苗坊の徒然日記

読書とV6をこよなく愛する苗坊が気ままに書いてます。 お気軽にどうぞ。

女性作家(さ・た行)

冬眠族の棲む穴 標野凪4

冬眠族の棲む穴
標野凪
徳間書店
2024-12-12


25万部突破!ベストセラー「喫茶ドードー」シリーズの標野凪が贈る、二十四節気のショートショート。
「甘い香りにくるまって、心ゆくまで眠ってしまおう」
今日もおつかれさまでした。
やさしい季節が心をめぐる、とっておきの物語をあなたに。

二十四節気のショートショート。新しい!と思いながら読みました。どの作品も少し不思議で、シュールな作品やダークな作品、色々ありました。標野さんの作品だからほんわかしているお話なのかと思ったら油断しました(笑)え?どういうこと?と読み返す作品もあったりしました。私は「雨水」が好きだったかな。夫婦の会話が素敵でした。

<徳間書店 2024.12>2025.3.22読了

ネコシェフと海辺のお店 標野凪5



青い波が打ち寄せる浜辺にぽつりと佇む小屋は、料理上手なネコシェフの店。ここに辿り着くのは、仕事や恋愛、子育てなどに悩み「現実から逃げ出したい」と切実に願う人ばかり。マイペースで饒舌なシェフは、旬の魚を使い腕をふるう。ホッキ貝のチャウダー、土鍋で炊いた鯛めし、タルタルたっぷりアジフライ――美味しい料理にほぐれた心の中にある本音に向き合った時、小さな一歩を踏み出せる。疲れた心にそっと寄り添う物語。

ネコシェフのお店に辿り着く人たちは何となく繋がっていて、時系列もバラバラで面白かったです。始めの千晶や最後の雛菊は同世代なので、結婚している人していない人どちらの気持ちもなんだかわかる気がして胸がきゅっとなりました^^;今回登場した男性陣はなんだかみんなダメダメでしたね。浮気していたり、彼女がいるのに女友達と言い訳して恋愛ごっこのようなものをしていたりって相手の女性は同一人物なのがまたなんか嫌な感じでしたけど。
ひとりひとりの悩みや境遇についても上手いなと思いましたし、そのリンクも良かったです。私も元気をもらいました。そしてお魚をたくさん食べようと思いました(笑)

<KADOKAWA 2024.2>2025.3.15読了

レーエンデ国物語 夜明け前 多崎礼5

レーエンデ国物語 夜明け前
多崎礼
講談社
2024-04-16


あなたを愛しています。
兄妹は互いを愛していた。きっと、最期のときまで。
四大名家の嫡男・レオナルドは佳き少年だった。
生まれよく心根よく聡明な彼は旧市街の夏祭りに繰り出し、街の熱気のなか劇場の少女と出会う。
――そして、真実を知り、一族が有する銀夢草の畑を焼き払った。
権力が生む欺瞞に失望した彼の前に現れたのは、片脚を無くした異母妹・ルクレツィアだった。
孤島城におわす不死の御子、一面に咲き誇る銀夢草、弾を込められた長銃。
夜明け前が一番暗い、だがそれは希望へと繋がる。

革命の話をしようと言う言葉から始まるこちらのシリーズ。全5巻なので、今回も英雄たちは哀しい結末を迎えるのだろうな…と思いながら読み始めるので本当にいつも読んでいて辛かったです。
革命をせず、イザベルとレオナルドとルクレツィアが穏やかに毎日を過ごすことが出来ていたのなら、どんなに良かっただろう…。何度もそう思いました。
兄妹の絆はそれぞれの正義のために歩み始めても決して崩れることはなかった。愛しているから、信じているから殺した。…辛い。妹の人生が辛い。今回もたくさんの犠牲者が出ました。そして2人の正義が報われるにはまだ時間がかかりそうで。次回の最終巻で、今までの英雄たちが報われるときが来るのか。最後の最後こそハッピーエンドで終わってほしいです。

<講談社 2024.4>2024.7.4読了

レーエンデ国物語 喝采か沈黙か 多崎礼5

レーエンデ国物語 喝采か沈黙か
多崎 礼
講談社
2023-10-18


ルミニエル座の俳優アーロウには双子の兄がいた。
天才として名高い兄・リーアンに、特権階級の演出家から戯曲執筆依頼が届く。
選んだ題材は、隠されたレーエンデの英雄。
彼の真実を知るため、二人は旅に出る。
果てまで延びる鉄道、焼きはらわれた森林、差別に慣れた人々。
母に捨てられた双子が愛を見つけるとき、世界は動く。

シリーズの第三弾。今まではユリアとテッサがメインで女性目線が多かったですが今回は初めて男性が主役でしたね。ユリアもテッサもレーエンデのために闘ってきましたが、今回は闘い方が異なっていたのが面白かったです。ユリアやテッサがレーエンデのために闘ってきたことは決して無駄では無かった。帝国側が栄光をもみ消しても、歴史はちゃんと伝わっていく。アーロンとリーアンの関係は良くないものだと思って始めは見ていましたけど、お互いにお互いを想ってこじれた結果だったんですね(笑)とにかくアーロウが鈍くて!なんて鈍いんだ!何度マレナに同情したか分かりませんよ。本当に最後は良かったねと思いましたけど。惚れた弱みなんでしょうか←私はずっと2番目で良いとか健気すぎる…!そしてこのシリーズは登場人物誰もが印象的で1番インパクトがあったのはミラベル夫人でしょうか。いろんな意味で尊すぎる…!凄い!そしてここまでして旦那さんにバレたりしないのだろうかと思ったけど、終章を読んで納得。政略結婚だったのでしょうか。ある意味いい関係を築いてお互いを高めていったのかもしれないですね。凄い。
リーアンが生まれた時の天命はその通りになってしまったのかもしれないけど、マーロウが何年経っても諦めずに遺志を継ぎ、テッサたちが残した軌跡を未来へつなげていく事が出来て本当に良かったです。今まで終わり方が哀しいことが多かったので、いや今回も哀しいことはあったのだけど、それでもまだハッピーエンドと言える終わり方で良かったです。これからレーエンデ国がどう変わっていくのか楽しみでなりません。

<講談社 2023.10>2024.3.25読了

レーエンデ国物語 月と太陽 多崎礼5

レーエンデ国物語 月と太陽
多崎礼
講談社
2023-08-08


名家の少年・ルチアーノは屋敷を何者かに襲撃され、レーエンデ東部の村にたどり着く。そこで怪力無双の少女・テッサと出会った。
藁葺き屋根の村景や活気あふれる炭鉱、色とりどりの収穫祭に触れ、ルチアーノは身分を捨てて、ここで生きることを決める。
しかし、その生活は長く続かなかった。村の危機を救うため、テッサは戦場に出ることを決める。ルチアーノと結婚の約束を残して――。
封鎖された古代樹の森、孤島城に住む法皇、変わりゆく世界。あの日の決断が国の運命を変えたことを、二人はまだ知らない。

レーエンデ国物語2冊目です。小説というよりはレーエンデ国についての歴史書を読んでいるような気持ちになります。あまりにも壮大で、そして国を動かす戦乱の渦中の物語だから本当に読んでいて辛かったです。でも、続きが気になって読む手が止まりませんでした。
レーエンデに自由をもたらすために、自分の怪力の能力を生かして戦い続けたテッサ・ダールの物語。なんて強い女性なのだろう。強くて強くてだからこそ幼い頃に夢見ていた幸せな結婚もしてほしかった。何となくラストは予想が付きましたが想像以上の過酷さで辛かった…。生きざまが凄すぎました…。ジャンヌダルクのような…。
登場人物は皆が個性的でそして愛情深くて魅力的な人ばかりでした。テッサは強い女性だったけど、周りの人達にもとても恵まれていたのだと思います。もちろん、テッサの人柄があったからこそなのだろうけど。
ルーチェのその後も辛すぎました。何もかもを失ってしまったから、人ではなく鬼になってしまったのでしょうか…。それとも何か意図があったのでしょうか。分かりません。ルーチェは海に還れたのでしょうか、種族が違うけどそれでもテッサと再会して結ばれてほしいと願ってしまいました。

<講談社 2023.8>2024.3.23読了

レーエンデ国物語 多崎礼5

レーエンデ国物語
多崎礼
講談社
2023-06-13


異なる世界、聖イジョルニ帝国フェデル城。
家に縛られてきた貴族の娘・ユリアは、英雄の父と旅に出る。
呪われた地・レーエンデで出会ったのは、琥珀の瞳を持つ寡黙な射手・トリスタンだった。
空を舞う泡虫、乳白色に天へ伸びる古代樹、湖に建つ孤島城。
その数々に魅了されたユリアは、はじめての友達、はじめての仕事、はじめての恋を経て、やがてレーエンデ全土の争乱に巻き込まれていく。

壮大な物語を読みました。気になっていた作品をようやく読めて良かったです。
多崎さんの作品を読むのは2冊目です。以前「叡智の図書館と十の謎」と言う作品を読みました。ゼロからどうしてこんな壮大な世界を生み出せるのだろうと当時も思っていた気がします。
フェデル城で育ってきたユリアは父が話すレーエンデと言う地に憧れを持ち、ついに父と共にその地へ向かいます。家のしきたりを守り、親よりも年上の男性と結婚することを受け入れようとしていたユリアにとってレーエンデと言う土地は人として大切なことを教えてくれていたように思います。そしてその地で出会ったレーエンデそのものだと感じた射手トリスタン。
多分3人が1番幸福だと感じていたであろう3人で暮らしている時期が読んでいても幸福でした。それでも争乱と運命に巻き込まれ3人は苦悩します。始めは何も知らないお嬢様だったユリアは勇敢な女性へと変わっていきます。出来ることならトリスタンと幸せに暮らしてほしかった。でも、英雄を父に持ち貴族として生きていたユリアにとってそれは許されない運命だったんですね。
最後は怒涛の展開でした。終章で3人が歴史の中の人物として語られていて驚きました。てっきり3人の物語が続いていくと思ったので…。あくまでレーエンデ国の物語が続いていくんですね。2作目も読むのが楽しみです。

<講談社 2023.6>2024.3.21読了

小公女たちのしあわせレシピ 谷瑞恵5

小公女たちのしあわせレシピ
谷 瑞恵
新潮社
2023-10-18


契約社員の野花つぐみは、お菓子レシピが隠された『小公女』の古書を見つける。それは不思議な老女・メアリさんの遺品だった。「ぶどうパン」「トライフル」「アブラミのお菓子」……つぐみの本探しと菓子作りはやがて、簡単にやり直せない過去を抱えた人々との優しい縁を結び始める。じんわり涙がこぼれる6つの連作集。

「ホテルのはな」の常連でかつての経営者の祖母と仲の良かったメアリさんが亡くなった。彼女はたくさんの物語を遺し、中に物語のモチーフとなるレシピが書かれていた。
私が読んだことがある物語は最後の「秘密の花園」だけでしたが^^;たくさんの英国児童文学を改めて知ることが出来て良かったです。つぐみがメアリさんのことを知りたいとレシピを作り始め、本とレシピをきっかけに人が繋がっていくところがとても好きでした。
つぐみがそのレシピとお菓子作りを通して自らの生き方を考え始めるところも良かった。そしてつぐみと蒼の関係も好きです。
これを機に登場した物語を読みたくなりました。

<新潮社 2023.10>2024.1.26読了

ふれあいサンドイッチ 谷瑞恵5

ふれあいサンドイッチ
谷 瑞恵
KADOKAWA
2023-03-20


大切な人と食べるごはんは特別な味がする。サンドイッチ専門店の癒しの物語
仲の良い姉妹・笹子と蕗子が営む小さなサンドイッチ専門店『ピクニック・バスケット』。
ここには悩みを抱えた人々が、心を癒す絶品サンドイッチを求めてやってくる。
ある日、蕗子はパンダのアップリケが付いた手作りのパスケースが店内に落ちているのを発見した。
密かに想いを寄せるパン職人・川端さんが持っていたものと似ている。
持ち主は誰だろうとやきもきして……。

シリーズ第3弾です。
今回は5編の連作短編でしたが、どれも素敵なお話でしたねー。
でも一貫していたのはどのお話にも少しだけ蕗子と川端さんの恋模様が書かれていることでしょうか。確か2人って両想いだったよなぁ…と思いながら読んでいたんですけど、じれったいですねー(笑)でもお互いに今までの恋愛遍歴で悩んだり傷ついたりしているから、相手に嫌われたくないが先に来ちゃうんでしょうね。毎日のように会っている2人ですし。それでもなんだかちょっとだけ進展したみたいでニヤニヤしちゃいました。多分気持ちは小野寺さんや笹子と同じだと思います^^
それぞれのお話で登場した人が別のお話で常連になっていたりするのが良いですよね。
住み慣れた街から娘夫婦の家に引っ越してきたおばあさんのお話は、娘さんが強そうだなぁと思ったけど、旦那さんが良い人で良かったなぁと思ったり、川端さんの姪が失礼なことをたくさん言ったのに親身になって考えていた姉妹が大人だなぁと思ったし←最後のお話は彼氏がなんて酷いやつなんだと思ったけど、お互いに歩み寄っているのが伝わってきて途中泣けてきたしでこのシリーズは悪い人が出てこなくて素敵だなぁと思います。
クロックムッシュですらあんまりわかっていないのにクロックマダムのことも分かって勉強になりました(笑)
このシリーズを読むと無性に美味しいパンが食べたくなりますね。

<KADOKAWA 2023.3>2023.5.14読了

こんな日は喫茶ドードーで雨宿り。 標野凪5



おひとりさま専用カフェ「喫茶ドードー」には、毎日をがんばり過ぎたお客さんがふらりと訪れる。
心が雨の日は、あなたも喫茶ドードーで雨宿りしていきませんか?
店主が腕によりをかけて作った「あなたの悩みに効くメニュー」をご用意して、今宵もお待ちしております。
美味しい料理に心がほぐれる連作短編集、シリーズ第二弾!

