大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望されながらも、母を亡くし一人になった甥のために地域病院で働く内科医の雄町哲郎。
ある日、哲郎の力量に惚れ込む大学准教授の花垣から、難しい症例が持ち込まれた。
患者は82歳の老人。
それは、かつて哲郎が激怒させた大学病院の絶対権力者・飛良泉寅彦教授の父親だったーー。
「エピクロスが主張している快楽の本質は、何よりも『精神の安定』のことなんだ。だから自分は快楽主義者だと言う奴に出会ったら十分に注意することだ。心の平静を求めているのか、ひたすら快楽を求めているのか、こいつは全く別物だよ」(本文より)
エピクロス……古代ギリシャの哲学者。快楽主義を提唱した。

シリーズ第2弾です。夏川先生が書かれる作品は文章が綺麗で、出てくる人が本当に温かくて、ずっと読んでいたい気持ちになります。
マチ先生が患者さんひとりひとりに丁寧に寄り添っている姿が本当に好きでした。反応がない患者さんにもちゃんと挨拶をして一言二言言葉を交わして、病院や医師に不信感を抱いている人にも真摯に向き合い、寄り添う家族へも配慮する。聖人君子かと私は思うのですが(笑)甥っ子の龍之介君との会話も好きだし、同僚の医師たちとの関わりや、大学病院の准教授との会話、研修医との関わり、全てが愛おしく感じます。
人の「生」と「死」をとても身近に感じる作品で、映画を1本見たかのような気持ちになります。
幸せな余韻の残る、素晴らしい作品でした。

<水鈴社 2025.9>2025.11.29読了