苗坊の徒然日記

読書とV6をこよなく愛する苗坊が気ままに書いてます。 お気軽にどうぞ。

千早茜

グリフィスの傷 千早茜5



からだは傷みを忘れない――たとえ肌がなめらかさを取り戻そうとも。
「傷」をめぐる10の物語を通して「癒える」とは何かを問いかける、切々とした疼きとふくよかな余韻に満ちた短編小説集。
「みんな、皮膚の下に流れている赤を忘れて暮らしている」。ある日を境に、「私」は高校のクラスメイト全員から「存在しない者」とされてしまい――「竜舌蘭」
「傷が、いつの日かよみがえってあなたを壊してしまわないよう、わたしはずっと祈り続けます」。公園で「わたし」が「あなた」を見守る理由は――「グリフィスの傷」
「瞬きを、する。このまぶたに傷をつけてくれたひとのことをおもう」。「あたし」は「さやちゃん先生」をめがけて、渋谷の街を駆け抜ける――「まぶたの光」
……ほか、からだに刻まれた傷を精緻にとらえた短編10作を収録。

傷を巡る10の物語。なので、読んでいてひえぇぇと思う描写もたくさんありましたが^^;面白く読みました。
印象に残ったのは「あおたん」かな。タイトルを見てまず、あおたんって北海道弁では…と思って(笑)そしてそれはあおたんではなく入れ墨だったんですね。語り手の女性が可哀想で。でも、二重を一重にしたことで自分らしく生きられるようになったというのが良い終わり方だったなと思いました。
そして最後の「まぶたの光」「私」が幼少期から通う病院に同級生の男の子がいて、彼も幼少期に傷を負っていた。2人が多くを語らずとも奥底で分かりあえたような感覚が良いなと思いました。そして「私」が先生に向ける憧憬も。その男の子がメイクをしているらしいと噂になっていることを知った時の「私」の返答もとても良かった。
どの作品も短編だったけど、千早さんらしい心の機微が文章から伝わる優しい物語でした。

<集英社 2024.4>2024.5.30読了

マリエ 千早茜4

マリエ (文春e-book)
千早 茜
文藝春秋
2023-08-25


「離婚って失敗なの?」「恋愛と結婚って別物?」
新直木賞作家が描く、おとなの女性の結婚と幸福をめぐる物語。
桐原まりえは40歳を手前に離婚した。夫の森崎に「恋愛がしたい」と切り出され、2年近い話し合いの時期を経て、7年半の結婚生活に終止符を打ったのだ。理由にはいまも納得がいかないまりえだったが、自分はもう誰にも属していない、そう思うと心は軽やかだった。離婚届を提出する朝、寂しさよりも、手放して一人になることの清々しさをこそ感じたのだ。
「あんたもこれから恋愛できるわね」、行きつけのワインバーでよく遭う年かさのかっこいいマキさんはそう言うが、まりえにはその気はない。駆け引きも探り合いも億劫だし、今のからだを見せる羞恥が性欲を上回る。なにより、すべて自分の自由にできる生活が一番大事でそれを危うくする欲望に呑み込まれたくはないのだ。でも、なにか不安で、なにか取りこぼしている気がする……。
ひょんなことで懐いてきた由井君が粉料理を教わりに訪ねてくるのを好ましくは思うが、物事の受け止め方に7つの歳の差を感じるばかりだ。そんな折、些細なきっかけと少しの興味から、まりえは結婚相談所に登録をした。そこで見聞きする世界は、思いもよらないものだった。マリッジコンサルタントに、紹介された男たちに、婚活仲間に、切実な「現実」や結婚に対する価値観を次々と突きつけられ、まりえは考え続ける。自分が人生に求める幸せとは何なのか。
若い頃のように無邪気に恋愛に飛び込んでいけなくなった眼にだからこそ捉えられる、おとなの女の幸せをめぐる長篇。

私はまりえとほぼ同い年で、結婚の経験はないけど、願望もないからか、まりえの行動は良く分からなかったです。というか、この問題に正解なんてあるんでしょうか…。
まりえは「恋愛がしたい」という夫と別れ、結婚相談所に登録する。でもそのあとに年下の由井という男性と一応恋人になる。それなのに結婚相談所の登録は止めないんだ…と思ったし、2回目に会った人とも何となく良い感じに見えたけどお互いに結婚は無いなと思ってさよならするし、そもそもまりえ自身結婚したいようにも子供が欲しいようにも思えない。でも、由井には結婚についてをやんわりと伝えていたり、結局どうしたいのかな…と思ってしまいました。香織の言うように、まりえは恵まれているんですよね。ちゃんと収入があって一人でも生きていけるから、ある意味選択肢がある。だからこそどうしてまた結婚に結びつけようとするのかな…と思ったり…。わかりません!^^;私も一応一人で生きていけてるから恵まれてるっていう事なのかな。だからそんなに躍起になっていないのかも。大きな展開は無いけど考えさせられるし、余韻の残る作品でした。まりえのことをやたら否定的に書いているけど作品自体は面白かったです。否定的な事ばかり書いてると言うことは私は結婚したくないんだろうなとも思いました(笑)

<文芸春秋 2023.8>2023.11.8読了

赤い月の香り 千早茜4



「君からはいつも強い怒りの匂いがした」
カフェでアルバイトをしていた朝倉満は、客として来店した小川朔に、自身が暮らす洋館で働かないかと勧誘される。朔は人並外れた嗅覚を持つ調香師で、その洋館では依頼人の望む香りをオーダーメイドで作り出す仕事をしていた。
朔のもとには、香りにまつわるさまざまな執着を持った依頼人が訪れる。その欲望に向き合ううちに、やがて朔が満を仕事に誘った本当の理由が分かり……。
香りを文学へと昇華させた、第6回渡辺淳一文学賞受賞作『透明な夜の香り』に続く、ドラマチックな長編小説。

前作で物語が終わっていたような気がしたので、続編はないかと思っていました。
一香が辞めてからも相変わらず新しく雇う人は長く続く人はいなかったみたいだけど。
そんな中雇われた朝倉満。満が勤める飲食店で客としてやってきた小川朔に勧誘される。
どうして満が勧誘されたのか、それがのちに明らかになります。2人にそんなつながりがあったとは。と驚きます。
一香も変わらず登場します。愛の形はひとそれぞれで、香りに敏感すぎる朔にとってはこの距離感がちょうど良いのかもしれないですね。その距離感を一香も同じように感じていて、その分かりあっている感じが素敵でした。
朔の方は分からないけど、満は長い間苦しめられていた母親の呪縛から、少しだけ解き放たれそうですね。そして信頼できる友人に出逢えてよかった。

<集英社 2023.4>2023.6.17読了

こりずにわるい食べもの 千早茜5

こりずに わるい食べもの
千早 茜
ホーム社
2022-11-25


果てなき欲望の海原を食って食らって突き進め!
偏屈な食いしん坊作家・千早茜による、「体にいい」の呪縛を解く異色の食エッセイ。
シリーズ第3弾となる本作では、京都を離れ、初の東京ひとり暮らしへ……。
“知らないこの街で、これから好きなものを探していける。食の海を渡るための、はっきりした好き嫌いの羅針盤も持ちあわせている。さあ、どこまで自由になれるだろう。”(本文より)