このシリーズは前作も今回もコロナ禍の中での物語で、ちょっと哀しくなりながら読んでいるのですが(笑)女性が頑張って生きていっている中での諸々の悩みから始まることが多くてちょっと心をえぐられます^^;
特に生まれつき顔に痣のある女性が、お店に入っても店員に誰も気づかれないとか、注文したのに自分だけ忘れられてるとか、分かるー!と思いながら読んでましたよね。素敵なもしくは美味しそうなお店だなと思って入っても、自分だけずっと名前が呼ばれなくて諦めて帰ったこともあるし、注文した料理が来ないこともあったし違うものが来たこともあったし、せっかくワクワクしながら入ったのに全然楽しめなくて、それなら家にいればよかったって何度思ったことか…だからネットショッピングに走るようになったんだな…って話が脱線しました^^;
「人からかけられた言葉に傷ついたり、かけた言葉で人を傷つけてしまったら、ワイヤーのハンガーのように形を何度も変えてやり直せば良い」
「自信は自分を信頼すること」
「傷ついた言葉たち、傷つけた言葉たち、みんな飛んでいけ」
きっと、前の勤め先で悩んで苦しんできたそろりさんが作る心と体を癒すメニューを私も食べてみたいです。

<双葉社 2023.3.>2023.5.11読了

本のない、絵本屋クッタラ おいしいスープ置いてます。 標野凪5



札幌にあるインクブルーの三角屋根が目印の、木造二階建て――そこが『本のない、絵本屋クッタラ』だ。看板には『おいしいスープ、置いてます。』と書いてあり、店主・広田奏と共同経営の八木が切り盛りするカフェでもある。メニューはスープセットとコーヒーのみだが、育児に悩んだり、仕事に忙殺されていたり、自分の今の立ち位置に迷った客たちが今日もふらりとやってくる。彼らの話に奏は静かに耳を傾けると、「御本が揃いましたらご連絡いたします」と告げる。そうして客はもう一度、店を訪れるのだ。奏のセレクトする絵本は時に意外で、時に温かく、時に一読しただけではわからない秘密をもっている……。そんな奏がこの店を開いた理由とは――? 季節のスープと登場する絵本に心が躍る、「今宵も喫茶ドードーのキッチンで。」の標野凪が贈る、ほっとひと息つける連作短編集。

「本のない、絵本屋クッタラ」のある場所が詳細に書かれていたので、本当にあるような気になりましたよね。あのあたりかなぁって。舞台が札幌なので勝手に親近感が沸きました。
奏くんと八木くんが経営するお店、最初からなんか変だなと思うところもあったんですけど、そういうことですか(笑)思わず笑ってしまいました。
自分の気持ちに合った絵本を私も奏君に選んでもらいたいなぁ。
この本を読んだ後に知ったのですが、奏君の彼女の物語もあるんですね。気になります。

<ポプラ社 2023.2>2023.4.27読了

芦屋山手お道具迎賓館 高殿円5

芦屋山手 お道具迎賓館
高殿 円
淡交社
2022-11-30


神戸山芦屋のとある古い館で、本能寺の変で焼失したとされる名品「白天目茶碗」が掘り出された。ところが、白天目茶碗の付喪神である「シロさん」は、どうして自分が割れずに残ったのか、自分自身の来歴さえ思い出せない。シロさんはなぜ芦屋 に埋まっていたのか?本能寺の変の真相は?シロさんの持ち主である「先生」、茶道具を偏愛するアラブ人の「ほうっかむりさん」、そしておしゃべりで無邪気なお道具たち(※国宝級)が繰り広げる、異色の骨董ファンタジー!

付喪神が登場する作品は以前も読んだことがありますがこちらの作品の付喪神たちはスタイリッシュですね^m^
先生から発掘された白天目のシロさんは本能寺の変以降の記憶がありません。現在の持ち主の先生と他の付喪神と共に探っていきます。
付喪神たちの言葉の掛け合いが可愛いです。そして戦国時代のことを茶道具目線で知ることが出来ます。斬新で面白かったです。
最後に、登場した付喪神たちの茶碗について解説も書かれていて勉強になりました。

<淡交社 2022.12>2023.1.17読了

今宵も喫茶ドードーのキッチンで。 標野凪5



住宅地の奥にひっそりと佇む、おひとりさま専用カフェ「喫茶ドードー」。
この喫茶店には、がんばっている毎日からちょっとばかり逃げ込みたくなったお客さんが、ふらりと訪れる。
SNSで発信される〈ていねいな暮らし〉に振り回されたり、仕事をひとりで抱え込んだりして、疲れたからだと強ばった心を、店主そろりの料理が優しくほぐします。

仕方がないことなんですけど、最近読む本読む本小説の世界がコロナ禍になっていてちょっと哀しくなります。仕方がないんですけど…。コロナ禍になったために拍車がかって思い悩む人が訪れる、おひとりさま専用カフェ「喫茶ドードー」いいなぁ。こんな喫茶店があったら、私も入ってしまうなぁ。悩みすぎて何に悩んでいるのかわからなくなってきたので^^;そろりさんが作るものを食べて癒されたいな…。でも、そろりさんも色々なものを抱えて喫茶店を始めたんですよね。生きていれば色々ある。だから、自分が出来るだけ生きやすいように避けるものは避けて、受け入れるものは受け入れて、生きていけたら良いな。

<双葉社 2022.5>2022.10.26読了

占い日本茶カフェ 迷い猫 標野凪5



一杯の温かいお茶が、不思議とその悩みに効きますよ。
猫を連れた女性が日本各地で開く「出張カフェ」の物語。
ご当地のお茶、器、お菓子の情報も盛り沢山!
日本全国津々浦々を愛猫のつづみを連れて巡りながら、小さなスペースを間借りしたり、ギャラリーやイベントの一角に招かれたりして、出張カフェ「迷い猫」を営んでいる如月たんぽぽ。占い師としての顔も持つ彼女は、ご当地のお茶、お菓子を出しつつ、訪れる客の悩みを聞いていく。そして彼女自身も各地で「あるもの」の行方を探していた……。
心がほんのり温かくなる癒し系連作短編集。

お茶は身近にあるものなのに、まるで初めて知った飲み物のような感覚でした。分かってはいましたが奥深いですね…。そしての見方も多種多様!そんな飲み方があるのか!と思う方法もあって読んでいて面白かったです。お茶についてもお茶菓子についても依頼先の土地の物を大事にしているのがいいですね。お水もその土地の物っていうのが素敵。
そしてお話の中には落語も登場するのでいろいろ学べます。また図書館の利用の仕方も玄人っぽくて^m^おぉ!と思いました。
連作短編なので少しずつ繋がっているのも面白かったです。
売茶翁という方のこと、初めて知りました。伊藤若冲とお知り合いだったとは!
最近舞台を観に出かけてもこのご時世なので観光はほぼしていないのですが、その土地に根付いた飲み物や食べ物を大事にいただきたいなぁと読んでいて感じました。
最後のお話もとても好きです。
タイトルが気になって手に取った初読み作家さんでしたがとても面白かったです。ほかの作品も読んでみたいと思います。

<PHP研究所 2021.3>2021.10.19読了

処方箋のないクリニック 仙川環5

処方箋のないクリニック
環, 仙川
小学館
2020-12-15


東京郊外にある古びた洋館。そこには先端科学では治せない患者と家族の「人生」を治療する名医がいる。凄腕、イケメンだけど、ちょっと変わり者の医師青島倫太郎。目が悪くなったのに車の運転をやめない父。怪しげなサプリにはまる母。仕事のストレスで血圧が上がった息子。民間治療に心酔した妻……。そんな患者を持つ家族たちはどうしたらいいのか。マドレーヌと紅茶の香る古い洋館の診察室を訪れた患者と家族は、青島と話をするうちに、隠していた心の内を打ち明けてしまう……。現代の赤ひげ先生が、鮮やかに患者と家族のトラブルを解決するハートウォーミングお医者さん小説。

この物語に登場するのは総合内科という診療科です。
自分の今の病状で何科にかかって良いか分からない場合に相談する診療科…ですよね?
私は幸いなことに持病などがないので、定期的に行くのは人間ドックと歯医者くらいなのですが^^;
それでもたまに病院にかかると、ほとんど目線が合わずに診療が終わることがあったりして、不信感まではいかないまでも本当に分かってる…?と思うこともありました。
青島先生のような人が近くにいてくれたら、高くても診療を受けてみたいと思います。
看護師のミカも、見た目は奇抜でもお仕事がしっかりできる看護師さんなのが分かって安心できます。
どのお話も身近にありそうな問題であったり病状であったりしたので身につまされるというか、ある程度の年齢になったら自己判断せずに病院に行って定期的に検査を受けるようにしよう・・・と思いました。
同じ病院が舞台なので連作短編のような形になってもいて、リンクも面白かったです。

<小学館 2020.12>2021.1.25読了

五色の殺人者 千田理緒4

五色の殺人者
千田 理緒
東京創元社
2020-10-10


高齢者介護施設・あずき荘で働く、新米女性介護士のメイこと明治瑞希(めいじみずき)はある日、利用者の撲殺死体を発見する。逃走する犯人と思しき人物を目撃したのは五人。しかし、犯人の服の色についての証言は「赤」「緑」「白」「黒」「青」と、なぜかバラバラの五通りだった!ありえない証言に加え、見つからない凶器の謎もあり、捜査は難航する。そんな中、メイの同僚・ハルが片思いしている青年が、最有力容疑者として浮上したことが判明。メイはハルに泣きつかれ、ミステリ好きの素人探偵として、彼の無実を証明しようと奮闘するが…。不可能犯罪の真相は、切れ味鋭いロジックで鮮やかに明かされる!選考委員の満場一致で決定した、第30回鮎川哲也賞受賞作。

実際に介護施設で働かれていたみたいですね。だからこそのリアリティを感じました。 
メイちゃんは元気で明るくて素敵な女性でしたね。こんな子が働いていたらそれはおじいちゃんおばあちゃんの人気者になりますよ。
目撃証言の5人の服の色がバラバラというのは似たようなのを別のミステリ(子供が主人公の探偵もの←)で見たことがある気がしますけど、そういうことか!と思うこともたくさんあって面白かったです。メイとたまに行動を共にする藤原さんに関しては早めにカラクリが分かってしまってもどかしさもありましたが^^;偉そうな言い方ですけど、これからの作品が楽しみな作家さんですね。

