シェパードやドーベルマンなど、訓練を受けた優秀な番犬を自宅に迎えられる「レンタル番犬サービス」。番犬たちの散歩や健康管理は、「スマイルペットサービス・マキタ」の優秀なスタッフにすべておまかせ。利用者は手間なく、日々の安全と癒しを手にすることができる。ただし、月額十万円。
高齢のひとり暮らしや女性ばかりのシェアハウスなど、さまざまな事情を抱えた人々に、番犬たちは静かに寄り添い、家を守る。
心強い存在によって、利用者たちの毎日が鮮やかに彩られていく――。犬と人との幸せな絆の物語。

実際にこのようなサービスの会社があるのかはわかりませんが、それでもとても良いサービスだと思いました。第三者は月額十万円を高いと金額だけで言っていましたけど、番犬として訓練を行ったり、毎日の散歩を行ったり、利用者とのアフターケアを行ったり、諸々のことを考えると月額十万円は安いくらいだな…と思いました。こちらの作品では5人の物語が描かれ、5匹の番犬が登場します。番犬を利用する理由は人それぞれで、でも皆が番犬を家族のように大事にしていて、心が温かくなりました。
「リクと暮らせば」旦那さんを亡くし、一人暮らしとなった女性の話。習い事でレンタル番犬の存在を知ります。家族が心配して色々言うのは分かるけど、それに流されていないのが良かった。それにしても長男さんはひどすぎないか?^^;
「アンジェがくれたもの」38歳で無職となってしまった主人公が伯父が入院している間伯父の家に住み一緒に暮らしている番犬アンジェと一緒に過ごしてほしいと母から依頼を受ける。独身を貫き両親から受け継いだ家に住むあまり関わりの無かった伯父。伯父さんの過去を知った時、私は泣きそうになりながら読みました。ようやく寄り添いたいと思える家族と出逢えて、どちらも健康で長生きしてほしいと思いました。
「ウィ・ラブ・ナンシー」離婚により母一人子一人となり、不動産で部屋を探していると番犬付きのシェアハウスを紹介される。自分は乗り気ではなかったが、娘の芽依が番犬を気に入り、引っ越すことに。他人と暮らすということの戸惑いはとてもよく分かるけど、傍に話を聞いてくれる人がいるというのは良い事だったんじゃないかなと思いました。
「ランパト」突然夫を亡くし、番犬ランスと2人暮らしになった女性の話。旦那さんとは違い、近所づきあいを避けてきた。その理由がとても切なくてやるせない。血は繋がらなくても、息子さん2人を大事にしていることは伝わってきたし、息子さん2人も気にしていることが伝わって来て、そうしてお互いに大事にしていればそれでいいのではないかな…と思いました。
「となりのマルグリット」主人公の男の子がとってもいい子でニコニコしながら読んでいました(笑)お隣さんが利用しようとしているレンタル番犬の施設見学に付き合ったり、お散歩に一緒に行ったり、自分がやりたいと思っていたとしてもそんなに素直に出来ないと思う。懐に入るのが上手いんだろうな。お兄さんが嫉妬してしまうのも分かります(笑)お隣さんの金子さんとも良い関係で素敵。ハラハラする場面もあったけど、2人のお兄さんとマルに助けられてほっとしました。最後に今まで登場したワンちゃんたちが登場して連作短編になっているのがさすがでした^^全編優しい物語でした。

<双葉社 2025.8>2025.10.5読了