苗坊の徒然日記

読書とV6をこよなく愛する苗坊が気ままに書いてます。 お気軽にどうぞ。

女性作家(さ・た行)

誰もいない夜に咲く 桜木紫乃4

誰もいない夜に咲く (角川文庫)誰もいない夜に咲く (角川文庫)
著者:桜木 紫乃
角川書店(2013-01-25)
販売元:Amazon.co.jp

寄せては返す波のような欲望にいっとき身を任せ、どうしようもない淋しさを封じ込めようとする男と女。安らぎを切望しながら寄るべなくさまよう孤独な魂のありようを、北海道の風景に託して叙情豊かに謳いあげる。

短編集です。この作品は以前出た「恋肌」に加筆修正を加えた作品なんですね。
新刊なのに文庫?と思ったので。なるほど。
どの作品もやっぱり暗くてさびしくなります。それでもみんな懸命に生きていて。
でも、女性はこんなに逞しくなきゃダメなのかなぁなんて思ったりもして。
男の人に縋って甘えて生きていったって良いじゃないって桜木さんの作品を読んでいると思います。
出てくる女性の試練が辛すぎるんだもの。短編になるとそういう作品が多いから体調不良の時に読むとちょっとつらくなります^^;
加筆した「風の女」が1番好きでした。
ちょっと矛盾しているかもしれないけど、こういう女性の生き方もかっこいいなと思いました。

〈角川書店 2013.1〉H25.4.24読了

黄金の庭 高橋陽子4

黄金の庭黄金の庭
著者:高橋 陽子
集英社(2013-02-05)
販売元:Amazon.co.jp

お寺の閻魔様が動き回り、池の蓮の花からお釈迦様が現れる。不思議なことがおこる町に引っ越してきた青奈夫婦。ある日、質屋で手に入れたオパールの指輪がしゃべり出し…。不思議な町の平凡な日常を描く、新しい大人のファンタジー。第36回すばる文学賞受賞作。

すばる文学賞受賞作です。受賞作じゃないと多分知らないまま、読んでいなかったと思います。
良かったです。面白かった。楽しかった。じゃなくて、良かった。ですね。
主人公の青奈は結婚して3年経つのに子供に恵まれず、義理の家族にプレッシャーを与えられて焦っていた。更に色々重なって無職になり、職探しの日々。そんな中、怪しげな千ちゃんから仕事をしないかと持ちかけられます。
青奈の仕事面でも家庭面でも必死なのが伝わってきました。その気持ちが凄く伝わってきて切なくなりました。そういう現実的なところもあり、アーちゃんというどんなに悪い事をしても許される子どもの存在がどこかファンタジーで、でもそれがこの物語の鍵でもあって…
言葉で説明するのが上手くいきませんが、青奈のプレッシャーを感じている初めからの心の変化がとても良く書かれているなと思いました。
初めて気味が悪くて怖いと思っているアーちゃんの存在も変わっていきましたし、怪しい男の千ちゃんの印象も変わりましたし、何より旦那さんへの想いも変わっていったと思います。
その心の変化が良かったと思いました。
質屋で仕入れた「おしゃべりオパール」もなかなか面白かったです。長く生きているだけあっていうことはまともなんですよね^^
上手く伝えられないのが残念ですが。良い作品でした。

〈集英社 2013.2〉H25.3.14読了

ホテルローヤル 桜木紫乃4

ホテルローヤルホテルローヤル
著者:桜木 紫乃
集英社(2013-01-04)
販売元:Amazon.co.jp

恋人から投稿ヌード写真撮影に誘われた女性店員、「人格者だが不能」の貧乏寺住職の妻、舅との同居で夫と肌を合わせる時間がない専業主婦、親に家出された女子高生と、妻の浮気に耐える高校教師、働かない十歳年下の夫を持つホテルの清掃係の女性、ホテル経営者も複雑な事情を抱え…。

道東にあるホテルローヤルに纏わる男女の物語です。
連作短編集でホテルの従業員やお客さんなどの想いが描かれています。
ホテルローヤルが廃墟と化している時代にはじまり、経営されている時期、またできる前のお話が最後を締めくくります。時がだんだん遡って行くんですよね。それが上手いなと思いました。
女性の悲愴さを書いたら桜木さんはNO.1だと思います。褒めてます。
読んでいて痛々しくて辛いのに、どうしてか読みたくなって読んでいたら止まらなくなる。桜木さんの作品はいつもそう思います。だから、新刊が出れば必ず読んでいます。過去の作品も読みたいなと思ってます。
お客としての物語も良かったですが、このホテルを作った家族の物語が印象的です。
家族がいるにも関わらず若い女性と付き合い、子供が出来て新しい家族でホテルを経営することになって。
始めにホテルの末路や家族の末路が分かっているので1番最後の物語「ギフト」を読んだときは切なくて仕方なかったです。前の物語を読見返して悲しくなったり。
それでも短編集どの作品も何だか光があるような気がして、だから心に染み入る部分もあったりして。だから桜木さんの作品は止められません。
「シャッターチャンス」
「本日開店」
「えっちや」
「バブルバス」
「せんせぇ」
「星を見ていた」
「ギフト」

