苗坊の徒然日記

読書とV6をこよなく愛する苗坊が気ままに書いてます。 お気軽にどうぞ。

女性作家(な・は行)

檜垣澤家の炎上 永嶋恵美5

檜垣澤家の炎上(新潮文庫)
永嶋恵美
新潮社
2024-07-29


横濱で知らぬ者なき富豪一族、檜垣澤家。当主の妾だった母を亡くし、高木かな子はこの家に引き取られる。商売の舵取りをする大奥様。互いに美を競い合う三姉妹。檜垣澤は女系が治めていた。そしてある夜、婿養子が不審な死を遂げる。政略結婚、軍との交渉、昏い秘密。陰謀渦巻く館でその才を開花させたかな子が辿り着いた真実とは──。小説の醍醐味、その全てが注ぎこまれた、傑作長篇ミステリ。

話題になっていたこちらの作品を読みました。まず分厚さに慄き、読み進められるだろうかと思いましたが、後半は一気読みでした。
華麗なる一族に加わる形となったかな子。そしてこのかな子が聡明で野心家で、一筋縄ではいかない檜垣澤家と対等に渡り合う姿に清々しさすら感じました。
妾の子だからひどい目に遭わされるんだろうと思い、読んでいるこっちがドキドキしましたけど、使用人からの嫌がらせに関しては全く動じていないかな子が強すぎましたね。引き取られたときはわずか7歳。凄すぎる…。一癖も二癖もありそうな檜垣澤家の女性陣は何を考えているのだろうと思ったけど、確かにスヱは恐ろしいところがある気がしましたし、花もどこまで何をもくろんでいるのかと思いましたけど、それでも根底にはかな子は血のつながった家族であるという認識があったように感じました。それはかな子が成長して聡明さが発揮されたら尚更。珠代や雪江なんて可愛い物でしたね(笑)1番怖かったのは初だったのかもしれない。
長い物語の中にたくさんの伏線があり、ページを見返したくなりましたがどこに該当する場所があるのか分からなくて残念でした(笑)明治から大正にかけて起きたことも書かれていて時代についても分かりました。特にスペイン風邪は現代のコロナ禍を彷彿とさせましたし、女性関係に関しては松井須磨子や柳原白蓮の名前が出てきてこの時代かぁ…と思いながら読みました。
終盤は突然の展開に驚き、でもこれは史実なのだなぁと感じて切なくなり、ただ一縷の光と巡り会えたラストシーンがとても良かったです。面白かった!

<新潮社 2024.7>2025.4.2読了

ふしぎな図書館とクリスマス大決戦 ストーリーマスターズ6 廣嶋玲子4



物語から盗まれたものを探し出すのは、読んでいる「きみ」!
想像力がどんどん刺激されちゃうと大評判シリーズ、第6巻。舞台はクリスマス。
みんなが大好きなクリスマスに、魔王からとんでもないクリスマスプレゼント!
物語を守るために、魔王とあめのが住む「暴食城」にのりこんだストーリーマスターズたち。
でもその城では、魔王グライモンがとんでもないプレゼントを用意していて……!
危険な決戦に、こっそりしのびこんだ主人公たちは、クリスマスの名作たちにつかまって……!?
ディケンズ『クリスマスキャロル』、アンデルセン『もみの木』など、クリスマスの名作がいっぱい登場!

なんだかおかしい…と思っていたら、私は第5弾を読んでいませんでした^^;
今までの主人公たちが集まり、捕まっている人間の子を助けに立ち上がります。
バラバラにされ、主人公たちは一人で戦うことに。
私はクリスマスキャロルももみの木も読んだことがありません…。ちゃんと解説されていますが、ちょっと悔しかったです(笑)
まだまだ続きそうですね。第5弾を読み返してからまた読み進めようと思います^^;

<講談社 2024.11>2025.2.1読了

歌人探偵定家 羽生飛鳥4

歌人探偵定家: 百人一首推理抄
羽生 飛鳥
東京創元社
2024-06-12


一一八六年。平家一門の生き残りである、亡き平頼盛の長男、保盛はある日、都の松木立で女のバラバラ死体が発見された現場に遭遇する。生首には紫式部の和歌「めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに 雲隠れにし 夜半(よは)の月かな」が書かれた札が針で留められ、野次馬達はその惨状から鬼の仕業だと恐れていた。そこに現れた、保盛の友人で和歌を愛してやまない青年歌人・藤原定家は「屍に添えて和歌を汚す者は許せん」と憤慨。死体を検分する能力のある保盛を巻きこみ、事件解決に乗り出す! 後に『小倉百人一首』に選出された和歌の絡む五つの謎を、異色のバディが解く連作ミステリ。

平頼盛の新シリーズか!?と思ったら、頼盛が亡くなり、息子の保盛が主人公のお話になっていました。そして保盛が探偵役になるのかと思いきやお友達の定家が探偵という前作と繋がっているような繋がっていないような感じがとてもいいです(笑)
平家一門の生き残りの保盛と病弱だけど和歌のことになると我を忘れる定家(笑)のコンビはなかなか良かったです。和歌が絡んだ事件についてもなるほどと思うことが多かったですし。あとがきの和歌の解説により更に物語に深みが出た気がしてそれも良かったです^^

<東京創元社 2024.6>2024.9.27読了

タスキ彼方 額賀澪5

タスキ彼方
額賀澪
小学館
2023-12-08


ボストンマラソンの会場で、とある選手から古びたボロボロの日記を受け取った新米駅伝監督・成竹と学生ナンバーワンランナー神原。それは、戦時下に箱根駅伝開催に尽力したとある大学生の日記だった。その日記から過去を覗いた二人が思い知ったのは、美談でも爽やかな青春でもない、戦中戦後の彼らの壮絶な軌跡。そこには「どうしても、箱根駅伝を走ってから死にたい」という切実で一途な学生達の想いが溢れていた。
現代の「当たり前」は昔の人々が死ぬ気で勝ちとってきた想いの積み重ねと知った彼らは・・・・・・・。そして、戦時下の駅伝を調べ、追う彼らに起きた、信じられないような奇跡とは。
先人達の熱い想いが襷として繋がり、、2024年、第100回箱根駅伝は開催される。
熱涙間違いなしの青春スポーツ小説、最高傑作です。

出来れば100回大会開催前に読みたかったのですが、もうそんなことはどうでもいいです←
終盤はグスグスを鼻をすすりながら読んでいました。まっすぐな青春小説を読めて良かったです。
先日テレビで沢村投手の生涯について紹介した番組を見ました。野球がしたくても出来なくて、戦地に行ったがために野球選手としての能力が奪われて、そして国のために亡くなった姿を改めて知って、観ているこちらも辛くて哀しかったことを思い出しました。それと同様に、戦争が起きたために走りたくても走れなかった人、走った後に戦地に赴いた人、数えきれないほどのたくさんの人がいたのだろうと思いました。
大学名は架空のものになっていましたが史実に沿って描かれているので面白かったです。著者さんが日大の監督を主役にしたから100回大会頑張ってくれって言っていましたけど(語弊がありすぎる)特に往路は爪痕を残した走りをしていたので良かったです^m^
たまたまボストンマラソンに赴いていた佐竹監督が箱根駅伝に尽力した大学生の日記を受け取って低迷している大学を押し上げようみたいな展開なのかと←思いきや、まさかまさかの展開に驚きました。監督が「おいおいおい」って言った時は私も「えぇ…!」って言っちゃいましたし、監督が「えー!!!」って言った時は私も「えー!!!」と叫んじゃいました(笑)そのくらい展開が面白かった。類家進の言った言葉はとても重みのある言葉でした。国のために走るのでも死ぬために走るのでもなくただ純粋にスポーツを楽しんで欲しいという思いが詰め込まれていると思いました。
いけ好かない神原も(笑)、監督について古い日記の軌跡をたどったことで、箱根駅伝を見る目が変わって良かったです。個人的に田淵選手(弟)が好きでした。戦時中に走った選手の中に田淵選手がいたの、見逃してませんよ。繋がりは分かりませんけど^^

<小学館 2023.12>2024.2.4読了

以下にネタバレを。続きを読む

ふしぎな図書館とてごわい神話 ストーリーマスターズ4 廣嶋玲子4



あなたの知らない世界のどこかで、この世界のすべての物語を守っているのは、ふしぎな世界の図書館司書=ストーリーマスターたち。
魔王グライモンが、世界の図書館から、どんどん物語の大事なパーツを盗んでる!
物語の世界を救うために、物語から盗まれた「キーパーツ」を探しだそう!
本好きならだれでもあこがれる、名作の世界に飛び込めると大評判シリーズの第4巻。
読むだけで、なんだか本が好きになる!
ある日、学校に行けなくなったギフテッドの守。学校に行きたいのに、朝、目が覚めると、どうしても玄関を出られない。だれもいない夜明け前に散歩するだけが精一杯の守。夜の公園で、奇妙な移動図書館バスに誘い込まれ、ある物語の改良(?)を頼まれるが……。

シリーズ第4弾。今回は新しいパターンでしたね。学校でいじめに遭い不登校になった守。その想いに付け込むように現れたあめの。良かれと思ってやってしまった神話の書き換え。悪いことをしてしまったと思っているのに頑なにそれを認めず更にはこちらの方が良いに決まっていると更に書き換えを行うところがとても傲慢で、若干イライラして読んでいました^^;でもその傲慢さが、自分をいじめている先生と同じことをしているのだと気づいたところが良かったです。神話の世界は元に戻ったし、自分が学校でいじめられていることを両親に伝えられたことも良かった…と思ったら不気味な手に捕まれてしまった守。このような展開は初めてなので、どんな展開になってしまうのか気になります。

<講談社 2023.9>2024.1.30読了

ふしぎな図書館とやっかいな相棒 ストーリーマスターズ3 廣嶋玲子4



何百年も生き残る世界のみんなの宝物。それは『世界の名作物語』。その物語をひとりじめしたがる魔物があらわれたら、あなたならどう守る?
あなたの知らない世界のどこかで、この世界のすべての物語を守っているのは、ふしぎな世界の図書館司書=ストーリーマスターたち。
魔王グライモンが、世界の図書館から、どんどん物語の大事なパーツを盗んでる!
物語の世界を救うために、物語から盗まれた「キーパーツ」を探しだそう!
本好きならだれでもあこがれる、名作の世界に飛び込めると大評判シリーズの第3巻。
ある日クラスに、なんだか秘密がありそうな転校生がやってきた!
「みんなとなかよし」「明るく」「元気いっぱい」がとりえの人気者・ひなたは、自分をこわがる転校生が気になってしまい……。

シリーズ第3弾。今回の主人公は元気いっぱいの女の子。まあ子どもって自分の考えが正しいって思いこんでいるだろうから仕方ないかなという気もします。自分が楽しいと思っていることが相手も楽しいと思うかは分からないってことが分かっただけ良かったのではないでしょうか^m^
今回は主人公のひなたではなくてストーリーマスターのアンデルセンの方が厄介でしたね(笑)面倒くさい男だった〜。そういえばアンデルセンの童話は暗くてハッピーエンドではない物語ばかりですよね(言い方)確かにハッピーエンドだったらこんなに後世まで残っていなかったのかもしれないけど。何だか今までにないピンチに陥ったけど、うまく脱出出来て良かったです。ひなたは紫織とも良い距離感が分かったようで良かった。

<講談社 2022.12>2024.1.30読了

ふしぎな図書館とアラビアンナイト ストーリーマスターズ2 廣嶋玲子4



何百年も生き残る世界のみんなの宝物。それは『世界の名作物語』。その物語をひとりじめしたがる魔物があらわれたら、あなたならどう守る?
あなたの知らない世界のどこかで、この世界のすべての物語を守っているのは、ふしぎな世界の図書館司書=ストーリーマスターたち。
魔王グライモンが、世界の図書館から、どんどん物語の大事なパーツを盗んでる!
物語の世界を救うために、物語から盗まれた「キーパーツ」を探しだそう!
本好きならだれでもあこがれる、名作の世界に飛び込める新シリーズ第2巻。
今度の舞台は『千夜一夜物語』。
大人っぽい話を読んでいるのが自慢の葵は、ある日、しゃべる猫に『千夜一夜物語』の修復を頼まれて……。

前回と主人公が変わります。宗介のクラスメートで読書家の葵が今回の主人公。
読書家だから私は何でも知っているという驕り昂りがひどすぎる女の子が主人公で(笑)本当に自分勝手でわがままで腹が立ちながら読んでましたね←
千夜一夜物語は私はちゃんと読んだことがなかったので、改めてフランに教えてもらいながら読んでいるような感じでした^^
葵は本当自分勝手で自分優位ではないと気が済まない子で同世代っぽいフランはどうしてこんなに寛容でいられるんだろうと思ったら、中身が大人だったからですね(笑)
リチャード・フランシス・バートンという方は存じ上げませんでしたが冒険家だったんですね。右頬に大きな傷も実際にあったみたいで勉強になりました。
今回も何とかなって良かったけど、次回の主人公はもうちょっとひねくれていなくて自信家じゃない子が良いなぁ←

<講談社 2022.7>2024.1.30読了

ふしぎな図書館と魔王グライモン ストーリーマスターズ1 廣嶋玲子5



学校の図書館でひさしぶりに読んだ『世界の名作』。でもこんなにつまらなかったっけ? 何百年も生き残った、最高にワクワクする名作たちが、だれかの手によって、めちゃくちゃつまらない話になっちゃった!
こんなのありえない! 物語の世界を救うには、物語から盗まれた「大事なキーパーツ」を探しださなきゃ!
本好きならだれでもあこがれる、名作の世界に飛び込んじゃおう!

