という言葉でした。こちらはナナミがあちらの世界に行った時に助けられた言葉でもあります。病弱なナナミだけど、本の世界を知っているからかとても勇敢で優しい子で、なんでそんなにまっすぐでいられるのだろうと読みながら感動してしまいました。父子家庭で育ち病気から我慢することもたくさんあっただろうけど、こんなにいい子に育って、だからみんながナナミを助けに来たし、ナナミが言う荒唐無稽な話も信じようと思う人もいるのでしょうね。
林太郎のように大人になったナナミも見てみたいです。こちらは続編は出るのでしょうか。内容的に出るということは本を読まず、想像力がない人が増えているということだから出ないで欲しいのが正直なところですが(笑)内容はとても好きなのでまたトラネコに会えたらいいなと思います。

<小学館 2024.2>2024.3.28読了

スピノザの診察室 夏川草介5

スピノザの診察室
夏川草介
水鈴社
2023-10-27


雄町哲郎は京都の町中の地域病院で働く内科医である。三十代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、 一人残された甥の龍之介と暮らすためにその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。 哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込むが……。

コロナ禍のドキュメント小説を書かれてから久しぶりの新刊な気がします。
今回の舞台は京都で終末医療…というと語弊がある気がしますが今までで1番「死」について考えさせられる物語だった気がします。主人公のマチ先生は妹を難病で失い、甥っ子を引き取って育てていて「死」について誰よりも考えせざるを得ない状況だったのだと思います。淡々としていて言葉だけ聞くと冷たく聞こえるような気がしますが、誰よりも死と向き合っているからこそ、重みを感じるような気がします。そして、真摯に向き合っているからこそ、患者もその家族も、マチ先生を信頼しているのだと思いました。大学病院で勤務すること、小さな病院で勤務すること、どちらが正しいかなんてわかりません。それでもどんなお医者さんも皆さん必死に私たち患者をいろんな意味で救うために尽力してくださっているということはひしひしと感じました。
南先生は始めは頭が固くて生真面目で読んでいるこっちが怪訝な顔をするときもありましたけど(笑)本当にマチ先生の下で研修出来て良かったなぁと思います。
「頑張らなくいい、でも急がなくてもいいです」って、とても優しい言葉だなと思いました。空を見上げての「お疲れさまでした」という言葉も。
最後の辻さんの言葉は、先生が真摯に向き合っている、その答えな気がしました。
とても重くて、余韻の残る、良い作品でした。

<水鈴社 2023.10>2023.12.14読了

臨床の砦 夏川草介5

臨床の砦
夏川草介
小学館
2021-04-23


現役医師としてコロナ禍の最前線に立つ著者が
自らの経験をもとにして克明に綴ったドキュメント小説。
2009年に第十回小学館文庫小説賞を「神様のカルテ」で受賞し、シリーズ(既刊5冊で累計337万部)を書き継いでいる夏川草介氏は、現役の内科医でもあります。コロナ禍の最前線で多くの患者さんと向き合う日々が、一年以上続いています。本書は、著者が2020年末から21年2月にかけて経験したことを克明に綴った、現代版『ペスト』ともいえる記録小説です。