昨日の今日なので作品関係ないけど言います!千早さん直木賞受賞おめでとうございます!!!
これだけは言いたかった!!!良かった!!!
多分前にも書いたと思うんですけど、私は基本胃腸が弱い人間なので^^;千早さんの健啖っぷりが本当に羨ましく読んでいます。千早さんご自身はこだわりが強いと思っていないようですが多分こだわりは強い方だと思います^m^でもそれは一食一食を大事にしているからでこれだけ大事に食べてもらえたら食べ物も本望じゃないかなぁと勝手に想ったりしてます。
私も食べるものは大事にしたいと思ってはいるものの、舌が肥えていないしケチなので一人でしゃれたお店に入るという行為が出来ず←結局できないでいます^^;
ほぼ100%自炊なので作る方を上達させたいな。調味料にこだわってみるとか…
そして旅行先でコロナ禍なのもあってここ数年はずっとホテルでコンビニ等で買ってきたお弁当を食べることばかりしていたけど、こちらの作品を読んで凄くもったいないことをしていたのではないか…と今更焦ってきました(笑)
サッポロ一番がタイトルに書かれている章はきっと「きのう何食べた?」の話かなと思ったら当たっていました(笑)あのケンジとシロさんの言葉の掛け合い価値観が一緒なんだなーと思って私は凄く好きなシーンなんですよね。千早さんは共感できなかったみたいですが(笑)
そして千早さんがマヨネーズが嫌いなくだりは凄く良くわかります。私もそこまでマヨネーズ好きじゃないから…冷蔵庫にもありません。生クリームも私もあり過ぎはダメかな…マリトッツォも妹がお店で作ったのを何個か食べたくらいだったかも。私は生まれも育ちも今も北海道ですが、カニはあまり好きではありません^m^千早さんのご両親がもう北海道にいないと知ってちょっとショックを受けたりしました(笑)そして殿さんと恋人さんのことも。「胃が合うふたり」を読んで何となく察しましたが、やはりそうでしたか…。
コロナ禍や環境の変化もあるのか千早さんが元気がないようなシーンも見受けられてちょっと心配になったりしました。これからも変わらず、食に邁進して欲しいです。こちらのエッセイの第4弾も待ってます。

<ホーム社 2022.11>2023.1.19読了

しろがねの葉 千早茜5

しろがねの葉
千早 茜
新潮社
2022-09-29


戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。
天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。
しかし徳川の支配強化により喜兵衛は生気を失い、ウメは欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されて……。
生きることの官能を描き切った新境地にして渾身の大河長篇!

本当に…長編でした…。
一人の女性の人生を読みつくした感じがあります。
石見銀山…世界遺産に登録されたときに初めて存在を知った気がします。すみません^^;北海道に住んでいる身としては山陰地方は遠いイメージがあって。
こちらの作品を読んで、シルバーラッシュに沸いていたであろう時代を垣間見ることが出来ました。
ウメは本当に「女性じゃなかったら」喜兵衛の跡を継ぐような山師になれたのではないかと思います。でも、女性だったからこそ、早死にすると言われるこの生業から離れ、子をなして生き切ることが出来たのだとも思います。
家族とは離れ離れになってしまったけど喜兵衛に拾われて、この地で生きることが出来て良かったのではないかと思いました。幸せだった、と簡単には言えないと思うけど…
幼い頃のウメ、女性の身体となり戸惑い始めるウメ、大人の女性になってからのウメ、成長するにつれて生まれてくる感情も周りの環境も移り変わっていき、年を重ねていく姿を読むことが出来てよかったです。非情な男たちが多かったけど、喜兵衛を始めヨキも隼人も龍もそれぞれ素敵だったな…。
終盤に知る喜兵衛がウメのためにしたことには涙が出そうになりました。

<新潮社 2022.9>2022.10.28読了

胃が合うふたり 千早茜 新井見枝香5

胃が合うふたり
新井見枝香
新潮社
2021-10-29


悩みごとはとりあえず、食べてから話そう。ふたりの友情はうまいものと共にある。ストリップ鑑賞の厳選おやつ、銀座絶品パフェめぐり、コロナ禍に交わすご馳走便、人生を変えた日の中国茶、新居を温める具沢山スープ――胃が合う友と囲む食卓は、こんなにも豊かで甘やかだ。人気作家とカリスマ書店員が共にした11の食事から、それぞれの見た景色や人生の味わいまでも鮮やかに描き出す、風味絶佳のWエッセイ集!

お二人のツイッターをフォローしているので、いつもおいしそうな食べ物がアップされていてお腹がすきます(笑)
それにしてもお二人とも凄い食べっぷりですよね。あんなに細いのに…。
私はお腹弱い芸人だから本当に羨ましい。旅行先でたくさん食べることが出来ないのです…。カレーのような辛い物も無理…辛い。
私のことは置いておいて胃が合うって大事だと思います。食の好みが一緒、食べられる量も一緒。そんな人が傍にいたらそれはそれは楽しいですよね!そして性格もお互いにない部分を補っているような感じがまた良いのかなぁ…なんて思いました。
お二人とも美味しそうに食べていらっしゃるのが分かるのですが、私は特に千早さんが口に入れるすべての食べもの飲み物に対して敬意を払っていて必ず食べたいと思うものを食べるという理念のもと食しているのが凄いなと思いました。感動しました(笑)食以外もそうですけど、私も意識してこれ「で」いいじゃなくて、これ「が」いいと選択して生活していきたいなと思いました。
書店員としての新井さんは以前神保町の書店で働かれていた時にお見掛けしたことがあるんです(新井さん目的で行ったのに恥ずかしくて話しかけられなかった)今度は日比谷にと思っていたのだけど、今度東京へ行くときにはお店がもう無くなっているみたいなので(涙)踊り子さんとしての新井さんを拝見したいなぁ…なんて読んでいて思いました。旅に出るときタイミングが合えば行ってみたいな。
お二人の交換日記のようなエッセイ、面白かったです。第二弾も待ってます。ずっと読んでいたい。そして食の参考にしたいです(銀座のパフェのお店はメモしました^^)
それにしても千早さんは京都のイメージが強かったので東京に引っ越されたことが描かれていてびっくり。期間限定のようですが。今度は東京暮らしのお話も待ってます(強欲)

<新潮社 2021.10>2022.1.24読了

ひきなみ 千早茜4

ひきなみ
千早 茜
KADOKAWA
2021-04-30


私たちずっと一緒だと思っていたのに。彼女は脱獄犯の男と、島から消えた。
小学校最後の年を過ごした島で、葉は真以に出会った。からかいから救ってくれたことを機に真以に心を寄せる葉だったが、ある日真以は島に逃げ込んだ脱獄犯の男と一緒に島から逃げ出し、姿を消してしまう。裏切られたと感じた葉は母に連れられ東京へ戻るが、大人になって会社で日々受けるハラスメントに身も心も限界を迎える中、ある陶芸工房のHPで再び真以を見つける。たまらず会いに行った葉は、真以があの事件で深く傷ついていることを知り――。女であることに縛られ傷つきながら、女になりゆく体を抱えた2人の少女。大人になった彼女たちが選んだ道とは。

小学生の時は閉塞感が漂う島で生活して、大人になってからは男尊女卑がまだ色濃く残る総合職で仕事をして。葉は父親をはじめとして男の人が苦手な中生きてきたのにどうして職場もそういうところを選んだのか、私は不思議でしょうがなかったです。やりたい仕事だったのかなぁ。
葉と真以の関係はとても好きでした。お互いのことを大事に思っていて、だからこそ必要以上に詮索しない。大人になった葉も気づいていたけど、真以は決して葉を裏切ったのではないと思います。だからこそ、大人になってもお互いを思いやる気持ちは変わっていなかった。2人がこれからもいい関係を築いていけたら良いなと思います。
物語は良かったけど、私は最初から最後まで読んでいて辛かったです。大人になってからの葉の境遇のくだりは自然と涙が出てきて困りました。
私はセクハラじゃなくてパワハラを受けていたので、それが思い出されたからだと思います。葉は闘っていくことを決めていたけど、私は無理です。逃げることしかできないと思います。もうその職場はとっくに辞めていて、10年以上も経っているのに小説を読んでいてこんな状態になるんだから、私の傷はまだ癒えていないしこれからも癒えないのだろうな…なんてことも思いました。
話は変わりますが、葉の同僚で長野くんが登場しましたね^^どうしてもこの名前だとあの人を思い浮かべてしまうんですけど(笑)今時の若者かと思っていたら割と良い人で良かったです^m^
ところで、真以のお母さんの職業は、著者さんの親友が絡んでいらっしゃるのでしょうか。いらっしゃるのでしょうね。

<KADOKAWA 2021.4>2021.8.3読了

しつこくわるい食べもの 千早茜5

しつこく わるい食べもの
千早 茜
ホーム社
2021-02-26


いいさ、いいさ、いまくらい好きなものを食べるがいいさ。
驚愕と共感の声がどしどし寄せられた食エッセイ、シリーズ第2弾!
ハンニバル・レクター博士に憧れ、炊飯器を擁護し、要らぬ助言に噛みつき、よく腹を下す。そんな偏屈でめんどくさい食いしん坊作家の自由な日常は、否応なくコロナ禍に侵食されていく。それでも――。あなたとわたしの欲望を肯定する、ひねくれものの力強い応援歌。人気イラストレーター・北澤平祐氏の挿画も多数収録。