〈集英社 2013.1〉H25.1.28読了

思い出のとき修理します 谷瑞恵4

思い出のとき修理します (集英社文庫)思い出のとき修理します (集英社文庫)
著者:谷 瑞恵
集英社(2012-09-20)
販売元:Amazon.co.jp

仕事にも恋にも疲れ、都会を離れた美容師の明里。引っ越し先の、子供の頃に少しだけ過ごした思い出の商店街で奇妙なプレートを飾った店を見つける。実は時計店だったそこを営む青年と知り合い、商店街で起こるちょっぴり不思議な事件に巻き込まれるうち、彼に惹かれてゆくが、明里は、ある秘密を抱えていて…。どこか懐かしい商店街が舞台の、心を癒やす連作短編集。
「黒い猫のパパ」引っ越してきた商店街にあるパン屋店主の恋人が黒い猫を捜していた。名前はパパという。幼いころに亡くなった父の代わりに飼っていた黒猫をパパのように感じていたのだという。
「茜色のワンピース」明里はハル洋裁店のハルエさんから頼まれごとをする。それはハルエさんがかつて着ていたワンピースを着て縁日を歩いてほしいのだという。春江さんには後悔していることがあった。気になってたまらなかった人に、思いを伝えることが出来なかった。
「季節外れの日傘」老婦人がぶたのぬいぐるみを捜しているのだがこのあたりにないかと尋ねてきた。また同時期に20歳くらいのツインテールの女の子も全く同じぬいぐるみを捜していると言っていた。
「光をなくした時計師」時計屋さんの元へ女性が訪ねてきた。名前で呼ぶ女性に明里は今まで意識したことがなかったにも関わらず気になる。時計屋さんがなぜこの商店街で時計店を営んでいるのか、その真実を知りたいと思った。
「虹色の忘れ物」時計屋さんの事が気になってきたが、明里は時計屋さんが知る過去の自分とは違うことをずっと気にかけていた。明里はこの商店街にひと月だけやってきたときの事を思い出す。

書店で表紙を見て気になり、図書館に入ったので予約しました。
予約を待っている間に予約者が増える増える。あれ?そんなに人気の作品なの?と思ったら「伯爵と妖精」シリーズを書いている方なんですね。私は読んだことがないですが、図書館では良く見かけます。シリーズものは読みたいと思ってももう追いかける元気がありません・・・気になっているシリーズはたくさんあるんですけどねー。
ということで今作。可愛らしいほっこりするお話でした。
ちょっとSFっぽくてメルヘンっぽさも感じますけど、それでもやっぱり最後に幸せを感じる作品って良いですよね。
時計屋さんの過去に明里の過去、それが繋がった時になるほどと読んでいる側も腑に落ちました。2人とも傷ついたけど、その分これから幸せになれるって信じています。
時計屋さんって本当に緻密ですよね。海外には凄い技術を持っている方がいると聞いた事があります。何か、階ごとに偉さが変わるとか・・・凄く曖昧^^;
私はタイチ君もお気に入りでした^^見た目はきっとイマドキな男の子だと思うのですが意外と古風でちゃんとした子なんですよね。そして要所要所で良い仕事をするんですよ^^
癒されるお話でした。
機会があったら(あるのか?)伯爵と妖精シリーズも読んでみたいです。何冊あるんだっけ?・・・さ、30巻・・・ム、ムリ〜。

〈集英社 2012.9〉H24.12.4読了

左京区恋月橋渡ル 瀧羽麻子4

左京区恋月橋渡ル左京区恋月橋渡ル
著者:瀧羽 麻子
小学館(2012-04-23)
販売元:Amazon.co.jp
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初めて恋するときめきを描いた純情恋愛長編
四年間の学生生活を送った京都で、山根は四月一日から工業化学科の大学院生として新たなスタートをきった。学部生のころから暮らしている学生寮には、生物学科の安藤をはじめ電気電子工学科の寺田などゆかいな仲間たちのほか、数学科の龍彦もときどき遊びにやってくる。研究室でその日、明け方までかかってやっと山根は仮説を裏づける数値を導き出したが、教授から簡単な計算ミスを指摘され、ひとり居残りを命じられる。気分転換に糺(ただす)の森を訪れると突然の雷雨に見舞われ、豪雨の中に浮かび上がる満開の山桜の向こうに、白いワンピースを着たそのひとがいた。あれこれ考える前に楼門の下まで駆け寄り、自分の傘を彼女の足もとに置いて、一目散に立ち去っていた山根。ずぶ濡れになったせいか熱を出し、熱が下がってからもどうも様子がおかしい。そして京都御苑での花見の席で、龍彦のガールフレンドの花にいとも簡単に見抜かれる。「山根くん、もしかして好きなひと、できた?」。花は言う、もう一度姫に会いたければ、下鴨神社に毎日参拝すべし――と。

ネタバレあります

「左京区七夕通東入ル」の続編です。前回主人公だった龍彦君と花ちゃんの友達、山根君の物語です。
山根君のおそらく初恋物語。あまりにも奥手な山根君が可愛くて可愛すぎて母性本能をくすぐりましたよ。どうしてそうなるー!とツッコミどころが満載すぎます。
でも、山根君は頑張りましたよ。最初は花ちゃんのアドバイス通りでしたけど、正直に話してからは自分から頑張りましたし。
きっと報われないんだろうなぁと思いましたけど←
女性との関わりが皆無に近かった山根君にとってはいい経験だったのではないでしょうか。まあ、中学生のデートみたいだったけど(失礼な)
前回はあまり登場しなかった寮長、料理人、管理人の皆様もいい味出してました。
龍彦と花もあまり登場しなかったけど、2人の距離は更に縮んで、全然雰囲気の違う二人だったのに何だか似てきているのが分かって可愛らしく見えてきました。
山根君はこの恋愛をバネに、良い恋もしてほしいなと人の事を言ってる場合かと思いつつも思いました。

〈小学館 2012.4〉H24.9.25読了

氷平線 桜木紫乃4

氷平線 (文春文庫)氷平線 (文春文庫)
著者:桜木 紫乃
文藝春秋(2012-04-10)
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真っ白に海が凍るオホーツク沿岸の町で、静かに再会した男と女の凄烈な愛を描いた表題作、酪農の地を継ぐ者たちの悲しみと希望を牧草匂う交歓の裏に映し出した、オール讀物新人賞受賞作「雪虫」ほか、珠玉の全六編を収録。北の大地に生きる人々の哀歓を圧倒的な迫力で描き出した、著者渾身のデビュー作品集。
「雪虫」札幌で事業に失敗し、自己破産して実家の農家を手伝っている達郎はすでに結婚している四季子との関係を終えられずにいた。あるとき、親が女性を買い、フィリピンから嫁を迎えることになる。
「霧繭」和裁師として独立したばかりの真紀は、得意先の呉服問屋の顧客課長と付き合ったことがあり、男は問屋のおかみとも関係を持っていた。2人でいるときは気まずい。
「夏の稜線」京子は東京から北海道の僻地へ嫁いできた。農業を営んでおり姑は男が生まれるのを待っている。近所でもよそ者扱いされ、今日子は居場所がなかった。
「海に帰る」昭和49年。25歳で独立し理髪店主の圭介は偶然店を訪れたキャバレー勤めの女性と関係を持つ。
「水の棺」歯科医師の良子は勤める歯医者の院長との関係を断ち切るためにオホーツクの僻地にある歯科へ行くことを決意する。
「氷平線」誠一郎はこの僻地と両親から逃れるために東大へ合格し10年後、税務署長として北海道へ戻ってきた。その時にかつて肌を合わせた女性と再会する。