魔王グライモンから物語を守るためにストーリーマスターのヴィルヘルム・グリムから物語の大事なキーパーツを探すよう頼まれる宗介。グリム童話の中の「ヘンゼルとグレーテル」「ラプンツェル」など変化してしまった物語を元に戻すため奮闘します。知っているお話ばかりだったけど「石のスープ」は知らなかったなぁ。グリム童話ではないようだけど。変になってしまった物語を直すというストーリーが、昔読んだ「くるみと七人のこびとたち」を思い出しました。懐かしいな。
4巻まで出ているようなので次巻も読んでみようと思います。楽しみ。

<講談社 2022.3>2024.1.20読了

ヨルノヒカリ 畑野智美5

ヨルノヒカリ (単行本)
畑野 智美
中央公論新社
2023-09-07


いとや手芸用品店を営む木綿子は、35歳になった今も恋人がいたことがない。台風の日に従業員募集の張り紙を見て、住み込みで働くことになった28歳の光は、母親が家を出て以来“普通の生活”をしたことがない。そんな男女2人がひとつ屋根の下で暮らし始めたから、周囲の人たちは当然付き合っていると思うが……。不器用な大人たちの“ままならなさ”を救う、ちいさな勇気と希望の物語。

母子家庭で、母親から育児放棄されて育ったひかりと、恋という感情を理解できないと苦しむ木綿子。
2人のこの距離感で育まれる愛情がとても愛おしかったです。2人の関係を言うのは難しい。でも、いろんな愛の形があっていいんですよね。お互いがお互いを思いやり、素直に喜んでいる2人を見ていると、こちらも幸せな気持ちになりました。
2人を見守る成瀬家の人々、ひかりの隣に住んでいたおじいちゃん、パートの聡子さん、常連客の司さん。本当にみんなが愛おしいです。
幸せな気持ちになって読み終えることが出来ました。温かい物語でした。

<中央公論新社 2023.9>2023.11.12読了

くもをさがす 西加奈子5

くもをさがす
西 加奈子
河出書房新社
2023-04-18


『くもをさがす』は、2021年コロナ禍の最中、滞在先のカナダで浸潤性乳管がんを宣告された著者が、乳がん発覚から治療を終えるまでの約8 ヶ月間を克明に描いたノンフィクション作品。
カナダでの闘病中に抱いた病、治療への恐怖と絶望、家族や友人たちへの溢れる思いと、時折訪れる幸福と歓喜の瞬間――。
切なく、時に可笑しい、「あなた」に向けて綴られた、誰もが心を揺さぶられる傑作です。

先日、世界一受けたい授業の中で西さんが自分の闘病について語られていて、気になったのでこちらの本を手に取りました。
あなたは癌ですと申告されたら、自分はどう思うだろうかと何となく自分に置き換えて考えながら読んでいました。自分でも十分可能性があるし、やっぱり最初は「どうして私が」って思うのかな…と思ったり。
西さんはそれにプラスして海外で発覚して更にコロナ禍という状況で本当に大変だったと思います。大変という一言では片づけられないくらいに色んなことがあったのだと本を読んでいると分かります。改めて日本の医療って丁寧で親切なんだなと思いますね…。それでも西さんと関わった医療従事者の方々はとても楽観的で明るくて患者さんの立場から言ったらとても心強いと思いました。それってどうなの?と思うところもなくはなかったけど(笑)
そして周りの協力が素晴らしくて、それは西さんや旦那さんの人徳なんだろうなと思います。
自分の身体のボスは自分。なんだかハッとさせられました。自分のことを決めるのは自分。
それはどんなことでも言えますよね。自分がどうしたいか、自分はどう生きたいか。当たり前のことだけど、それを改めて教えていただいた気がします。
定期的に人間ドックもがん検診も受けているけど、それに加えて自分の身体を労わって愛してあげることが出来れば良いなと思いました。

<河出書房新社 2023.4>2023.11.2読了

からくさ図書館来客簿〜冥官・小野篁と優しい道なしたち〜 仲町六絵4



京都に佇む小さな私立図書館。そこには、不思議な力を秘めた館長さんがいた。
京都にある「からくさ図書館」には、アットホームな雰囲気に惹かれ、奇妙な“道なし”を伴ったお客様が訪れる。館長・小野篁は、道に迷った彼らを救う“冥官”で――悠久の古都で紡ぐライブラリ・ファンタジー。

タイトルに図書館が入っていたので気になっていました。どういう作品かは分かっていなかったのですがなるほど、そういうことですか。だからファンタジー。
図書館が舞台のファンタジー小説のような感じでしょうか。要は篁が本が好きだからという理由で箱が図書館になったんですね^m^でもとても幻想的そうで近くにあったら行ってみたい気もします。
舞台が京都ということで私は平安神宮の近くに建つ京都府立図書館が思い浮かびました。
小野篁、名前は聞いたことがありますが冥府で閻魔大王のもとで裁判の補佐をしていたなんて伝説があるとは知りませんでした。井戸を使って行き来とか設定(設定)まで一緒。歴史は本当にいくら学んでも知らなかったことがたくさんあるなぁ。小野妹子の子孫で小野小町の先祖と言われているんですね。へー!←
ファンタジーではありましたけど平安時代の諸々はきっと史実のままなんですよね。勉強になる部分がたくさんありました。次回はなんと安倍晴明が登場する?楽しみです。

<KADOKAWA 2013.5>2023.10.1読了

百年の子 古内一絵5

百年の子
古内 一絵
小学館
2023-08-04


人類の歴史は百万年。だが、子どもと女性の人権の歴史は、まだ百年に満たない。
舞台は、令和と昭和の、とある出版社。コロナ蔓延の社会で、世の中も閉塞感と暗いムードの中、意に沿わない異動でやる気をなくしている明日花(28歳)。そんな折、自分の会社文林館が出版する児童向けの学年誌100年の歴史を調べるうちに、今は認知症になっている祖母が、戦中、学年誌の編集に関わっていたことを知る。
世界に例を見ない学年別学年誌百年の歴史は、子ども文化史を映す鏡でもあった。
なぜ祖母は、これまでこのことを自分に話してくれなかったのか。その秘密を紐解くうちに、明日花は、子どもの人権、文化、心と真剣に対峙し格闘する、先人たちの姿を発見してゆくことになる。
子どもの人権を真剣に考える大人たちの軌跡を縦糸に、母親と子どもの絆を横糸に、物語は様々な思いを織り込んで、この先の未来への切なる願いを映し出す。
戦争、抗争、虐待……。繰り返される悪しき循環に風穴をあけるため、今、私たちになにができるのか。

昭和と令和の時代を行き来して、その時代を必死に生きてきた人たちのドラマ、壮大で感動しました。昭和の時代はギラギラしてて、熱いなと思いました。
語り手が令和は明日花で昭和は祖母のスエで続いて行くのかと思ったら昭和のターンは途中で変わるのでおや?と思ったのですが、読んでいくうちに繋がりが分かっていって胸が熱くなりました。人と人とのつながりの深さに感動しました。こうして歴史は語り継がれていくんですね。
私は小学〇年生の雑誌は今まで読んだことがなかったのですが(すみません)モデルは小学館なんですよね?名前が多少変わっていますけど、有名な作家さんや漫画家さんもたくさん登場して、出版の歴史も分かって面白かったです。

<小学館 2023.8>2023.9.9読了

赤道 星降る夜 古内一絵5

赤道 星降る夜 (小学館文庫)
古内一絵
小学館
2018-08-17


ブラック企業に追い詰められ多額の借金を背負った達希(27歳)は発作的に飛び降り自殺を図り、15年前に死んだ祖父の霊に助けられる。祖父は生前心残りの「人探し」を一緒にすることを条件に隠し財産で借金の肩代わりを提案。
そこから祖父の霊とのボルネオへの旅が始まる。そこで出会ったのは、個性豊かな人々と悲惨な戦争の記憶。将校でも戦闘機乗りでもない大多数を占めた一般兵士の彼らの戦死とは、飢えや伝染病で命を落とす悲惨なものだった。
やがて一行は赤道の街に到着。そこには、この旅に祖父が託した本当の目的が隠されていた。今まで決して口にすることのなかった、「知られざる謀略事件」とは・・・・。そして、そこに隠された,祖父の過去にまつわる真実とは…。

達希の境遇が今ではあり得ないくらいのブラック企業で読み始めが辛すぎたのですが15年前に死んだ祖父の霊に助けられるというファンタジーが出てきて驚きました(笑)
そして借金の肩代わりの代わりにボルネオに行けと命ぜられる。そこで知る戦争の爪痕と祖父の壮絶な過去。
戦争に関しては色々な番組で見てきましたが本当にたくさんの地で壮絶な戦争が繰り広げられていたのだと思いました。ボルネオでの出来事はこの本を読むまで知りませんでした。もっと知っていかないとだめですね。
亡くなって15年経っているけど、祖父の愛情を知ることが出来て良かったです。そして達希も雪音も前を向いて生きる気持ちを持つことが出来て本当に良かった。この作品を読むことが出来て良かったです。

<小学館 2018.8>2023.5.17読了

揺籃の都 平家物語推理抄 羽生飛鳥5

揺籃の都 (ミステリ・フロンティア 113)
羽生 飛鳥
東京創元社
2022-06-30


治承四年(一一八〇年)。平清盛は、高倉上皇や平家一門の反対を押し切って、京から福原への遷都を強行する。清盛の息子たち、宗盛・知盛・重衡は父親に富士川の戦いでの大敗を報告し、都を京へ戻すよう説得しようと清盛邸を訪れるが、その夜、邸で怪事件が続発する。清盛の寝所から平家を守護する刀が消え、「化鳥を目撃した」という物(もの)の怪(け)騒ぎが起き、翌日には平家にとって不吉な夢を見たと喧伝していた青侍が、ばらばらに切断された屍で発見されたのだ。邸に泊まっていた清盛の異母弟・平頼盛は、甥たちから源頼朝との内通を疑われながらも、事件解決に乗り出すが……。

まさか第2弾が出るとは思いませんでした…。平頼盛が主人公の物語、面白かったんですけど清盛の3人の息子の頼盛に対する扱いがひどすぎてだんだん辟易してきましたよね…辛い。
前作の時も書きましたけど、大河ドラマの最終回で「平家は常に一蓮托生」といった頼盛もセリフを思い出していました。平家を守るために油断なくふるまう頼盛と、人の気持ちを慮ることが出来ない独りよがりな清盛と息子たちのふるまいにこの作品の後の末路を彷彿とさせましたよね。
清盛が福原に遷都して更に京都へ戻った理由がもしもこれなら平家マジでやばいよね←
この物語は清盛が60歳を過ぎているようなので、数年後、清盛がいなくなり、平家が滅亡した後の頼盛の人生も読んでみたい気がしました。
最後の文もとても気になります。

<東京創元社 2022.6>2023.4.19読了

タスキメシ 五輪 額賀澪5

タスキメシ 五輪
額賀 澪
小学館
2022-11-29


己との闘いは、続いていく…。
箱根駅伝を終えた千早は食品会社に就職。その会社から東京五輪選手村食堂に派遣され、偶然コーチ早馬の初恋の人、都と仕事仲間に。
主将として初出場が叶った4年次の箱根駅伝では、最後の最後で「努力に裏切られた」千早。東京五輪選手村食堂では、裏方として世界のアスリートたちを支えるが、目の回る忙しさの中、自分の仕事への情熱が呼び起こされていく。駅伝では「努力に裏切られた」が、「裏切られた後の景色も悪くない。裏切られた俺は、今、頑張ってます」と言えるまでに成長していく。前半の「祈る者」は臨場感溢れ、読み手の心をつかんで話さないお仕事小説。
一方、眞家春馬はパリ五輪を視野に入れ世界陸上に参戦。兄早馬との関係や、世界を相手に挑戦を続けるアスリートの心象風景が描かれる、後半の「選ぶ者」。春馬、そして高校時代、大学時代ともにライバル関係だった選手・助川、藤宮らはアスリートとして悩み、葛藤を繰り返しながらも競技生活を続けている。彼らの自分との闘いは、やがて、世界へ…。