<東京創元社 2020.10>2021.1.4読了

遠の眠りの 谷崎由依5

遠の眠りの
谷崎 由依
集英社
2019-12-05


生き延びましょう。私たちらしく生きられる世が訪れるまで。昭和初期、女工の絵子は、福井に開業した百貨店の「少女歌劇団」の脚本係をすることに。出会ったのは“看板女優”の“少年”だった―。一途な少女の淡い恋と、自我の目覚めを描く長編小説。

ツイッターで新井さんが紹介されているのを拝見して気になったので読みました。
初読み作家さんです。
舞台は大正から昭和にかけての時代の福井県。
女性の人権がまだ認められていない頃。貧しい農村で育った絵子は本が大好きで裕福な旅籠屋の娘まい子から本を借りることを楽しみにしている子だった。でも、本を読むことを親はいい顔をしない。女に学はいらないと思っているから。その当たり前のような風潮に反発し父親から家を追い出されます。
そして女工となり、福井に大きな百貨店が出来ることを知って雇ってほしいと直談判をします。その百貨店に後に少女歌劇団が出来、絵子はそこでキヨという「看板女優」に出会います。
これは史実なんですよね。福井に百貨店が出来て少女歌劇団があったということに驚きました。戦前にこんな世界があったんですね。それでも戦争が始まって巻き込まれていくのが悲しくて切なかったです。作中で敦賀港に海外から戦火を追われ逃げてきた外国人たちが多くいるということが書かれていました。そうだ、敦賀港はリトアニア領事だった杉原千畝の「命のビザ」を得た何千人ものユダヤ人難民がシベリア鉄道経由で到来した港でした。物語の中に歴史で知ったことが出てくると改めて実際に起きたことなんだと思わされます。当たり前の事なんですけど…。
福井も空襲に遭い、絵子が働いていた百貨店も焼失してしまいます。
朝子が最後に語った「生き延びましょう」という言葉が強く心に刻まれた気がします。
絵子はたくさん悩んで迷うのだけど、それでも信念を貫き、戦後に強く生きていこうと決意する姿がかっこよかったです。いつの日かキヨと再会することが出来ますように。

<集英社 2019.12>2020.7.24読了

語らいサンドイッチ 谷瑞恵5

語らいサンドイッチ
谷 瑞恵
KADOKAWA
2020-06-01


大阪の靭公園にある、手作りサンドイッチの専門店『ピクニック・バスケット』。おっとりした姉・笹子がつくる絶品サンドイッチと、しっかり者の妹・蕗子の切り盛りに惹かれ、多くの客が店を訪れている。笹子のサンドイッチは、誰かが胸の内で大事にしている味に、そっと寄り添ってくれるのだ…。そんななか蕗子は、笹子が元彼と会っているらしいと知る。フランス帰りのシェフだという彼は、自分のレストランに笹子を誘おうとしているのかもしれない―。心穏やかではいられない蕗子だが、一方、彼女のほうにも新たな変化の兆しが…!?

続編が出たんですね。前作がとても好きだったのでまた会えて嬉しいです。
今回はシスコンの蕗子がやきもきする展開でしたね^m^
元カレとかシェフとか自分の今後にも影響しそうなことだから気になっちゃいますよね。
お話もそれぞれ面白かったです。
「青い花火」のキューカンバーサンドイッチ、凄く気になります。きゅうりだけのサンドイッチ…かなり高度ですよね。でも笹子さんのサンドイッチなら本当に美味しいんだろうな。高校生の2人も可愛かったです。
「オーロラ姫のごちそう」アコちゃんが決めた嫌いなものを食べたら好きなものも食べるって良いなと思いました。おばあちゃんの栄養のあるものをっていう気持ちも分かるけどやっぱりみんなで笑顔でご飯を食べることが1番良い事だと思いました。
「明日の果実」ニット帽さんのおじいさんが小さい頃に食べたジャムサンドの真相。おじいさんが大阪で空襲に遭って最終が終わっているはずの電車が来て梅田までたくさんの人を乗せて助けたという話。「ごちそうさん」を思い出しました。全く同じシーンが出てきたので。たくさんの物語が繋がっているなぁと何だか感激したんですよね…。終戦の年の3月13日だったそうです。ちょっと話がずれましたが、笹子さんがちゃんと答えを見つけましたね。面白かったです。
「祝福のサンドイッチケーキ」ついに蕗子が笹子が今後をどう考えているのか聞くことになります。でも、彼を好きでいることとやりたい仕事を続けていくことを両立できないっていうのが切なかったです。でも、笹子はやりたいことを見つけたんだから良かったんですよね。蕗子とこれからも一緒に続けていってほしいなと思います。にしても蕗子も川端さんも鈍すぎますね…。この2人、進展することがあるんでしょうか^^;

<KADOKAWA 2020.6>2020.7.21読了

シャーリー・ホームズとバスカヴィル家の狗 高殿円5



2013年秋のロンドン。オリンピックイヤーだった前年に怪我で除隊した女医のジョー・ワトソンは、ベイカー街221bで、頭脳と電脳を駆使して英国の危機に立ち向かう世界唯一の顧問探偵シャーリー・ホームズと同居していた。シャーリーのもとには、女刑事レストレードや政府高官の姉マイキーから難事件が舞い込み、ジョーは助手としてシャーリーと現場に赴いてはwebストランド誌に事件の成り行きを(自分たちを男性化して)連載している。ある日、ジョーの叔母キャロルが結婚するとの報せが。夫となるヘンリーはデヴォン州アルスターの名家バスカヴィルの子孫で、最近、前当主が亡くなって跡を継ぐことになったという。ジョーはバスカヴィルの屋敷に招待されるが、脱獄した殺人鬼と魔犬伝説が街を騒がせ、さらには叔母夫妻に脅迫状が届く。ジョーたちに危険が迫っていた。半電脳と人工心臓のためになかなかロンドンを離れられないシャーリーは、ジョーを助けることができるのか!?突出した独創性とキャラ立ちで話題をさらった女性化現代版ホームズ・パスティーシュ『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』に続く、冒険と友情の第2弾!

前作を読んで私は日が経っていないのですが、第二作が出たのは結構経ってからだったんですね。
物語の中では1年半しか経っていないんですね。
今回の舞台はバスカヴィルの屋敷で起きた事件について。
ジョーの叔母が旅行先で出会った男性と電撃結婚をし、その相手の男性がバスカヴィルの子孫であることが判明。そのバスカヴィルの屋敷には使用人がおり、また脱獄犯が近くに潜伏していることが分かり、叔母とジョーは魔犬伝説で登場する魔犬を目撃。そしてついに事件も起きる。
何だかいろんなことが起こりすぎて読んでいるこちらもキャパオーバーになりそうなのだけど、それでもジョーのコミカルな感じが事の深刻さを感じさせないというかなんというか^^;
ジョーのピンチにシャーリーは心が無いなんて言っておいてちゃんと助けに来てくれる。
2人はもう信頼関係が出来上がっているんだなぁとニヤニヤしてしまいました^^
今回も面白かったです。まだまだ続いてほしいです。1冊目のラストに書かれていたことも気になりますし…

<早川書房 2020.1>2020.4.9読了

シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱 高殿円5



2012年、オリンピック開催に沸くロンドン。アフガン帰りの軍医ジョー・ワトソンは、早々に除隊したものの、物価の高さと仕事のなさに鬱々としていた。このままでは路頭に迷ってしまう。そんな折、友人ミカーラからフラットシェアをすすめられた。シェアの相手はシャーリー・ホームズ。ちょっと変わった女性だという。だが、実際に会ったシャーリーは、ちょっとどころではなく変わっていた。乗馬服に身を包んだ清楚な美貌、人工心臓を抱えた薬漬けの身体、初対面で経歴を言い当てる鋭い観察眼、死体置き場で寝起きする図太い神経。なにより驚いたのは、彼女が頭脳と電脳を駆使して英国の危機に立ち向かう、世界唯一の顧問探偵であることだった。 ベイカー街221bで同居を始めてまもなく、ヤードの女刑事グロリア・レストレードが訪ねてきた。死体がピンク色に染まる中毒死が続発しているらしい。いまだ無職のジョーはシャーリーに連れられて調査に赴く。それは二人がコンビを組む、初めての事件だった。 表題作に短篇「シャーリー・ホームズとディオゲネスクラブ」を加えた、目覚ましい独創性と原作への愛に溢れた、女性化現代版ホームズ・パスティーシュ登場!

高殿さんの作品は4冊目です。もっと読みたいと思っているのですが、なかなか進みません…。トッカンシリーズも気になっているのですが。
こちらの作品は現代の物語。ホームズの女性版。現地取材もされたそうで、イギリスの空気感を感じることが出来ました。イギリスの情勢も分かったし…そんなに雇用問題は深刻なんですね…。深刻だからこそ起きた今回の事件。凶器がアレとは…想像もつきませんよ。女性版ならではという気がします。
人工心臓で生きている美しいシャーリーと元軍医のジョー。確かに意思疎通が大変な^^;シャーリーの通訳としてジョーは適役かもしれません。そしてシャーリーのお姉さんもとても気になる存在。
この物語の続編が最近出ているのは分かっているのですが、この表題作の3年半後のジョーの語りがとても気になります。それは新刊に書かれているのかなぁ。
私のシャーロックホームズの知識はコナンから得た物しかないのですが^m^
聞いたことのある名前の登場人物ばかりで(みんな女性)面白く読みました。
続編も楽しみです。

<早川書房 2014.7>2020.3.13読了

めぐり逢いサンドイッチ 谷瑞恵5



「思い出のとき修理します」シリーズの著者が贈る、優しくも愛おしい物語
忘れていた幸せの味、思い出してみて。子供のころの記憶に苦しむOLや、父の再婚に悩む少女──
迷える人々の心を、絶品サンドイッチが癒やします。
大阪の靱公園にある『ピクニック・バスケット』は、開店して三年を迎える手作りサンドイッチの専門店。蕗子が、姉の笹子──笹ちゃんのこの店を手伝いはじめて、半年になる。
笹ちゃんは店を訪れた人たちの、具材への思いや記憶、そして物語をやさしくパンにはさんで、誰が食べてもなつかしいような新しいような、そんなサンドイッチをつくっているのだ……。
おっとりした姉としっかり者の妹、店を訪れる個性的な人々──常連客の小野寺さんやパン職人の川端さん──が織りなす、優しくも愛おしい物語。

笹子さんが作るサンドイッチ、どれも美味しそうです。笹子さんがお客さんの事を想って作っているから、優しい味がするんですね。
玉子が嫌いな2人のOL。父の再婚相手を笹子だと思って敵意を向ける少女。常連小野寺さんのコロッケの思い出。そして笹子と蕗子の思い出のカレー。
笹子は色んな思い出をサンドイッチに込めて作ります。
著者さんが書かれる作品はいつも温かくて優しいです。
みんなが相手の事を想い合っていますよね。それが素敵。
蕗子も自分は必要ないんじゃないかなんて悩んでいましたけど、そんな必要はないですよね。笹子が蕗子を誘ったんですから。
それに、蕗子は笹子に良い相手をと言って小野寺さんや川端さんはどうかと想像してましたけど、蕗子は鈍いですよねー。読んでいるだけで分かりましたけど。
そこら辺の展開も想像しつつ、温かい気持ちで読み終えました。

<KADOKAWA 2019.5>2019.6.28読了

叡智の図書館と十の謎 多崎礼5



どこまでも続く広大な砂漠の果て、そこには古今東西の知識のすべてが収められ、至りし者が神に等しい力を手にできる図書館があるという―長い旅路の末、たどり着いた旅人がひとり。鎖に縛められたその扉を開かんとする彼に守人は謎をかける。鎖は十本、謎も十問。旅人は万智の殿堂へたどり着けるのか!?知の冒険へ誘う傑作長篇!