予想はしていましたけど、暗くて切なかったです。
北海道に住む人々がその場所で生きていく姿。それは何だか諦めもあるような感じで。
最後は前向きになれるのかと思ったら、そういう作品もあるけど悲しい結末だったり…本当に読んでいてやりきれなかったです。
それでも読む手が止まらない。桜木さんの作品は何だかとても引き込まれます。
桜木さんは見たことのある場所じゃなければ書けないと言われたそうです。だから北海道の特に釧路を舞台にすることが多く、また経験のある美容師という仕事を書かれることが多いんですね。そして情景が目に浮かぶようです。何だか、寒さが伝わってきます。
どの作品もどこか危なげで心配な終わり方ばかりだったのだけど、頑張ってきた彼、彼女たちだから、幸せになってほしいと思って本を閉じました。

〈文藝春秋 2007.11
        2012.4〉H24.8.29読了

左京区七夕通東入ル 瀧羽麻子4

左京区七夕通東入ル (小学館文庫)左京区七夕通東入ル (小学館文庫)
著者:瀧羽 麻子
小学館(2012-04-06)
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七月七日にわたしたちは出会った。
京都での学生生活も4年目。主人公の花は思いがけないことをきっかけに、友人のアリサから合コンに誘われる。
三条木屋町の店にひとり遅れて現れた男子は、その場にそぐわない一風変わった雰囲気の持ち主だった。
名前は龍彦だという。「たっくんて呼んでいい?」「いいよ」。文学部で数学嫌いの花にとって、理学部数学科のたっくんは謎に満ちていて、
また彼の暮らす学生寮の友人たちもどこかキテレツな理系男子で、花はこれまで経験しなかった不可思議でにぎやかなキャンパスライフを送ることになるのだが……。
いま注目の若手女性作家・瀧羽麻子が、京都を舞台にのびやかに描いた青春キャンパス・ラブストーリー。

書店で文庫本が並んでいて装丁とタイトルに惹かれて読んでみました。初読み作家さんです。
舞台が京都なので、マキメさんとかモリミーさんとかそんな雰囲気も感じましたが。それでも女性作家さんなので、悪い意味じゃないんですけど小汚い感じっていうか^^;貧乏くさい感じがお二人よりも少ない気がしました。
主人公の花はおしゃれが大好きで、友達も多くて、よく飲みに行ったりクラブに言ったりしているイマドキ?の女の子。でも、人数合わせの合コンに参加した時に出会った「たっくん」に一目ぼれし、花の生活は変わっていきます。
始めの花は、自分が大学生の時だったらきっと友達にはならなかったタイプだなと思うのだけど、後半の花はちょっと話が出来そうな感じになったかもと思いっきり自分目線ですが^^;思いました。
花はたっくんに出会ってから変わりましたよね。たくさんの事に興味を持って彼氏もその中の一つにすぎなかった花だけど、たっくんに出会ってからはたっくんの事を知ろうと努力してる。それが特別かっこいいわけでもなくてそれでも何だかとても惹かれるしどんどん好きになるっていう流れが凄く好きでした。
甘酸っぱいベタな恋愛小説かななんて失礼なことを思っていましたけど、ほわっと癒される作品でした。ヤマネ君とアンドウ君の存在も良いですね。
花ちゃんが遊び仲間に加わって4人で遊んでいる姿は本当に楽しそうだなと思いました。
私は女子大だったし、望んでないのにバイトでシフトを入れられまくって明け暮れていたから、こういう大学生活は羨ましいななんて昔の事を思い出した作品でした。
続編も読むのを楽しみにしています。

〈小学館 2009.7
      2012.4〉H24.8.24読了

凍原 桜木紫乃4

凍原凍原
著者:桜木 紫乃
小学館(2009-10-14)
販売元:Amazon.co.jp
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17年前、弟を湿原に奪われた松崎比呂は刑事となって札幌から釧路に帰ってきた。その直後、釧路湿原で他殺死体が発見される。捜査を進めるうち、比呂は65年の時を経て消えない“眼”の因縁に巻き込まれてゆく。

いやー…色々人間関係が入り組んでいて絡みすぎていて消化しきれないです…。
松崎比呂は17年前に弟の貢を失くし、家族はバラバラに。そして刑事となり関わった案件は湿原で見つかった他殺体。その被害者の母親はすでに他界していて、姉がいた。そんな似た境遇だからか比呂は熱心に事件を追いかけます。
戦後直後と現在が行き来して物語が進んで行きます。
そのつながりが流石だなと思いましたし、だんだん諸々と絡み合って繋がっていく結末に読む手が止まりませんでした。被害者である鈴木洋介は日本人の親から生まれたにもかかわらず青い目を持っていた。家族をバラバラにしたこの青い目の正体を知るためにたどっていた軌跡を比呂と片桐も追っていく。
ただ家族の軌跡を辿るつもりがその中にとんでもない真実が隠されていて、その扉を開けてしまった被害者。ただ、自分は知りたかっただけなのにね…。
そして更に犯人にびっくりした。全く想像していなかった人物だったから…
何だかいろんな人のいろんな境遇を読んでいてグロッキー状態です・・・
気持ちが暗いときに読んじゃダメですね・・・
でも、私の感情はともかくとして面白かったです。
一人一人の物語が大切に描かれていて、どの人にも感情移入が出来ました。
桜木さんの作品は結構ずしっとくるので、頻繁には読めないのだけど、徐々に読み進めていきたい作家さんです。何より道産子ですからね!