私はコロナ禍になってから、ワイドショーなどで繰り返される新型コロナについての報道はほとんど見ていません。私は弱いので、内容に一喜一憂したり、腹が立ったり不安になったりするとわかっているからです。自分が出来る最大限の感染対策をして日々を過ごしているつもりです。
夏川さんの作品が大好きで、だからこそこの作品は読まなければならないと思いました。
私は医療従事者ではないので、大変な状況なのだろうと思いつつも、病院等の緊迫した雰囲気はわかってはいないと思います。
この作品を読んで、感染症の最前線で働く医療従事者の方々がどんなに気を配って自分の身を削って患者のために手を尽くしているのか、改めて知ることが出来ました。
しかも2021年1月から2月の第三波が来た頃の話です。大晦日に東京で初めて1000人を超えましたよね。こちらの舞台は長野県ですがこの時期はどこでも感染者が増えていました。
感染者の増加、介護施設のクラスター、院内感染、新型コロナウィルスにおける様々な問題点と病院の試練が細かく描かれています。この作品は小説ですがフィクションではありません。
著者さんが間近で見て体験して闘っているドキュメントだと思います。
初めての感染症。医療側も保健所も行政もそれ以外の人たちもみんな初めて経験すること。
それでも特に医療従事者はその未知のウィルスと闘っていかなければならない。
医療従事者も人間です。いろんな人間がいて、いろんな思いと決意をもって闘っているのだと思いました。
私たちが出来ることは感染しないこと、そのためにしっかりと感染予防をすること、自分の身を守ること。そうすることで医療従事者の手を煩わせないようにすること。今までやってきていることではありますが、これからも引き続き行い続けなければならないと改めて思いました。
著者さんも現場に立ち忙しい中、私たちに分かりやすくまっすぐに伝えてくれてありがとうございますといいたいです。

<小学館 2021.4>2021.6.25読了

始まりの木 夏川草介5

始まりの木
草介, 夏川
小学館
2020-09-25


オススメ!
生きること、学ぶことの意味を問う、新世紀の“遠野物語”。“これからは、民俗学の出番です”。神様を探す二人の旅が始まる。

今回のテーマは民俗学!遠野物語は興味を持っていますが未読ですすみません…。でも遠野には行ったことがあります。とても素敵な場所でした。レンタサイクルを借りて色んな所を回りました。懐かしいなぁ。
民俗学の修士課程1年生の藤崎千佳と偏屈な助教授である古谷神寺郎の2人が日本各地を研究のために巡り、様々な経験をしていきます。私は神社仏閣を巡るのが好きなので、古谷先生の言うことがストンと腑に落ちた気がします。「神さま仏さまは信じるものではなく感じるもの」いやー…納得です。
不思議なお話が多かったけど、でも不思議ではなかったです。きっと、そういうことは身近にたくさんあるのだと思います。そうあってほしいと思います。古谷先生は偏屈で近くにいたら近寄りたくないけど(笑)旅の先々で出会う人たちは素敵な人たちで、古谷先生の本質はこの素敵な人たちと同じなんだろうなぁとも思いました。
素敵な物語を読めました。

<小学館 2020.9>2020.10.28読了

勿忘草の咲く町で〜安曇野診療記〜 夏川草介5



看護師の月岡美琴は松本市郊外にある梓川病院に勤めて3年目になる。この小規模病院は、高齢の患者が多い。 特に内科病棟は、半ば高齢者の介護施設のような状態だった。その内科へ、外科での研修期間を終えた研修医・桂正太郎がやってきた。くたびれた風貌、実家が花屋で花に詳しい──どこかつかみどころがないその研修医は、しかし患者に対して真摯に向き合い、まだ不慣れながらも懸命に診療をこなしていた。ある日、美琴は桂と共に、膵癌を患っていた長坂さんを看取る。妻子を遺して亡くなった長坂さんを思い「神様というのは、ひどいものです」と静かに気持ちを吐露する桂。一方で、誤嚥性肺炎で入院している88歳の新村さんの生きる姿に希望も見出す。患者の数だけある生と死の在り方に悩みながらも、まっすぐに歩みを進める2人。きれいごとでは済まされない、高齢者医療の現実を描き出した、感動の医療小説!

「神様のカルテ」の著者が書く新しい医療小説です。著者さんが現役の医師であるからこそ数々の日本医療の現状がリアルに伝わってきました。
高齢者医療の問題点はこういうところにあるのかとこの小説を読んで良く分かりました。
色んな医師がいて、治療にもたくさんの選択肢があって、決して正解があるわけではないということが分かります。
今回は研修医の桂正太郎と3年目の看護師月岡美琴が主人公です。若さからくる真っ直ぐさがとても眩しい。おかしいことはおかしいと相手が誰だろうときちんと意見できる2人は本当に凄い。将来を担う医療従事者にピッタリですね。上司と言える医師や看護師もとても個性的だったけどみんな基本的には人の痛みが分かる人でした。2人のぎこちない恋愛模様も素敵でした。
こちらは続くのかな…こちらの今後も読んでいきたいです。
そして同じ信州ということで「神様のカルテ」の世界とも繋がっていて嬉しかったです。