タイトルが気になって手に取りました。初読み作家さんです。
一つ一つの物語も面白かったし、謎の答えも納得でした。物語がファンタジーや古代ものから近代やSFっぽくなっていくのが歴史をたどっているようで良かったですし、物語からなる答えが最後に更に繋がっていくのがまた面白かったです。
叡智の図書館での最後の答えにはもう納得です。その言葉が1番ふさわしい。
解説で著者さんが十の物語について話してくれていますが、海外の物語もあれば日本のものもありました。とても幸せな気持ちで終わる物語もあればただただつらく切ない物語もありました。そしてその物語の中でも繋がっているものもあったりして読み返したり。引き込まれました。
守人の出した答えが真っ直ぐで純粋で。だからそれを裏切ってはいけないという気持ちになりました。

<中央公論新社 2019.2>2019.6.15読了

花だより みをつくし料理帖特別巻 眦聴5

花だより みをつくし料理帖 特別巻花だより みをつくし料理帖 特別巻
著者:眦聴
角川春樹事務所(2018-09-01)
販売元:Amazon.co.jp

澪が大坂に戻ったのち、文政五年(一八二二年)春から翌年初午にかけての物語。店主・種市とつる家の面々を廻る、表題作「花だより」。澪のかつての想いびと、御膳奉行の小野寺数馬と一風変わった妻・乙緒との暮らしを綴った「涼風あり」。あさひ太夫の名を捨て、生家の再建を果たしてのちの野江を描いた「秋燕」。澪と源斉夫婦が危機を乗り越えて絆を深めていく「月の船を漕ぐ」。シリーズ完結から四年、登場人物たちのその後の奮闘と幸せとを料理がつなぐ特別巻、満を持して登場です!

シリーズ完結から4年が経ち、ついに特別巻が刊行!
ずっと読んでいた方からすると待ちに待ったですよね。私は読み始めたのが遅くて、10巻目を読んだのが今年の7月なのでちょっとしかあいていないのでちょっと得した気分というかなんというか^^
「花だより」本当に種市さんは純粋で素直ですよねー。占いなんて!と思いつつもうじうじ気にしちゃってる姿が愛おしかったです。でも、たくさんの人が心配してくれて、とても幸せな人になったなぁと思いました。そして勘違いが分かってやらかしちゃうのとかホント種市さん。健康に気を付けて長生きしていただきたいものです。個人的には太一ちゃんと健坊が仲良しなのが嬉しくて微笑ましかったです。
「涼風あり」小松原様のお話。ずっと気になっていました。澪のためとはいえ違う方と夫婦になるというのは寂しいものがありましたが、乙緒とは何だかお似合いな気がしました。小松原様が幸せそうで良かったです。
「秋燕」野江ちゃんの話はもう涙なしでは読めませんでした。ずっと気にかけていた又次のこと。2人の間にあんな過去があったとは…お互いに命の恩人だったんですね。又次だってきっと野江ちゃんには家族を持って幸せになってほしいと絶対に願っているはずです。これからもきっときっと絶対に幸せになるはずです。
「月の船を漕ぐ」最後は澪のお話。大坂に来ても色々ありますね。また眉が下がっちゃいます。源斉先生の事がとても心配でしたが、本当に良かったです。澪と同様に涙が出ました。お人好しで不器用な夫婦ですから、きっとまた何かあるかもしれませんが、それでもこの2人だからこそ乗り越えられるはずです。最後はもう涙涙でした。
本当に終わっちゃったんだなぁと名残惜しく、余韻を残したまま読み終えました。

<角川春樹事務所 2018.9>H30.12.1読了

フェルメールの街 櫻部 由美子5

フェルメールの街フェルメールの街
著者:櫻部 由美子
角川春樹事務所(2017-09-01)
販売元:Amazon.co.jp

光の魔術師ヨハネス・フェルメールと、微生物学の父アントニー・レーウェンフック。ふたりの天才を結ぶ、大切な約束―。時を超える友情、運命の恋、謎の少女。角川春樹小説賞受賞後第一作、渾身のアートミステリー!

タイトルを見て予約をした1冊。
週末に無事に辿り着ければ東京のフェルメール展へ行く予定なのでタイミングが良かったです。
内容はフィクションですが、登場人物はフェルメールにレーウェンフックと実在の人物です。2人が住む小さな町で起きたミステリと、史実に基づいた内容が織り交ぜられているような感じでしょうか。
フェルメールとレーウェンフックは同い年で同じ街出身のため、著者や専門家は2人は知り合いだったのではないか、更に仲が良かったのではないか、と仮説を立てているそうです。実際に、レーウェンフックはフェルメールの遺産管財人にもなっているそうですから私も知り合いでそれも仲がいい方だったんじゃないかなと思います。この作品の中でも2人は信頼し合っている感じが良かったです。
ミステリに関しては職人が数人、突然失踪し、警察が捜索するも見つからないまだ事件とは言えないくらいのものです。それにフェルメールとレーウェンフックがいつの間にか関わっていってしまいます。
2人の会話の中でフェルメールの作品も絡めた話も出てきたりして思わずにんまりしたりもしました。実際「天文学者」と「地理学者」という作品はレーウェンフックがモデルと言われているそうです。
フェルメールの作品は30数点しかないと言われていて、どれもがフェルメールの自宅から半径500m以内の狭い空間で描かれているものだそうです。
この作品の通り、フェルメールはアムステルダムに行くことを夢見つつ、地元で一生を過ごしたのかもしれないですね。フェルメールは晩年(と言っても若いですが)貧乏で苦労したみたいで、そう言われている前の時代で物語は終わっているので輝かしい未来を感じられる終わり方がまた良かったと思いました。

<角川春樹事務所 2017.9>H30.10.3読了

砂上 桜木紫乃3

砂上砂上
著者:桜木 紫乃
KADOKAWA(2017-09-29)
販売元:Amazon.co.jp

直木賞作家の新たな到達点! 書くことに取り憑かれた女はどこへ向かうのか
空が色をなくした冬の北海道・江別。柊令央は、ビストロ勤務で得る数万円の月収と、元夫から振り込まれる慰謝料で細々と暮らしていた。いつか作家になりたい。そう思ってきたものの、夢に近づく日はこないまま、気づけば四十代に突入していた。ある日、令央の前に一人の編集者が現れる。「あなた今後、なにがしたいんですか」。責めるように問う小川乙三との出会いを機に、令央は母が墓場へと持っていったある秘密を書く決心をする。だがそれは、母親との暮らしを、そして他人任せだった自分のこれまでを直視する日々の始まりだった。自分は母親の人生を肯定できるのか。そして小説を書き始めたことで変わっていく人間関係。書くことに取り憑かれた女はどこへ向かうのか。

久しぶりに読みました。桜木さん。
どうして読もうと思ったかというと、新井賞受賞作だったからです。
新井賞とは?と思った方はネットで調べてください。話すと長くなるので←
新井さんが選んだ作品だから!と思って読みましたが、やっぱり私は桜木作品はもう良いかな…。どうしようもない、分かっている厳しい現実を突きつけられるから。夢を見ていてもそんなのは叶わないんだよ、現実を見なよってぶった切られているような気分になります^^;
多分、私の今の気持ちと合わなかったんだと思います。私の気持ちがもう少し晴れていたら、また印象は変わるのかな。気持ちが前向きの時に読まないと、桜木作品はダメですね、落ち込んじゃう。
登場人物の中では私は美利がすきだったかな。ちゃんと自分を持っていて地に足付けて生きていて、しっかりしていて頼もしかったです。だから、令央を見ていてイライラするのも分かるなーと思いました。
ミオも若い時はちょっとあれだけど、年を取ってからのミオは素敵でした。こんな風に年を取れたら良いな。太るのは嫌だけど。申し訳ないけど、令央の事はあまり好きになれなかったな。最後、少しだけ変わったのは良かったかなと思うけど。

<KADOKAWA 2017.9>H30.9.12読了

32歳ひとり不幸OLが幸せ引き寄せちゃう話  櫻井千姫5

32歳ひとり不幸OLが幸せ引き寄せちゃう話 (小学館文庫キャラブン!)32歳ひとり不幸OLが幸せ引き寄せちゃう話 (小学館文庫キャラブン!)
著者:櫻井 千姫
小学館(2018-05-08)
販売元:Amazon.co.jp

吉永杏珠は、都内で仕事をするおひとりさま女子。でも最近、公私共にトラブル続きで、気付けば不幸のどん底に。そんなある夜、ひとり暮らしの杏珠の部屋に、突如クラッカーの音が鳴り響いた。「おめでとうございまーす!!あなたには天界のキャンペーンで一億人にひとりが当選する、幸せへのヒントを知る権利が与えられましたー!!」ハイテンションで登場したのは、ゴスロリ衣装に身を包んだ妖精ヴィクトリカ(自称三百歳)と、その旦那(!?)でクマのぬいぐるみの妖精クラウド。ふたりは杏珠に、ハッピーになる「引き寄せの法則」を授けると言うのだが…。

タイトルが気になって図書館で借りたのですが、自己啓発本でした。
「引き寄せの法則」は聞いたことがありますし、実際そういう本も持ってます。
私はそういうことは信じているほうだと思うんだけど…どうなのかな。
杏珠は不幸だって思っているかもしれないけど、人として印象は悪くはなかった。不倫はしていたけど。それでも周りの言葉とか自分の境遇とか、頑張っているつもりでもふっとその頑張っている糸が切れそうになってしまう時ってありますよね。
自分が辛いとどうしても自分が1番辛いような気持ちになってしまうけど決してそんなことはなくて。
毎日小さな幸せを見つけて感謝すること。はいつでもどこでもできそうだし見つけられる気がするから、私もまずはそれからやってみようかな。

<小学館 2018.5>H30.9.11読了

天の梯 みをつくし料理帖 眦聴5

天の梯 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)天の梯 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)
著者:高田 郁
角川春樹事務所(2014-08-09)
販売元:Amazon.co.jp

『食は、人の天なり』――医師・源斉の言葉に触れ、料理人として自らの行く末に決意を固めた澪。どのような料理人を目指し、どんな料理を作り続けることを願うのか。澪の心星は、揺らぐことなく頭上に瞬いていた。その一方で、吉原のあさひ太夫こと幼馴染みの野江の身請けについて懊悩する日々。四千両を捻出し、野江を身請けすることは叶うのか!?厚い雲を抜け、仰ぎ見る蒼天の美しさとは!?「みをつくし料理帖」シリーズ、堂々の完結。

9冊目まで読んで、次で簡潔なのに色々まだ問題は山積みだけど本当に終わるの!?と思って最終巻も読み始めました。もう…見事でした。綺麗に一件落着でしたね。
佐兵衛が抱えていた罪、あさひ太夫の身請け、どちらの件もどうなるか、ドキドキしましたがいい方向へ向かって良かったです。
また佐兵衛の罪が明らかになった時は、あの人が助けてくれて…。
2人の目線だけでの会話が切なかったです。
彼はずっと遠くで見守ってくれていたんですね。
そして、澪を近くで見守ってくれていた人もちゃんといました。
小松原様とのことがあって、もう二度と恋はしないと決めた澪。でも、まだ24歳ですもんね。そう決めるのは早いです。
今まで大変だった分、たくさんたくさん幸せになってほしいです。
最後の夜の種市の言葉、涙が出ました。自分に言ってくれているような気がして、私も頑張ろうと思えました。
そして最後に付録のような形で付いていた番付。涙腺が崩壊しました。
かなり出遅れて読み始め、完結してからもだいぶ経ってしまいましたが、読んで良かったです。素敵な物語に出合えました。
自分の記録用に、種市の言葉を残しておこうと思います。
私が言うのもなんですけど、澪にはどうかどうか幸せになってほしいです。

<角川春樹事務所 2014.8>H30.7.26読了

続きを読む

美雪晴れ みをつくし料理帖 眦聴5

美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)
著者:高田 郁
角川春樹事務所(2014-02-15)
販売元:Amazon.co.jp

名料理屋「一柳」の主・柳吾から求婚された芳。悲しい出来事が続いた「つる家」にとってそれは、漸く訪れた幸せの兆しだった。しかし芳は、なかなか承諾の返事を出来ずにいた。どうやら一人息子の佐兵衛の許しを得てからと、気持ちを固めているらしい―。一方で澪も、幼馴染みのあさひ太夫こと野江の身請けについて、また料理人としての自らの行く末について、懊悩する日々を送っていた…。いよいよ佳境を迎える「みをつくし料理帖」シリーズ。幸せの種を蒔く、第九弾。