エッセイ第2弾です。
第1弾を読んだときに、胃袋が強そうだな…と思ったのですがそういうわけではないんですね^^;
私はお腹が痛くなるのが嫌で外食をあまりしないんですけども…。旅行先で刺激物を食べたりちょっと多く食べちゃったりしたらもうアウトな私…。
千早さんの文章は面白いですねー。考え方も斬新!わかるーっていうところやそういう考え方があるかーと思うところもあってもっと知りたいと思って読み進んでいきました^^
でも、エッセイを書かれるようになって、想像していた人と違ったなどと言われるようになったとか。なんですかその失礼な発言は。自分で勝手に想像しておいて勝手に違うと思うとか。
千早さんの小説もエッセイも大好きなのでどうかこのままどちらも読んでいきたいです。
前回にも登場していましたが、新井さんがまた出てきてましたね^^個人名はありませんでしたけど私はわかりましたよ。一人でにやにやしてました。
胃が合う友達って貴重だし大事ですよね。ツイッターで美味しそうな食べ物を前にして満面の笑みを浮かべるお二人の表情を見るのが大好きです。

<ホーム社 2021.2>2021.4.23読了

透明な夜の香り 千早茜5

透明な夜の香り
千早 茜
集英社
2020-04-03


オススメ!
元書店員の一香がはじめた新しいバイトは、古い洋館の家事手伝い。そこでは調香師の小川朔が、幼馴染みの探偵・新城と共に、完全紹介制の「香り」のサロンを開いていた。亡き夫の香りを求める女性の依頼や、匂いを手がかりに行方不明の娘を探す案件など、風変わりなオーダーが次々に舞い込んで―。

私は割と香りには敏感な方だと思います。でも、朔のようにあまりにもわかりすぎるというのは生きづらいだろうなと思います。
調香師という仕事はテレビで拝見したことがあるような気がしますがとても繊細な仕事ですよね。
そして自分の体調にも気を遣わなければならない。大変な仕事だと思います。
始めは一般企業に勤めていた朔。でも、あまりにも香りが分かってしまうために耐えられなくなりオーダーメイドの香りを作るサロンを経営し始めた。
ある事情により働けなくなった一香は簡素な求人広告を見て朔が営むサロンへアルバイトにやってきます。心の病気だったから感情の起伏が大きくなく、表情もないから朔にとって良かったんでしょうね。
でも、少しずつ回復していく一香に対して朔の方が動揺し始める。読んでいる側は分かるのに当の本人たちは分かっていない。やきもきする展開でした^m^
不躾な新城が始めは嫌いだったけど、新城は感情が表に出て分かりやすいし、なんだかんだで朔の事を心配しているし一香ちゃんと呼ぶようになってから一香の事も認めているような気がして段々可愛く見えてきました←
読んでいるだけなのにいろんな香りを感じるような物語でした。
朔も一香もそして新城も、それぞれが幸せを感じられるようになりますように。

<集英社 2020.4>2020.6.28読了

さんかく 千早茜4

さんかく
千早 茜
祥伝社
2019-10-31


「おいしいね」を分け合える そんな人に、出会ってしまった。
恋はもういらないと言うデザイナーの夕香。
夕香の“まかない"が忘れられない営業職の正和。
食事より彼氏より、研究一筋の日々を送る華。
正和は、夕香が暮らす古い京町家でルームシェアをすることになった。理由は“食の趣味"が合うから。
それだけだったのに、恋人の華には言い出せなくて……。
三角関係未満の揺れ動く女、男、女の物語。

夕香と正和と華が順番に語り手となり、物語が進んでいきます。どれも食べ物が出てきてどれも美味しそうです。
いくら食の趣味が合うからって、何もないからって、自分の彼氏が自分の知らない女性と同じ家に住んでいたら嫌だなー。誰でも嫌なんじゃないかな。まあ夕香は正和に彼女がいるとは知らなかったから仕方ないと思うけど。
恋愛に発展するわけでもない。同居人に美味しいものを食べさせる。それだけ。
何も期待していないのに一緒に暮らすなんてこと、出来るのかなぁ。
3人が3人とも気持ちが一方通行で、相手の事を考えているようで考えていないような感じがした。
最後は元に戻ったようなでも少し前向きになったような…男女の関係って難しいですね。

<祥伝社 2019.10>2020.1.15読了

神様の暇つぶし 千早茜5

神様の暇つぶし
千早 茜
文藝春秋
2019-07-19


オススメ!
きつい目に大柄な身体、恋愛なんて私には似合わない。そんな二十歳の藤子に恋を与え奪ったのは死んだ父より年の離れた写真家だった。

不思議な作品でした。読み終えた後に余韻が残っています。
里見が言っていたように人は自分の恋愛が一番美しいと思っている。人から見たらそれが気持ち悪いのだとしても。恋というのは理屈じゃないと思います。好きになってしまう衝動はきっと止められない。
藤子は父を喪い、恋愛というもの自体に嫌悪感を抱いていましたが、父親よりも年の離れた写真家、広瀬全と出会い、ひと夏を共に過ごしたことで大きく変わっていきます。藤子は若さゆえに純粋で真っすぐで傷つきやすくて。それが広瀬にとっては眩しかったんだろうと思います。
広瀬はなぜ10年以上会っていなかった藤子の元へ行ったのでしょうか。藤子の父親と会うことが目的だったのだとしても。でも、それは本人にしかきっとわからないことで。
藤子がみるみる変わっていき、綺麗になっていく姿は読んでいても感じました。サナギが蝶に変わっていくような。生のエネルギーに満ち溢れている藤子を見て、広瀬が写真家として一人の男として足搔きたかったのでしょうか。
色々あったのだと思いますが、私はこの2人の出会いを羨ましく思いました。周りが何と言おうと、2人の関係は2人だけのものです。
生と死、全という人物の善悪、すべてが紙一重というか、読んでいる人によって感じ方は様々なんじゃないかなと思いました。千早さんの濃厚な作品を堪能出来て幸せでした。

<文藝春秋 2019.7>2019.9.2読了

わるい食べもの 千早茜

わるい食べもの (単行本)
千早 茜
ホーム社
2018-12-05


「いい食べもの」はもうたくさん!
気高き毒気が冴えわたる、異色の食エッセイ
WEB連載中からじわじわファンを増やし続けた話題作が、ついに書籍化!
幼少期をアフリカで過ごし、デビュー作『魚神』が小説すばる新人賞と泉鏡花文学賞をダブル受賞。『男ともだち』でも高い評価を得るなど文芸界のフロントを駆ける作家が、「食」をテーマに幼少期の記憶から創作の裏側、世の中への疑問まで多彩につづる初のエッセイ集。
「いい食べもの」情報が氾濫する今だからこそ、「わるい」を追求することで食の奥深さを味わい、ひいては生き方そのものを問う意欲作。

千早さん、あんなに細いのにものすごく大食漢なんですね…。読んでいるだけで胸やけを起こしそうでした^^;
私はちょっとでも調子に乗って食べすぎるとすぐにお腹が痛くなるので…。その胃袋が羨ましいです。
私も旅行に行ったらその場所のグルメをたらふく食べたいと思うのですが、腹痛が怖くてあまり食べられないのが悩みです^^;
確かに大好きな料理ってからだにわるいと言われているものが多いですよね。揚げ物とか、砂糖たっぷりとか。でも、からだにわるいと思っても好きな物はやっぱり食べたい。著者さんのその考え方はとても好きでした。共感文化はどうなんだと書かれていたけど^m^
私は旅行の時以外はほぼ自炊で、手間のかからないものばかりを作る傾向にあるんですけど、自炊でももうちょっと手間暇がかかったものを作ってみるとか、外食にしてもちゃんと下調べをして食べに行くとか、1食1食をもう少し大事にしたいなとこの作品を読んで思いました。
先ほども書きましたが、今はSNSが蔓延していて、共感文化になっているけど、自分が好きなら周りがなんと言おうと好き。で良いと思います。千早さんに絡んできた男性はきっとそちら側の人間なんですよね。
殿さん←も何だか素敵。そして千早さんと凄く価値観が似ているんだろうなーと思いました。
そして少し登場したカキ氷大好きな友人、書店員Aさんは完全に新井さんですよね^m^読んでいてニヤニヤしちゃいました。