箱根駅伝を見終えた後に読むのはこの作品だろう!と思い手に取りました。
箱根駅伝というよりは東京オリンピックの方が近かったですけど^^;でもこの作品の礎は箱根駅伝だから。千早のターンを読んでいると、箱根駅伝のその後の物語を読んでいるようでした。実況でも箱根駅伝を走り終えたら競技を引退して会社員になるという言葉も聞きますよね。私たちが見ることのない競技を終えた選手たちのその後の物語。また千早が配属されたところがエグすぎる…。私は多分精神を病んで辞めてますね←最後まで賛否両論が続いた東京オリンピック。1度延期になったわけだけどずっと2020年に開催する予定でいたわけで、急遽中止となったことでしわ寄せが来た人たちや企業は選手だけではないんですよね…。こうして頭を下げて回って、闘ってきた人たちがいることを忘れちゃいけないと思いました。与えられた場所で自分の仕事の意義を見つけて邁進する千早がとてもかっこよかったです。
そして春馬たちのターン。早馬と春馬って名前だから服部兄弟を思い浮かべながら今まで読んでいたところがありましたけど、実業団に入ってオレゴンで走った春馬のくだりは、大迫選手を思い浮かびましたよね。走り終えた後のインタビューの言葉、最高すぎました。6位入賞は確かに素晴らしい。でも、金メダルを獲った選手にはコテンパンにやられてそれが悔しいって思えるのって凄くかっこいいと思う。パリが楽しみ^^
1番最後、助川と藤宮と春馬が談笑しているシーンが凄く好き。藤宮の移籍先がスーパーマーケットで笑っちゃった。絶対サンベルクスかコモディイイダを思い浮かべるでしょこれは。本戦出場するのを待ってる。「年が明ければ百回目の箱根駅伝」の文章を読んで、なぜか涙が出てきたんですよね。そうか、私は今、2023年1月1日の物語を読んでいるんだって思いました。3人は皆1区を走ったんだね。誰が勝ったのかな。それを想像するのも楽しいです。
やっぱり駅伝オタクの額賀さんの作品は最高です!←ありがとうございました!今年の1冊目、そして今読むのにふさわしい作品でした!
シリーズも3作目になりましたが、前の2作は文庫化されていて1冊目の解説は柏原さんで2冊目の解説は弘山監督だって!!??マジか!!どっちも単行本で読んだから知らなかった!!!
…読まなければ。

<小学館 2022.11>2023.1.4読了

若葉荘の暮らし 畑野智美5

若葉荘の暮らし
畑野 智美
小学館
2022-09-07


オススメ!
感染症の影響を受け、望月ミチルのアルバイト先の飲食店の売上が激減。バイト代が減ってしまったミチルは家賃の安い家に移ることを余儀なくされる。そんな彼女に友人が紹介してくれたのが、40歳以上独身女性限定のシェアハウス「若葉荘」だった。
不安を抱えながら若葉荘の門を叩いたミチルだったが、温かく迎えてくれた管理人・トキ子さんに出会い、ここに住むことを決める。同世代の千波さんと幸子さん、50代の美佐子さんと真弓さん、何かに傷つけられ、それぞれに重荷を背負いながらも、逞しく生きる住人達との交流の中で、ミチルは自分の幸せを自分軸で探す術を身につけていく。
生きづらい世を懸命に生きる全女性へ送る人生賛歌。

ぐさぐさきました…すんごい来ました…
主人公は40歳になったばかりのミチル。ミチルが考えるあれこれがわかりみが凄すぎてちょっと胸が苦しくなりました^^;
コロナ禍が始まったころは、近くに家族がいるけど何だか寂しくて不安になったことを思い出しました。こういう時、一人だと辛いなって。だからミチルが「若葉荘」を選んだのは凄く良くわかります。私も近くにあれば住みたいと思います。住民たちの距離感がちょうど良いなと思いました。無理矢理距離を詰めようとしないで待っている感じ、凄く良いなって。ミチルはものすごく理論的で語るとめちゃくちゃ語る人だけど^^人当たりが良くていい人なのが分かる。美佐子と真弓もそれぞれ自分の人生を必死に生きてきたのが分かって言葉に重みを感じる。千波と幸子とは話し相手になりたいなと思う。ミチルと丸山の関係が凄く好きでした。こっちの距離感も良いな。最後の2人の会話が特に好き。
私はまだ30代だけど40歳は手の届くところまで来ていて。20代も30代も自分なりに考えて動いて生きてきたつもりだけど、それでも不安ばかりが募っていて。仕事も正職員で安定してはいるけど、心を無くしそうになりながら安定しているという理由だけでその場にい続けるのは正しくはないよなーと思いながら生きている。
自分の幸せを自分軸で探すって良い言葉ですね。最近見たドラマで40代の女性が言っていた「何が第2の人生よ。人生100年時代、私達、まだ半分も生きてないじゃない」って言う言葉が凄く好きで。この本を読んでいる時にその言葉を思い出していました。人は人、自分は自分と思って生きてきてはいるけど、やっぱり難しい。それでも、少しでも前向きに楽しく生きていきたいな。

<小学館 2022.9>2022.10.24読了

名探偵に甘美なる死を 方丈貴恵5

名探偵に甘美なる死を
方丈 貴恵
東京創元社
2022-01-08


「犯人役を演じてもらいたい」と、メガロドンソフトから依頼を受け、VRミステリゲームのイベント監修を請け負った加茂冬馬。会場であるメガロドン荘に集ったのは『素人探偵』8名、そこには「幽世島」の事件に関わり現在はミステリ作家となった竜泉佑樹もいた……。しかしイベントは一転、探偵とその人質の命を懸けた殺戮ゲームへと変貌を遂げる。生き延びるには、VR空間と現実世界の両方で起きる殺人事件を解き明かすしかないーー! 『時空旅行者の砂時計』『孤島の来訪者』に続く、 “館もの”本格ミステリ長編。

〈竜泉家の一族〉シリーズという名前が付いているんですね。シリーズ3作目。
1作目の主役である加茂と2作目の主役である佑樹が3作目でどちらも登場するというのが面白いです。こちらのシリーズは毎回マイスター・ホラからの挑戦状を受けることになるんですけど、もう全然分かりませんね←最初からあきらめてます^^;
ですが、事件自体を解決できなければ本当の死が訪れるということでハラハラドキドキしながら読みました。特に加茂は誰よりも不利な状況だったわけですし。
それにしても加茂も佑樹も頭の回る人たちですね。自分が死んでしまうかもしれない状況のなか、よくこんなに状況を把握していられるなと思いますよ本当に。
1作目はタイムスリップもので2作目は怪物との戦いで3作目はVRミステリゲーム…いやー…著者さん凄すぎますね…
1作目を読み終えた時点で加茂には存在していたかもしれない未来があったわけで、そこに絡んでくるとは思いませんでした。ちゃんと繋がっているんですね…
館ミステリの中でもなかなかにぶっ飛んだ斬新なミステリだったと思います。といっても、私もちゃんと理解できていないと思いますが^^;
こちらのシリーズはまだ続くのでしょうか。読むのは大変ですが、楽しみにしています。

<東京創元社 2022.1>2022.3.15読了

世界の美しさを思い知れ 額賀澪4

世界の美しさを思い知れ
額賀 澪
双葉社
2021-12-22


蓮見貴斗と尚斗は一卵性双生児。
弟の尚斗は人気俳優だったが、遺書も残さずに自殺した。
葬儀を終えて数日後に尚斗のスマホが見つかり、貴斗が電源を入れると顔認証を突破できてしまう。
未読メールには礼文島行きの航空券が届いていた。
自殺したのに、どうして旅行に行こうとしたのか。
その答えを知るために貴斗は旅立つ。
人気絶頂で自殺した愛する弟は何に悩んでいたのか。
止められなかった自らの後悔を胸に世界を旅する貴斗。
「生きること」と「死を受けとめること」の意味を問う、感動のロードノベル。

家族の中に芸能人がいるってどんな気持ちなのだろうと読んでいて思いました。ましてや一卵性双生児で同じ顔だとしたら。世間は一般人の兄弟は妬み嫉みを持っているんじゃないかって思ってしまうこともあるかも知れないですよね。
私は自死で家族を突然失った経験がないので、主人公の気持ちは分からないけど、同じ顔を持った片割れがいなくなったことを理解するために、弟が旅した場所を巡ることは必要なことだったのかなと思います。黒髪に眼鏡だったのに、弟そっくりに髪を染めてコンタクトにして。贖罪だったのでしょうか。自殺する弟に気づけなかったという罪。
最終的に貴斗が前を向いて生きようと思ったのなら良かったです。
最後のエンドロールが斬新でした。
そして最後は衝撃でしたね…。奥さんの名前が出てきて、あれ?あの子は下の名前出てきたっけ?と思って読み返したらしっかり最初に書いてありました^^;
面白かったです。そして私も旅に出たくなりました。海外は怖いから、国内だけど。

<双葉社 2021.12>2022.2.21読了

山亭ミアキス 古内一絵4

山亭ミアキス
古内 一絵
KADOKAWA
2021-11-30


迷い込んだ宿には、美味しいごはんと、不思議な従業員が待っていた――。
――日常から逃げ出したいあなたへ――
心に悩みを抱える人が迷い込む、森の中の不思議な宿「山亭ミアキス」。
超絶美形のオーナーに不思議な従業員、ロビーでは暖炉が赤々と燃え、食事は絶品のアイルランド料理。
しかし、泊まると間違いなく酷い目に遭わされる。
ブラック部活に疲弊する少年、マタハラに悩む女性など、今日も救いを求める者がたどり着く。
人をたぶらかす、謎めいた彼らの正体と目的とは――?

最初は注文の多い料理店みたいな感じかなーと思ったのですがまたちょっと違いましたね。
猫のお話が海外の物も多くて、登場する料理はアイルランド料理ですし、全体的に海外風味。
人生あまりうまく行ってないなぁと思う中に登場するこの宿。
そこで癒されて前向きになれるのかと思いきやひどい目にあったりする。
それでもそこから学んで人生を進んでいく登場人物たちは読み始めと終わりの方だと勇ましさが違うような気がしました。面白かったです。

<KADOKAWA 2021.11>2021.12.21読了

うしろむき夕食店 冬森灯5

うしろむき夕食店
冬森灯
ポプラ社
2021-02-17


二階建てのレトロな洋館に、ステンドグラスの嵌め込まれた観音開きの扉。ドアの両側には二つずつ背の高い格子窓。そこから見える満月のような照明と、おいしそうな香りが漂ってきたら間違いなし。そこが「うしろむき夕食店」だ。
“うしろむき”なんて名前だけど、出てくる料理とお酒は絶品揃い。きりりと白髪をまとめた女将の志満さんと、不幸体質の希乃香さんが元気に迎えてくれる。
お店の名物は「料理おみくじ」。
今宵の食事も人生も。いろいろ迷ってしまうお客さんに、意外な出会いを与えてくれると評判だが――。

デビュー作の「縁結びカツサンド」も好きでしたが、こちらも良いですね。
こちらは女将とその孫が切り盛りする小料理屋さん。出てくる料理も美味しそうだし、なによりも料理おみくじが気になります。私もやってみたい。
皆が多分同じような悩みを抱えていて、少し背中を押してくれるような作品でした。そして連作短編集になっていてお店にやってきた人が少しずつ知り合いになっていくのが良いですね。どのお話も良かったな。仕事を頑張る人も良かったし、夢を諦めないで頑張る人も良かった。そして希乃香も凄く頑張ってた。そして志満さんが希乃香に課したおじいさんを探してという大きな課題。何となくそんな気もしていたんですけど、ニヤニヤしちゃう展開で良かったです。最後は大団円でみんなが幸せで楽しそうでこちらも幸せな気持ちになれました。私も頑張ろうと思えました。

<ポプラ社 2021.2>2021.12.7読了

沙羅と万葉 中村有里5

万葉と沙羅 (文春e-book)
中江 有里
文藝春秋
2021-10-21


中学で登校拒否になった沙羅は、一年遅れで入学した通信制の高校で幼馴染だった万葉に再会。読書好きの万葉に読書の楽しさを教えられ、自分なりに本を読むように。一方で、大学に進学した万葉は、叔父さんの古本屋を手伝いながらも将来に迷いを感じていた――。
宮沢賢治「やまなし」、伊藤計劃「ハーモニー」、福永武彦「草の花」など、実際の本をあげながら描く瑞々しい連作短編集。

女優の中村有里さんが書かれた小説です。
沙羅と万葉2人の視点で描かれる青春小説だと思って読んでいました。
沙羅は凄く頑張っていると思います。それでもその頑張りが上手く両親に伝わらない。それを万葉がちゃんと言葉にして伝えてくれたのかなと思いました。
万葉も万葉で叔父さんとともに九州を旅行して自分のこれからを考えていきます。
通信制の高校ってこういう形何ですかね。大学もですが。
私は通ったことがないので新鮮な気持ちで読んでいました。
2人とも遠回りしているところもあるけど、それでもちゃんと前に進んでいて、頼もしく感じました。
そしてたくさんの小説が登場しました。
著者さんの読書量が伺えます。また書いてほしいです。

<文藝春秋 2021.10>2021.11.30読了

縁結びカツサンド 冬森灯5

縁結びカツサンド
冬森灯
ポプラ社
2020-07-08


オススメ!
駒込うらら商店街に佇む、昔ながらのパン屋さん「ベーカリー・コテン」。
あんぱん、クリームパン、チョココロネ。気取っていない顔が並んでいて、見ているだけでほっとするような、そんなお店。
一家で経営してきたコテンの未来を背負うのは、悩める三代目・和久。
商店街が寂れる中で、コテンを継ぐべきか。「自分なりのパン」を見つけないといけないのではないか。創業者のじいちゃんが亡くなって、店名の「コテン」の由来もわからない。
日々迷いながらパン生地をこねる和久のもとには、愉快なお客たちがやってくる。
ヒョウ柄のコートを着込む占い師に、就活に落ち続ける学生、肉バカの肉屋の息子。
人の悩みに寄り添うパンを焼こうと奮闘する和久が、やがて見つけた答えとは――
しぼんだ心を幸せでふっくらさせる、とびきりあったかな“縁”の物語。

4話からなる連作短編集です。登場する常連さんがどんどん関わりを持って行く感じがとても好きでした。
どのお話も好きだったけど、1番は「花咲くコロネ」かな。ミユキちゃんに会うために一生懸命勉強をして頑張っている花ちゃんに心打たれました。そして最後の展開に色々驚き^^
創業者のじいちゃんが名付けた「コテン」の由来。和久が最後に思った理由で良いんじゃないかなと思います。当たっていても、間違っていても。多分じいちゃんは受け入れてくれると思います。
この本を読んでいたら、無性にカツサンドがたべたくなりました。チョココロネもいいな。カレーパンもいいな。
素敵な作品に巡り合えました。この作品がデビュー作とはびっくりです。

<ポプラ社 2020.7>2021.8.26読了

最高のアフタヌーンティーの作り方 古内一絵5

最高のアフタヌーンティーの作り方 (単行本)
古内 一絵
中央公論新社
2021-04-19


老舗ホテルで働く涼音は、念願叶って憧れのマーケティング部サービス課、アフタヌーンティーチームに配属された。
喜び勇んで、アフタヌーンティーの新企画を出したものの、パティシエ・達也に「目新しければいいってもんでもないから」と冷たく却下されてしまう。
「最高のアフタヌーンティーって、一体、なんだろう」?