いよいよ9冊目まで来ました。あと1冊…
芳が嫁ぐことになり、つる家が騒がしくなってきます。ずっと読んでいて切ない話が多かったから、今回の困る感じは幸せの兆しが見えて微笑ましくも感じました。
ずっと苦労して辛い思いをしてきたつる家のみなさんだから、本当にみんな幸せになってほしいです。
あさひ太夫の身請けについても少しずつ動きが出てきましたね。
前作から摂津屋の動きが気になっていましたが、悪い方向へ向かわなかったので良かったです。澪のこと、そして野江のこと、ちゃんと慮っているのが分かりました。だから澪も正直に打ち明けたんでしょうね。澪も野江のためとはいえ、思い切ったことをしますね。
先が見えるような見えないような…
あと1冊。どうなっていくのでしょうか。早く読みたくなってきました。
そして、最後に書かれていた短編。切ない…忘れてない…忘れてないよ…。

<角川書店 2014.2>H30.5.21読了

額を紡ぐひと 谷瑞恵4

額を紡ぐひと額を紡ぐひと
著者:谷 瑞恵
新潮社(2018-02-22)
販売元:Amazon.co.jp

事故で婚約者を喪った額装師・奥野夏樹。彼女の元には一見額装不可能で、いわくありげな依頼ばかりやってくる。ヤドリギの枝、小鳥の声、毛糸玉にカレーポット―。表具額縁店の次男坊・久遠純は夏樹の作品の持つ独特な雰囲気に惹かれ、やがて彼女自身にも興味を持つのだが…。『思い出のとき修理します』著者が紡ぐ、心温まる手仕事小説。

今回の主人公の職業は額装師。また変わった職業ですね。魅力的です。
その額装師である奥野夏樹は婚約者を亡くした過去があり、その死に関係がある人物に近づきます。そして久遠純はそんな夏樹に魅力を感じ、近づきます。純もまた過去に臨死体験をし、そのことでいまだに心の後遺症が残っている。
夏樹、純、池畠、それぞれの過去に焦点を当て、心の根底に迫りつつも額装を求めるお客様の本心にも迫っていきます。
亡くなった婚約者の弘海が額装師だったからと同じ職業になった夏樹。でも、不思議な額装の依頼にも真摯に受け止め、お客さんにふさわしい額装を作っていきます。
その職人魂は年数は関係ないのかなと思いました。
それぞれの想いもだんだん明らかになっていって、読む手が止まりませんでした。
面白かったです。3人が今後どのような関係性になっていくのか、それも読んでみたい気がします。

<新潮社 2018.2>H30.4.4読了

残月 みをつくし料理帖 眦聴5

残月 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)残月 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)
著者:高田 郁
角川春樹事務所(2013-06-18)
販売元:Amazon.co.jp

吉原の大火、「つる家」の助っ人料理人・又次の死。辛く悲しかった時は過ぎ、澪と「つる家」の面々は新たな日々を迎えていた。そんなある日、吉原の大火の折、又次に命を助けられた摂津屋が「つる家」を訪れた。あさひ太夫と澪の関係、そして又次が今際の際に遺した言葉の真意を知りたいという。澪の幼馴染み、あさひ太夫こと野江のその後とは―――(第一話「残月」)。その他、若旦那・佐平衛との再会は叶うのか? 料理屋「登龍楼」に呼び出された澪の新たなる試練とは・・・・・。雲外蒼天を胸に、料理に生きる澪と「つる家」の新たなる決意。希望溢れるシリーズ第八弾。

様々な展開を見せた第8弾。慈しむように読んでいきたいと思いつつ、読み始めたら止まらなくて、あっという間に読んでしまいました。もったいない。でも止まらない。
又次の死を乗り越え、そして又次が命を懸けて守ったあさひ太夫の行方。摂津屋の動向も少し気になる。次回また出て来そうな予感。そして佐平衛との再会。少しずつ、本当に少しずつですけど、つる家の方々に幸せの兆しが見えてきた気がしました。
芳さんの展開が驚きましたけど、前作でも何となくもしかして…と思うところがあったので素直に素敵!良かった!と思いました。
残りあと2冊。展開が気になってしょうがないです。

<角川春樹事務所 2013.6>H30.4.3読了

夏天の虹 みをつくし料理帖 眦聴5

夏天の虹―みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 (時代小説文庫))夏天の虹―みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 (時代小説文庫))
著者:高田 郁
角川春樹事務所(2012-03-15)
販売元:Amazon.co.jp

想いびとである小松原と添う道か、料理人として生きる道か…澪は、決して交わることのない道の上で悩み苦しんでいた。「つる家」で料理を旨そうに頬張るお客や、料理をつくり、供する自身の姿を思い浮かべる澪。天空に浮かぶ心星を見つめる澪の心には、決して譲れない辿り着きたい道が、はっきりと見えていた。そして澪は、自身の揺るがない決意を小松原に伝えることに―(第一話「冬の雲雀」)。その他、表題作「夏天の虹」を含む全四篇。大好評「みをつくし料理帖」シリーズ、“悲涙”の第七弾。

久しぶりに、小説を読んで号泣しました。涙が止まらなかった…辛い…哀しすぎる…
このシリーズの最初の頃も、澪たちの境遇が辛すぎて悲しいと思ったけど…それとはまた違う辛さでした。
前回のつづきで、小松原様と添い遂げるのか料理人としての道を歩むのか、その選択は予想はしていましたけど、それからのことも本当に切なくて、悲しかったです。小松原様の最初で最後の「澪」と言った言葉が胸に来ます…
そして表題作。
ドラマ化された際のあらすじか何かを見たか読んだかしてしまったので、又次の事は何となくわかってしまっていました。でもそれがいつのことになるのか分からなかったので、あぁ…今回だったかと読んでいて感じました。
私、勝手に又次はおじさんだと思っていたんですよね^^;でも、りうさんがやたらと色目を使っていたから←若い人だったのかと思ったんですよね。
今回は2か月も一緒にいるから、本当に家族みたいで、種市さんがお父さんでふきが娘みたいなそんな雰囲気がとてもよくて。でも良ければよいほどなんかフラグを感じてしまって…あぁ、また涙が出そう。
「つる家」のみなさんは本当に辛い想いばかりしているけど、それでもそれを乗り越えて小さなことにも幸せを感じることが出来る。人と人とのつながりを大事にできる。
当たり前であることの幸せを改めて感じ、伝えてくれる物語だと思います。
あと3冊。慈しむような気持ちで読み進めていこうと思います。

<角川春樹事務所 2012.3>H30.3.23読了

心星ひとつ みをつくし料理帖 眦聴5

心星ひとつ みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 時代小説文庫)心星ひとつ みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 時代小説文庫)
著者:高田 郁
角川春樹事務所(2011-08-10)
販売元:Amazon.co.jp

酷暑を過ぎた葉月のある午後、翁屋の桜主伝右衛門がつる家を訪れた。伝右衛門の口から語られたのは、手を貸すので吉原にて天満一兆庵を再建しないか、との話だった。 一方登龍楼の采女宗馬からも、神田須田町の登龍楼を、居抜きで売るのでつる家として移って来ないか、との話が届いていた。登龍楼で奉公をしている、ふきの弟健坊もその店に移して構わないとの事に、それぞれが思い揺れていた。つる家の料理人として岐路に立たされた澪は決断を迫られる事に―― 野江との再会、小松原との恋の行方は!?

久しぶりになったこのシリーズ。第6弾。
何だか展開が目まぐるしくて読む手が止まりませんでした。
最初のお話では大きな選択を迫られたつる家。どちらを選んでも誰かの夢が絶たれてしまう。澪が選んだ道は正しかったのだと思いました。誰に何と言われようと自分が信じた道を進めばいいと思います。自分の器を大きくする。素敵な言葉です。
と思ったら終盤につれて更なる大きな展開が!
妹さん…行動的〜。そしてお母様、病状が悪化していたのですね。以前会った時も具合が悪そうだったけど息子と澪は身分が違うから諦めなさいと言っていたのに…。
好きな人と添い遂げることが出来るのは幸せなことだけど、そのために大好きな料理を手放すことまでしていいのか…。澪自身の幸せも望んでいるけど、お寮さんや種市さんやふきや野江ちゃんの想いも叶えたい…。と、読んでいても思いました。
そして源斉先生…切なすぎる…。
早く次が読みたいです。

<角川春樹事務所 2011.8>H30.3.6読了

みさと町立図書館分館 高森美由紀4

みさと町立図書館分館みさと町立図書館分館
著者:眇 美由紀
産業編集センター(2017-10-13)
販売元:Amazon.co.jp

みさと町立図書館分館に勤める遥は、33歳独身の実家暮らし。遥が持参する父お手製の弁当に、岡部主査はいつも手を伸ばし、くすねていく。人事異動でやってきた彼は、図書整理もできないネットサーファー(死語)で砂糖中毒だ。本の貸借トラブル&クレーム対処をはじめ、家庭内の愚痴聞きや遺失物捜索など色々ある“図書館業務”は、ままならないことが多い。でも小さな町の図書館分館では、訪れる人たちの生活が感じられる。理解もできる。だから、ここではちょっと優しくなれるのだ。いなかの図書館を舞台に描かれる、小さな町のハートフル・ストーリー。

タイトルに惹かれて読みました。初読み作家さんです。
図書館に勤めているということで、図書館やレファレンスに関する話が主なのかなと思ったのですが、少し違いましたね。図書館に関する専門用語も多少出てきましたけど、メインの話は遥の身の回りの出来事、周りの人たちとの出来事でした。
遥は父親と二人で暮らしている。3年前に母親を病気で亡くした。
生きているものがこれからも生きていくために、2人は前を向いていく。
かつて母親が生きていた時に、家族旅行をしようと計画していた温泉を、キャンセルせずに2人で行ったという話が好きでした。旅行中の空気は悪かったけど、2人とも生き残った者が生きていくという覚悟が生まれたというか、吹っ切れたような感じが何だか良いなと思いました。
また図書館に勤める他の職員も家族については思い悩むことがあり、それぞれ悩み答えを出していくところも良かったです。
仕事があって元気で生きていること、その当たり前の大切さを改めて教えてもらった気がします。

<産業編集センター 2017.10>H30.1.4読了

政略結婚 高殿円5

政略結婚政略結婚
著者:高殿 円
KADOKAWA(2017-06-24)
販売元:Amazon.co.jp

江戸末期・明治大正・昭和、百二十年の間に女性の生き方はこう変わった!
金沢城で生まれた私の結婚相手はわずか生後半年で決まった。(中略)早すぎると思うかも知れないが、当時ではごくごく当たり前のことで、大名の子の結婚はすべて政略結婚、祝言の日まで互いに顔を合わせず、文も交わさぬのが慣習である。
私の生まれた文化の世とはそういう時代であった。――第一章「てんさいの君」より
不思議な縁(えにし)でつながる、三つの時代を生き抜いた三人の女性たち。
聡明さとしなやかさを兼ね備え、自然体で激動の時代を生き抜く彼女らを三部構成でドラマチックに描き出した壮大な大河ロマン!
―――
加賀藩主前田斉広(なりなが)の三女・勇(いさ)は、生後半年で加賀大聖寺藩主前田利之(としこれ)の次男・利極(としなか)のもとに嫁ぐことが決まっていた。やがて生まれ育った金沢を離れ江戸へと嫁いだ勇は、広大な屋敷のなかの複雑な人間関係や新しいしきたりに戸惑いながらも順応し、大聖寺藩になくてはならない人物になっていく。だが、石高十万石を誇る大聖寺藩の内実は苦しかった。その財政を改善させるような産業が必要と考えた利極と勇が注目したのは――(「第一章 てんさいの君」)。
加賀藩の分家・小松藩の子孫である万里子。パリで生まれ、ロンドンで育った彼女は、明治41年帰国し、頑なな日本の伝統文化にカルチャーショックを受ける。やがて家とも深い縁のある九谷焼をアメリカで売る輸出業に携わることとなり、徐々に職業夫人への展望をいだくが、万里子の上に日本伝統のお家の問題が重くのしかかる。日本で始めてサンフランシスコ万博の華族出身コンパニオンガールになった女性は、文明開化をどう生きるのか――(「第二章 プリンセス・クタニ」)。
貴族院議員・深草也親を祖父に持つ花音子は、瀟洒豪壮な洋館に生まれ育ち、何不自由なく暮らした。だが、花音子が幼稚園に上がるちょうどその頃、昭和恐慌によって生活は激変。すべてを失った花音子と母・衣子は、新宿の劇場・ラヴィアンローズ武蔵野座に辿り着く。学習院に通いながら身分を隠して舞台に立つ花音子は一躍スターダムにのし上がるが――(「第三章 華族女優」)。