<ホーム社 2018.12>H31.3.7読了

犬も食わない 尾崎世界観 千早茜3

犬も食わない
尾崎 世界観
新潮社
2018-10-31


尾崎世界観が描く「だめな男」。千早茜が描く「めんどくさい女」。
同棲カップルそれぞれの視点、男女の本音が詰まった“究極の共作恋愛小説"が誕生。
「結婚とか別れ話とか、面倒な事は見て見ぬふりでやり過ごしたい」「ちゃんと言ってよ。言葉が足りないから、あたしが言い過ぎる」――脱ぎっ放しの靴下、畳まれた洗濯物、冷えきった足、ベッドの隣の確かな体温。同棲中の恋人同士の心の探り合いを、クリープハイプ・尾崎世界観、千早茜が男女それぞれの視点で描く、豪華共作恋愛小説。

・・・全然分からなかった。
あらすじを読まないで千早さんの新刊だと思って読んだけど、何がどうなっているのか全然わからなかった。
あんな最悪な酷い出会いをしたのに、どうして恋人同士になってるの?どうしてこんなにイライラしていつもケンカをしているのに一緒にいるの?住んでるの?なんで別れないの?っていうか2人は恋人って言えるの?
福の友人の奈津子の言う通り。どうして2人が一緒に暮らしているのか分からない。大輔も何を考えているのか全然分からない。福の事を好きなのかどうかわからないけど、でも別れたくはないみたい。でも、何を考えているのかさっぱり分からない。
日常の描写は凄くリアルで、だから福の仕事も大輔の仕事も入って行けました。でも、リアルだからこそ福が経験したことの気持ち悪さが本当にただただ嫌悪感しかなくて。福は強いなと思いました。
文章は上手くて引き込まれる。でも内容は私は分からなかったです。あくまで私の意見なので、意見には個人差があります^^;でも最後まで読み終えてタイトルを見て納得。ピッタリだ。

<新潮社 2018.10>H31.2.26読了

鳥籠の小娘 千早茜5

鳥籠の小娘
千早 茜
KADOKAWA
2019-01-31


自由な心は誰にも奪えない。 ままならない世界の拠り所となる大人の絵本。
村はずれで「幸福が宿る鳥籠」を作る娘はひとりぼっち。 嵐の晩、彼女のもとへやってきた魔物が「さびしい小娘よ」とささやきますが――。千早茜の幻想を宇野亞喜良の描き下ろし15点が彩る孤独と自由の物語。

「ほんとうの幸い」とはなにか…。なんて「銀河鉄道の夜」の台詞が思い浮かんでしまいましたが。
目の見えない老婆に連れられてやってきた白い髪の娘。
娘はおばあさんに籠の編み方を習い、修得した後に我流で鳥籠を作り始めます。売り物ではないため家の前に飾り、村人が欲しいともらう代わりに食料などを置き、持っていくようになります。
その鳥籠を持つと幸せになる。そんな噂がまことしやかに流れ始めます。
そんな噂は勝手に作り上げられたもの。私利私欲にまみれた村人たちは小娘にどんどん鳥籠を作るように命じます。娘には誰も近寄らず、話しかけもしなかったのに、高額で鳥籠が取引されるようになったら娘の事を考えずに閉じ込めて鎖を付けて拘束し、鳥籠を作らせる。なんて身勝手な人たちなんだろう。
それでも空っぽの鳥籠には純粋な娘の心が入っている。老婆は娘にお金に変えがたい大切なものを教えてくれたんですよね。娘の無欲さが輝いてすら見えました。魔物はその無欲さに苛立ちを覚えていたんですね。自分にはないから。
それでも、魔物は自分の罪を認めて反省した。娘と魔物のこの先が幸福なものとなりますように。

<KADOKAWA 2019.1>H31.2.24読了

正しい女たち 千早茜4

正しい女たち正しい女たち
著者:千早 茜
文藝春秋(2018-06-11)
販売元:Amazon.co.jp

容姿、セックス、離婚、老い…。みんな本当は興味津々なのに、はっきりとは言葉にしないもの。女性の隠し事の正しい姿を描いた物語。

「温室の友情」「海辺の先生」「偽物のセックス」「幸福な離婚」「桃のプライド」「描かれた若さ」6篇収録の短編集。
それぞれ違う物語ではありますが、少しずつ人物がリンクしています。
「温室の友情」は学生時代からの友人4人が大人になってからの物語。学生時代は仲が良くて何でも話せた4人。でも大人になって少しずつ境遇が変わっていくと、関係性も変わってくる。遼子と恵奈の関係は悪くはない。それでも遼子がした行動は正しかったのかどうか…個人的にはその行動は悪くはなかったと思う。だって恵奈の恋愛は間違っていると思うから。相手も最低だし。それでも正しくはないですよね。包み隠さず何でもはなるというのが良いのかどうか。答えは分かりません。
「海辺の先生」先生は何者だったんでしょうね…。ちゃんと勉強を見てくれるいい人ではあったけど、良い人過ぎて少し怖さも感じました。先生なりに悩んでいることがあったんでしょうね。美優の母親がちゃんと娘を対等に見る人で良かったです。
「偽物のセックス」「温室の友情」で登場した4人組の1人麻美の夫目線の話。これはあれですか?この旦那はただセックスがしたかったっていうだけなんすか?←不躾
なんというか、哀れに見えてしまったのは私だけでしょうか。隣りに住む女性が言ったあなたは異常という言葉が正論過ぎる。したいと思うなら奥さんのところへ行けばいいのに。そういう問題じゃないのかな。結果そうなってたけど。
「幸福な離婚」ミヤとイツキの関係がとても素敵に感じた。あと4カ月半で離婚するとは思えませんでした。このまま2人の関係が続いていけばいいのにと思わずにはいられませんでした。
「桃のプライド」4人組の1人環の物語。環の抗う気持ちは分かるけど、見ていて少し辛かったなぁ。自分の年齢に近い人たちだからテレビ業界なら露骨に年齢は言われるだろうし…。それでも環には味方もいたんですよね。
「描かれた若さ」壮大な復讐劇でしたね。ざまあ←
女性を若さや見た目でしか判断しない男の典型でしたね。読んでいて腹が立ちました。でも、同じようなことを考えている男性も多いんでしょうね。世の男性は若い人が好きだから。読んでいて、ざまあみろと思ったけどそれと同時に少し虚しくなりました。
千早さん流石です。

<文芸春秋 2018.6>H30.7.5読了

クローゼット 千早茜5

クローゼットクローゼット
著者:千早 茜
新潮社(2018-02-27)
販売元:Amazon.co.jp

わたしの心の中のいちばん弱い部分――。そこは誰にも覗かれたくない場所。秘密に束縛され、男性が苦手なまま大人になった洋服補修士の女。要領よく演技するのが得意だけど、好きな事から逃げてばかりいるフリーターの男。洋服を愛している。それだけがふたりの共通点のはずだった――。絶対に消えない記憶を、隠し続けるのはいけないこと? 一歩前に、もっと前に。あなたの勇気を後押しする長編小説。

優しい物語でした。哀しくてでも温かくて優しい。
私設の美術館が舞台というのもまた魅力的です。こんな空間があったら私も入り浸りたい…。読んでいて少し前に読んだ「テーラー伊三郎」を思い出しました。
自分が良いと思うものを素直に良いと言えない。人と違うことをすると批判され、異質だと揶揄される。堂々と好きなものを好きと言える環境だったら良かったのに。
芳が小さな時に受けた心の傷。その過去からやりたいことから逃げている芳。でも、その想いは気付いてくれる人がいた。きっと館長は芳のその鬱屈とした想いを感じ取ったから迎えてくれたんでしょうね。
それぞれに傷を抱えていた纏子と芳だけど、2人が出会ったことでそれぞれが前を向いて生きていくことが出来たのかなと思いました。
これからの纏子と芳と晶も見てみたいと思いながら読み終えました。