<KADOKAWA 2019.11>2020.1.4読了

新章 神様のカルテ 夏川草介5

新章 神様のカルテ
夏川 草介
小学館
2019-01-31


オススメ!
320万部のベストセラー、大学病院編始動
信州にある「24時間365日対応」の本庄病院に勤務していた内科医の栗原一止は、より良い医師となるため信濃大学医学部に入局する。消化器内科医として勤務する傍ら、大学院生としての研究も進めなければならない日々も、早二年が過ぎた。矛盾だらけの大学病院という組織にもそれなりに順応しているつもりであったが、29歳の膵癌患者の治療方法をめぐり、局内の実権を掌握している准教授と激しく衝突してしまう。
舞台は、地域医療支援病院から大学病院へ。
シリーズ320万部のベストセラー4年ぶりの最新作にして、10周年を飾る最高傑作! 内科医・栗原一止を待ち受ける新たな試練!

またイチ先生に会えると思いませんでした。前回大学病院へ行くと決めてから2年後の世界。
いつの間にかイチ先生と榛名は親になっていました。小春ちゃんが可愛すぎます。
本庄病院も大変そうだと思っていつも読んでいましたが、大学病院も本当に大変そう…。
一概には言えないのかもしれませんが、これが大学病院の世界なんですよね。本当に個性的。いろんなお医者さんがいました。北条先生も利休もお嬢もパン屋も、みんなそれぞれの信念を持って邁進していることは分かります。カンファレンスで言い争いのようなものもありましたが、悪者がいるわけではないということも分かります。それぞれが患者のためを思っている。それなのにもどかしさが付きまとう。
年を重ねると利休のような真っ直ぐさだけでは生きていけないことが分かってきます。でもそれが眩しいとも思うし無くさないでほしいとも思うしその気持ちも分かる。でも、それが正解とも限らない。
難しいですね…。
イチ先生はそんな若者の言葉も受け入れつつ冷静に対応していきます。そしてだんだん無茶をし出す(笑)見ていて小気味いいです。
准教授との衝突後、どうなるかと思ったら意外な展開になり、許されないところがありつつもイチ先生の言葉がちゃんと伝わっていると分かって嬉しかったです。
今後も続いていくのでしょうか。楽しみです。

<小学館 2019.2>2019.5.16読了

本を守ろうとする猫の話 夏川草介5

本を守ろうとする猫の話本を守ろうとする猫の話
著者:夏川 草介
小学館(2017-01-31)
販売元:Amazon.co.jp

「お前は、ただの物知りになりたいのか?」
夏木林太郎は、一介の高校生である。夏木書店を営む祖父と二人暮らしをしてきた。生活が一変したのは、祖父が突然亡くなってからだ。面識のなかった伯母に引き取られることになり本の整理をしていた林太郎は、書棚の奥で人間の言葉を話すトラネコと出会う。トラネコは、本を守るため林太郎の力を借りたいのだという。

この方の著書は「神様のカルテ」シリーズ以外では初めてなんですかね。
とても温かくて優しい物語でした。
祖父を失った林太郎の元に現れた話せるトラネコ。この猫に巻き込まれて林太郎は本を閉じ込める者、切りきざむ者、売りさばく者と対峙していきます。
林太郎の言葉は強くてまっすぐ。対峙した者たちが納得するのも分かります。でも、相手が言っていることもまた正論なのだとも思います。
読んだ本をとどめておくこと、また現代人は時間がなくて、分厚くて難しい本を読まなくなった。だからあらすじだけを伝えたり、売れるために簡単な内容の本ばかりを売ったり。実際本を読む人は昔以上に減っているとも思います。
それでも私も、林太郎やおじいちゃんのような考え方、生き方をしたいです。
最初の本を閉じ込める者の時はちょっとドキッとしました。私も一時期読みたい本が多すぎてノルマのように本を読んでいた時がありました。読んで満足して自分の中に感想を持たずに冊数だけ積み上がっているようなとき。
ただ読むだけではダメなんですよね。読み終えたときに内容を頭の中で反芻させて自分なりの考えを持とうと改めて思いました。
林太郎は引きこもりがちですけどちゃんと仲間がいたんですね。
柚木も秋葉先輩も林太郎の事を心配していましたよね。そして2人とも本が好きで、好感が持てました。