三人の女性の人生を描いた中編小説。江戸末期、明治、大正、昭和と時代が流れていきますが、割と近年と言えるこの時代でも血筋というのは大事にされていたんだなということがとてもよく分かりました。
始めの主人公勇は物心がつくずっと前から結婚相手が決まっていて、特に反対もせずにその話を受け入れていました。こういう時代だったという言葉が何度も出てきましたが、昔は特に女性が生きにくい時代だったのかなと思います。生きにくいとは違うかな。道筋が同じというか生きる道が決まっていたというか。3人の主人公の中で勇姫だけは実在された人物だったんですね。こちらで書かれていたことはすべて史実なのでしょうか、お子さんのこととか。それなら本当に波乱万丈の人生ですね。でも気品高く誇りを持って生きている姿が素敵でした。
第二章の万里子は帰国子女で日本の堅苦しい文化があまり好きではないようで、学校になじめないもの分かりましたね。それでもそういう性格にあこがれを抱く同性もいるわけで、ミコとの関係はとても好きでした。明治、大正という時代でも昔ながらの風習やお家についての諸々は根強かったんですね。この時代の華族の話とかあまり知らなかったので勉強になりました。私はこの章が1番好きでした。万里子の生き方はかっこいいし憧れます。
第三章は昔ながらの日本に別れを告げるような今につながる物語でした。華族は昭和22年に廃止になったんですね。家を守る、血筋を守る、それを代々受け継いできた家柄の人たちにとってはそれは命をなげうつくらいにショックな出来事だったのかもしれないですね。ある意味花音子はそういう時代に翻弄された女性だったかもしれませんが、それでもちゃんと自分を持って生きていて、魅力的でした。お友達にはなれなそうだけど^^;
昔を生きた女性の生き様を読むことが出来て良かったです。
面白くて一気読みでした。

<角川書店 2017.6>H29.10.6読了

小夜しぐれ みをつくし料理帖 眦聴5

小夜しぐれ (みをつくし料理帖)小夜しぐれ (みをつくし料理帖)
著者:高田 郁
角川春樹事務所(2011-03-15)
販売元:Amazon.co.jp

季節が春から夏へと移ろい始める如月のある日。日本橋伊勢屋の美緒がつる家を訪れ、澪の顔を見るなり泣き始めた。美緒の話によると、伊勢屋の主・九兵衛が美緒に婿をとらせるために縁談を進めているというのだ。それは、美緒が恋心を寄せる医師、源斉との縁談ではないらしい。果たして、美緒の縁談の相手とは!?――(第三話『小夜しぐれ』)。表題作の他、つる家の主・種市と亡き娘おつるの過去が明かされる『迷い蟹』、『夢宵桜』、『嘉祥』の全四話を収録。恋の行方も大きな展開を見せる、書き下ろし大好評シリーズ第五弾!!

シリーズ第5弾。今回は割と安心して読めたかな。いつも澪たちの身に酷いことが起きるから、読むのが辛かったんですけど…
それでも「迷い蟹」は切なかったです。種市の亡き娘のおつるさんが亡くなってしまった経緯…それは辛い。本当に辛い。つる家の人たちはどうしてこんなに辛い想いばかりしているのでしょう。だからこそ、人に寄り添い、また優しさも感じるのですけど。種市が思いとどまってくれてよかったです。
そして「小夜しぐれ」美緒にも、美緒の父親にも勘違いされているけどこのままでよかったんでしょうか…。まあこの時代19歳だったら遅いくらいなのかもしれないから良かったのかもしれませんけど…。でも美緒の事を気にかけてくれる人だからきっと幸せになれますよね。
個人的には「嘉祥」が1番好きでした。澪が登場しない小松原(小野寺)の周りの出来事。竹馬の友との会話や妹との会話が何だか可愛らしかったです。お菓子についてひたすら考え、その中で澪が呟いた煎り豆で菓子を作ろうとする小松原。何だか微笑ましくて切なかったです。妹が言ったつぶやきが、真実になれば良いな。
他にも吉原のことやお芳の息子のことも少し登場しましたね。
あと5冊を楽しんで読んでいきたいと思います。
にしても21歳で大年増とは…。今の私はじゃあなんだろう、おばあさんかなミイラかな←

<角川春樹事務所 2011.3>H29.3.28読了

主君 井伊の赤鬼・直政伝 高殿円5

主君 井伊の赤鬼・直政伝主君 井伊の赤鬼・直政伝
著者:高殿 円
文藝春秋(2017-01-27)
販売元:Amazon.co.jp

大河ドラマ井伊直虎を描いた『剣と紅』に続き、井伊家第17代当主で「赤鬼」の異名を取る井伊直政と家臣木俣守勝の歴史ドラマ。
おまえの“主君”は誰だ。人はなんのために人に仕えるのか。家康に寵愛され、「赤鬼」と呼ばれた男の生涯―

以前、同じ著者さんが書かれた「剣と紅」がめちゃくちゃ面白かったので今回も読むのを楽しみにしていました。いや〜…想像通り、面白かったです。
井伊直政については、この作品を読む以前はあまり知らなかったですね。「軍師官兵衛」を見ていた時に登場していて、徳川四天王の一人だということは知っていましたがそれ以上のことは存じ上げず。それでも「剣と紅」と今作を読んで生涯を知ることが出来て本当に良かったです。
「剣と紅」では徳川家康と井伊直政が直虎について語るところから始まり、今作では徳川家康と木俣守勝が直政について語るところから始まります。そのつながりもなぜか感慨深いような気がして。それだけでちょっと感動しました。
直政の闘い方、生き方は本当に無謀というかなんというか…強運以外の何物でもなかったと思います。運が無かったらとっくに死んでいたかもしれませんね。でも、その無謀な闘い方には意味があった。それは分かる気がします。2歳で実の父が殺され、自分の身も追われて匿われ、井伊家は自分が守らなければ滅亡してしまう。それは今の大河ドラマを見ていても分かりますが、井伊家の男性はことごとく殺され、井伊家の一族の希望を一身に背負って生きてきたんですよね。よほどの覚悟がないと出来なかったのだと思います。それをちゃんと成し遂げた直政。井伊家の血は現在までつながっています。それを考えると何だか涙が出そうです。42歳なんて早すぎますね。直虎も確かそれくらいでした。井伊家を守った人たちは早世ですね。
逆に南渓は随分長く生きたんですね。自分の次の世代、次の次の世代、たくさんの人を見送って行ったのでしょうね。それもまた、辛いお役目ですよね…。
また、この作品を読むまで木俣守勝という人物を知りませんでしたが、今回守勝目線で物語が語られるのでこの方の事も知ることが出来ました。なかなか家族関係が複雑で切なかったですね。それでも、奥さんに恵まれ、家族に恵まれ、幸せだったんじゃないかなと思いました。
あ〜面白かった!大河ドラマもこの間直政がちょうど誕生しましたし^^これから楽しみです。読んでよかった!

<文芸春秋 2017.1>H29.3.14読了

世界一ありふれた答え 谷川直子5

世界一ありふれた答え世界一ありふれた答え
著者:谷川 直子
河出書房新社(2016-10-14)
販売元:Amazon.co.jp

離婚して未来を見失った女。ピアノを弾く時だけ、指が動かない病いのピアニスト。人生のどん底で出会った二人の再生を描く今年最高の感動作!

お友達にオススメされて読んでみました。初読み作家さんです。
40歳で夫に離婚を迫られうつ病となったまゆこと、ジストニアになり指が動かなくなったピアニストのトキオの物語。
最初は2人ともうつ病なのでひたすら暗かったです^^;
病院で出会ったトキオとまゆこ。トキオがまゆこを呼び、2人で会うようになります。
トキオにとってまゆこは恋愛感情で呼んだわけではなく、自分と同じようにもしくは自分よりも悪い状態である人を傍に置いて安心したかったから。読んでいてそれは感じたので嫌な気分にはなりましたけど、でも気持ちが分かる部分もありました。自分が悪い状態の時、自分の方がまだましだと思える存在があると失礼ながらほっとしたりするときもあるから。
それでもまゆこがカウンセリングに通い、少しずつ症状が緩和されていくことで2人の関係の均衡が崩れていきます。前向きになっていくまゆこを見ていると置いてけぼりにされたような気分になるんですかね。
トキオは支配的で女の敵のような気もするんですけどでも憎めない。病気のこともあるけど死にたいと言いつつも生きていて生きることにもがいている姿はまゆこ同様なんとかしてあげたいという気持ちになりました。ピアノだけが全てだった人生をそれだけじゃない人生にしたっていいじゃないかと思い、まゆこを応援していました。
途中登場したセリナとカノンがまた良かったですね。2人はしっかりした前向きな女性でした。2人に出会ったことがまゆこにとって大きな転機となったんですよね。だからトキオにもちゃんと想いを伝えることが出来たんだと思います。もともと、人の役に立ちたいと思って生きてきた人なんですもんね。変わっていくまゆこが素敵でした。
最後も良かったです。読んでよかった。ドビュッシーのアラベスクを聴きたくなりました。
このトキオという人物は、著者さんがオカダをモデルにして書かれたそうですね。オススメしたお友達に「私とオカダの物語だから(笑)」と紹介されたので^m^もう脳内がその2人で構成されたので困りました←
映像化されたら暗いけど優しくて最後は明るい素敵な物語になりそうだけど、でも、もう大作ばかりやって現代人をなかなかやらなくなった←オカダは演じることが出来ないかもなぁ…と、ちょっと寂しくなったりもしました^^;

<河出書房新社 2016.10>H29.1.23読了

今朝の春 みをつくし料理帖 眦聴5

今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)
著者:高田 郁
角川春樹事務所(2010-09-15)
販売元:Amazon.co.jp

月に三度の『三方よしの日』、つる家では澪と助っ人の又次が作る料理が評判を呼び、繁盛していた。そんなある日、伊勢屋の美緒に大奥奉公の話が持ち上がり、澪は包丁使いの指南役を任されて――(第一話『花嫁御寮』)。戯作者清右衛門が吉原のあさひ太夫を題材に戯作を書くことになった。少しずつ明らかになってゆくあさひ太夫こと野江の過去とは――(第二話『友待つ雪』)。おりょうの旦那伊左三に浮気の疑惑が!? つる家の面々を巻き込んだ事の真相とは――(第三話『寒紅』)。登龍楼との料理の競い合いを行うこととなったつる家。澪が生み出す渾身の料理は――(第四話『今朝の春』)。全四話を収録した大好評シリーズ第四弾!

前回読んでから時間が経ってしまいました。何だか不意に思い出して読んでみました。
多分澪の境遇が読んでいて辛くてだからちょっと止まっちゃったのかな^^;でも今回は割と安心して読めました。
ただ、今回小松原の正体が分かって、予想はしていたけど叶わぬ恋だったんだなということも分かって、切なかったですね。それでもあの女性の言葉はただ突き放しているだけではないと思いました。
澪が料理の事を考えて幸せそうなところが私は凄く好きです。澪は本当に料理人になるべくしてなったんだなぁということを改めて感じます。まあ、きっかけは辛いものだったかもしれませんけども…。
あさひ太夫のことが本になってしまうとハラハラしていた澪がそもそも野江が花魁となってしまった元凶の男に放った言葉がかっこよすぎました。澪をお嫁にもらいたい…。
カメよりも遅いくらいのゆっくり具合ですが読み進めていこうと思います^^

<角川春樹事務所 2010.9>H28.12.16読了

思い出のとき修理します4 永久時計を胸に 谷瑞恵5

思い出のとき修理します 4 永久時計を胸に (集英社文庫)思い出のとき修理します 4 永久時計を胸に (集英社文庫)
著者:谷 瑞恵
集英社(2016-05-20)
販売元:Amazon.co.jp

不仲に思えた両親の絆、亡き妻への秘めた思い…時計店には今日も人々の「思い出」が持ち込まれる。そんな中、秀司が作ってくれているドレスウォッチの完成が近いと聞き、喜びとともに複雑な気持ちになる明里。秀司の元に、スイスの時計工房から手紙が届いているらしいからだ。ともに商店街で暮らす未来を夢見つつ、本当は秀司がスイスで修業を続けたいのではないかと悩み…。ついに完結!