アフタヌーンティーって私は利用したことがないです。
確かに結構なお値段なんですよね^^;何となく敷居が高いような気がして未経験でした。
でも、この作品を読んで、おひとりさまでも全然問題ないんだなと分かって行ってみたくなりました。
桜山ホテルという名前から、モデルは椿山荘かなぁと思っていたら当たりましたね。行ったことはないんですけど^^;
涼音の考え、私は嫌いじゃないですし、働いていく上で大変だと思うけどその考えを貫き通してほしいなとも思います。
涼音の視点と達也の視点で交互に描かれる物語。だからこそ2人の関係性がちょっとずつ変わっていくのが垣間見えてニヤニヤしたりもしましたけど^^
アフタヌーンティーの鉄人や西村さんとの関わりも良かった。
お仕事の大変さ、雇用形態の格差、発達障害からくる差別、アフタヌーンティーの中に様々な問題が絡み合っていて、読みごたえもありました。
味わい深い作品でした。

<中央公論新社 2021.4>2021.7.27読了

蝶として死す 平家物語推理抄 羽生飛鳥5



平清盛の配下である童子・禿髪は、なぜ惨殺されたのか? 首のない五つの死体から、どうすれば探している人物を特定できるのか? 帝の庇護下にあった寵姫を、どのようにして毒殺したのか? ――不可思議な謎に挑むのは、清盛の異母弟にして一族の裏切り者・平頼盛。平安時代ならではの、前代未聞の新しい謎を描いたと話題を呼んだ、第15回ミステリーズ!新人賞受賞作「屍実盛(かばねさねもり)」など5編を収録。

主人公は平清盛の弟である平頼盛です。
大河ドラマ「平清盛」を見ているので俳優さんでぱっと思い浮かびます。
歴史上は一族の裏切り者ですが、ドラマの中では平家を守るために裏切り、生きる道を選んだことになっています。頼盛が最終回に言った「平家は常に一蓮托生」という言葉が忘れられません。
まあ、ドラマのことはさておき、こちら読了しました。
歴史上の人物が謎解きを行う物語は以前「時省記 平時忠卿検非違帖」という平時忠が主役の本を読んだことがあります。そういえばどちらも平家ですね。面白い^^
ミステリとしても面白かったですが、その謎を解くことで家族を、家臣たちを守るために生き抜いてきた物語という形でも面白かったです。この物語は連作短編集となっていますが、一つ一つ時代が少し異なり少しずつ頼盛も年を重ねていきます。史実を織り交ぜながら展開されていくのでとても面白かったです。
歴史上は頼盛はあまり重要視されず知らない人も多いかもしれません。ですが頼盛がいたからこそ平家は断絶せずに生き延びたのだと思います。
最後の息子たちの言葉が印象的で。父親に対して気になる点はあったものの、父親の考えを受け入れ尊敬していた様子が伺えてなんだかこちらも嬉しく感じました。
最後まで読み終えてからタイトルを見直すと改めてずしっと心に響き、余韻が残りました。

<東京創元社 2021.4>2021.5.16読了

転職の魔王様 額賀澪5

転職の魔王様
額賀 澪
PHP研究所
2021-02-06


この会社で、この仕事で、この生き方のままで――いいんだろうか。
若手注目作家が未来の見えない大人たちに捧ぐ、渾身のお仕事小説!
大学卒業後に入社した大手広告代理店でパワハラに遭い、三年たたずに退職してしまった未谷千晴。働く自信と希望をすっかりなくしてしまった千晴だが、どうにか「普通の大人」に戻りたいと、叔母が経営する人材紹介会社を活用しながら転職活動をすることに。彼女はその会社で、「転職の魔王様」という異名を持つ凄腕キャリアアドバイザー・来栖嵐と出会う。
「仕事内容なんて何でもいいから、とにかく履歴書の空白期間を埋めたい。それが未谷さんのご希望ですか」
面談初日から不躾な態度で接してくる来栖に、千晴は戸惑うが……。

新卒で入った会社で配属されたのが広告業でパワハラにより体調を崩し、3年で転職した人間ですこんばんは←千晴と同じですよ。でも私は壊れる前に転職先を見つけて辞められたのでまだ良かったのだと思います。千晴の職場ほどひどくなかったと思うし…多分…。千晴の社畜具合がひどかったっすね…そりゃあ来栖も引くわ…
5人の(一応)転職希望者が出てきましたけど、転職したいと思っていても希望する待遇に関しては当たり前だけどそれぞれで、転職者の希望と求職者の希望を合わせるって難しいだろうけど素敵な仕事でもあるなと思いました。
でも私は来栖に最初にあんなこと言われたらくじけていかなくなると思います(打たれ弱い人)さすが魔王様…。
最後のお話にビックリ。来栖は千晴を知っていたのか…。
2人が恋愛に発展することは無さそうだけど←いいバディにはなりそうですね^^
千晴もいい仕事に出合えてよかったね。

<PHP研究所 2021.2>2021.3.18読了

孤島の来訪者 方丈貴恵5

孤島の来訪者 〈竜泉家の一族〉シリーズ
方丈 貴恵
東京創元社
2020-11-28


謀殺された幼馴染の復讐を誓い、ターゲットに近づくためテレビ番組制作会社のADとなった竜泉佑樹は、標的の三名とともに無人島でのロケに参加していた。島の名は幽世島―秘祭伝承が残る曰くつきの場所だ。撮影の一方で復讐計画を進めようとした佑樹だったが、あろうことか、自ら手を下す前にターゲットの一人が殺されてしまう。一体何者の仕業なのか?しかも、犯行には人ではない何かが絡み、その何かは残る撮影メンバーに紛れ込んでしまった!?疑心暗鬼の中、またしても佑樹のターゲットが殺され…。第二十九回鮎川哲也賞受賞作『時空旅行者の砂時計』で話題を攫った著者が贈る“竜泉家の一族”シリーズ第二弾、予測不能な本格ミステリ長編。

方丈さんの新刊だ!と思って手に取ったので前作と繋がっていると知ったのは読み始めてからでした^^;しかも竜泉家の一族シリーズなんて名前が付いているんですね…知らなかった。
今回の主人公は竜泉佑樹。前回の主人公加茂冬馬の奥さんの従兄弟だそう。前作では登場してないだろうけど親戚はきっと昔殺されているんだろうな(色々ざっくり)
人を殺す覚悟で転職をして離島へ赴いて機会を狙っていたのに別の誰かが標的を殺してしまった…一体だれが…っていう展開かと思いきやなんかとんでもないことが起こりましたね…いやはや凄い展開だった…。もう何もかもが想定外だった…何も当たってなかった^^;
そして何段階も謎解きが待っているからまだあるの?まだあるの??ってこっちがパニックでした。
いやー…凄いですね。物語的にトンデモになりそうなのに全然そんなことは無くって。
最後の最後の謎解きは全く気付きませんでした…。2人はどちらも頑固そうだけど、お互いに良い理解者になれば良いなぁと思いました。

<東京創元社 2020.11>2021.1.19読了

この本を盗む者は 深緑野分5



書物の蒐集家を曾祖父に持つ高校生の深冬。父は巨大な書庫「御倉館」の管理人を務めるが、深冬は本が好きではない。ある日、御倉館から蔵書が盗まれ、深雪は残されたメッセージを目にする。“この本を盗む者は、魔術的現実主義の旗に追われる”本の呪いが発動し、街は物語の世界に姿を変えていく。泥棒を捕まえない限り元に戻らないと知った深冬は、様々な本の世界を冒険していく。やがて彼女自身にも変化が訪れて―。

ずっと気になっていた作家さん。ようやくの初読みです。
本が嫌いな深冬。しかし、深冬は蔵書が盗まれたことで本の呪いを解かなければならない事態となります。
始めはこの突拍子のない世界観に入り込むのに時間がかかりましたが、慣れてきたら面白くて読む手が止まりませんでした。
本の世界に閉じ込められ、盗人を探し捕まえることが出来たなら、元の世界に戻ることが出来る。
なぜそんな事態になってしまったのか。そのきっかけもまた面白くて、なるほどと唸りました^^;
ただ、そこまでした深冬の祖母の気持ちには共感できなかったですけどね。人を巻き込んで迷惑な←
真白も謎の人物でしたが、最後に真相がわかります。だから、深冬になついていたんだね。
面白かったです!

<KADOKAWA 2020.10>2020.11.2読了

アネモネの姉妹 リコリスの兄弟 古内一絵4

アネモネの姉妹 リコリスの兄弟
古内一絵
キノブックス
2019-08-21


兄弟姉妹に一度でも仄暗い感情を抱いたことのあるあなたへ。花言葉をモチーフにした感泣と戦慄の連作短編集。
第一話 アネモネの姉妹 花言葉「嫉妬のための無実の犠牲」
絹子と綾子の姉妹。何もかも完璧で努力を怠らない姉と愚鈍な妹。甘やかされて育った妹に対し姉はいつもイライラしていた。
第二話 ヒエンソウの兄弟 花言葉「私の心を読んでください」
一流大学を出て一流企業の内定を決めた兄。でも、リーマンショックの影響で内定は取り消され、兄は自分探しの旅に出たままどこにいるか分からない。弟は両親の結婚記念日に兄が来てくれるよう連絡を取っても返事が来ない。
第三話 マツムシソウの兄妹 花言葉「あなたは私を置き去りにする」
両親を早くに亡くした兄と妹。妹にとって5つ上の兄は大切な存在。最近彼氏の家に彼の妹が転がり込んできた。それが何だか気に入らない。
第四話 リコリスの兄弟 花言葉「悲しい思い出」
自分たちはクローンだというくらいにそっくりで共に水泳をしている2人。しかし、1人が怪我をして未来を絶たれつつあり、責任を感じた片割れが苦悩していた。
第五話 ツリフネソウの姉弟 花言葉「私に触らないでください」
両親が離婚したことで離れ離れになった姉と弟。やたらと卑屈で愚痴ばかり言う姉が苦手だった。
第六話 カリフォルニアポピーの義妹 花言葉「私を拒絶しないでください」
父が急逝し仕事を引き継いだ姉は古株の社員と上手くいかずに苦悩していた。小説家になった弟が婚約者を連れてくると母親から連絡が入る。

兄弟姉妹の物語。
私は弟と妹がいます。お姉ちゃんなんだからと言われた記憶はないけど、何をするにも自分が最初だったから、何となく損だなーと思ったことはあります。どこも同じとは言わないけど上を見ているから下の子は要領がいいような気がします。
妹は社交的で親は心配することが多かったと思うけど、いつも家にいて何ら面白みのない姉よりも妹を見る方が新鮮で楽しかっただろうなとは思います。妹と両親の間で意見が対立し、私が板挟みになった時期があって、家にいるのが辛くて辛くて仕方が無い時がありました。それなのに和解したらいつのまにか仲良くしていて、どちらも私に謝りもしなくて、本当に面白くなくて辛かった時期もありましたねー。今では笑い話…にはなりませんけど^^;未だにちゃんと思い出すと涙が出てきます。また思い出してしまった。
でもたぶん、妹にも色々言いたいことはきっとあるんだろうし、いい加減大人にならないとなと思いつつ、大人になれません。何だか何言っているかわかりませんね、すみません。
どの作品も良く終わっても悪く終わっても兄弟に対する何となく黒い感情が渦巻いていてドキドキしながら読みました。相手に対してみんな何かしらの想いをきっと抱えているんだろうなと思います。
最後のお話が好きでした。セクハラパワハラな社員のくだりは本当に腹が立ったけど、身近に味方がいることも分かったし、弟の婚約者がなかなかかっこよくて素敵でした。

<キノブックス 2019.8>2019.12.30読了

タスキメシ 箱根 額賀澪5

タスキメシ 箱根
額賀 澪
小学館
2019-11-06


箱根駅伝100年!胸熱スポーツ小説決定版
あの眞家早馬が「駅伝」の世界に戻ってきた!
大学卒業後、管理栄養士として病院で働いていた早馬は、紫峰大学駅伝部のコーチアシスタント兼栄養管理として、部員たちと箱根駅伝初出場を目指すことになる。高校時代、大学時代も陸上の名門校で長距離走選手として期待されたものの、怪我から思うような成績を残せなかった早馬。その背景にあった、嫉妬、諦め、苦い思い――。数々の挫折を経験した者として部員たちに寄り添い、食の大切さ、目標達成の楽しさを伝えようと奮闘する早馬。そんな彼のことをキャプテンの4年生、仙波千早は最初は受け入れられずにいたが……。
一度も箱根駅伝に出場できない弱小チーム。でも、だからこそ、「箱根駅伝に出たい」「箱根を走らせてやりたい」。徐々にひとつになっていく千早たち部員の熱い願い、そして早馬が見つけた新たな夢は、果たして叶うのか――。
臨場感溢れる箱根駅伝本戦の描写とともに、丁寧に描かれるそれぞれの心情。エリートではない若者たちの夢、苦悩、様々な思いが、箱根路を駆け抜ける!

