「あの女道士、月を飲ませたらしい」
二度は同じ菓子を作らぬ女道士。菅原道真につながるこの女に、「死人に食べさせたい」という菓子作りの依頼が舞い込む……。
晴明と博雅の変わり変わらぬ魂、心震える8編を収録。
「碧瑤杯」…兼家は、かよわき女子が好きだ。しかし、いつものように通った家にはまさか、他の男がいた。とぼとぼ帰路に着く兼家の前に、胸一つの女・青菩薩が現れる。
「カタリ爺」…いつの頃からか、京の鴨川のそばの辻で、よどみなく物語を話す老爺がおり、カタリ爺と呼ばれていた。評判を聞いた兼家が屋敷に招くほどであったが、ある日、忽然と姿を消してしまう。
その他、「菓子女仙」「あちちの関白」「ひもひめ」「黄金兼家」「火車」「色は匂へど」などボリュームたっぷりの全8篇。
陰陽師の新刊。楽しみにしていました。
タイトルにも関連している「菓子女仙」のお話がとても好きでした。余命いくばくかの女性の若かりし頃の叶わなかった恋。その女性の元で佇む人ではない男。60年前の悲恋が切なく、また、女性が愛しい君へ作ろうとしていた菓子を游仙という女道士と露子姫が作ります。60年越しのふたりの恋が成就したのも良かったのだけど、博雅が晴明へ「もしも、もしもだよ。おれが先に死ぬようなことがあったとしたらだ。その時は、この梅の頃に、おまえの酒の相手をするために必ずここにやってくるからな。そう決めたよ」なんて愛の告白をするものだから(違う)ときめきましたよ。
あとは「色は匂へど」も好きでした。こちらは博雅と道満という珍しい組み合わせでのお話だったのだけど、博雅のピュアな気持ちと美しい葉二の音色がまたひとりを救ったのだな…と思って神々しさすら感じました。本当に、博雅は自分が思っているよりも凄い人です。
また新刊を読むことが出来て嬉しかったです。来年は作家生活50周年だそうで、どうかお体に気を付けて、出来れば書き続けていただきたいと願っています。
<文藝春秋 2026.1>2026.2.15読了























