大阪へ来た人、大阪を出た人――かつていた場所と今いる場所が「私」を通して交差する。街と人の呼吸を活写した初共著エッセイ。
岸さんは大阪に憧れて上阪されてずっと住まわれている方、柴崎さんは大阪生まれで今は東京に住んでいる方、それぞれの大阪で過ごしたあれこれを書かれています。
柴崎さんは大阪出身だと言って開口一番に私は大阪が嫌いって言われたことがあるんですね。しかも一度や二度じゃなく。それを相手に普通に言える人の心情が私は分かりませんが^^;
大阪は何度も行ったことがありますが、北海道から行くとただただ都会だなという印象を受けます。関西弁が聞き慣れていないので異国のような気持にもなりますが、嫌いと思ったことはありません。
お2人の過去から辿り現在に至るまでの大阪を読んで、歴史を感じました。特に私も記憶に残る、阪神淡路大震災のくだりは読んでいて胸が苦しくなりました。今でも覚えています。朝目が覚めてテレビを見たら建物が崩れて至る所で火災が発生していて、この映像は現代の日本なのだろうかと思いました。
柴崎さんの作品に初めて触れたのは大学生の時だったと思います。大学の図書館に所蔵されていた「青空感傷ツアー」というタイトルに惹かれて読んだ記憶が。その後に読んだのが「きょうのできごと」だったかな。世代的にもちょうど良い時に読むことが出来て、だからハマったのかもしれません。だからこそ、柴崎さんが小説家を目指し、実際に小説家になられた経緯も知ることが出来て嬉しかったです。
味わい深い作品でした。
<河出書房新社 2024.6.7>2025.4.5読了