<新潮社 2017.2>H30.3.11読了

人形たちの白昼夢 千早茜4

人形たちの白昼夢人形たちの白昼夢
著者:千早 茜
PHP研究所(2017-08-19)
販売元:Amazon.co.jp

嘘をつけない男と嘘しか口にしない女が出会った時、物語は動き出す。
『魚神』『男ともだち』の著者が贈る、リアルと幻想が溶けあうような12のショートストーリー。
コットンパール/プッタネスカ/スヴニール/リューズ/ビースト/モノクローム/アイズ/ワンフォーミー・ワンフォーユー/マンダリン/ロゼット/モンデンキント/ブラックドレス
◎収録作品
「スヴニール」声が出なくなってしまった私は、見知らぬ相手からの招待状に誘われ、レストランを訪れる。給仕人にうながされ料理を口にすると、さまざまな情景が浮かんできて――。
「リューズ」荒廃した世界。空爆から身を潜め、不思議な「声」に導かれて目を開けると、自動機械人形(オート・ドール)が現れた。豪奢で美しい、暗殺用の人形に連れられて向かった先には――。
「モンデンキント」児童文学作家となった私が物語を書き始めた本当の理由。それは中学生のときに出会った、ピアノの上手な男の子との約束にあった。

千早さんらしい独特の世界観。良いですねードキドキします^^
特に好きだったのは「ロゼット」かな。偏屈な時計職人と拾われた孤児の物語。始めは人を拒絶している職人も孤児との生活に慣れていって、2人は同じような想いを心の奥に抱えていていわば同志のような気がしました。切なくて哀しい物語でした。
あとは「モノクローム」罪人たちが娯楽をすべて取り上げられそれを無意味と思って生活している中で特異な男が現れる。その男のお陰で罪人たちは生きるということを考えていく。ちょっと「カッコーの巣の上で」を思い出しました。
「ワンフォーミー・ワンフォーユー」も好き。「ひと匙は私に、ひと匙はあなたに」あなたと私。人とポットの物語。
そして「モンデンキント」この物語も切なかったな。子供って残酷。あのまま二人の世界を築いていくことが出来たら、もっと2人は世界を広げて行けたのではないか…それでもこの出来事がなければ私は児童文学作家にはなれなかったのではないか…。色々考えてしまいました。

<PHP研究所 2017.8>H29.9.14読了

ガーデン 千早茜4

ガーデンガーデン
著者:千早 茜
文藝春秋(2017-05-29)
販売元:Amazon.co.jp

植物になら、惜しみなく与えられるのに。
花と緑を偏愛し、生身の女性と深い関係を築けない、帰国子女の編集者。
異端者は幸せになれるのか。幸せにできるのか。
著者会心の感動作。

あらすじを読まずに読み始めたこの作品。
帰国子女の編集者である羽野君の目線で物語は描かれて行きますが、羽野君自身に魅力は感じなかったなー。なんでもそつなくこなしていて、不本意だろうけど帰国子女というのがまた女性は惹かれるんだろうな。きっと女性に不自由したことはないんだろうけど、私にはいけ好かない不思議な男の人にしか感じなかったです。
でも、周りの女性たちは変わっていきましたね。ただ単に羽野君との遊びに飽きた人、女性の幸せを選んだ人、仕事に追われた人。男は必ず間違えると言っても全体的に相手に対して淡白だなと思って、最後は少しざまあみろ!とまで思ってしまった^^;
羽野の印象は緋奈がぶつけた言葉そのままです。でもそれが、きっと千早さんの狙いだったんですよね。

<文芸春秋 2017.5>H30.7.19読了

夜に啼く鳥は 千早茜5

夜に啼く鳥は夜に啼く鳥は
著者:千早 茜
KADOKAWA/角川書店(2016-09-02)
販売元:Amazon.co.jp

古来、傷みや成長を食べる「蟲(むし)」を体内に宿す不老不死の一族があった。その一族は地図にのらない里で、長い間、人目をはばかって暮らしていた。里の岬には、八百比丘尼とも言われる"シラ"という一族の祖を祀っていた。その末裔のなかでも強大な力を得た御先【みさき】は、どんな傷も病も治す能力を持ち、150年以上生きているとは思えぬ10代のままのような美しさで、ふたなりの身体を持ち、性別はもはや定かでない存在として畏れられてきた。今では、時の権力者の施術を生業として暮らしている御先だったが、付き人だった玄孫【やしゃご】の雅親【まさちか】をつき離し、一族の里を離れ、夜の店で働いていた傍系の四【よん】と行動をともにするようになり、ある"事件"に巻き込まれることになり……。主人公たちの過去と今が交錯し、時代を超えて現れる愛しい人……。不老不死の一族の末裔が現代の都会に紛れ込む――妖しくも美しく、そして哀しい現代奇譚。 泉鏡花文学賞受賞作家が挑む新境地。カバー挿画は、中村明日美子さんが担当。

こういう作風の作品久しぶりですね。現代の話なんだけど、どこか浮世離れしているようなそんな雰囲気。やっぱり好きです。
連作短編集になっているので少しずつ物語はつながっています。
始めはこの一族が生まれるきっかけとなったシラの物語。それ以降は現代そのシラの能力を受け継ぐ御先と、御先を取り巻く人々の物語です。御先のような能力を持つ者は重宝も去れるし命を狙われもするでしょうね。
見た目は20歳前後なのに喋り方は本当にお爺さんのようで^m^長い年月を生きてきたんだなということが伝わってきます。四と出会ったことは大きかったですよね。人形のようだった御先が少し人間らしくなったような気がしました。
雅親の狂気ともいえる愛情も少し分かる。
雲の上のような存在の人だけどだからこそ傍にいたいと思う気持ちが伝わってきました。それでも御先の距離は掴めない。でも最後に四が言ってくれましたよね。本当にその通りだと思いました。
御先の未来が少しでも明るくなります様に。生きたいと思える時がこれからもたくさん訪れます様に。

<角川書店 2016.9>H28.10.3読了

西洋菓子店プティ・フール 千早茜4

西洋菓子店プティ・フール西洋菓子店プティ・フール
著者:千早 茜
文藝春秋(2016-02-12)
販売元:Amazon.co.jp

女を昂奮させない菓子は菓子じゃない
スイーツは誰かの心を不意につかんで新しい場所へと羽ばたかせるスイッチ。下町の洋菓子店を舞台に繰り広げられる鮮烈な六つの物語。

商店街にある昔ながらの洋菓子店。読んでいて行きたくなりました。
そこで働く亜樹と亜樹の祖父母。
私もそこへ行ったら買うのは昔ながらのシュークリームな気がするなぁ。
この洋菓子店に関わる人たちが出てくる連作短編集でしたが、どの人に対してももどかしさを感じました。
スミとスミの事が好きな女の子は時間の問題かなぁと思いましたけどね。
摂食障害の女性は読んでいて辛かったなぁ。亜樹はこの女性が大量のシュークリームを買った後にどうするのか分かっていたんでしょうね。
そして亜樹と祐介。どっちももどかしいんですけど、祐介に言った言葉、私はそっくりそのまま亜樹に返すわ!と思いました。プロポーズを受けているのに先延ばしにしているのは一体誰なんだ?職人肌というにはあまりに幼稚で祐介に甘えていると思いました。
祐介が甘えたいのにそれをはねのけた行動は私は許せなかったですねぇ。
でもお祖父ちゃんにはすべてお見通しだったみたいでしたが。そしてお祖母ちゃんにも。お祖母ちゃんてばやりますね。
まだまだ心配な2人でしたけど最後は良かったです。
新装開店した後もどうか繁盛しますように。そう思って読み終えました。

<文芸春秋 2016.2>H28.3.4読了

男ともだち 千早茜5

男ともだち男ともだち
著者:千早 茜
文藝春秋(2014-05-26)
販売元:Amazon.co.jp

関係のさめてきた恋人と同棲しながら、遊び人の医者と時々逢いびき。仕事は順調、でも何かが足りない――29歳、イラストレーター神名葵。
八年ぶりの電話を掛けてきた大学の二歳上の先輩・ハセオはいつも馬鹿笑いしてばかりの、女の切れない男だったが、決して神名には手を出さなかった。男ともだち。そういう呼び名以外はあてはまらない。でも、誰よりも居心地のいい相手だった。同じ種族を本能的に求めるように神名は彼と一緒にいた。
男ともだちは恋人ではない。彼には親密に付きあっている女性たちがいるだろう。でもひょっとすると、男ともだちは女たちにとって、恋人なんかよりずっとずっと大切な相手なのではないか。いつまでも変わらずに、ふとした拍子に現れては予想もつかない形で助けてくれる――。
29歳、そして30歳。
仕事と男と友情の、熱くてビターな日常を描いた傑作長編小説。