<小学館 2017.1>H29.3.27読了

神様のカルテ0 夏川草介5

神様のカルテ0神様のカルテ0
著者:夏川 草介
小学館(2015-02-24)
販売元:Amazon.co.jp

シリーズ300万部突破のベストセラー『神様のカルテ』にまつわる人々の前日譚であり、かつ珠玉の短編集です。栗原一止は、信州にある24時間365日営業の本庄病院で働く内科医です。本作では、医師国家試験直前の一止とその仲間たちの友情、本庄病院の内科部長・板垣(大狸)先生と敵対する事務長・金山弁二の不思議な交流、研修医となり本庄病院で働くことになった一止の医師としての葛藤と、山岳写真家である一止の妻・榛名の信念が描かれます。

神様のカルテ番外編。今回は連作短編集です。
始めは一止たちが学生だった時代。医学生って本当に大変なんでしょうね…って言葉にするのは簡単ですが。集まっているのは特に個性的なメンバーでしたけど、でもそれぞれ悩んでいることが追試や恋愛なのが青春だなぁという感じです。一止は変わらず一止でしたけど。
次は事務長と先生たちとの攻防←24時間365日対応って事務長が決めたんでしたっけ?それ今まで触れられていたことありましたっけ?もうすっかり忘れています^^;事務長と大狸先生との関わりが良かったです。
そして一止の研修医時代。涙が出ました。一止と國枝さんとの関わりが本当に良くて…治療法に関しては、私が言うのもなんですが正解はないのだと思います。一止が決断したことは間違ってなかったですし、それでよかったのだと思います。國枝さん家族のそれぞれの決意が強くて、言葉の節々で泣きそうになりました。
最後は榛名のお話。榛名も凄いですね。榛名は誰よりも優しいけど、それは強さから来ている者なのだろうなと思います。居場所は自分で作るもの。榛名の言葉がずしんと響きました。
やっぱりこのシリーズは良いですね。人の命が係わってくるから読んでいて辛い部分も出てきますが、それでもやはり最後には心が温まります。

〈小学館 2015.2〉H27.5.4読了

神様のカルテ3 夏川草介5

神様のカルテ 3神様のカルテ 3
著者:夏川 草介
小学館(2012-08-08)
販売元:Amazon.co.jp
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医者にとって大事なことは、続けることだ。
栗原一止は、信州にある「24時間365日対応」の本庄病院で働く内科医である。医師不足による激務で忙殺される日々は、妻・ハルの支えなくしては成り立たない。昨年度末、信濃大学医局からの誘いを断り、本庄病院残留を決めた一止だったが、初夏には恩師である古狐先生をガンで失ってしまう。落ち込んでいても患者の数が減るわけではない。夏、新しい内科医として本庄病院にやってきた小幡先生は、内科部長である板垣(大狸)先生の元教え子であり、経験も腕も確かで研究熱心。一止も学ぶべき点の多い医師だ。
しかし彼女は治ろうとする意思を持たない患者については、急患であっても受診しないのだった。抗議する一止に、小幡先生は「あの板垣先生が一目置いているっていうから、どんな人かって楽しみにしてたけど、ちょっとフットワークが軽くて、ちょっと内視鏡がうまいだけの、どこにでもいる偽善者タイプの医者じゃない」と言い放つ。