ついに最後なんですね。とても好きなシリーズだったので終わってしまうのが残念です。
と、言いつつも読むたびにこの前はどんな話があったっけ?なんて思ったりしてしまうのですが^^;
今回も、どのお話も切なくて温かくて、素敵なお話ばかりでしたね〜。
最後はやはり秀司と明里の話。
明里が選択した形が私はベストだったと思うな。自分のせいで夢を諦めてほしくないし、夢を諦めてしまった分自分が相手を幸せにできるかって考えたら自信ないもの。
2人が決めた道は周りは良い顔をしないかもしれないけど、私は力強く応援したいなと思いました。
これで終わっちゃうの寂しいなぁ。番外編でも良いので期待しています。

<集英社 2016.5>H28.8.23読了

この世にたやすい仕事はない 津村記久子

この世にたやすい仕事はないこの世にたやすい仕事はない
著者:津村 記久子
日本経済新聞出版社(2015-10-16)
販売元:Amazon.co.jp

「コラーゲンの抽出を見守るような仕事はありますか?」燃え尽き症候群のようになって前職を辞めた30代半ばの女性が、職業安定所でそんなふざけた条件を相談員に出すと、ある、という。そして、どんな仕事にも外からははかりしれない、ちょっと不思議な未知の世界があって―1年で、5つの異なる仕事を、まるで惑星を旅するように巡っていく連作小説。

タイトルが凄く胸に突き刺さり、でも今読んだ方がいいような気がして手に取りました。
主人公が14年間働いた職場を辞め、職を転々とする1年間の物語です。
どこまで本当か分からないですけど、いろんな仕事があるんですね…。
仕事はね、お金をもらっているわけですから、私もこの世にたやすい仕事はないと思っているんです。でも、苦痛に感じたり体を壊してまでやることなのかと言ったらそうではないと思ってます。
いろんな仕事を経験して、自分に向いている仕事なのか模索する主人公。別にやる気がないわけじゃないし、どの仕事もちゃんとこなしている印象でした。
それでもきっと、心の中に引っかかっていたのは1番最初に勤めていた仕事だったんだろうなと思います。
心身ともに疲れて、全く違う仕事に就いて見ようと思って5か所の仕事を巡って。
どの仕事も大変そうな部分もありましたし、やりがいを感じられそうな部分もありました。どの仕事も、人に恵まれていたんじゃないかなと思います。
帯に書かれていた文章が好きでした。
「やりがいのある、好きな仕事に裏切られたから、やりたい仕事より、できる仕事からやってみる。いつか、自分にふさわしい仕事を見つけるために。」
私は逆でした。やりたい仕事はなかなかやれないから、早々と諦めて受け入れてくれる仕事をしてました。いったんはやりたい仕事に就けたけど、でも給与面などの待遇でこれから一人で生きていくことに不安を感じて自ら安定を選んで手放してしまって。
そこを後悔しているわけではないけど、私は好きなやりたい仕事をしたいから、また目指してみようと思っているところでした。
主人公のようにかなりの遠回りな私だけど、遠回りした分得られたものもあるはずだ。と思って、これからも頑張って行こうとこの本を読んで改めて思いました。

<日本経済新聞出版社 2015.10>H27.11.17読了

がらくた屋と月の夜話 谷 瑞恵5

がらくた屋と月の夜話がらくた屋と月の夜話
著者:谷 瑞恵
幻冬舎(2015-08-01)
販売元:Amazon.co.jp

仕事も恋も上手くいかないつき子は、ある日、道に迷い、一軒の骨董品屋に辿り着く。そこは、モノではなく、ガラクタに秘められた“物語”を売る店だった。古い時刻表、欠けたティーカップ、耳の取れたぬいぐるみ…。がらくたばかりの「河嶋骨董店」を、今日もまた忘れてしまった大切な何かを探しにお客たちが訪れる。トランクいっぱいに、あなたへの物語が詰まっている。「河嶋骨董店」へようこそ!

温かい物語でした。がらくた一つ一つに秘められた物語がどれも温かく、そして切なかったです。装丁の中村さんの絵に惹かれて手に取ったのですが、読み終えてから表紙を見直すといろんなものが散りばめられていてじんわりします。
どのお話も良かったですが、やっぱり天地の物語が切なかったです。
1人の少年が背負った事実はあまりにも重たい。
天地が抱える闇は深くて、壁を感じました。
それでもつき子はその闇に手を差し伸べようとします。
つき子の純粋な想いが天地の心を動かしたのだと思います。
2人の今後がとても楽しみです。

<幻冬舎 2015.8>H27.11.5読了

剣と紅 高殿円5

剣と紅剣と紅
著者:高殿 円
文藝春秋(2012-11)
販売元:Amazon.co.jp

井伊直政は家康にむかって話を続ける。それを訊く家康の相づちは実に楽しげだ。
「十五の年、養母は、この男だけは絶対にいけないと強情なまでに言いはり、ついには髪を下ろしてしまいました。当時、今川義元公の庇護の下、繁栄を極めた駿府より、ありとあらゆる贅沢品を用意した縁談相手を前に、養母は一言、こう言い放ったそうです」
──紅はいらぬ。剣をもて。
戦国の世、女地頭と呼ばれた徳川四天王・井伊直政の養母、井伊直虎。彼女の熾烈な一生を描いた、『トッカン』の著者がおくる渾身の歴史エンターテインメント!

出たときから気になっていたのですが何だかタイミングが合わなくて読めないでいたのですが。今回再来年の大河でこの方の生涯が描かれるということでこれはいい機会だと思い手に取りました。
面白かった…もっと早く読めばよかった。っていつも言ってますね^^;
「軍師官兵衛」で直政が登場していたので誰の事を差しているのかはわかりましたが、井伊家ってこんなに壮絶な歴史があったんですね…短い期間に男性陣が非業な死を遂げていて、どこまで負の連鎖が続くのかと読んでいてとても辛くなりました。
直親と香が何事もなく結婚できていたら、全く違う人生で歴史も全然違ったんだろうなとも思いました…。すべては「たられば」なんですけどね。
直虎の生き様、かっこよかったです。真似なんてできません。
小法師と呼ばれ、実際に千里眼のような能力を持っていてもそれで未来を変えることは出来ない。読んでいてとても辛かったです。
歴史小説ですがこちらは女性が主人公なので合戦のシーンはあまり出てきません。
それよりも女性の闘いが色濃く描かれているように思います。
直虎の生き様もそうですが、井伊家に嫁ぎ、夫に先立たれた女性たちの闘い。
直政の母、日夜が選んだ道が素晴らしかった。直虎がそうしてほしいと言ったのだけど、すべてを受け入れて分かった上での決意が素晴らしかった。輝も、きぬも素敵な女性でした。
大河ドラマではどう描かれるんでしょうか。
私は連続ドラマを見るのが非常に苦手なのですが^^;
見ようかなぁ。
高殿さんの作品はトッカンを始め前々から気になっていたのですが、これを機に他の作品も手にとってみようと思いました。

<文芸春秋 2012.11>H27.9.18読了

五十坂家の百年 斉木香津5

五十坂家の百年五十坂家の百年
著者:斉木 香津
中央公論新社(2015-04-24)
販売元:Amazon.co.jp

その朝、双子の老姉妹が手に手をとり崖から飛んだ。葬儀のため集まった家族は、武家屋敷の床下から四体の遺骨とある秘密を掘り起こす…怒涛のカタルシスを呼ぶ、淫靡で切ない長篇ミステリー。

タイトルとあらすじを読んで気になって借りてみました。初読み作家さんです。
一気読みでした。面白かった…。
五十坂家の各世代が語る五十坂家の人々。
「人喰い」の家系だと揶揄されてきたその由来と、家族がずっと隠してきた真実とは。
五十坂家のそもそもの発端はそれこそ「人喰い」と呼ばれた祖先なのだろうけど…
なんだろう…一言では言い表せないです。
語りの中で1番昔の璃理子。この人が魔女だったのかな…でも、甘やかしてしまった両親にも責任はありますよね。
そして璃理子のせいで人生が変わってしまった弥生。弥生が可哀想すぎました。
弥生がしたことは決して許されることではありません。未遂に終わったことも含めて人として間違っています。でも、そこまで追い詰めてしまったのは誰のせいか…そう考えると弥生だけを責めることは出来ません…。
蘭子と蝶子だって、魔法使いのようだと言われていましたけどこちらだって6歳の時に大人にならざるを得なかったわけだから悪いとは言えないし…
だから何が悪いのかと言ったら、血が悪いのでしょうか…答えは出せません。
全てが分かってから、一枝と公子がした行動が微笑ましいと感じてしまいました。
諸手を挙げて応援したくなりました。
由羽も取り返しが付かなくなる前に想いを吐き出せて良かったね。
これからの五十坂家の血筋はきっと安泰ですね。そう思える最後でした。

<中央公論新社 2015.4>H27.6.10読了

思い出のとき修理します 3 空からの時報 谷瑞恵4

思い出のとき修理します 3 空からの時報 (集英社文庫)思い出のとき修理します 3 空からの時報 (集英社文庫)
著者:谷 瑞恵
集英社(2014-12-16)
販売元:Amazon.co.jp

穏やかな交際を続ける明里と秀司。ある日「秀司の時計店を女が手伝っている」と教えられた明里は、店で骨董店の娘・郁実と出会う。東京での仕事を辞めて帰ってきたという彼女は、商店街のお祭り準備で秀司が不在がちの今だけ、店番をしているのだという。自分と境遇の似た彼女に共感を覚えつつも、秀司との関係に少しだけ不安を感じて…。切なく温かく、心を癒やす連作短編集、シリーズ第3弾。

今回は特に明里の家族について考える場面がありましたね。
実父の事、養父の事、血のつながり。家族って難しいですね。
第1弾の話なんてスッカリ忘れてしまっているので^^;2人がどうやって付き合うようになったのかすら忘れているという…もったいない。
でも2人がちゃんと愛を育んでいるのが分かります。素敵です。
あとがきによるとこの作品をシリーズ化するつもりはなかったみたいですね。だから1冊目で付き合っているんですねー。
今回はライバルが現れたりしてなかなか面白かったです^m^
時計にまつわる4つのお話も素敵でした。

〈集英社 2014.12〉H27.2.24読了

想い雲 みをつくし料理帖 眦聴5

想い雲―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)想い雲―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)
著者:高田 郁
角川春樹事務所(2010-03)
販売元:Amazon.co.jp

土用の入りが近づき、澪は暑気払いに出す料理の献立に頭を悩ませていた。そんなある日、戯作者・清右衛門が版元の坂村堂を連れ立って「つる家」を訪れる。澪の料理に感心した食道楽の坂村堂は、自らが雇い入れている上方料理人に是非この味を覚えさせたいと請う。翌日、さっそく現れた坂村堂の料理人はなんと、行方知れずとなっている、天満一兆庵の若旦那・佐兵衛と共に働いていた富三だったのだ。澪と芳は佐兵衛の行方を富三に聞くが、彼の口から語られたのは耳を疑うような話だった―。書き下ろしで贈る、大好評「みをつくし料理帖」シリーズ、待望の第三弾。

今回もまた嫌がらせやら何やらかんやらありましたねぇ…。もう読んでいて凄く辛かったです。澪のために売った簪。戻ってきて再びお寮さんの元に戻ってきた嬉しさ。戻してくれた種市さんの優しさ。それにほっこりしていたのに。どうしてこんなにつらい思いをしなければならないんだろう。嫌がらせだって澪たちは何も悪いことはしていないのに…でも分かる人はちゃんとわかってくれていましたね。味方もだんだん増えてきて、心強かったです。
そして澪が吉原に行った時の出来事。仕事の休憩中に読んでいるんじゃなかったら泣いてました。泣きたかった。野江ちゃーーーん!!って私が叫びたかった←
野江ちゃんのことも小松原さんとのこともじれったくてたまりませんが、料理が一番の澪なんだからしょうがないですよね。気長に読んでいこうと思います。まだ7冊もあると思えるのも嬉しいです。
最後のふきと健坊の話もハラハラしましたけど本当に良かった。みんないい人たち。みんな幸せになってほしいなぁ。

〈角川春樹事務所 2010.4〉H26.8.20読了

花散らしの雨 みをつくし料理帖 眦聴5

花散らしの雨 みをつくし料理帖花散らしの雨 みをつくし料理帖
著者:高田 郁
角川春樹事務所(2009-10-15)
販売元:Amazon.co.jp

元飯田町に新しく暖簾を掲げた「つる家」では、ふきという少女を下足番として雇い入れた。早くにふた親を亡くしたふきを、自らの境遇と重ね合わせ信頼を寄せていく澪。だが、丁度同じ頃、神田須田町の登龍楼で、澪の創作したはずの料理と全く同じものが「つる家」よりも先に供されているという。はじめは偶然とやり過ごすも、さらに考案した料理も先を越されてしまう。度重なる偶然に不安を感じた澪はある日、ふきの不審な行動を目撃してしまい―――。書き下ろしで贈る、大好評「みをつくし料理帖」シリーズ、待望の第二弾!