土曜日に「王様のブランチ」で特集されていてタイミングが良かったです。初めてお顔を拝見しましたが、綺麗な方でしたー。北海道出身なんですよねー。今は京都にお住まいなんですね。
29歳、今の私と同い年です。同棲している彼氏がいて愛人がいて。イラストレーターとして仕事もたくさん舞い込んできていて一応は満ち足りているはずなのに、満たされていない神名。
正直最初の神名の印象はめちゃくちゃ悪いです。神名はずっとドロドロしている感じ。彼氏にも愛人にも心は許さずにどこか見下していて、いつか報いが来るよとまでは言わないけど、このままの生活が続くわけがないよとは思いました。
私は小中がほぼ持ち上がりだったのでそれまでは男の人と普通に話せていたのですが高校で誰一人知らない環境に置かれたら男の人と話せなくなり、大学は女子大だったので同世代の男性と関わることがあまりない状態で今まで来たので、正直男女の友情って信じていない人です。ずっとそういう関係であってもどっちかは何かしらの愛情めいたものを持っているだろうと疑っている人です。勿論意見には個人差がありますからあくまで私の意見です。
ただ、神名とハセオの関係は不思議でした。神名の彼氏の言うように「男ともだち」という表現は狡いと思います。それでも二人は本当にともだちで、露月のいうように赤ん坊の状態でそのままいるような、そして美穂の言うように1度でも身体の関係を持ったら崩れてしまうような、脆いような強いような。不思議な感じでした。女性同士ならここまで明け透けにいえないことが男女だと言えるのかな。私には分からない関係。
ハセオが神名に言う言葉、私にも結構響きました。自分が求めていない仕事でもやらなければならないのかという神名に対して「無心でやれ」っていう言葉とか。「どんな仕事でもやっていればいつかどこかで役に立つからやらないのではなく無心でやれ」っていう言葉は沁みました。良いこと言うな〜。
美穂との関係も好きでした。互いが互いを羨んでいる姿が良いなと。決して妬みではなく。
王様のブランチでユイカちゃんが「最後ハセオが可哀想だった」と言っていました。私は最後、ハセオが可哀想だったとは思いませんでした。なんだかんだあってもこういう関係がずっと続いていくんだから、このまま一生二人はともだちなんだろうなと私は思えたので。しつこいですがあくまで私の意見です。
主人公は29歳という年齢に足掻いてました。私も今そうなのかもしれません。そこだけは共感できたかなー。でもきっと私も同じように30歳になったときに今まで足掻いていたのは何だったんだろうって思えるような気もします。
でも、もうちょっと足掻いていようとも思います。
番組の中で千早さんが主人公に対して「そのままでいいんだよ」というメッセージを伝えていました。それは私の心の中にもずしんときて、涙が出そうになりました。
そうか、そのままでいいのかって思えることが出来てうれしかったです。

〈文芸春秋 2014.5〉H26.6.23読了

眠りの庭 千早茜5

眠りの庭 (単行本)眠りの庭 (単行本)
著者:千早 茜
角川書店(2013-11-23)
販売元:Amazon.co.jp

「アカイツタ」美大を卒業したものの、画家になることもなくくすぶっていた萩原は、美術評論家の真壁教授の紹介で、女子校の臨時教員として勤めることになる。美術準備室で見つけた、暗い目でこちらを見つめる少女の絵。自画像だと思ったそれは、謎の死を遂げた鈴木という女生徒が、真壁教授の娘・小波を描いたものだった。やがて萩原は小波に惹かれていくが、彼女には誰にも言えない秘密があった…。
「イヌガン」大手家電メーカーに勤める耀は、年上の彼女、澪と一緒に暮らして3年になる。掴みどころのない澪だったが、その穏やかな日々に満足していた。しかし、澪がときおり漏らす本音と怪しい行動に、耀は少しずつ不安を抱いていく。ある日、澪を尾行した耀は、思いがけない場面を目撃することになる…。過去を背負った哀しき女と、彼女に囚われていく男たち。2つの物語がつながったとき、隠された真実が明らかになる。あふれ出す情感を描き切った、心ゆさぶる墜落と再生の物語。

いやー…凄い作品でした。そんなに長いお話じゃないんですけど凄く長く感じました。
この作品には2編収録されています。異なる話ではなく、繋がっています。
私は2編目を読んだときに出てくる女性は前作に出たある人を想像していたのですが違っていました。私が鈍いだけなのかもしれませんがそこでやられたと思ったのと、2編のつながり具合が本当に見事だなと思ったんです。
ネタバレになっちゃいますが1編目は凄く気になるところで終わります。
ここで終わるの?と思うような、ここで終わってもいいような。
そこからの2編目の流れが本当に良いです。
1編目の謎に包まれているのも好きですが、2編目の耀と澪の関係が凄く好きでした。
耀のまじめなところ、凄く好感が持てました。耀が澪に内緒でとある場所へ行くのですが、そこで耀は「同じ後ろめたさを抱えるためです」と言うんです。その言葉が凄く心に響きました。
あぁ、この人は本当に彼女のことが大事で、一生を共にしたいと思っているんだと思って、感動したんです。
最後の最後もちょっとドキドキするのですが、この2人には幸せになってほしいと思って読み終えました。

〈角川書店 2013.11〉H25.12.26読了

あとかた 千早茜4

あとかたあとかた
著者:千早 茜
新潮社(2013-06-21)
販売元:Amazon.co.jp

きれいに洗っても、忘れようとしても、まだ残っているもの。それで、人生は満ちている――。結婚直前の不実も、不倫も、自分の体を傷つけてしまうのも、ここにずっといて欲しいとうまく言えないのも、ぜんぶ同じ。怖いから。抗いたいから。体と心が触れあった痕跡を遺すことだけが、私たちの唯一の寄る辺なのです――言葉にしたら消えてしまうかもしれない感情の奥底まで踏み込んで描ききった、痛くて優しい連作小説。

6つの連作短編集です。
出てくる人たちが少しずつ繋がっています。
千早さんはこういう人の絡め方が上手いなと思います。
恋愛って何なんだろうなって読んでいて思いました。
相手に対する想いって想っていても思うように伝わっていなかったり報われなかったり。
正直理解できる人の方が少なかったのだけど…
松本が健気だったなぁ…相手はなかなか手ごわいけど、頑張ってほしい。
千影さんの恋愛はただただ切なかったけど、水草君の言葉が良かったです。

〈新潮社 2013.6〉H25.7.29読了

桜の首飾り 千早茜5

桜の首飾り桜の首飾り
著者:千早 茜
実業之日本社(2013-02-07)
販売元:Amazon.co.jp

桜の花びらで作った首飾りは、すぐにしおれてしまう。でも、桜と人の間には、さまざまな物語がひそんでいる。泉鏡花文学賞受賞作家による、女と男たちの幻想、羨望、嫉妬、自己回復、そして成長のストーリー七編。
「春の狐憑き」美術館勤務のわたしの昼休み。初老の男性が言う。狐は人の健全な心を喰うのだとか。喰われると心が解放されるらしい。
「白い破片」花見場所取りの際の雨宿り。声をかけてきた人懐っこい女。そこで俺が思いだしたのは、冷たい笑いをする過去の女だった。
「初花」元女優のママは、小六のあたしを無理やり華やかな世界で注目させたがる。花屋さんに新しい人が入ってきた。それ以来私はそこへ行くようになる。
「エリクシール」わたしは夫の亡妻の身代わり……それに気づいてしまった女は、
バーで知り合った男と愉悦の時間をもっていたが。
「花荒れ」国税局の男に私は、「ゆきちゃん」と名乗る女との関係を聞かれたが、
二人の関係は和菓子がきっかけに過ぎなかった。
「背中」大学内外から持ちこまれる資料を整理するバイト中の僕。四角四面の上司のもとに、刺青の標本を見たいという女の電話が…。
「樺の秘色」亡くなった祖母の家の庭に私が見た少女の幽霊。家族にもわからない少女の姿を見えていそうなのは、私のほかに風来坊の男。