そうか…箱根駅伝は第1回から数えたら2020年は100年目なんですね…(戦時中の4年は開催されていないため2020年は第96回大会)
「タスキメシ」の早馬が帰ってきた!!って「タスキメシ」から4年経つんですか!?マジですか!?
「タスキメシ」は大学時代よりも高校時代の方が長かったのでこちらの方が箱根駅伝の臨場感をよりリアルに感じられた気がします。どちらかというとこの作品を読んでいて「風が強く吹いている」を思い出しました。「タスキメシ」が箱根駅伝に対する序章で、こちらが本編のような気もします。失礼かな、この言い方…。
25歳になった早馬は紫峰大学駅伝部のコーチアシスタント兼管理栄養士として部員たちと共に寮生活を行っていくことになります。でも最初にMGCの事が書かれていたのにはニヤリとしちゃいましたよね。流石額賀さんです。春馬に助川に藤宮。苦楽を共にしたライバルであり仲間たちがみんな出場権を獲得してこの大会に挑んでいましたね。MGCの臨場感もリアルでした。私もこの大会は最初から最後まで見ていたけど、額賀さんも見ていたんだろうな、何回も。
そして早馬たちの物語。キャプテンである千早は早馬の事が苦手だった。それは箱根駅伝を目指して走れず別の道を歩んでいる姿に自分の将来を重ねてしまったから。前作を読んでいたら早馬が千早が思うような感情で生きていないってすぐに分かるんですけどね、まあそれは読んでいるから言えることで^^
それでも千早は早馬と関わっていくことで変わっていきます。他の部員たちも意識が変わっていく。出来れば出たいけど、でも無理なんだろうななんて心の奥で思っていた感情が、絶対に箱根駅伝に出てやる!という意識に変わっていく感じがとても良かったです。
そして箱根駅伝の本戦。毎年食い入るように見ているから、情景が目に浮かぶようでした。
特に9区から10区へ襷が渡される中継所。
あそこは距離があるから本当にもどかしい時はもどかしくて。繋がるかどうか…とドキドキするシーンを彷彿とさせました。
駅伝を愛している額賀さんだからこそのレース展開だなと思いました。
そしてとても細かく丁寧に取材されたことが分かります。筑波大学で取材されたってどこかでおっしゃっていたような気がします。筑波大学も久しぶりに本戦出場を決めましたよね。
筑波大学と言えば、学連選抜で5区山登りでごぼう抜きをしていた某選手の姿を昨日のことのように思い出せるのですが…あれは多分15年前くらいですよね…^^;後輩たちは母校の襷で今度は走れますね。
書きたいことはたくさんあるのですが…。最後が事実と変わってしまって凄く悔しい。それは著者さんが一番悔しいと思うけど。仕方がないことなのだけど。みんなが応援している声を聞いて一人がその方を向いて笑顔を見せたということは、他の大会で2時間5分50秒を切って選ばれたってことですよね。それはあの3人のうち誰なのか…それを想像するのもまた楽しいです。最後のシーンなので細かくは言いません。読んでいないと意味が分からないと思いますがすみません。
ゴールのシーンは涙しながら読みました。
箱根駅伝は本当に素晴らしい。一言では言い表せない。とんでもなく過酷で辛くて、でも楽しくて素晴らしい大会なんですよね。来年の96回大会もますます楽しみになりました。

<小学館 2019.11>2019.11.25読了

時空旅行者の砂時計 方丈貴恵5

時空旅行者の砂時計
方丈 貴恵
東京創元社
2019-10-11


瀕死の妻のために謎の声に従い、二〇一八年から一九六〇年にタイムトラベルした主人公・加茂。妻の先祖・竜泉家の人々が殺害され、後に起こった土砂崩れで一族のほとんどが亡くなった「死野の惨劇」の真相の解明が、彼女の命を救うことに繋がるという。タイムリミットは、土砂崩れがすべてを呑み込むまでの四日間。閉ざされた館の中で起こる不可能犯罪の真犯人を暴き、加茂は二〇一八年に戻ることができるのか!?“令和のアルフレッド・ベスター”による、SF設定を本格ミステリに盛り込んだ、第二十九回鮎川哲也賞受賞作。

ツイッターで出版社の方々が話題にされていて気になっていました。
あらすじを読んでタイムトラベルものだしSFだし私は理解できるだろうか…と思いましたが、内容自体はそこまで難しくないので夢中で読みました。まあ、タイムパラドックスの事とかは難しくて理解できていないんですけど^^;
妻の家系が代々呪われており、そのせいで瀕死の状態である妻を助けるために58年前にやってきた加茂。
惨劇を止めるはずが既に殺人が起きており、加茂は怪しまれないために探偵役を演じることに。
ワトソン役は13歳の文香という少女。聡明で可愛らしい女性です。加茂が生きている未来では文香はここで命を落としているのだけど、そうさせないために加茂は奮闘します。
事件に関してはSFが絡んでいるトリックもあり、一筋縄ではいきませんでした。いやもう絶対無理^^;
それでも分からないところもあったけど面白くて一気読みでした。
そして何よりもラストがとても良いです。凄く良い後味。やっぱりこういう終わり方が良いなー。
これからも読んでいきたい新星の作家さんです。

<東京創元社 2019.10>2019.11.6読了

夢見る帝国図書館 中島京子5

夢見る帝国図書館
中島 京子
文藝春秋
2019-05-15


「図書館が主人公の小説を書いてみるっていうのはどう?」
作家の〈わたし〉は年上の友人・喜和子さんにそう提案され、帝国図書館の歴史をひもとく小説を書き始める。もし、図書館に心があったなら――資金難に悩まされながら必至に蔵書を増やし守ろうとする司書たち(のちに永井荷風の父となる久一郎もその一人)の悪戦苦闘を、読書に通ってくる樋口一葉の可憐な佇まいを、友との決別の場に図書館を選んだ宮沢賢治の哀しみを、関東大震災を、避けがたく迫ってくる戦争の気配を、どう見守ってきたのか。
日本で最初の図書館をめぐるエピソードを綴るいっぽう、わたしは、敗戦直後に上野で子供時代を過ごし「図書館に住んでるみたいなもんだったんだから」と言う喜和子さんの人生に隠された秘密をたどってゆくことになる。
喜和子さんの「元愛人」だという怒りっぽくて涙もろい大学教授や、下宿人だった元藝大生、行きつけだった古本屋などと共に思い出を語り合い、喜和子さんが少女の頃に一度だけ読んで探していたという幻の絵本「としょかんのこじ」を探すうち、帝国図書館と喜和子さんの物語はわたしの中で分かち難く結びついていく……。
知的好奇心とユーモアと、何より本への愛情にあふれる、すべての本好きに贈る物語!

タイトルに惹かれて手に取りました。
上野で出会った喜和子さん。喜和子さんが語る図書館の歴史。とても興味深かったです。
帝国図書館の歴史、なかなか波乱万丈でした。
今もそうですけど、図書館という施設はいつでもどこでも、真っ先に削減される候補になるんですね…
永井荷風の父親が図書館のためにこんなに奔走していたなんて知りませんでした。そしてその努力が生きている間に報われなかったのも辛かったです…。
喜和子さんの過去も辛く悲しいものでした。昔に結婚ってそんなものだったんですよね。
それでも上野で出会った時の喜和子さんはきっと自分らしく生きていたのだと思います。そういう時間があったことはとても幸せなことだったのではないかと思います。
そしてたくさんの有名作家さんが登場しました。
個人的に宮沢賢治が登場したのが嬉しかったです。そして「銀河鉄道の夜」について書かれていたのも良かった。カムパネルラとジョバンニは、賢治とトシと考えると何だか違和感を感じることがあったんですよね。2人がモデルなら兄弟に設定すればよかったのにと思っていたのですが、別にモデルがいたんですね。それがまた切なかったなぁ…
喜和子さんの事、喜和子さんと一緒にいた2人の男性の事、次第に真相が明らかになっていくのに読む手が止まりませんでした。でも、内容が重厚で時間がかかりましたが^^;
最後まで喜和子さんが願った通りになってきっと喜んでいますよね。
国立国会図書館の歴史も分かって面白かったです。

<文藝春秋 2019.5>2019.7.3読了

鏡のむこうの最果て図書館 光の勇者と偽りの魔王 冬月いろり5



空間が意思と魔力を持ち、様々な魔物が息づく世界・パライナの北端に、誰も訪れない“最果て図書館”はあった。記憶のない館長ウォレスは、鏡越しに“はじまりの町”の少女ルチアと出会い「勇者様の魔王討伐を手伝いたい」という彼女に知恵を貸すことに。中立を貫く図書館にあって魔王討伐はどこか他人事のウォレスだったが、自らの記憶がその鍵になると知り…臆病で優しすぎる少女。感情が欠落したメイド。意図せず世界を託された勇者。彼らとの絆を信じたウォレスもまた、決戦の地へと赴く―人知れず世界を守った人々のどこか寂しく、どこまでも優しい「語り継がれることのないお伽噺」。第25回電撃小説大賞・銀賞受賞作。

タイトルに図書館が入っていたことと^^私が大好きな作家さんの紅玉いづきさんが絶賛されていたので、気になって購入しました。面白かった…伝説や物語が交錯して一つに結びついていく、展開が見事でした。
物語はRPGゲームのようです。はじまりの町があってレベルアップの場があって主人公たちは勝手に食べ物をかっさらっていく^m^ゲームをやったことがある人は入り込みやすいんじゃないかな。
そして最果て図書館で館長をしているウォレス。ウォレスはいつ自分がここに来て館長となったのか、ここに来る前は何をしていたのか、全く覚えていなかった。図書館には人間はウォレスと無表情のメイド、リィリしかいない。魔物に聞いても邪険にされるだけ。そんな悶々とした生活をしていたウォレスは鏡越しにルチアという少女と出会います。
2人が出会ったことは必然で、すべては繋がっていました。その展開が面白くて読む手が止まりませんでした。
全てを理解した後にウォレスが下した選択が良かった。
素敵な物語でした。

<KADOKAWA 2019.2>2019.6.25読了

さよならの夜食カフェ マカン・マランおしまい 古内一絵5



これまで、苦しんできた人達を救ってきた「マカン・マラン」の店主・シャール。今回、シャールを訊ねてきたのは謎の美青年。彼の決意や未来の話を聞く中で、シャールはこの夜食カフェを始めたきっかけを思い出す――。

ついに最終巻のマカン・マランシリーズ。最初から四部作と決まっていたみたいですね。
今回登場したのは、仲間外れにされた父子家庭の女子高生、若くしてトップに上り詰めたシェフ、タワーマンションの最上階に住むセレブ妻。それぞれに悩みを抱えて追い詰められていくのだけど、そういう時って自分の事しか考えられなくて、自分が1番不幸だくらいに思っちゃうんですよね。でも、自分以外の人たちだってみんな悩んでいる。そして、自分を変えるのは自分自身。
当たり前の事なのに、それが気づけない。
シャールさんの温かくて深い心と優しい料理にいつも癒されます。
この作品は今まで出てきた人たちもちゃんと登場するのが良いですね。それも嬉しいです。
タイトルにおしまいと書かれていたから、シャールさんの身に何かあったのではないかとドキドキしましたが、そうではなくてほっとしました。また最後がシャールさんと柳田教諭の二人というのが良いです。学生時代の事を知っている人が、年を重ねても友人でいるのって凄く幸運だと思います。二人の関係がとても好きでした。
この作品に出合えて本当に良かったです。

<中央公論新社 2018.11>H31.2.12読了

カムパネルラ版 銀河鉄道の夜 長野まゆみ5

カムパネルラ版 銀河鉄道の夜
長野まゆみ
河出書房新社
2018-12-14


長野まゆみデビュー30年記念小説。表紙絵にも箔がキラキラ光る特殊仕様!
ジョバンニの旅は終わってもカムパネルラの旅は続く…あの「銀河鉄道の夜」を今夜、カムパネルラが語りなおします。
これまで、ジョバンニこそ作者の化身と考えられてきた物語を、もう一人の主人公であるカンパネルラが語りなおしたのがこの物語だ。
カムパネルラは、ケンタウリ祭の夜、友人ザネリを助けに川に入り、溺死したのだ。銀河鉄道の乗客がみなさみしいのは、ジョバンニを除いて、誰も片道切符しか持っていないからだ。
本作では、カムパネルラの目から、銀河鉄道の旅を辿り直す。すると、そこに現れるのは、これまで妹トシに隠れて見えてこなかった、賢治の秘められた恋だ。医師と結婚してアメリカに渡り、異国で早逝した恋人への強い思いがあったのだ。
いつしか物語には賢治自身もあらわれ、少年と対話する。メビウスの帯の、裏と表のように、けっして交わらない。でも、すぐ近くにいる存在。それがジョバンニとカムパネルラの旅なのだ。