〈小学館 2009.10〉H24.6.23読了

起終点駅(ターミナル) 桜木紫乃5

起終点駅(ターミナル)起終点駅(ターミナル)
著者:桜木 紫乃
小学館(2012-04-16)
販売元:Amazon.co.jp
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オススメ!
生きて行きさえすれば、いいことがある。
「かたちないもの」笹野真理子が函館の神父・角田吾朗から「竹原基樹の納骨式に出席してほしい」という手紙を受け取ったのは、先月のことだった。十年前、国内最大手の化粧品会社華清堂で幹部を約束されていた竹原は、突然会社を辞め、東京を引き払った。当時深い仲だった真理子には、何の説明もなかった。竹原は、自分が亡くなったあとのために戸籍謄本を、三ヶ月ごとに取り直しながら暮らしていたという
「海鳥の行方」道報新聞釧路支社の新人記者・山岸里和は、釧路西港の防波堤で石崎という男と知り合う。石崎は六十歳の一人暮らし、現在失業中だという。「西港防波堤で釣り人転落死」の一報が入ったのは、九月初めのことだった。亡くなったのは和田博嗣、六十歳。住んでいたアパートのちゃぶ台には、里和の名刺が置かれていた。
「起終点駅」鷲田完治は釧路で弁護士をしている。かつて妻と息子がいたが、息子が5歳の時に離婚している。今、椎名敦子という覚醒剤所持のため逮捕された女性の案件を受け持っていた。判決が下された後、敦子は鷲田の元へやってきて頼みごとをする。しかし鷲田は断った。敦子の強いまなざしを見て、彼は同じような目をしていた女性を思い出す。篠田冴子という女性で、かつて一緒に暮らしていた女性だった。
「スクラップ・ロード」飯島久彦はここ最近ずっと午前4時に目が覚める。飯島は大手の銀行に勤めていたが心労のため退職。無職の状態だった。仕事が決まらない中、飯島は廃品を集めている人物の中に見知った顔があることに気づく。それは、飯島が中学生の時、農家という仕事も妻も息子も捨てた父親だった。
「たたかいにやぶれて咲けよ」里和は中田ミツという歌人の取材を行っていた。しかし、ミツが亡くなったと聞く。里和はミツと関わりのあった人達に会いに行った。ミツの姪からはミツの恋愛についてを聴き、また姪からミツが5年間共に過ごした男性がいることを聞く。血縁関係があるわけでもないのにミツから土地を譲り受けた近藤悟という男だった。
「潮風の家」久保田千鶴子は30年ぶりに故郷の天塩へやってきた。ずっと帰ってこなかったのは「強盗殺人犯の姉」というレッテルから逃げ出すためだ。両親を失い、親同然によくしてくれたたみ子に会い、30年という月日をかみしめる。

桜木さんの作品は「ラブレス」を読んでからは新刊が出ると読むようになりました。
どの作品も一筋縄ではいかなくて、主人公たちの境遇は決していいものではなくて生きている事に必死だったりもがいていたり苦しんでいたり、読んでいてとてもつらくなる時もあるのだけど、それでも最後にはほんの少しでも光が射しているように感じるのです。その一筋の光を感じたくて読み続けているのかもしれません。
今回の作品もまさにそうで、読んでいて辛い部分がたくさんありました。恋愛についてだったり、仕事についてだったり、家族についてだったり。何かしらの「欠落」した部分をみんな抱えていて、それでもがいているのだけど、人と出会い関わっていくことで考え方が変わったり少し前向きになったりして最後にはほんの少し光が見えてきます。
最後にほんの少しだけ微笑むことが出来るような。
「海鳥の行方」と「たたかいにやぶれて咲けよ」に出てくる里和はあこがれの新聞記者になったけど、上司のセクハラ、パワハラに悩み苦しみ、でも自分を失わずに闘っている姿は、痛々しくてそれでも必死で逞しく感じました。
「潮風の家」も本人が悪いわけではないのにレッテルを張られ、そんな中でも必死で生きてきた女性の姿が私は美しく感じました。自分がたくさん傷ついて必死で生きてきたから、人にやさしい言葉をかけることが出来るのかなと思ったりして。
強盗殺人事件の起きた場所っていうのが悲しいけど、天塩は私も行ったことがあります。道北だから少し寒いけどのどかで素敵なところです。
本当に、生きてさえいればいいことがあるんだと思わせてくれた作品でした。

〈小学館 2012.4〉H24.5.1読了

ワン・モア 桜木紫乃5

ワン・モアワン・モア
著者:桜木 紫乃
角川書店(角川グループパブリッシング)(2011-11-29)
販売元:Amazon.co.jp
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オススメ!
「十六夜」柿崎美和はある不祥事により左遷され加良古路島で勤務している。きわめて評判が悪く、またそこで木坂昴という男性と出会い身体を重ねる日々。彼には身重の妻がいた。ある日、同じ医師であり友人の滝澤鈴音から連絡が入る。彼女が余命宣告を受けたようだった。
「ワンダフル・ライフ」滝澤鈴音は父の遺志を継ぎ開業医として働いている。病院を建てるときに知り合ったハウスメーカーの営業社員志田拓郎と結婚した。しかし開業してすぐに妊娠が発覚してしまう。鈴音は過去を思い出し、自分の余命が幾ばくも無いと知り、拓郎に側にいてほしいと思うようになる。
「おでん」滝澤医院の近くにあるトキワ書店の店長佐藤亮太はいつものように夜遅く帰宅すると、かつて書店でバイトをしていた坂木詩緒がいた。彼女の顔には殴られた跡がありかなりひどい状態だった。
「ラッキーカラー」滝澤医院に勤める看護師浦田寿美子は5年前、がん患者だった赤沢邦夫に「5年待っていてほしい」と言われていた。もうすぐ5年が経つ。ある日、病院に1通の手紙が届いた。赤沢からの手紙だった。
「感傷主義」八木浩一は放射線技師だ。美和や鈴音と高校からの同級生。鈴音にずっと憧れていた。彼だけは経済上の理由から私立も浪人も出来ず医師の道から外れてしまい、ずっとそれを引きずっていた。鈴音に余命宣告が下されていることを知り、戸惑う。
「ワン・モア」鈴音と拓郎が一緒に再度暮らし始めて1年が経とうとしていた。ある日、拓郎の父親から連絡が入る。なぜか、結婚をすることになったらしい。拓郎は鈴音を連れ、実家へ荷物を取りに帰ることになった。