桜に纏わる7つの短編集です。
どの作品もどこか不思議で、温かい作品でした。「春の狐憑き」が好きでした。主人公の「わたし」の気持ちが何だか分かるなぁと思って。ただ尾崎さんが結局よく分からなかったけど。「初花」の緋奈は可哀相だったなぁ。それでも花屋のお姉さんと出会ったことで大人になりましたよね。お母さんよりもよっぽど大人。芸能人に入っても入らなくても、素敵な女性になると思う。
「エリクシール」のわたしの酔いたいけど酔えないという気持ちが凄く切なかった。もう自分のために逃げ出していいと思う。「背中」も良かった。一ノ瀬さんは僕を試していたのかな。ただの頑固じゃないのがよかった。
作品も良かったですが、あとがきも好きでした。
千早さんは江別市出身の道産子なんです。私も正直桜ってあまり印象がないんです。千早さんもおっしゃっていましたが、北海道の桜って、桜が咲くと同時に新緑も出てくるのでピンク一色じゃないんですよね。綺麗は綺麗なんですけどそれほど印象が強くなくて。
昔3月に長崎に旅行に行ったんですけど、その時にピンク一色の濃い色の桜を見て「何て綺麗な桜なんだろう」と初めて思ったんです。そんなもんです。
それでもこの作品を読んで、桜の儚さや美しさを感じることが出来た気がします。
北海道で桜が咲き始めるのは2か月後くらいですが、ちゃんと見てみようかなと思いました。

〈実業之日本社 2013.2〉H25.3.4読了

森の家 千早茜5

森の家森の家
著者:千早 茜
講談社(2012-07-12)
販売元:Amazon.co.jp
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互いのことに深く干渉しない。その暗黙のルールは気ままな私が作っているのではなく、佐藤さんの微笑みが作っている―。30過ぎの美里と、ひと回り歳上の恋人・佐藤さん、その息子で大学生のまりも君。緑に囲まれた家で“寄せ集めの家族”がいとなむ居心地いい暮らしは、佐藤さんの突然の失踪で破られる。それは14年前の、ある約束のためだった…。繋ぎとめるための言葉なんていらない。さみしさを共有できたら、それでいい。泉鏡花文学賞受賞作家が描く奇妙でいとしい「家族」のかたち。

千早さんの最新刊です。
美里と佐藤さんとまりも君。それぞれ3人の目線に分かれて描かれています。
3人とも幼いころに「家族」というものと上手くかかわっていかなかったからか、何かが欠落しているような無気力のような、それぞれ変わった人たちだなというのが最初の印象でした。
でも、佐藤さんが失踪したことでその関係性は変わっていきます。
まるで幼い少女のような短気で気分屋の美里。佐藤さんとの関係も家賃が浮くからくらいの感じで同棲をしていたような感じだったけど、佐藤さんと関わってきた時間を反芻して、佐藤さんがどういう存在だったか再認識するようになります。
美里は結構終盤まで嫌いでした。自分勝手でまりも君に当たり散らすし。本当に少女というか子供だなと。でも、佐藤さんがいなくなったことで、自分はどうしたいのか自力で考え、行動するようになります。
最後のシーンが凄くよかった。感情を思うままに吐き出した彼女はもう吹っ切れたんだなと思いました。
まりも君も辛い人生を歩んできていて、実際はとても出来た20歳にはとても見えない子。おっさんみたいなんて言われてます。彼女もできたけど、接することに戸惑っていることが文面だけで伝わってきます。こう言ったら喜ぶんじゃないか、良かった合っていたんだと彼女と関わるたびに思っていて何だか切なくなりました。
でも、佐藤さんがやっぱり一番重傷で。果穂子にずっと縛られていたんですね。美里が佐藤さんを救ったんだと思います。
最後は何だか人らしくなった気がして良い終わり方でした。
ただ、あの女の子はどうなったんだろうと思わなくもないけど・・・

〈講談社 2012.7〉H24.7.30読了

あやかし草子 みやこのおはなし 千早茜5

あやかし草子 みやこのおはなしあやかし草子 みやこのおはなし
著者:千早 茜
徳間書店(2011-08-26)
販売元:Amazon.co.jp
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「鬼の笛」妾の子として生まれ、母親にも捨てられた男は父の才能を継ぎ、笛を吹く技術だけは長けていた。同じように笛を吹いていると鬼がやってくる。鬼に気に入られ、やがて鬼は嫁を取れと一人の女性を連れてくる。しかしその女性は人間として不完全で100日待てと言う。
「和尚ムジナ」古ムジナは和尚に化けて寺に住み着くようになる。村人からも好かれるようになり、人望も厚くなってきた。しかし、涙を流すと言う感情だけは理解できない。あるとき、一人の女の子が寺へやってきて、何かと和尚の世話を焼くようになる。
「天つ姫」不審者に襲われそうになってから心に傷を負った姫。外を徘徊していると天狗と出会い、一緒に時間を過ごすようになる。しかし、天狗は自分と同じように年を取らないと気づいた姫は天狗と別れ、帝の后になった。
「真向きの龍」旱魃に悩む村から龍を彫ってほしいと頼まれた男はその村へ向かう。実際に見たものしか彫れないという男は案内人に連れられ、龍がいると言う淵へ向かう。すると、そこで蛇の女性に出会う。
「青竹に庵る」吉弥は親に捨てられ、人を信じることがない少年に育った。強盗を抜けようとした吉弥は命の危険にさらされる。そこで金色の観音様に助けられ、庵にかくまわれるが、助けてくれたのは母親だった。
「機尋」染屋の柳に育てられた紅は柳とともに織屋の留造の元へ行くことになった。紅が織物を見ているといつの間にか違う場所へいて・・・

千早さんの新刊。また千早さんが書かれる幻想的な物語を堪能しました。
御伽噺という言葉が似合う作品集でした。どれもちょっと昔の日本のように感じます。
「鬼の笛」鬼と出会ったことで良い方向へ向かうのかと思ったら、そういうことではなかったんですね。孤独だった青年と人形のような女性の末路は何となく想像が出来ていたので最後は悲しかったです。青年は自分で選んだわけだけど、それで幸せだと思えるのかな。青年は生まれた時から自分が選んだわけではないのに悲しい境遇で、幸せになってほしかったなと思う。
「和尚ムジナ」古ムジナが和尚になってどのような展開になって行くのだろうと思っていたのですが、古ムジナと女の子のぎこちない関係が可愛らしく感じました。振るムジナを本当に理解しようとしていた女の子。2人の最後はとても悲しかったです。
「天つ姫」始めこの姫はワガママな姫なのかと思っていたのだけど、心に闇を秘めていたんですね。天狗と関わっている間はとても幸せそうに見えました。だから、天狗のために帝の后になることを選んだわけだけど、もっと素直になってよかったと思う。この作品も最後が切なかった。でも、2人はこれから一緒にいられるのだから、離れ離れになるよりはいいの・・・かなぁ?
「間向きの龍」蛇の女性が擦り寄ってくるところは読んでいて怖かったのだけど、でも動じない男も怖かった。男は人の道を選んでよかった。この男の末路は人として人並みの幸せを掴んだんじゃないかなと勝手に思う。
「青竹に庵る」吉弥の境遇があまりにも可哀相だった。だから、今までは不幸だったけどちゃんと人を信じられるようになって人として幸せになってほしいなと思ってた。だから、良い最後だったのかな。最後の吉弥の台詞が感動。お母さんじゃないのに。
「機尋」この作品が1番ハッピーエンドっていえたかな。紅が織物にかける想いが切なくて可愛らしくてジーンとしちゃいました。紅と柳が始め親子のようだと思ったんだけど、だんだん恋人同士のように見えてきた^^;紅がちゃんと柳の元へ帰ると選択してくれてよかった。