ネタバレあります

神様のカルテ、第3弾です。こんなに続くシリーズになるとは思いませんでした。
相変わらず、栗原先生はとてもお忙しそうな日々を送っています。古狐先生が亡くなり、新たにやってきた小幡先生は一見仕事が出来て美人で人当たりも良い。でも、内に秘めているもの、そして医師としての向上心は並々ならぬものを持っています。それは、彼女が今まで背負ってきたものが大きくかかわっているのですが、また癖のある先生がやって来たなぁという印象です。個性的な方が24時間365日対応の病院に勤めることが出来るんでしょうかね。
小幡先生の意見も全部ではありませんが正論だと思いますし、栗原先生の意見も正論だと思います。それでも、医師という仕事に対して、考え方に対して正解はないんだろうなと思いました。だた、2つの考えを持った2人の先生が協力し合って働いていけたら、それでいいのではないかとも思います。
栗原先生は小幡先生の行動に対して哲学と良心の言葉でねじ伏せますが、医師としての実力は小幡先生の方が何枚も上手。それはある患者の病気をきっかけにそれに気づきます。今まで大学病院へ行くことを薦められ、その都度悩み断ってきた栗原先生ですが、ついに決意します。
その決意の仕方?も何だか先生らしくてお人好しででも本当に医師として素晴らしい人なのだなと思います。
医師は人の命を預かる仕事、本当に大変という言葉では片づけられない仕事であると思います。誠心誠意、患者のために診断し、治療しているのに、何かあったらすぐにたたかれる。患者の家族からすれば大事な家族の事ですから、思うことがあるのは当然なのですが、医師目線でこの作品を読んでいると、ただただ悲しくてしょうがなかったです。
「みんな医者を便利な小道具かなにかと勘違いしているのよ。昼も夜も働かせて、土曜日も日曜日も呼び出して、散々頼っておきながら、ミスを犯したと知った途端、あっさりと掌を返して、やっつけようとする。こんなことしていたら、真面目に働く医者から順に、壊れていっちゃうわ。」(P325)という東西の言葉に胸が痛くなりました。
病院関係者の方に読んでほしいのはもちろんですが、一人でも多くの人にこの地域医療の現状と、現役医師の想いを読んで感じてほしいなと思いました。
本庄病院の医師も看護師も個性的ですが、素晴らしい人ばかりですね。一人一人の言葉が温かかったです。
大狸先生ではないですが、きっとイチ先生ならどこでも大丈夫だと思います。
後どうでも良い事なんですけど…。あの紅白の歌手のくだりは必要だったのかなぁ。
東野圭吾の「聖女の救済」の時みたいに無理やり入れてるようにしか感じなくて。そこは別にいいのになぁなんて思いながら読みました。若干時代錯誤な作品なのに、急に現実が入ってきて何だか悲しかったです。あくまで私の意見ですけど。
ハルの事、何も書いていなかった。ハルの献身さには脱帽です。仙人か女神に見えます。イチとハルの温かな関わりに、毎度のことながら癒されました。

〈小学館 2012.8〉H24.9.15読了

神様のカルテ2 夏川草介5

神様のカルテ 2神様のカルテ 2
著者:夏川 草介
小学館(2010-09-28)
販売元:Amazon.co.jp
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医師の話ではない。人間の話をしているのだ。
栗原一止は夏目漱石を敬愛し、信州の「24時間、365日対応」の本庄病院で働く内科医である。写真家の妻・ハルの献身的な支えや、頼りになる同僚、下宿先「御嶽荘」の愉快な住人たちに力をもらい、日々を乗り切っている。
そんな一止に、母校の医局からの誘いがかかる。医師が慢性的に不足しているこの病院で一人でも多くの患者と向き合うか、母校・信濃大学の大学病院で最先端の医療を学ぶか。一止が選択したのは、本庄病院での続投だった(『神様のカルテ』)。新年度、本庄病院の内科病棟に新任の医師・進藤辰也が東京の病院から着任してきた。彼は一止、そして外科の砂山次郎と信濃大学の同窓であった。かつて“医学部の良心"と呼ばれた進藤の加入を喜ぶ一止に対し、砂山は微妙な反応をする。赴任直後の期待とは裏腹に、進藤の医師としての行動は、かつてのその姿からは想像もできないものだった。
そんななか、本庄病院に激震が走る。