前に「ラブレス」を読んでとてもよかったので、桜木さんの作品はまた読みたいと思っていました。新刊が出たことを知りさっそく読みました。
「ラブレス」も良かったけど、私はこちらの方が好きかもです。
滝澤鈴音という内科医が若くしてガンとなり余命宣告を受け、彼女を始め彼女の周りの人たちの関係も変わっていきます。
連作短編になっていてたくさんの人が主役となるのですが、滝澤医院という一つの場所とのかかわりがうまいなぁと思いますし、人と人との関係も良かったです。
こうやってつながっていくんだなぁと思いましたし。
出てくる人たちは30代から50代の男女。結婚について仕事について、悩みや考えは様々です。でも、どこか重みがあるというか…長く生きてきた分余計に悩んじゃったりとかいろいろ見えてきちゃったり考えちゃったり。みなさん不器用だなと思いました。
でも、そこまで器用で前向きな人なんてそうそういないですよね。
出てくる人たちみんな、どこかしら共感できるところがあった気がします。
鈴音が余命宣告を受け、離婚したものの1度も嫌いになったことがない拓郎への想いは切ないくらいに伝わってきましたし、浦田さんの年齢が行き過ぎてしまったからこそ、悩んでいる姿は可愛かったけど切なかったり。拓郎だって1度別れている鈴音と再び過ごすという事の葛藤もいろいろあるんだろうなと思ったし。
どれもリアルでどれもどこか幻想的で、うまく伝えることが出来ないのですがとにかく私はとても好きな作品でした。
鈴音の病気についてはそこまで大きく語られることはないのだけど、そこでみんな「死」についても考える。そして、奇跡を信じたいと願う。
恋愛に対しても病気に対しても、信じること願うこと、あきらめない気持ちの大切さをこの物語は伝えようとしているのかなと思いました。
言葉足らずですが、うまく伝えられないのがもどかしいですがとにかくとても好きな作品でした。

<角川書店 2011.11>H24.1.21読了

ラブレス 桜木紫乃5

ラブレスラブレス
著者:桜木 紫乃
新潮社(2011-08)
販売元:Amazon.co.jp
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馬鹿にしたければ笑えばいい。あたしは、とっても「しあわせ」だった。風呂は週に一度だけ。電気も、ない。酒に溺れる父の暴力による支配。北海道、極貧の、愛のない家。昭和26年。百合江は、奉公先から逃げ出して旅の一座に飛び込む。「歌」が自分の人生を変えてくれると信じて。それが儚い夢であることを知りながら―。他人の価値観では決して計れない、ひとりの女の「幸福な生」。「愛」に裏切られ続けた百合江を支えたものは、何だったのか?今年の小説界、最高の収穫。書き下ろし長編。

図書館でやたらと予約が付いていたので便乗して予約して読んだ1冊です。
タイトルと装丁とは雰囲気の全く違う内容。
真面目でその時その時を一生懸命生きた女性百合江。
百合江はその時その時を一生懸命生きているのに。どうして報われないんだろうってもどかしさを感じてずっと読んでました。でも、そういう風に思うのも失礼なんですよね。
百合江は幸せだと言っていたのだから、それで良かったのかな。
百合江も里実もその時その時を一生懸命生きたんだろうけど、里実の考えは何一つ共感できなかったし、里実のせいで綾子を失ったんじゃないか。里実のせいで百合江が無一文になってしまったんじゃないかなんて、ちょっと責めてしまったところもあった。でも、その気の強さがないと生きていけなかったんですよね。それは分かるんですけど、誰しもが同じ考えなわけではなくて自分の考えが正しいとは限らないっていうことをちゃんと分かってほしいなと思った。いまさら無理か。
綾子の行く末は驚きました。まさか殺しはしないだろうとは思っていたけど。でも、記憶が前世だなんて・・・。それがたまらなく悲しくて悔しい。
そして最後の最後。来るのが遅すぎだよ!どうしてもっと早く来てくれなかったの?
でも、来てくれて良かった。そう思える最後でした。
何だか感想がうまく書けません。
でも、百合江は自分を悲観することは決してありませんでした。誰かを責めることもしませんでした。とても強い人間だと思います。
だから、理恵の考えも何だか好きになれなくて。どうも百合江目線になってました。
それこそ、何が正しいのかなんて答えはないんですけど。
桜木さんの新刊も予約しているので読むのが楽しみです。
そういえば、きっと北海道出身なんだろうなと思ったけど釧路市出身だったんですね。

〈新潮社 2011.8〉H23.12.23読了

角のないケシゴムは嘘を消せない 白河三兎4

角のないケシゴムは嘘を消せない (講談社ノベルス)角のないケシゴムは嘘を消せない (講談社ノベルス)
著者:白河 三兎
講談社(2011-01-06)
販売元:Amazon.co.jp
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兄/信彦―「しばらく家に泊めてよ」「無理」突然上京してきた妹のお願いを、俺は瞬殺するしかない。なぜならウチには…透明人間の恋人が住んでいるから。妹/琴里―隣を歩いていた彼氏が忽然と消えた。見つけ出して殴らなきゃ、私の初恋は終われない!…でも、どうやってアイツは“消失”したんだろう?兄妹の恋路はいつしか重なり、新たな謎を孕んでいく。疾走!迷走!先の見えない恋と人生の行方は。

作家さんの名前も初めて知りましたし、タイトルも聴いたことがなかったのですが、図書館に新刊で置いてあってもの凄く気になったので読みました。
いや〜・・・とにかく長かったのですが^^;まあ、面白かったです。
語りが信彦と琴里が交互になって進んでいくのですが、そこに「MONO消し」と「TOMBOW」という名前がついています。
始めは意味が分からないのですが、段々その意味も分かってきます。
といっても、私はどうも全部は分からなかったのですが。
「MONO消し」は消す人。「TOMBOW」は見える人。なのかな?簡単に言うと。
琴里は可愛らしい名前とは裏腹に本当に気の強い女の子。
でも、他人へのはむかい方は私は共感できるところもあったり^^;
最後は納得したようなしていないような。
ノブと琴里、それぞれ好きな部分があり、好きじゃない部分もありました。
だから共感できる!と思ってもずっとそうはいかないんですよね。
上手く言えないのですが。
でも、ノブの元妻の加奈子は最初から最後まで嫌いでした。
悟君がとても健気で、敬語の使い方が上手いのが切なかったです。
全体的な物語は面白かったです。
この作品で2作目だそうなので、新刊が出たらチェックしてみたいと思います。