<徳間書店 2011.8>H23.9.28読了

からまる 千早茜5

からまるからまる
著者:千早 茜
角川書店(角川グループパブリッシング)(2011-02-26)
販売元:Amazon.co.jp
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オススメ!
第一話「まいまい」
武生は地方公務員で役所で働いている。休日にする事と言えば寝る事ばかり。自分の部屋にある天窓が好きで、そこを寝床にしていた。最近家に来る女性がいる。名前も知らないその女性が側にいることが嫌ではなかった。
第二話「ゆらゆらと」
また男に振られた。田村は失恋すると必ず会う友達がいる。華奈子と言う名のその子は大学院に通っている。彼女だけは自分の話をずっと聞いていてくれる。今日もメールをしたら、会ってくれると返信が来た。
第三話「からまる」
私は休日は釣りに出かける。妻は私よりも忙しいので誘う事はない。また、2人の間に起きたあることが、そうさせていないのかもしれない。今日はどこかで見かけたことのある女子高生が向かいに座っていた。堤防に着くと、そこにも彼女はいた。
第四話「あししげく」
恵は珍しく台所に立ってケーキを作っていた。息子の蒼真のためだ。作っている時、自分が19歳だった時を思い出していた。水商売でバイトをしていた恵は自分の事を「小むかで」と呼ぶ篠田という男が大嫌いだった。
第五話「ほしつぶ」
自分は金魚を殺した。殺した事で先生や親に見当違いな質問や説教を受けた。自分が求めているものとは違っていた。自分がそうしたのは、幼馴染であり同じクラスの斉藤が原因だった。
第六話「うみのはな」
華奈子は男が嫌いで女の子が好きだと周りに言っている。友人の田村はそれを本気で捉えているようだった。華奈子が男を嫌いなのは、ただ1人の男がたまらなく憎いからだった。だから、実家にもあまり帰らずにいる。
第七話「ひかりを」
葛月は外来の終わった診察室に1人の老人が座っているのを見かける。その老人は大原と言う名で、病院内では有名人だった。

好きだ。この本、凄く好きだ。
千早さんの作品は、異世界のものでも童話物でも現代のものでも、何だか白濁とした水の中にいるような気がします。
多分、文章が好きなのだと思う。すっと入ってきて読みやすい。
物語も勿論良くて、この作品に出てくる人たちに好感が持てた。
どの人も感情の何かが抜けているようなそんな印象。
でも、生きている人はみんなそんなもんだろうなと読んでいて思ったり。
「からまる」っていうタイトルも好き。人の関係や感情が読んでいても絡み付いてくるみたいだった。
私、武生が割と好きでした。女の子を連れ込む癖以外だけど。
1人で何でもできるわけでもなく取り立てて意気込んでいるわけでもなく、めんどくさいって感じで生きてて。でも、多分内に秘めているものは割と熱いのかなと思う。
人間関係においてめんどくさくなくていいのかなと。
田村は実際に友達としていたらめんどくさいけど、本を読んでいる限りはグチを聴いて、抱きしめたいなと思った。
恵は始めは好きじゃなかったけど、昔の事を知ってちゃんと今は蒼真に愛情を注いでいる事もわかったし、お母さんをしてるんだなと思ったし。
子どもが求めている答えって、親は多分分からないと思う。でも、しょうがないよ。ただ、考えて言う事は違っても、ちゃんと愛情はあるんだってことをいつの日かわかればいいのかなと思ったりして。
強がりだけど素直じゃなくて心は実は弱い人ばかり。
多分、私もそうだから。だから好感が持てたし好きだって思えたのかも。
人の関わりってどこで繋がっているか分からないなぁとも思った。
大原さんはとても素敵な方でした。
私も生きる事の大切さを教えてもらえたように思う。

〈角川書店 2011.2〉H23.3.25読了

おとぎのかけら 新釈西洋童話集 千早茜4

おとぎのかけら 新釈西洋童話集おとぎのかけら 新釈西洋童話集
著者:千早 茜
販売元:集英社
発売日:2010-08-26
クチコミを見る

「迷子のきまり」母親から虐待を受けている幼い兄妹2人は、母親と3人で出かけたときに花火大会に行くためにわざと母親とはぐれた。母親に多く睡眠薬を飲ませたから、家に帰ったらきっと眠っているよと兄が妹に言っていると、若い女性に話しかけられる。(ヘンゼルとグレーテル)
「鵺の森」かつて同じように転校生でいじめられていた翔也という同級生がいた。僕は彼に再会し、仕事場に誘われる。(みにくいアヒルの子)
「カドミウム・レッド」私の叔父は画家で、妻である美智子先生も画家。私は画家であることを諦め、叔父の助手をしている。美智子は美に固執しており、私はその美に興味を抱かなかった。(白雪姫)
「金の指輪」フリーターの青年は、実は莫大な財産があり、昔知り合った女性を探していた。手がかりは、彼女が落としたらしい金の指輪だけ。(シンデレラ)
「凍りついた眼」私が老婆に連れられて着いた場所には、1人の少女がいた。彼女に何をする事もなかったが、老婆に勧められた覗き穴により、また訪れるようになる。(マッチ売りの少女)
「白梅虫」同棲している恋人とマンネリ化しており結婚に踏み出せない僕。彼女が持ってきた盆栽の紅梅がきっかけで、不思議な魅力を持つ女性に出会う。(ハーメルンの笛吹き男)
「アマリリス」不倫に悩み仕事を辞め、実家に戻った真由。実家には認知症になった祖母がいた。その祖母を探していたのか、1人の男性が訪れるようになる。(いばら姫)

千早さんは「魚神」以来でした。というか2作目?
童話を現代風に変えた官能的な作品でした。
千早さんはこの作品を書かれたときに、童話の元の話は編集者の方に任せていたらしい。理由は童話が嫌いだったから。編集者の方は見事に嫌いな作品をよく用意したものだと褒めてました^^;
どの作品も白濁とした液体にずぶずぶ入ってくみたいな・・・なんでしょう。
どろりとした感覚です。
「魚神」もそんな雰囲気でしたが。
この童話の数々をぬるいとおっしゃっていた著者さんなので、ストーリーはどれも容赦がないと思います。読み終えた後に背筋が凍るような、何かしこりを残すような作品ばかりでした。
でも、それがイヤではなくて、よく描かれているなぁと私は思いました。
私は、なにも疑いもなく童話を読んでいた子どもだったので^^;
ハーメルンの笛吹き男だけ、あまり話は知りませんでしたが。
好きだったのは「金の指輪」と「アマリリス」ですね。
この2作品だけ前向きだったと言うか^^;
ですが、どの作品も良かったです。
千早さんの作品はこれからももっと読んでいきたいです。

〈集英社 2010.8〉H22.9.6読了

魚神 千早茜5

魚神
魚神
オススメ!
生ぬるい水に囲まれた孤島。ここにはかつて、政府によって造られた一大遊廓があった。赤ん坊の頃に捨てられていた、白亜とスケキヨ。
2人は血がつながっているのかは分からない。
しかし2人はずっと寄り添いあい、生きてきた。
しかし、白亜は廓に売られ、スケキヨは薬売りとして暗躍している。
美貌の姉弟のたましいは、惹きあい、そして避けあう。
ふたりが再び寄り添うとき、島にも変化が…。第21回小説すばる新人賞受賞作。

いろんな方のブログでこの作品を拝見し、読んでみたいと思いました。
この作品が処女作という千早さん。素晴らしいです!
スケキヨと白亜の醸し出すぬらぬらと澱んだ水の中にいるような感覚を、読んでいて感じました。
どっぷりとこの世界観を楽しみました。
伝説の遊女と同じ名を持つ白亜。その名前に恥じない美しい女性になり、遊郭一の遊女となる。でも、心の中は空っぽ。心の奥底には、幼き頃に共に過ごしたスケキヨの事しかない。
スケキヨと白亜の深い深い絆を感じました。
だけど、大人になっても2人は捨てられた時のように子どものままの部分を持っていて。互いに相手の事しか考えていないのに、会うことを拒む。
ちょっとじれったさも感じましたが、最初から最後まで、この作品を堪能しました。
白亜は周りの男達にも恵まれているんですよね。きっと、一人では生きていけない。
スケキヨももちろんですが、剃刀男も魅力的でした。男らしい〜。
白亜にとってのスケキヨとの暮らしは、伝説の白亜の住み着いた雨極と同じなんですよね。きっと。

〈集英社 2009.1〉H21.4.28読了
自己紹介
苗坊と申します。
読書とV6を愛してやまない道産子です。47都道府県を旅行して制覇するのが人生の夢。過去記事にもコメント大歓迎です。よろしくお願いいたします。
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