愛はここにある。幸せはここにいる。
「これまでの私の人生を全部込めたと言い切れる作品を描きました」
――瀬尾まいこ
母親との関係に悩みながらも、一人娘のひかりを慈しみ育てる、シングルマザーの美空。
義弟で同性のことが好きな颯斗は、兄と美空が離婚した後も、何かと二人の世話を焼こうとするがーー。
「子育てをしながら自分が受けた恩を思い知って、親に感謝していくのだと思っていた。それが親になった途端、さっぱりわからなくなった。この日々のどこに恩を感じさせるべきところがあるのだろう」
瀬尾さんの親子の物語はたくさん読んでいる気がしましたが、母と娘を書くのは初めてだそうで、そういえば…?となりました。
「卵の緒」はそういえば母と息子だったなーなんて過去の作品を思い出したりしましたが、最近は血のつながらない家族の形を描いている印象が強いかもしれません。
この本を読んで、読み始めと読み終わりの美空の印象が大分違って驚きました。始めは人の顔色を窺ってすみませんと言っていた美空、でもママ友の三池さんや職場の同僚の宮崎さんがさらりと懐に入ってきてくれたことで、申し訳ないじゃなくてありがたいってだんだん思えるようになっていったのも良かった。義理の弟も両親も本当に良い人達で美空は周りに恵まれて良かったと思いました。母親に関しては多分呪いがかかっていたんですよね。でも、その呪いを、颯斗と三池さんが解いてくれた。美空が呪いから解放されて本当に良かったし、反面教師にしているつもりはないんだろうけど、ひかりがまっすぐにすくすくと育っていて本当に良かった。途中から登場した林田さんもとってもいい人。いつか登場するだろうなと思っていたけど、想像以上にいい人でした。颯斗が同性と付き合うことをリアルに美空に伝えた時の美空の返し、最高すぎたな。三池親子に対してもそうだけど、美空は見たものしか信じていなくて、偏見もなくて、全てを対等に見ることが出来る人なんですよね。それって凄いことだと思う。三池さんが言ったようにまっさらな人は子どもと関わることに向いている気がする。
颯斗との関係もとても良かった。颯斗が遠慮しているところにズカズカ踏み込んでいく美空が最高だった^^これからは林田さんも交えて皆で仲良く年を重ねていってたら良いな。
ひかりが見つめる世界がキラキラしていて、幸せのお裾分けを頂いた気がします。良いお話でした。
<水鈴社 2025.4>2025.7.20読了