〈講談社 2011.1〉H23.3.4読了

尼僧とキューピッドの弓 多和田葉子4

尼僧とキューピッドの弓 (100周年書き下ろし)尼僧とキューピッドの弓 (100周年書き下ろし)
著者:多和田 葉子
販売元:講談社
発売日:2010-07-24
おすすめ度:4.0
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官能の矢に射られたわたしは修道女。熟年の女が第二の人生を送る修道院を訪れた作家。かしましい尼僧たちが噂するのは、弓道が引き起こした“駆け落ち”だった。時と国境を超えて女性の生と性が立ちのぼる、書き下ろし長篇小説。

図書館で新刊案内を見ていたら気になったので読んでみました。
修道院というのは、未知の世界なので、その世界を垣間見えて勉強になったかなと思います。
実際に著者さんも1ヶ月修道院に滞在されたそうですね。
隔離された空間なんですけど、意外と活動的な修道女たち。
世間話や噂話が好きなのも人間らしいですよね。
ただ、隔離されている空間だから新しい風が入ってくるのを嫌がる人もいる。
仕方ないのかもしれないけど。
「わたし」が頼ってきた尼僧院長はすでに辞めていて、何と男の人と出て行ったのだという。
その人の話が修道院の中でみんなが話していなくても空間で分かる。
その独特の雰囲気は私は読んでいて嫌いじゃなかったです。
どこかしら性の匂いがするというか、官能的な雰囲気があって、酸いも甘いも経験した女性たちが住んでいる場所なんだなと言うのが文章を読んでいて伝わってきました。
大きな展開はないのだけど、割と好き。
最後の章はその噂の人が出てきたりして、読者は真相が分かるのもまた良かったかな。

〈講談社 2010.7〉H22.10.5読了

百万円と苦虫女 タナダユキ3

百万円と苦虫女百万円と苦虫女
著者:タナダ ユキ
販売元:幻冬舎
発売日:2008-05
おすすめ度:5.0
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ひょんなことからうっかり前科ものになってしまった鈴子は、どこにいても実に所在がない。ならばいっそのこと、所在そのものをなくしてみよう!そんなネガティブだかポジティブだかわからない発想から、『百万円貯めては住処を転々とする』ことに。ままならない人生を、「えぇい、ままよ!」とカート一つで旅に出た鈴子。そんな彼女を待ち受けているものとは…。ちょっとビターで憎めない女の子の旅物語。

まず映画が気になり、映画みたいけど原作があるんだ〜原作読んでから観よう〜でも原作がいつも行ってる図書館にない〜う〜ん・・・
・・・と思っている間に時は過ぎ^^;
こんなに遅くなってしまいました。
続きが気になって気になって。あっという間に読んでしまいました。
面白かったです。
鈴子は本当に間が悪いというか、運の悪い子だったんだと思います。
気持ちは分かります。相手の事を考えて言った言葉が逆に相手を不快に感じさせてしまったり、伝わらなかったり。
微妙に共感できるところがあって、感情移入して読みました。
でも鈴子はたくましいですね。かつての同級生3人に囲まれても立ち向かっていくのがかっこよかったです。
海の家で働いたり、桃農家で働いたり、ホームセンターで働いたり。
人と関わりたくないわりに関わりまくっているし。
そして鈴子がいなくなると、関わった人の心に変化があるようでそれもまた良かった。
良かったのだけど、ラストは私はちょっとがっかり。
幸せになってほしかったのに。
2人はまだいいけど、弟君がもの凄く気になる。
拓也は悪くないのに。逃げたっていいんだよ。
映画は観るかな〜どうかな〜
にしてもこの鈴子役は蒼井優は適役だね。
・・・多分褒めてます。

〈幻冬舎 2008.5〉H22.9.9読了

夏から夏へ 佐藤多佳子4

夏から夏へ
夏から夏へ

走れ!!陸上日本代表男子リレーチーム。『一瞬の風になれ』の佐藤多佳子初の書き下ろしノンフィクション。
第1部 世界陸上大阪大会
北サイド・スタンド
スタート前—1走
スタート前—2走
スタート前—3走
スタート前—4走
予選
インターバル
南サイド・スタンド
決勝
第2部 スプリンター
再始動
マイウェイ
長い冬
裸の心
楽しいから
リズム
沖縄の一日
片付いた部屋
Goodtime

北京オリンピック4継銅メダルを獲得した朝原選手、末續選手、高平選手、塚原選手に著者が取材したもの。
この作品は北京五輪の前に発行されているんですよね〜。先駆け。
輝かしい栄光の裏にはやはり並々ならぬ苦労や努力があるんですよね。
4人がとても仲が良いんですね〜。
言葉の掛け合いが、とても微笑ましかったです。年上に対して失礼ですが。
朝原選手がお父さん。末續選手がお兄さん。2人は弟。そんな感じです。
スポーツ選手って、本当にストイックですよね。
練習内容を読んでいるだけでゾッとしました^^;
もう凄いとしかいいようがないです。
大阪陸上はあまり観ていなかったのですが、リレーは5位入賞だったのは知ってました。
アジア新記録だったんですね。
そして、北京オリンピック。
朝原選手、引退しなくて良かったですね。
この作品の中に、こんな言葉がありました。
「北京で追いたい夢は、4継のメダル」P.232
獲ったよ!って、ニヤニヤしちゃいました。
リレーの決勝戦はリアルタイムで見てたんです。
家族みんなで絶叫して、ガッツポーズをしました。
皆さんの努力が、実を結んだんですよね。読んでいてそれが伝わりました。
そして、その栄光を掲げられる人も入れば、その光を浴びる事ができない人も入るんですよね。
4人も、監督も、皆さんが「リザーブの小島君がいたからだ」と言っています。
出場する選手と一緒にウォーミングアップをして、スタートの直前まで準備をしているのに走れないなんて、辛いですよね。
経験した人しか分からない辛さだと思います。
小島選手も、覚えました^^
これからも、陸上界からは目が離せませんね。