タイトルに惹かれて手に取りました。長野さんの作品、久しぶりだなぁと思ったらアンソロジーで読んだのをのぞいたら9年振りでした^^;びっくり。
長野さんは今までも宮沢賢治にまつわるたくさんの物語を書かれていますよね。デビュー30周年記念作品としてはふさわしいのではないかと思いました。
でも、想像していたのと違いました。タイトルの通り銀河鉄道の夜の物語がカムパネルラの視点で書かれるのかと思ったらカムパネルラがその時の思い出を聞き手に語る…みたいな感じでした。しかも途中で中原中也が登場したりして。それはそれで面白かったです。2人の書かれた詩も考察ということで沢山引用されていました。
「カムパネルラの恋」はすなわち賢治の恋。
賢治が入院していた時に看護師さんを好きになって結婚したいと父親に言ったら反対されたというのは何となく覚えているんですけど、銀河鉄道の夜や春と修羅の中に賢治の恋が散りばめられていたんだなと考えたら何だか不思議です。若くして亡くなっているし人のために尽くしていた人だったので若干聖人君子的な扱いになっているような気がしなくもないんですけど、1人の男の人だったんですね。まあ「銀河鉄道の父」を読んでいる身としてはわがままなお坊ちゃまの顔もある事が分かりますけども^^
カムパネルラがジョバンニの事をどう思っていたのか、それをあくまで賢治はこう考えたのではないかという推察ではあるけど語られていたのも良かったです。
賢治は銀河鉄道の夜を完成させずに亡くなりましたけど、今まで何度も何度も書き直していて、この作品の中でも書かれていましたが、40歳、50歳、60歳と生きていたら、もっと違う物語になっていたのかもしれませんね。その物語を読んでみたかった気もします。

<河出書房新社 2018.12>H31.2.5読了

エンディングドレス 蛭田亜紗子5

エンディングドレスエンディングドレス
著者:蛭田 亜紗子
ポプラ社(2018-06-08)
販売元:Amazon.co.jp

32歳の若さで夫に先立たれてしまった麻緒(あさお)は、自らも死ぬ準備をするうち、刺繍洋品店で小さなポスターを見つける。
◆終末の洋裁教室◆
講師 小針ゆふ子 毎週日曜午後一時から
春ははじまりの季節。
さあ、死に支度をはじめましょう。
あなただけの死に装束を、手づくりで。

死に装束=エンディングドレスを縫う教室。
人生最後に着る服を自分でつくるということに、興味が湧いた。
教室へ足を運んだ麻緒が出会ったのは、ミステリアスな先生と、3人の陽気なおばあさん。
聞けば、エンディングドレスを縫う前に、いくつかの課題があるという。
はたちの時にいちばん気に入っていた服
十五歳の時に憧れていた服
自分以外のだれかのための服
自己紹介代わりの一着……
先生やおばあさんトリオの助けを借りながら、麻緒は洋服づくりに無心で取り組んでいく。
夫の弦一郎に、命にかかわる持病があることはずっと知っていた。
それでも二人は、一緒にいることを選んだ。
洋服の思い出が、忘れていた想いや出来事を次々に引き出して――。
あつい涙があふれる! 再生のその先を描く、希望に満ちた傑作長編。

蛭田さんの新刊。読みました。
32歳、私と同世代の女性が夫と死に別れてしまったら…全然想像もつきませんでした。
私はまだ結婚するような男性に会ってすらいない。
麻緒と弦一郎の関係は空気のようにまるくて一緒にいるのが当たり前のような雰囲気。
もしかしたら長く生きられないかもしれない。覚悟のうえでの恋愛、結婚。
そしていなくなった喪失感。始めの麻緒は見ていられないくらい弱弱しくてぽっきり折れてしまいそうなくらい儚いイメージでした。でも、服を作っていくことでどんどん変わっていきましたね。洋服を作る事で生きていく活路を見出していったような。
そして終末の洋裁教室なんて教室を作るくらいだから先生もきっと何かを失っているんだろうなぁと思ったら、先生の物語も切なかったですね。
陽気なおばあさんたち、千枝子さん、おリョウさん、しのぶさんも様々な人生を歩んでいて、年季を感じました^^
麻緒の最後のシーンがとても素敵でした。

<ポプラ社 2018.6>H30.7.12読了

樽とタタン 中島京子5

樽とタタン樽とタタン
著者:中島 京子
新潮社(2018-02-22)
販売元:Amazon.co.jp

忘れかけていた子どもの頃の思い出を、あざやかに甦らせる傑作短篇集。小学校の帰りに毎日行っていた赤い樽のある喫茶店。わたしはそこでお客の老小説家から「タタン」と名付けられた。「それはほんとう? それとも噓?」常連客の大人たちとの、おかしくてあたたかな会話によってタタンが学んだのは……。心にじんわりと染みる読み心地。甘酸っぱくほろ苦いお菓子のように幸せの詰まった物語。

タイトルを見てまずちょっと笑いましたよね。ギャグか!?ネタか!?みたいな^m^
読んでみたら本当に樽とタタンが出てきたのでそう言うことかと納得しました。
まあ、女の子にタタンと名付けた老小説家もタルトタタンとかけてはいましたけど。
樽の中から少女が見つけた常連客のあれこれ。
マスターも愛想が悪いのかと思いましたけど、女の子の対応はとても優しかったですね。というか、そもそも見ず知らずの女の子を営業中とはいえ預けて受け入れてくれるなんて相当懐が大きくないと出来ないですよね。
女の子がそこまでお客さんと距離が近くないのも良かったのかな。俯瞰して読める感じが良かったです。
女の子とおばあちゃんがこの喫茶店を利用した時のお話が1番好きでした。おばあちゃんは「ぱっと消えてぴっと入る」胸の中に入ってくるというこの表現がとても好きでした。

<新潮社 2018.2>H30.3.10読了

きまぐれな夜食カフェ マカン・マランみたび 古内一絵5

きまぐれな夜食カフェ - マカン・マラン みたび (単行本)きまぐれな夜食カフェ - マカン・マラン みたび (単行本)
著者:古内 一絵
中央公論新社(2017-11-18)
販売元:Amazon.co.jp

オススメ!
元超エリートのイケメン、今はドラァグ・クイーンのシャールが夜だけひらくカフェ「マカン・マラン」。今回のお客様は、匿名のクレームを繰り返すアラサーOL、美味しさがわらかなくなってしまった若手料理人など。彼らにシャールが用意した《きまぐれ》料理とは――?
圧倒的人気のお仕事&お料理小説、リクエストにおこたえして第三弾が登場です!

あぁ…やっぱり好きだ…シャールさんが作り出すあたたかな雰囲気、大好きです。
シャールさんはどんな人にも優しい。それはきっとシャールさん自身がたくさんの事を経験してきたから。1人1人の切実な悩みを優しい夜食で包んでくれる。
今回も色んな悩みを抱えた人たちがお店にやってきました。最初のコールセンターで働く女の子、しょうがないなと思いつつも、分かる部分もあって。そのもやもやした気持ちをシャールさんはスパッと彼女に伝えていました。きっと変われますよね。
料理人の男性にも優しい。その男性自身もきっと優しくて真面目で一生懸命なんですよね。だから少し壊れかけてしまっていた。日本の古き良きがたくさん垣間見えて少し勉強にもなりました。
そしてシャールさんの古い友人の話。そうか、そう言うことだったのかと最後の大きなシーンで気づきました。素晴らしいプレゼント。シャールさん素敵すぎます。
最後は比佐子さんの話。私もタルト・タタンは大好きです。最初に知ったのは小説で、次に機会があったのはテレビ。そこで紹介されていたお店に何年か越しで行くことが出来て、最初の一口の感動は忘れられません。涙が出そうになるくらい。美味しかったなぁ。シャールさんが作るタルト・タタンも食べてみたいです。
読み進めるのがもったいなくて、でも読む手は止まらなくて。今回も幸せな気持ちで読むことが出来ました。いつも頑張って明日からも生きていこうと思わせてくれる作品です。またシャールさんたちに逢えるのを楽しみにしています。

<中央公論新社 2017.11>H30.1.23読了

ゴースト 中島京子5

ゴーストゴースト
著者:中島京子
朝日新聞出版(2017-08-07)
販売元:Amazon.co.jp

温かい気持ちになったあとに、思わず涙があふれてしまう。
――風格のある原宿の洋館はGHQの接収住宅でもあった。そこに小さな女の子はなぜ出没するのか?
戦時中、「踏めよ 殖やせよ」と大活躍し焼夷弾をあびながらも生き延びたミシンの数奇な運命とは?
少しぼけた仙太郎おじいちゃんが繰り返す、「リョーユー」という言葉の真意は孫娘に届くのか?
おさるのジョージの作者たちは難民キャンプで何をしていたのか?
やわらかいユーモアと時代の底をよみとるセンスで、7つの幽霊を現代に蘇生させる連作集。
第一話 原宿の家
第二話 ミシンの履歴
第三話 きららの紙飛行機
第四話 亡霊たち
第五話 キャンプ
第六話 廃墟
第七話 ゴーストライター

久しぶりの中島さんの作品。幽霊をテーマにした作品ということで少しドキドキしましたが、ホラーではなさそうだったので読んでみました。
どの作品も面白かったけど、特に印象的だったのは2作。
まずは「ミシンの履歴」ミシン目線で描かれた作品というのがまず斬新で、ミシンが生きてきた長い長い月日が日本の歴史も思わせて深くて重たいです。私の実家にも足踏みミシンがあるのですが、何だかお喋りしながら使ってみたいです←(実は一度も使ったことがない)
そして「亡霊たち」千夏の曽祖父の仙太郎おじいちゃんが時折話す「リョーユー」という言葉。家族は戦友のことではないかと、かつて戦地へ赴いた祖父を想い推理します。最後の言葉が凄く凄く重たい。かつてはそういう時代だった。まだ72年。たった72年しか経っていないんですよね。でも、最後の一文を読んで一瞬「ワンピース」のサンジを思い出しちゃってごめんなさい←

<朝日新聞出版 2017.8>H29.10.26読了

凛 蛭田亜紗子4

凜
著者:蛭田 亜紗子
講談社(2017-03-15)
販売元:Amazon.co.jp

上原沙矢は、一人特急オホーツクにのり網走を目指していた。遠距離恋愛中の恋人が隣にいるはずだったが、急な仕事で来れなくなってしまったのだ。沙矢は途中にある金華駅で「常紋トンネル殉難者追悼碑」を、そして網走で出会ったある本により、北の大地にいきた女と男の人生を知ることになる。
大正三年。八重子は一人息子の太郎を知人にあずけ、遊郭「宝春楼」で働くために東京から網走へ向かっていた。本州と北海道を繋ぐ青函船の中で、一人の青年と出会う。この青年とはのちにも巡り会うが、そんなこととはお互い想像もせず、それぞれの行き先へ散っていく。
初見世も終わったある日、知人からの手紙を同じ遊郭の百代に読んでもらった八重子は、太郎が死んだことを知る。この日から八重子は変わる、何が何でもトップにたつのだと――。
青函船で八重子と出会った白尾麟太郎は、どういう運命の巡り合わせか、タコ部屋で働くことになる。それまでの裕福で満ち足りた生活とは一変し、生きのびることで精一杯だった。
八重子と麟太郎は過酷な運命にさらされながらも、己の生きる意味を見いだしていく。
そんな彼らの生き様を知った沙矢も、自分の生き方に一筋の光を見いだすのだった。

あまりあらすじを読まないでこの作品を読んでいたので内容の重さにびっくり…。
物語の始まりが北海道だったので、そういえば蛭田さんは北海道出身の作家さんなんだった〜なんて軽く考えていたのですが、内容はそんな軽いものじゃなかった…。
現代の沙矢も今の時代ならではの悩みを抱えていましたけど、大正・昭和のタコ部屋や身売りで借金返済をするしかなかった女性たちの現実は読んでいて本当に辛かったです。
私は生まれも育ちも札幌ですが、この大正時代の事は勉強しなかったんじゃないかなぁ。小中学生には刺激が強すぎてやらなかったのかな…。でも、知らなければいけない史実ですよね。
特にタコ部屋で暮らし、過酷な労働を強いられていた人たちに関しては忘れてはいけないですよね。この人たちが苦労して作り上げたものが現代まで続き、また語り継がれているわけですから…。
八重子と麟太郎、境遇は違えど同じ時代を過酷な状況の中生きてきた二人。本当によく耐えて生き延びてきたなと思います。でも八重子は逃げられない境遇ではあったのだけど、麟太郎はどうして居続けたんでしょうか…。それは村木に対する贖罪の念を持っていたからなのでしょうか…それにしては腑に落ちない点もあったのですが。
逞しく激動の時代を生き延びた男女の姿を見ることが出来ました。
そしてこういう時代があったのだということを、忘れてはいけないとも思いました。

<講談社 2017.3>H29.6.29読了

女王さまの夜食カフェ マカン・マランふたたび 古内一絵5

女王さまの夜食カフェ - マカン・マラン ふたたび女王さまの夜食カフェ - マカン・マラン ふたたび
著者:古内 一絵
中央公論新社(2016-11-16)
販売元:Amazon.co.jp

オススメ!
お待たせしました! シャールさん&「マカン・マラン」復活です!
病に倒れていたドラァッグクイーンのシャールが復活し、いつものように常連がくつろげるお店に戻った「マカン・マラン」。
そこには、やはり様々な悩みを抱えた人たちが集ってきて?
〈擬態〉だけ得意になる、ランチ鬱の派遣社員へ「蒸しケーキのトライフル」。
夢を追うことを諦めた二十代の漫画家アシスタントに「梅雨の晴れ間の竜田揚げ」。
子供の発育に悩み、頑張り続ける専業主婦へ「秋の夜長のトルコライス」。
そして親子のあり方に悩む柳田とシャール、それぞれの結論とともに食す「再生のうどん」。
共感&美味しさ満載、リピート間違いなしの1冊です。

