幻のビストロ「つくし」は、猫を思わせるギャルソンとシロクマのようなコックが、抜群においしい料理で迎えてくれる。キッチンカーの赴くままに店を開く「つくし」だが、いつも芸術のある場所に現れる。ピアノの演奏が聞こえる野外劇場、絵画が飾られたマルシェ、映画が上映されている砂浜……。 おいしい料理と素敵な芸術は最高のマリアージュ。弱った心と体を満たしてくれるので、夢のようなひと時を楽しんでお帰り下さい。

有悟と颯真の似ていない兄弟がキッチンカーで営んでいる「つくし」ここに訪れるお客様の心を癒す料理がたくさん登場します。それと同時に有悟が追い求めている人探しも加わり、装丁はとても可愛らしいですが、内容は大人な作品だと感じました。有悟が逢いたい人と関わることになった経緯は胸が張り裂けそうになりましたし、お店にくるお客様の悩みも可愛らしいものから重たいものまであって。でも、有悟が作る料理が癒してくれます。「心が満ち、お腹も満ちたら、それは世界で一番おいしい料理なんじゃないかって思うんですよ」という有悟の言葉が余韻として残ります。優しい物語でした。

<ポプラ社 2023.3>2025.10.27読了