〈集英社 2008.7〉H20.11.5読了

一瞬の風になれ 3 ドン 佐藤多佳子5

一瞬の風になれ 第三部 -ドン-

オススメ!
高校の最終学年を迎えた新二。
入部当時はまったくの素人だったが、今では県有数のベストタイムを持つまでに成長した。
才能とセンスに頼り切っていた連も、地道な持久力トレーニングを積むことで、長丁場の大会を闘い抜く体力を手にしている。
100m県2位の連、4位の新二。そこに有望な新入生が加わり、部の歴史上最高級の4継(400mリレー)チームができあがった。
目指すは、南関東大会の先にある、総体。
もちろん、立ちふさがるライバルたちも同じく成長している。
県の100m王者・仙波、3位の高梨。彼ら2人が所属するライバル校の4継チームは、まさに県下最強だ。
部内における人間関係のもつれ。大切な家族との、気持ちのすれ違い。
そうした数々の困難を乗り越え、助け合い、支え合い、ライバルたちと競い合いながら、新二たちは総体予選を勝ち抜いていく――。

一気に読んでしまいました。この3連休をこの本に費やした感じです・・・^^;いいけど。
やっぱりいいなぁ、スポ根。
新二好きです。こういうまっすぐでちょっと不器用で、恋愛にはカナリ鈍い人^^
一度決めたらとことんなんですよね。
どんどん追求していくんですよね。
そして、満足はしないんですよね。それが本当にかっこよかったです。
谷口とも予想通りの展開で^^羨ましいなぁもう。
最後に皆で抱き合っている姿は、何だか頭の中で想像できました。
青春ですよね。
ベタかもしれないけど、本当にこういうシーンは感動するし大好きです。
最後の最後で、連の事も好きになれました。
陸上部のみんなが、かっこよかったです。
良い本に巡り合えました。
何だかこちらも、勇気をもらった気がします。
辛い事も、悲しい事も、乗り越えていける逞しさを、新二のように苦労しながらも^^;身につけていかなきゃなぁって思いました。
最後も気になる終わり方をしていましたよね~。
憎たらしいったら^^

〈講談社 2006.10〉H19.7.16読了

一瞬の風になれ 2 ヨウイ 佐藤多佳子4

一瞬の風になれ 第二部

冬のオフシーズンを経て、高校2年生に進級した新二。
冬場のフォーム作りが実を結び、スピードは着実に伸びている。
天才肌の連も、合宿所から逃げ出した1年目と違い、徐々にたくましくなってきた。
新入部員も加わり、新たな布陣で、地区、県、南関東大会へと続く総体予選に挑むことになる。
新二や連の専門は、100mや200mのようなショートスプリント。
中でも、2人がやりがいを感じているのが4継(400mリレー)だ。
部長の守屋を中心に、南関東を目指してバトンワークの練習に取り組む新二たち。
部の新記録を打ち立てつつ予選に臨むのだが、そこで思わぬアクシデントが……。

第2部、昨日夜更かしして読みました^^;読み終わったら外が白んでいたよ。
2年生になって、新二も連も逞しくなったね。
思わぬアクシデントによるチームの結束力や絆には感動でした。
守屋さん素敵でしたね~。
最後の最後の涙は、本当にカッコイイと思いました。
そしてさらにアクシデント。
ビックリでした。3部はどうなっちゃうんでしょう。
気になります~><

〈講談社 2006.9〉H19.7.16読了

一瞬の風になれ 1 イチニツイテ 佐藤多佳子4

一瞬の風になれ 第一部 --イチニツイテ--

主人公である新二の周りには、2人の天才がいる。
サッカー選手の兄・健一と、短距離走者の親友・連。
新二は兄への複雑な想いからサッカーを諦めるが、連の美しい走りに導かれ、スプリンターの道を歩むことになる。
夢は、ひとつ。どこまでも速くなること。
信じ合える仲間、強力なライバル、気になる異性。
神奈川県の高校陸上部を舞台に、新二の新たな挑戦が始まった――。

図書館に予約していて、ようやく読めました。
予約した日を確認したらなんと2006年12月。8ヶ月も待ってたんですね。ビックリ。
あっという間に読んでしまいました。
面白かったですね。まさに青春でした。
記録やプレッシャーとの葛藤。恋愛に対する葛藤。
私はスポーツの部活には入っていなかったので、身近に感じられないのがちょっと悔しいです。
やっぱりスポーツに生きてる人ってカッコイイなぁと思います。
想いがまっすぐで一生懸命で。素敵ですよね。
だから、私はちょっと連は苦手です。悪い奴じゃないって事は分かってるんですが。
新二のようにちょっと自信を持てなくて、でも一生懸命な子のほうが良いなぁ。
これから2部3部はどういう展開が待っているのか、とても楽しみです。

〈講談社 2006.8〉H19.7.14読了

しゃべれどもしゃべれども 佐藤多佳子4

しゃべれどもしゃべれども

今昔亭三つ葉、当年26。
三度の飯より落語が好きで、噺家になったはいいが、いまだ前座よりちょい上の二ツ目である。
性格は頑固で気が短く、おまけに女性の気持ちにはめっぽう疎い。
そんな三つ葉に落語指南を頼む物好きな人が現われた。
その人たちが一癖も二癖もある困り者ばかり。
気まぐれで口下手なために失恋ばかりしている美女に、教室には苛めにあってる小学生や赤面症の野球解説者。吃音を治したい青年。
奇妙な人の集まりから、落語教室が始まった。