読みました…。またこの作品に出会えてよかったです。こうして傍で優しく寄り添ってくれるような作品があって本当に嬉しいです。
「蒸しケーキのトライフル」私が言うのもなんだけどマナチー←はいくらでも変われるのにななんて読んでいて思いました。世界は広いのに。きっと広い世界を知ることが出来る人なのに。母親の言葉、ショックだっただろうな。何も言わずに傍にいてくれたおばあちゃんの存在が大きかったというのも凄く気持ちが分かって、変わっていく姿が読んでいて嬉しかったです。また、前作で登場した常連さんたちがみんな登場してそれも嬉しかった。マナチーにシャールさんが言った「それで充分」という言葉。私の心にも深く刻まれました。
「梅雨の晴れ間の竜田揚げ」裕紀の気持ち、凄くよく分かる。子供の頃に抱いた親に対する感情って大人になってもぬぐえないですよね。親だって人間だもん。平等に子供を育てるなんて無理ですよね。それでも子供はそれを敏感に感じちゃうんですよね。もう大人だから別にいいけどなんて思っているのも事実だけど良くないって思っているのも事実で。それでもちょっと手のかかる子供とか、結婚出産をした子供とか、そっちの方が気にかかるのは当然ですよね。当然だって分かっているけど、それでも。
以前テレビである人が「親だって自分の事をちゃんと考えてみてくれてるわけじゃないじゃないですか。皆自分のことしか結果考えていないんですよ」って言っていて当たり前のことなのにハッとしちゃって。私は親に求めすぎてたんだななんて改めて思ったりして。自分自身どうしてほしいかわからないのに。
裕紀は前に進んでいきましたね。私も早く前に進んでいきたいです。
「秋の夜長のトルコライス」辻村さんの作品でもほぼ同じテーマのお話がありましたけど、今そんなに話題になっている内容なんですかね。親が自分の子育てにズカズカ入り込んでくるの。余計なお世話ですよね←時代も違うし、自分の言葉が自分の子供を縛り付けている事、ちゃんと気づいてほしいです。
「冬至の七種うどん」シャールさんにもいろんな過去があるんですよね。前作でもちらっと言っていましたけど…。柳田という存在は意外と←大きかったのかもしれないですね。最後にシャールさんに言った言葉、かっこよかったです。メタボ親父なのにやりますね(言い方)2人はこの友人関係をずっと続けていってほしいなと思います。柳田はシャールの事をずっと御厨と呼んで良いと思います。それが良いと何だか思います。
やっぱりこの作品は温かくて優しくて少し泣いた後元気をもらえます。明日からも頑張ろうと思えます。この作品に出会えてよかったです。また、シャールさんたちに逢いたいです。

<中央公論新社 2016.11>H29.2.16読了

マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ 古内一絵5

マカン・マラン - 二十三時の夜食カフェマカン・マラン - 二十三時の夜食カフェ
著者:古内 一絵
中央公論新社(2015-11-21)
販売元:Amazon.co.jp

オススメ!
ある町に元超エリートのイケメン、そして今はドラァグクイーンのシャールが営むお店がある。様々な悩みを持つ客に、シャールが饗する料理とは?

タイトルが気になって手に取りました。読んでよかった!
シャールさんが作る料理がどれも美味しそうで癒されそうで元気になりそうで、私も食べに行きたいと思いました。落ち込んでいる時に行ったら、シャールさんが優しい言葉をかけてくれそう。側にいてくれるだけで良い。行きたいなー。
この作品は4作からなる連作短編集。主人公はそれぞれ違い「春のキャセロール」は広告代理店に勤める城之崎塔子、「金のお米パン」はシャールの同窓生で中学教師の柳田、「世界で一番女王なサラダ」は雑誌記者のさくら、「大晦日のアドベントスープ」はシャールを尊敬しているジャダ。
それぞれ生き方が不器用ででも一生懸命で真っ直ぐな人たちばかり。少し心や体が疲れたとき、マカン・マランへ行きシャールの優しい食事を食べる。皆少し元気になって前を向いていく姿に私も元気づけられました。
続編もあるみたいなので読んでみようと思います。

<中央公論新社 2015.11>H29.1.16読了

今日から仲居になります 中居真麻5

今日から仲居になります今日から仲居になります
著者:中居 真麻
PHP研究所(2016-05-25)
販売元:Amazon.co.jp

京都市内の会社で事務員として働く坂瀬川虹子は、単純でやりがいのない仕事、加えてセクハラに倦む日々を送っていた。しかし、上司の送別会で訪れた老舗旅館のサービスに心打たれ、虹子はそこで働くことを決意する。キックボクシング世界チャンピオンで浮気者の夫を持つ妻、口うるさくて気難しい料理評価家、「おこもり」に長期逗留するわがままな脚本家など、一筋縄ではいかないお客様たちに接するなかで、虹子が見つけた「働くことの意味」とは。

OLとして働く虹子がこのままで良いのかと悩んでいた時に出会った老舗旅館。
女将さんに直談判し、仲居となって働くことになった虹子。
この子、ホントはちゃめちゃなんです^^;自分の思ったことは正しいと思ってポンポンやってしまって、取り返しのつかないことをした後も何とかしようと奔走したりするんです。
最初はこんな仲居ありえねーだろと思っていたのですが。
虹子の仕事に対する一生懸命さはとても伝わってきて、どんどん頑張れーと応援していきたくなりました。
女将さんがどうして虹子を採用したのか、最後の方に分かりますがうるっとしますね。
人間関係も、仕事も、縁ってあるんだろうなと思えるラストで良かったです。
中居さんの書かれる物語は少し胸が痛くなるけど前向きになれます。
私も仕事が大変でも「好き」と言える仕事がしたい。

<PHP研究所 2016.5>H28.10.29読了

タスキメシ 額賀澪5

タスキメシタスキメシ
著者:額賀 澪
小学館(2015-11-25)
販売元:Amazon.co.jp

陸上の名門高校で長距離選手として将来を期待されていた眞家早馬(まいえそうま・高3)は、右膝の骨折という大けがを負いリハビリ中。そんな折、調理実習部の都と出会い料理に没頭する。一学年下で同じ陸上部員の弟春馬、陸上部部長の親友助川、ライバル校の藤宮らは早馬が戻ってくることを切実に待っている。しかし、そんな彼らの気持ちを裏切って、心に傷を抱えた早馬は競技からの引退を宣言する。それぞれの熱い思いが交錯する駅伝大会がスタートする。 そのゴールの先に待っているものとは……。
高校駅伝、箱根駅伝の臨場感溢れる描写とともに、箱根駅伝を夢見て長距離走に青春を捧げる陸上青年それぞれの思いと生き様が熱く描かれる。青年達の挫折、友情、兄弟愛・・・。熱い涙、しょっぱい涙、苦い涙、甘い涙が読む者の心を満たします。
読後は爽快感と希望に溢れる熱血スポーツ小説です。

「すずらん本屋堂」で紹介されていた本です。ご本人も登場されていました。
新人賞を2作同時に受賞しデビューした凄い方なのですが受賞後最初の作品だそうです。
大変だったけど駅伝シーズン前に出そうと頑張ったそうです。
しかも額賀さん、25歳なのに「今、桜美林大学で監督をされているステファン・マヤカ選手が現役の頃から駅伝を見ていて」って一体何歳から見てるんですか!?
負けた…←
まあそんな発言聞いちゃったら読まないわけにはいかないですよね。
(それにゲストで来ていた山田さんが「今は駅伝は兄弟が熱いですよね〜設楽兄弟とか村山兄弟とか服部兄弟とか」っておっしゃって尚更興奮した)
主人公は2人の兄弟、早馬と春馬。
駅伝で兄弟で早馬と春馬なんて某大学の某兄弟を思い出しちゃいますけど^^;
でも主な舞台は高校時代。
兄早馬は怪我をしたことで陸上を辞めようとしていて、弟春馬は兄の帰りを待っている。
早馬の辞めたい気持ちも分かるし春馬の戻って来てほしい気持ちも分かるし…凄くもどかしかったです。
そんな早馬が都を通して料理と出会い、偏食の春馬に何とかして野菜を食べさせたいと奮闘する姿は確かに生き生きして見えたような気がしました。
陸上を辞めた後の目標もちゃんと出来て、そういう流れで行くのかなーと思ったら話の展開は思わぬ方向へ向かいました。
去る者、追う者、このタイトルはぴったりだなと思いました。
早馬と春馬の物語ではあるのですが、稔や都や助川や藤宮と言った周りの人たちも素敵です。藤宮との絡みをもっと読みたかったなー。
早馬が自分で選んだ道、それは決して楽な道ではなかったと思うけど、でもきっと幸せだったんだろうなと思います。
物語の幕間のように出てくる2区を走る春馬と助川と藤宮の鼓動が聞こえてくるようで、こちらも興奮しました。
この2区の早馬が登場するシーンは(多少ネタバレになるので伏せますが)数年前の東海大の2人の選手のシーンを思い出して何だか泣きそうになっちゃいました。きっと額賀さんも思い浮かべて書いたはず!(分かる人には盛大なネタバレ)
この作品を読んで、ますます箱根駅伝が楽しみになりました。
間に合ってよかったー。
そういえば余談ですけど、藤澤大学って駒大がモデルかな?藤色のユニフォームみたいだし。英和学院大学は名前は中央学院大っぽいけどえんじ色ってことは早稲田かな?日本農業大学は東京農業大学か青学か…なんてことを想像するのも楽しかったです。

<小学館 2015.11>H27.12.28読了

王先生の薬膳レストラン 春のレシピ 南部くまこ5


王先生の薬膳レストラン~春のレシピ~ (MF文庫ダ・ヴィンチ mewシリーズ)王先生の薬膳レストラン~春のレシピ~ (MF文庫ダ・ヴィンチ mewシリーズ)
著者:南部 くまこ
KADOKAWA/メディアファクトリー(2015-03-24)
販売元:Amazon.co.jp

大手食品メーカーで働く、主人公の日夜子は、ある日美貌の薬膳師・王先生と出会う。以来彼の勤めるレストランへ、薬膳料理を学びに同僚のポンちゃんと足繁く通うことに。王先生のレストランには、オーナーの橘や中医師の美女・小百合、弟子の琉平という魅力的な人物が集い、きらきらとした非日常的な世界が広がっていた。偶然に社内の秘密を知ってしまった日夜子が王先生に相談をすると…!?

だから表紙がすんごい意味深な感じで…びーえるテイスト…
でも違いますよ。アラサー女性が主人公の中医師の王先生との恋物語です←それも違う
シリーズ第2弾です。第1弾の本当にすぐの続きです。
王先生の優しさや言動は本当に日夜子に気があるような感じがしちゃうんですけどどうなんだろう…でも橘との関係も気になるしうーむ。。。
でも今回の主人公は日夜子とポンちゃんが務める職場の上司三田村さんのお話が割と主だったかな。私も三田村さんはポンちゃんの言うような女性なのかと思ったら、恋の変化でそんなにボロボロになっちゃうような人なんだ・・・って意外だったかも。
でも、そこまで人を好きになれるって素敵だな。私はそこまで身近な人を好きになったことがないと思うし・・・結構淡白だと思うんですよねー。
それに今は恋愛したいと思わないし。それどころじゃないし。
だから王先生のことが好きな日夜子がだんだん変わって強くなって言っているのもまた微笑ましくて素敵で。羨ましいと思います。
まだ続きますよね…王先生との関係も気になるところです。あと、琉平君の恋の行方も^^

<メディアファクトリー 2015.3>H27.7.16読了

王先生の薬膳レストラン 南部くまこ5

王先生の薬膳レストラン (MF文庫ダ・ヴィンチ mewシリーズ)王先生の薬膳レストラン (MF文庫ダ・ヴィンチ mewシリーズ)
著者:南部 くまこ
KADOKAWA/メディアファクトリー(2015-02-24)
販売元:Amazon.co.jp

大手食品メーカーで働く島村日夜子が出会った王と名乗る男性は、一度見たら二度と忘れられない美貌の薬膳師だった。彼が働くレストランに集う、王の相棒を自称する橘という男と中医師の美女。魅力的な王と彼らに少しでも近づきたい日夜子は薬膳の勉強をはじめた。モノクロだった日夜子の日常が一気にカラフルに変わりはじめる…。疲れた女性の心と体を癒す王先生の薬膳レストラン、ついに開店!