神様のカルテ、第2弾。相変わらず栗原先生は忙しそうですね。地域医療の現状は変わっていないようです・・・
進藤先生に関しては始めは何を考えているんだろうと思っていたのだけど、理由が分かったら、あぁそうか、そうだよねって思える理由でした。
全然気付かなかった。
散々進藤に注意をしてきた栗原がいきなりいつもと逆の事を言うのには受けました^^
榛名との夫婦関係も相変わらず微笑ましくて可愛いですね。何ていい奥さんなんでしょう!
旦那様の事をとっても大事に思っていて、でも自分の仕事も誇りにもっていて。
いいですね。素敵ですね^^
栗原も相変わらず口調は変ですけど、心に秘めているものは情熱的で素敵です。
事務長に言った「医師の話ではない。人間の話をしているのだ。」と言う言葉は、格言だと思います。
栗原がハルに言った「これからもずっと一緒に生きていくのだ」と言う言葉も良かったです。
何度もうるっとしました。
今回もとても素敵なお話でした!

〈小学館 2010.9〉H22.11.24読了

神様のカルテ 夏川草介5

神様のカルテ
神様のカルテ
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オススメ!
栗原一止は信州の病院で働く、悲しむことが苦手な内科医である。ここでは常に医師が不足している。専門ではない分野の診療をするのも日常茶飯事なら、睡眠を3日取れないことも日常茶飯事だ。
そんな栗原に、母校の医局から誘いの声がかかる。大学に戻れば、休みも増え愛する妻と過ごす時間が増える。最先端の医療を学ぶこともできる。だが、大学病院や大病院に「手遅れ」と見放された患者たちと、精一杯向き合う医者がいてもいいのではないか。
悩む一止の背中を押してくれたのは、高齢の癌患者・安曇さんからの思いがけない贈り物だった。第十回小学館文庫小説賞受賞作。

1度私の手元に来たのですが、読みきれずに返し、再び10人待ちを待ってようやく読めました。
早く読んでおけば良かった。っていつも言っていますが。
読んでいて、何度もうるっときました。
著者さんは、実際に信州で医師として働かれている方なんですね。32歳とは。主人公の一止と同じくらいですよね。だからか、地域医療の深刻さは如実に表れていましたよね。
つい最近、札幌から少し離れた小さな街で、医師にきてもらうために奮闘している地域の姿を見ました。
給料も多く出せるわけではない。でも、医師不足だから是非ともこの街に来てほしい。給料以外の部分で満足してもらえるように地域の方々が家具を提供したり、部屋の手入れをしたり。
一止のような考えの医者って稀なんでしょうか。私も一応都会に住んでいるので、深刻さを肌で感じる事はないのですが、やっぱり大変なんでしょうね。
でも、一止は素晴らしいですね。喋り方は時代錯誤ですけど(言葉遣いが万城目さんや森見さんの作品を思い出しました)、誰よりも患者の事を考え、連日勤務が続いていても決して辛いとは言わない。
理想的な医者だと思います。
それに、砂山先生や東西さんや外村さんや水無さんや大狸先生、古狐先生。そして、男爵や学士。そしてそして、愛しい榛名。
一止は周りの人に恵まれていますね。
安曇さんもステキな方でした。私も、読んでいて癒されました。
一止と榛名の関係もとってもかわいらしくて好きです。榛名は少女のようですけど、奥さんらしく一止を立てて、思いやっていて。一止だって、結婚記念日を忘れていて悔やんでいるんですから、奥さんへの深い愛情を感じます。
こんなカップルになれたら、いいなぁ。
また、この方の作品を読みたいです。
すっごく好きです。

〈小学館 2009.9〉H22.4.14読了
自己紹介
苗坊と申します。
読書とV6を愛してやまない道産子です。47都道府県を旅行して制覇するのが人生の夢。過去記事にもコメント大歓迎です。よろしくお願いいたします。
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