今年映画の公開が決まったと言う事で、読んでみました。
佐藤さん初読です。
落語に興味はあるんですけど、聞きに行ったこともないし、お話もあまり知りません。
この作品は、落語メインって言うよりは、人間関係がメインな気がします。
落語教室はもちろん、小学生の村林の置かれている状況や良の吃音によって職を追われている事。
湯河原の性格や五月の心の傷。
そして、三つ葉の人間関係に対する不器用さ。
一人では解決できない事を、皆が集まって傷を広げることもありつつ、癒す存在になっていく過程が何だか良いなぁと思いました。
段々5人の性格も分かっていくしね^^
ちょっと長いかなとも思ったけど、好きな作品です。
映画も観てみたいです。
三つ葉役を太一君か・・・イメージが沸くような沸かないような^^;
後のキャストはあんまり分かってないんですが、多分見ると思います。
まずは「タイガー&ドラゴン」を見て、落語を勉強しようかしら・・・。
結局見てないのよね^^;

〈新潮社 1997.8〉H19.2.9読了

十一月の扉 高楼方子4

十一月の扉

爽子は小さな町に住む中学3年生。いつも弟が買った双眼鏡で近所を眺めている。
その中で初めて見る大きな家を見つけた。
爽子は自転車を走らせてその家を探した。そして、そこが「十一月荘」という名前である事を知る。
父親の都合で東京へ引っ越す事になったが、中途半端な時期であり、受験生でもあることから、爽子は2ヶ月「十一月荘」で下宿する事になる。
また、「十一月荘」でやりたい事を見つけたいという思いもあった。
下宿先の同居人、閑さん、苑子、馥子。そして馥子の子どもるみ子。みんな良い人ですぐになじむ事ができた。
そして、やりたい事もみつけた。
文房具屋で買った立派なノートに物語を書くことだった。
物語を書いてからと言うもの、不思議な事が起きるようになる。

児童書です。結構長いお話。好きな作品です。
ほのぼのとしていて、かわいらしい感じ。
中学生の感情が良く出てたんじゃないかな〜と思う。
でも!読んだのが私が高校生の時だから、今はこんな中学生はいないのかな〜とも思ったりする^^;悲しい・・・。
あとから、耿介という男の子が登場するんだけど、この子もまた生意気でかわいい^^
2人だけのシーンがもっとあったら良いなぁと思ったんだけど・・・。それが残念かな。
そして、でてくる人みんな名前が素敵!
それもいいなぁと思った^^

〈リブリオ出版 1999.9〉

ハルモニア 篠田節子4

ハルモニア

東野秀行はチェロのプロ奏者である。
しかし、食い扶持は少なく、生活は良くはなかった。
秀行は、脳に障害を持つ浅羽由希を指導する事になった。
由希の隠れた音楽の才能に圧倒される。
だが、それは才能ではなく、人の真似。
由希は「自分の音」がなく、東野は独自の音を出させようとする。

98年にドラマ化されていた「ハルモニア」の原作。
キンキの光一君と、中谷美紀さん。今考えると、お2人とも若いわ〜^^;
私は弟役の人目当てで見てたんですけど^^;
ちょっと内容は違っていたけど、結構面白かった。
音楽が小説に出てくると、何だか素敵になる。
何というか・・・幻想的?
2人が素敵でした。

〈マガジンハウス 1998.1〉H14.1.5読了

奇跡の島 鷺沢萠2

奇跡の島

省介と真理子は夫婦で最後の旅を楽しんでいた。
その時に悲劇が起きる。
2人の乗っていたバスが、事故に巻き込まれる。
2人の運命は・・・

これ、正直よくわからなかったんだよね^^;
結末も過程も。
なので感想はあまり言えないです・・・。
すみません。

〈角川書店 2001.2〉H13.10.25読了

MADE IN HEAVEN Juri 桜井亜美4



Made in heaven (Juri)

科学警察研究所の心理技官として働く三谷樹里。
彼女には唯一の安らぎをくれた恋人、風道がいた。
ずっと一緒にいたいと思っていたのに、彼は突然姿を消した。
「愛している」と言えなかったから?
感情を上手く出せなかったから?
樹里はどんどん自分を追い込んでいく。
そして、さらに追い討ちをかけるかのように、残酷な事実を突きつけられる。

彼女、樹里の視点でかかれた方です。
こっちを後に読んだ方がいいかも。
私はこっちの方が好きだな。やっぱり同じ女性だからかな。
なんだか気持ちが分かる部分が多かったから。
感情を上手く表現する事ができないとか、甘えるのが苦手とか。
男の人は彼女にどんな事を求めているのか分からないから、不安になるんだよね。
まあ、樹里の場合ちょっと違う事もあるけど。
共感できるところが多かった。
ラストも良かったよ。

〈幻冬舎文庫 2003.8〉H16.9.24読了

MADE IN HEAVEN kazemichi 桜井亜美3



Made in heaven (Kazemichi)

風道は15歳の時、事故に遭い、身体の大部分が人工物となった。
五感も欲望も失った風道だったが、ジュリという女性に会ってから、少しだけ生きたいと思った。
しかし、人工心臓の寿命は刻一刻と過ぎていく。

ずっと気になっていた作品です。
想像とはちょっと違ったかも。
こちらは風道目線。
人間としての感情や感覚の大部分をなくした風道は、生きる気力を失っていたんだけど、ジュリと出会ったことで、ちょっとずつ変わっていくんだよね。
それが切なかったなぁ。
恋愛以外の出来事は・・・難しくてついていけませんでした^^;

〈幻冬舎文庫 2003.8〉H16.7.19読了

海猫 谷村志穂4



海猫

貸切のバスに、雪よりも白い美しい花嫁が乗っている。
名を野田薫という。
薫はこれから、南茅部の漁師である赤木邦一の元へ嫁ぐ。
ロシアの血を持つ薫はとても美しく、そしてなぜかいつも寂しげだ。
そして、結婚して赤木家に嫁ぎ、邦一の弟、広次と出会う。

3部に別れている物語。
1部の最後、納得がいかなかった。
何でこうなるの!!って。
でも、ラストは凄く好き。
私は特に美輝が好きかな。
母親のことが許せなくて、強い意思をもって生き抜いてきた。
だから恋愛のことは人一倍怖がっているのかな。なんて。
みんなの生き方が素敵で、いいなって思ったよ。

〈新潮社 2002.9〉 H16.11.25読了
自己紹介
苗坊と申します。
読書とV6を愛してやまない道産子です。47都道府県を旅行して制覇するのが人生の夢。過去記事にもコメント大歓迎です。よろしくお願いいたします。
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