あらすじを読んで面白そうだなぁと思って図書館で予約したら表紙にビビりました^^;
ちょっと借りる時恥ずかしかったです^^;
でも、読んでよかったです。面白かった。
主人公がアラサー女性ですし、悩んでいることや趣味が似すぎてて…。自分の事を読んでいるよう…。日夜子も王先生と出会ったことでガラッと変わるんじゃなくてちょっとずつ変わろうとして、少しずつ歩もうとしているのが良いなと思いました。
でも実際に自分で試すって言うのは薬膳だから難しいですけど、薬膳自体に興味を持ちました。
読んでよかったなー。
そして続編も出てることが分かったのですが…さらに読むのためらうんすけど…
表紙がびーえるテイスト…あ、そういうのがダメっていうわけじゃないですよ決して。

<メディアファクトリー 2015.2>H27.6.18読了

フィッターXの異常な愛情 蛭田亜紗子5

フィッターXの異常な愛情フィッターXの異常な愛情
著者:蛭田 亜紗子
小学館(2015-04-01)
販売元:Amazon.co.jp

オススメ!
広告代理店に勤める32歳の國枝颯子は、うっかりノーブラで出勤したある日、慌てて駆け込んだランジェリーショップ「Toujours Ensemble(トゥージュール・アンサンブル)」で男性のフィッター・伊佐治耀に出会う。フィッティングを通して、伊佐治からいい加減な生活習慣や生き方を指摘された颯子は、自分を見つめ直すようになる。
自分の”女らしさ”を否定して生きてきた後輩の百田馨、旬を過ぎたスキャンダル女優の本城夕妃、女装の趣味があるクライアントの大狼社長、出産後のセックスレスに悩む同期の美鈴・・・颯子をとりまく人々も、伊佐治のランジェリーの魔法によって少しずつ変わり始めて――!?
一歩前に踏み出せずにいる女子たちに贈る、前代未聞のランジェリー・ラブコメディ!!

だいぶ前にすずらん本屋堂だと思うのですがタイトルを見て気になっていた本でした。初読み作家さんです。
読んでよかったです。ホント、読んでよかった。
自分に合った下着を選ぶことで自分の生活習慣や体と向き合い、改善させて綺麗に見えるように努力する。
明らかに颯子がみるみる綺麗になっていくのが分かりました。
最後はとても魅力的な女性になっていて。
だから恋愛部分に来た時はお!と思ったのですが、私、すぐにタメ口になる男性って独占欲強そうで嫌だなーと思って最初から嫌悪感を抱いて読んでいたら^m^案の定な感じで。良かった。颯子が我慢して先へ進まなくて。
そしてその後の意外な展開。前向きになって強くなって魅力的になった颯子の身に起きた出来事。私は経験したことがないから想像でしかないけど、女性にとっては本当にショックなものだろうなと思う。それでもちゃんと乗り越えた颯子は強いと思うし、更に美しく、魅力的になったと思います。
伊佐治の言葉を読んで涙が出そうになりながら、でも笑顔にもなれて、こちらも幸せになれました。
私も颯子と同世代で良い大人の年齢になってきたし、ちゃんと自分のサイズを測って今の自分の心身に合った下着を身に付けたいなと思いました。背筋を伸ばして凛とした女性になりたいです。

女による女のためのR‐18文学賞出身の作家さんは私は相性が良いようで今まではずれがありません。
蛭田さんの作品を他にも読んでみたいと思いました。
余談ですが小説の中で「ここの地域は披露宴が会費制なので1万5千円払えばいい」というくだりがあって、この著者さんは北海道出身では?と思ったらやっぱり北海道だったのでちょっと嬉しくなりました^^

〈小学館 2015.4〉H27.5.30読了

この靴、なげたい 中居真麻5

この靴、なげたい (文芸書)この靴、なげたい (文芸書)
著者:中居 真麻
徳間書店(2014-10-08)
販売元:Amazon.co.jp

彩は男と別れる決意をし、碧は同僚のまー子に嫉妬し、奈緒美は甲斐性のない旦那に怒り狂い、智佐は自分が何をしたいのかわからず、詩絵は好きだった男に会うために背伸びをし、珠子は夢のためにホテルの部屋を掃除する……。やりきれない想いは、彼女たちの行動を加速させていく。けれども、そこには未来に繋がる道がきっとあるはず――。6人の人物たちの個性に合った靴を通じて、彼女たちが自らのストレスと向き合う姿を味わえる連作短編集。

中居さんの作品は何冊か読んでいますが読んでいてイタタタ…と思うことが多いです^^;身につまされることが多すぎます。でもだからこそ共感できるから読む手が止まりません。
偶然にも前に読んだ伊坂さんと同じような連作短編集でいろんなところでいろんな人がリンクしていてそのつながりも面白かったです。
どの人たちもアラサーくらいでいろんなことで悩んでいてやりきれなさを感じていて。私も同じだなぁと思いながら読んだのですが。
私も、このやりきれない想いは、頑張れば未来に繋がっていくのかななんて思ったりして。
靴の種類が章ごとに分かれているのもその章の主人公の雰囲気が凄く伝わってきて良かったです。私は何かな。
個人的には背が高いのでいつもペタンコ靴を履いているのだけど、ピンヒールが似合う女性になりたいなという願望もあったりします^^;
私もここに出てくる女性たちみたいに、来年は前向きになれていたらいいなぁ。

〈徳間書店 2014.10〉H26.12.5読了

初恋料理教室 藤野恵美5

初恋料理教室 (一般書)初恋料理教室 (一般書)
著者:藤野 恵美
ポプラ社(2014-06-02)
販売元:Amazon.co.jp

オススメ!
京都の路地にたたずむ古びた町屋長屋。どこか謎めいた愛子先生が営む「男子限定」の料理教室では、今日もさまざまなドラマが起こる―。
第一話「初恋料理教室」気になる女性の一言がきっかけで料理教室に飛び込んだ建築家の卵・智久。不器用な恋の行方はいかに。
第二話「であいもん」お菓子作りと女性をこよなく愛するパティシエのヴィンセント。自分の店を構えようとした矢先、思わぬ事件が起きる。
第三話「ふたりの台所」男性限定のはずの料理教室にフランス人形めいた装いで現れる性別不詳のミキ。一緒に食卓を囲む相手とは。
第四話「日常茶飯」家事も子育ても全部妻に任せきりだった彫刻職人の佐伯。突然「料理教室に通ってください」と言い渡され・・・

藤野さんの作品は2冊目です。「ハルさん」を読んで以来でした。いつ振りかと思ったら7年ぶり。時が経つのは早くて怖いです。
ということで今作。装丁とタイトルに惹かれて読みました。もうもうもう!素晴らしかった!4人が4人とも素敵でした!読み終えた後にとっても幸せな気持ちになれました。やっぱりこういう作品が良いです。こういう作品が読みたいです。読んでよかった。
読み終えた後、ちゃんと料理をしたいなと思いました。平日は家に帰ってきたら疲れちゃって、つい野菜もきのこも何でもお味噌汁に突っ込んで終わりみたいな感じにしちゃったり^^;朝も早いからお弁当はおにぎりと卵焼きでパターン化されてるし…。私のごはん味気ないなーと反省しました。お休みの日くらいちゃんと作ってみようかな。
それにしてもどうして「ハルさん」以来藤野さんの作品を読んでいなかったのか不思議です。ほかの作品も読んでいきたいと思います。
ということで順番に感想を。
「初恋料理教室」建築家の卵の真渕君が本当に素直で一生懸命で純朴で素敵です。私、こういう人と付き合いたいです。無理かな。真渕君が気になった女性は図書館で出会った司書さん。レファレンスをしてもらったことがきっかけ。司書の永遠子さんがオススメしていた本の中の1冊「火山のふもとで」は気になっていてタイミングが悪くて結局読めていなかった本でした。そうだ、建築関係の本だった。しかも有名な建築家らしき人が出ているんですか。そこら辺は私は疎いので悔しいですが、今の積読本がなくなったらぜひとも読みたいなと思いました。今まで女性と付き合ったことのない真渕君が恋に悩みつつ仕事にも一本気でまじめで一生懸命な姿が本当にかっこよかったです。
「であいもん」こちらもヴィンセントは女性に慣れていると言っても純愛な感じが醸し出されているお話でしたねー。メインはそこじゃないんですけど^^;ヴィンセントの日本人は会話をしないっていう言葉がずしっときました。そうだなーそうだよねーってちょっと反省。反省しても変わらないと思うけども。お店の問題も恋愛についてもうまくいってほっこりしました。
「ふたりの台所」ミキもジュリアもとてもいい子。良い子だからこそもどかしくて悔しい。もっともっと自分に自信をもっていいのに。もっともっとわがまま言って甘えていいのにって思ってしまった。母親は祖母に反発しているだけならまだしも子供にも自分のわがままを押し付けている母親失格だと思いました。人としても。ミキとジュリアには幸せになってほしいです。
「日常茶飯」この作品で私うるうるしました。なんて、なんて素敵な夫婦愛。佐伯さんは読み始めカタブツなのかと思っていたのだけどそんなことはありませんでした。昔かたぎではあるけど柔軟なところもちゃんと持っていて、頭ごなしなところもなくて。素敵な男の人でした。だからこその奥さんの想い。もう温かくて愛情に満ち溢れていて。今からでも遅くなんてない。間に合ってよかったと思いました。本当に感動しました。

〈ポプラ社 2014.6〉H26.6.24読了

舞台 西加奈子4

舞台舞台
著者:西 加奈子
講談社(2014-01-10)
販売元:Amazon.co.jp

「生きているだけで恥ずかしい――。」自意識過剰な青年の、馬鹿馬鹿しくも切ない魂のドラマ!
29歳の葉太はある目的のためにニューヨークを訪れる。初めての一人旅、初めての海外に、ガイドブックを暗記して臨んだ葉太だったが、滞在初日で盗難に遭い、無一文になってしまう。虚栄心と羞恥心に縛られた葉太は、助けを求めることすらできないまま、マンハッタンを彷徨う羽目に……。決死の街歩きを経て、葉太が目にした衝撃的な光景とは――?
思い切り笑い、最後にはきっと泣いてしまう。圧倒的な面白さで読ませる、西加奈子の新境地長編小説!

西さんの作品はデビュー作「さくら」を読んで以来手に取っていませんでした。その作品が私の中にははまらなくて。でも、西さんの作品をオススメしている芸能人を凄く見かけるようになって、気にはなっていました。
この作品は王様のブランチの特集で知り、ブランチリポーターがインタビューの途中で泣くというハプニングがあり^^;そ、そんなに凄い作品なのかと思い、手に取りました。
読み始めた段階で思ったのは太宰治の「人間失格」を読んでいるようだと思ったこと。実際その作品名が出てきましたし、主人公も名前が似ていることから共感を持っているようでした。だからどんどん主人公が追い詰められていく姿は読んでいてドキドキして怖くなりました。頭の中で考えている様々なことが、精神状態がおかしくなってきていることで研ぎ澄まされてきているような…
葉太は葉太なりに答えを導き出すことが出来てよかったね。
でも…泣くほどではなかったし、心に染み入る…までも行かなかったなぁ。私はどこかおかしいのか。

〈講談社 2014.1〉H26.2.28読了

迷える四姉妹 中居真麻4

迷える四姉妹迷える四姉妹
著者:中居 真麻
宝島社(2013-08-02)
販売元:Amazon.co.jp

柴門ふみさん推薦! 恥ずかしいくらい“女"をさらけ出した、イタ面白い恋愛小説の傑作です。孤独にうんざりしているアラフォー、迷走するアバズレ、シュジン依存症の専業主婦、マイナス思考のかたまりのニート――。とある田舎町に暮らす、ちょっと病んでる「四姉妹」の物語です。柴門ふみさん書き下ろしカバーが目印です!

タイトルと内容が気になって読みました。最近アラサーという言葉に敏感です^^;
この物語は四女葵、三女夏果、二女くるみ、長女七緒の物語です。アラサーアラフォーの姉妹の年末1週間の物語。
共感できるかというとそれはちょっと違うのだけど、イタイ人たちだと思いつつも感情移入できる部分もあったりして、私もきっとイタイ女なんだろうなと思う。
夏果のアバズレ具合もくるみの不倫の末に結ばれた結婚生活も、私は共感できなかったけど、葵のかなりのマイナス思考具合は分からないでもなかった。1年ニートは信じられないけど。ツイッターでつぶやいたら即座に返事をする両親が素敵でした。
1番共感できたのは長女の七緒かなぁ。朝のバタバタした感じが好きっていう気持ち、私も何となく分かります。寝坊してバタバタするんじゃなくて、決めた時間に起きて朝食やお弁当の準備をバタバタとしてちゃんと間に合わせる感じ。私もそれは好き。
それから、実家を出たら自分のいる場所じゃないと感じるっていうのも分かる。私は七緒のような状況じゃないけど、居心地が変わったような気がする。しょっちゅう帰ってるけど。私の場合は良い距離感ができたっていうことかなと前向きにとらえました。と共感できるところはほかの姉妹に比べたらあったけど、さすがに人形のくだりは共感できませんでした^^;
それでいいの?と、もやもや感が残る部分もあった作品でしたけど、おもしろかったです。いろんな考え方の女性がいて、いろんな人生があるんだって思えたし。
私はアラサーで身長もそこそこあって(165cm)肩幅もがっちりあるのだけどひらひらふわふわな服が好きなんです。自重してることはしてるけどそういうお店で服を買った後に満足と同時に似合うのか?というのとイタくないかな?と思います^^;大丈夫かなぁ。大丈夫だよね…。自分がイタそうだと1番思うのは服です^^;
まあ他にも色々たくさんイタイ部分はあると思いますけど。見の程はわきまえてますけど。でもそれでいいじゃないか、イタくて何が悪いっ!って思わせてくれた気がしました。

〈宝島社 2013.8〉H25.12.12読了
自己紹介
苗坊と申します。
読書とV6を愛してやまない道産子です。47都道府県を旅行して制覇するのが人生の夢。過去記事にもコメント大歓迎です。よろしくお願いいたします。
Categories
Archives
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

記事検索
Recent Comments
  • ライブドアブログ