第二弾を読みました。
あらすじを読んでもう読むのが辛くなってしまったんですけど…読みました。
どうして澪にばかりこんな困難ばかりやってくるのでしょう。
それなのに、澪は本当に強くて健気な子です。強くならざるを得なかったとも言えますが…
ふきとの関わりは懐の深さを感じましたし、清右衛門との会話は面白かったし、あさひ太夫との関わりには涙が出そうでした。美緒との会話も良かった。
そして料理がまたとてもおいしそうです。特にこぼれ梅。食べてみたくなりました。
おりょうさんと太一君もどうなることかと思ったけど、良かった…
第3弾も読みますよ〜。もう少しで完結編が出ちゃいますからね^^

〈角川春樹事務所 2009.10〉H26.8.1読了

八朔の雪 みをつくし料理帖 眦聴5

八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)
著者:高田 郁
角川春樹事務所(2009-05-15)
販売元:Amazon.co.jp

神田御台所町で江戸の人々には馴染みの薄い上方料理を出す「つる家」。店を任され、調理場で腕を振るう澪は、故郷の大坂で、少女の頃に水害で両親を失い、天涯孤独の身であった。大坂と江戸の味の違いに戸惑いながらも、天性の味覚と負けん気で、日々研鑽を重ねる澪。しかし、そんなある日、彼女の腕を妬み、名料理屋「登龍楼」が非道な妨害をしかけてきたが・・・・・。料理だけが自分の仕合わせへの道筋と定めた澪の奮闘と、それを囲む人々の人情が織りなす、連作時代小説の傑作ここに誕生!

前々から気になっていたのですが読めていませんでした。
今年8月に刊行予定の10巻で完結だという話を伺い、これを機に読んでみようと思い手にしました。
こういう話だったんですね・・・。
澪のあまりにも辛すぎる境遇に読んでいて悲しくなりましたけども、でも澪は本当に強い子でした。そして天性の味覚を持っているんですね。それが幸福も悲劇も生み出しているような気もしますが・・・。
澪自身の努力も素晴らしいですが、周りの人たちにも恵まれましたね。店主の種市も、源斉先生も小松原もおりょうも伊佐三ももちろん芳も。
あさひ太夫の正体もすぐに気付きましたし、ストーリーもベタなんですけどそのベタさが好きです。温かくて優しい作品でした。
特に最後の章が読んでいて辛かったです。どす黒い人間の底を見せられたような。
これからもきっと辛い場面がたくさんあるんだろうなぁとも思いますが、それでも時間がかかっても読んでいこうと思いました。

〈角川春樹事務所 2009.5〉H26.7.19読了

いろは匂へど 瀧羽麻子3

いろは匂へどいろは匂へど
著者:瀧羽 麻子
幻冬舎(2014-04-24)
販売元:Amazon.co.jp

京都麩屋町で小さな和食器店を営む30代半ばの紫(ゆかり)に、草木染めの魅力を教えてくれたのは、50歳の草木染め職人・光山(こうざん)だ。彼は、静かな独身生活を楽しんでいた紫に、恋する気持ちも思い出させてくれた。しかし、無邪気で大胆な一方で、強引なことをしない彼に、紫は心を持て余す。実は、光山には想像もつかない過去があった。無邪気に口に出せない30代女子の恋。寺町、西陣、大原、鴨川、麩屋町…京都の街を舞台に、ちょっぴりビターなラブストーリー。

読みました。あらすじを読んで気になって読みました。
読んだんですけど、どうも納得がいかないというかなんというか・・・。
途中までは紫の気持ちに共感できたんですけど、どうして光山に惹かれるのか私は分かりませんでした。少し強引なところ、素直なところ。魅力的な部分はたくさんありましたけど、女性に関してはだらしがないというのとは違うんですけど何だかもやもやするし…。
どうしてブライアンに行かないの?って凄く思いました。
私はブライアンが良いです←
あんなに思ってくれる人がいるのにどうして?
私は愛するよりも愛されたい人です。
愛されてそれが分かって、私も好きになっていくのだと思います。何となく。
それは凄く恋い焦がれるように好きになったことがないからだろうなーと冷めて見たりしますけど。
紫が思い悩む気持ちは分かりますがはっきりしてほしかったなー。
最後はっきりしてたのかな?してないよね?
鈍い私にはわかりませんでした。
やっぱりブライアンがいいよー(しつこい)

〈幻冬舎 2014.4〉H26.7.2読了

こんなわたしで、ごめんなさい 平安寿子

こんなわたしで、ごめんなさいこんなわたしで、ごめんなさい
著者:平 安寿子
実業之日本社(2013-07-11)
販売元:Amazon.co.jp

「婚活の外へ」梅津成美25歳は職場の「みんなで幸せになろう」会に出席し、一人の男性に見初められる。全てにおいて完璧なその男性。しかし成美はそのプロポーズに答えられないでいた。
「どうか小さな幸せを」豊中東子は巨乳である。そのせいで今までずっと苦労してきた。男性にはいつも胸ばかり見られ、女性には何もしていないのに妬まれた。
「イガイガにチョコがけするのも年の功」安永泉は35歳。同級生の既婚者である奈津子がやたらと泉の世話を焼き、見合い話を持ってくる。
「自然の法則に従って」山科未和は30歳。かつて同じ職場の上司と付き合っていたが相手の浮気を知り別れることになった。なぜかその浮気相手とかかわるようになる。
「じれったい美女」洋子は自分が綺麗じゃないと早く見限った。睦美という友人はとても美人なのだがそれが元で今まで苦労をしてきたため、洋子は睦美の今の状況をもったいないと思っていた。
「カワイイ・イズ・グレート! 」義妹は50歳を過ぎてもカワイイひらひらふわふわの服を着て過ごしている。痛くてみっともないと梢は思っていた。
「こんなわたしで、ごめんなさい」女性管理職・学者の妻・15歳の娘の母親、の三役をこなし、前向きで明朗快活なわたしは皆が羨む存在!…だったはずの菅野早弓(44歳)は、最近職場で孤独を感じ、暗い毎日を送っている。なぜなら…

ずっと気になっていた作家さんでしたが今まで読んでいませんでした。初読みです。
いやー面白かった。さまざまな悩みを持つ女性たち。巨乳の人の気持ちは全くわからないけど^^;それ以外はなんとなくわかるなーと思って読んでいました。
周りはいいと思っているのに自分はいいと思っていない。ひねくれた答えを出す。相手の希望に応えられない結果になる。
だから、こんなわたしでごめんなさい。なんですね。
でもわかります。しょうがないよね。しょうがない。
人に言われて初めて気づくこと、たくさんあるもの。
良いことも悪いこともあがいてあがいて、結婚するにしてもしないにしても、仕事に生きるとしてもしないとしても、みんな頑張っていこうよって言われている気がしました。
面白かったです。

〈実業之日本社 2013.7〉H25.12.25読了

思い出のとき修理します2 明日を動かす歯車 谷瑞恵4

思い出のとき修理します 2 明日を動かす歯車 (集英社文庫)思い出のとき修理します 2 明日を動かす歯車 (集英社文庫)
著者:谷 瑞恵
集英社(2013-09-20)
販売元:Amazon.co.jp

寂れた商店街の片隅に、「思い出」を修理してくれる時計屋さんがある──。時計師・秀司のもとには、傷を抱いた人たちが今日も訪れる。優しく温かい、癒やしの物語、第2弾!
「きみのために鐘は鳴る」飯田時計店に若い女性がやってきた。太一が見かけたというその女性に明里は思い当たる人がいた。それは10歳年下の妹。明里と妹香奈は半分しか血が繋がっていない。一方香奈は喫茶店で一人の女性に出会う。似た境遇だった女性は香奈に時計の預かり所を託す。
「赤いベリーの約束」商店街にある宝果堂の奥さんである葉子さんが家出したのだという。夫の保と耀子には共通の友人がいた。若本光一という友人との過去が2人を縛り付けていた。
「夢の化石」明里の高校時代の先輩弘樹が秀司に石の時計を渡し、それを直してほしいと依頼をしてきた。どう見ても直せるはずのないものだが秀司は引き受ける。
「未来を開く鍵」飯田時計店に女性が現れた。以前鍵を渡していたのだが事故に遭い、その内容をすっかり忘れてしまったのだという。

シリーズ第2弾です。
恋人同士になりたての秀司と明里が可愛かったです。いい年して中学生みたいな恋愛^m^でもその恋愛がとてもうらやましかったです。
手を握ってドキッとしたり、ぎゅっと抱きしめ合って嬉しいとか、心地いいとか感じたり。
秀司はとても優しいけど、いつも笑顔だから本心は見えにくいなと思ってました。
でも、明里の先輩が登場した時に妬いてるんだよって言ったり、甘えた姿が見たいと言ったり、正直に言ってくれるのが良いなーと思いました。
今回の4編はどれも素敵なお話でしたが、あまりにも偶然過ぎるなーと思ったり、私でさえも展開が読めてしまったり。そういうお話もありましたが、それでも心が温かく幸せな気持ちになれる作品でした。
秀司と明里の恋愛模様が本当にゆっくりなのでやきもきしますが、展開の発展に期待しつつ第3弾も楽しみです。

〈集英社 2013.9〉H25.12.21読了

誰もいない夜に咲く 桜木紫乃4

誰もいない夜に咲く (角川文庫)誰もいない夜に咲く (角川文庫)
著者:桜木 紫乃
角川書店(2013-01-25)
販売元:Amazon.co.jp

寄せては返す波のような欲望にいっとき身を任せ、どうしようもない淋しさを封じ込めようとする男と女。安らぎを切望しながら寄るべなくさまよう孤独な魂のありようを、北海道の風景に託して叙情豊かに謳いあげる。

短編集です。この作品は以前出た「恋肌」に加筆修正を加えた作品なんですね。
新刊なのに文庫?と思ったので。なるほど。
どの作品もやっぱり暗くてさびしくなります。それでもみんな懸命に生きていて。
でも、女性はこんなに逞しくなきゃダメなのかなぁなんて思ったりもして。
男の人に縋って甘えて生きていったって良いじゃないって桜木さんの作品を読んでいると思います。
出てくる女性の試練が辛すぎるんだもの。短編になるとそういう作品が多いから体調不良の時に読むとちょっとつらくなります^^;
加筆した「風の女」が1番好きでした。
ちょっと矛盾しているかもしれないけど、こういう女性の生き方もかっこいいなと思いました。

〈角川書店 2013.1〉H25.4.24読了
自己紹介
苗坊と申します。
読書とV6を愛してやまない道産子です。47都道府県を旅行して制覇するのが人生の夢。過去記事にもコメント大歓迎です。よろしくお願いいたします。
Categories
Archives
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

記事検索
Recent Comments
  • ライブドアブログ