八咫烏が支配する世界・山内を統べる金烏の座に新たに就いた凪彦。その后候補として登殿の儀に臨むのは、南家の蛍、北家の鶴が音、東家の山吹、西家の桂の花。しかし落女として宮中で働く絶世の美女澄生の存在が-。
シリーズの1番最初の物語「烏に単は似合わない」を彷彿とさせる始まりでしたね…懐かしさすら感じましたが、それでも時代が変わり、四姫の関係性も変わっていました。始めは桂の花の境遇が可哀想すぎて読んでいて辛いと思いましたが、蛍と山吹が一筋縄ではいかない人物であることが分かり3人の関係性が悪いものにならず良かったと思いました。北家は置いておきましょう(笑)
そして凪彦。あせびの子どもだから読む前は印象が最悪だったんですけど^^;当たり前ですけど一人の人としてきちんと意志を持って成長していたので良かったと思いました。奈月彦に似ていますね。
「楽園の烏」を読んだ時に雪哉に同情していた私ですが、今作を読んでただただ腹ただしさしか感じませんでしたよね^^;雪哉は雪哉なりに必死であることは分かるのですが、澄生のまっすぐな言葉を聞くと、私は澄生が想う世界を見てみたいと思いました。前作で澄生はちらりと登場したと思うのですが、やはりでしたね。ちょっと忘れかけていて、相関図を見てあれ?と思ったのですが。
最後の凪彦と蛍の逢瀬が読んでいるこちらにも希望を与えてくれました。「恋こそしておりませんが、苦難を同じくする仲間」という言葉に、奈月彦と浜木綿の関係を思い出しました。凪彦と蛍が現状に抗って新しい世界を作ってくれることを祈っています。
そして、「追憶の烏」の時代とついに重なりましたね。ずっと読んでいたシリーズから20年後の世界を読んだあの時の衝撃は忘れられません(笑)今後もとても楽しみです。
<文藝春秋 2024.2>2024.4.8読了