横濱で知らぬ者なき富豪一族、檜垣澤家。当主の妾だった母を亡くし、高木かな子はこの家に引き取られる。商売の舵取りをする大奥様。互いに美を競い合う三姉妹。檜垣澤は女系が治めていた。そしてある夜、婿養子が不審な死を遂げる。政略結婚、軍との交渉、昏い秘密。陰謀渦巻く館でその才を開花させたかな子が辿り着いた真実とは──。小説の醍醐味、その全てが注ぎこまれた、傑作長篇ミステリ。
話題になっていたこちらの作品を読みました。まず分厚さに慄き、読み進められるだろうかと思いましたが、後半は一気読みでした。
華麗なる一族に加わる形となったかな子。そしてこのかな子が聡明で野心家で、一筋縄ではいかない檜垣澤家と対等に渡り合う姿に清々しさすら感じました。
妾の子だからひどい目に遭わされるんだろうと思い、読んでいるこっちがドキドキしましたけど、使用人からの嫌がらせに関しては全く動じていないかな子が強すぎましたね。引き取られたときはわずか7歳。凄すぎる…。一癖も二癖もありそうな檜垣澤家の女性陣は何を考えているのだろうと思ったけど、確かにスヱは恐ろしいところがある気がしましたし、花もどこまで何をもくろんでいるのかと思いましたけど、それでも根底にはかな子は血のつながった家族であるという認識があったように感じました。それはかな子が成長して聡明さが発揮されたら尚更。珠代や雪江なんて可愛い物でしたね(笑)1番怖かったのは初だったのかもしれない。
長い物語の中にたくさんの伏線があり、ページを見返したくなりましたがどこに該当する場所があるのか分からなくて残念でした(笑)明治から大正にかけて起きたことも書かれていて時代についても分かりました。特にスペイン風邪は現代のコロナ禍を彷彿とさせましたし、女性関係に関しては松井須磨子や柳原白蓮の名前が出てきてこの時代かぁ…と思いながら読みました。
終盤は突然の展開に驚き、でもこれは史実なのだなぁと感じて切なくなり、ただ一縷の光と巡り会えたラストシーンがとても良かったです。面白かった!
<新潮社 2024.7>2025.4.2読了