来年、箱根駅伝は100回大会を迎えます。
第一回大会に参加したのはわずか4校。その後、徐々に参加校を増やしながら、関東大震災、太平洋戦争、そしてコロナ禍などを乗り越え、大正、昭和、平成、そして令和と多くの学生ランナーたちが襷をつないできました。
箱根駅伝は1987年に日本テレビが生中継を始めたことで、お正月の風物詩として日本全国で楽しまれるようになりましたが、その中継の合間に放送されてきた名物コーナーが「箱根駅伝今昔物語」です。
本書では150回を超える「今昔物語」から80人のエピソードを厳選して紹介しています。
記念すべき第1回大会(!)の出場者、召集令状を胸に走った学生、ゴール150m手前で棄権した選手、違う大学に通うも同じ区間で競った双子、新興チームのアンカーをつとめた、あの人気漫画家、“山の神”今井正人、“最強の市民ランナー”川内優輝など記憶に残るランナーたち、さらには強豪チームを率いた名物監督、戦後、人員不足でレースに駆り出されたラグビー部員、テレビ中継以前に箱根駅伝をラジオで伝えていたアナウンサー、レースを先導する白バイ隊員、定宿旅館の女将などなど、さまざまな人物が自分にとっての「箱根」を語ります。
彼らの言葉を読めば、なぜ関東のローカル大学レースである箱根駅伝がここまで多くの人をひきつけるのか、「箱根」だけが持つ魅力とは何なのかが浮かび上がってきます。
さらに、「箱根駅伝中継の始まった日」「『今昔物語』誕生秘話」「監督の名言」などのコラムに加え、長年、箱根を現場から伝える日テレアナウンサーたち5人(平川健太郎、蛯原哲、森圭介、徳島えりか、杉野真実)による、感涙エピソード満載の座談会も特別収録。箱根愛にあふれる5人の座談会は必読です。
「言葉」を軸に箱根駅伝100年の歴史に迫った、完全保存版の一冊です。

発売日近くに買ったはずなのに、2年近くが経過していました…もったいない。
この作品は箱根駅伝の放送時に何度か放送される「今昔物語」を抜粋したものです。1987年から中継が始まったそうなので、その時ご存命の方のメッセージもあって、第1回に走られた方の言葉まであって驚きます。少し前に「タスキ彼方」を読みましたし、今年は戦後80年ということでなおのこと、戦時中、戦後すぐの箱根駅伝の話が特にずしっと来ました。いろんな想いを抱えて選手の皆さんは走られていたんですね。作品の終盤近くまでは私の知らない時代の箱根駅伝の話が多かったですが、監督として知っている方々が選手として走っていた時のエピソードも多く、なんだか新鮮でした。
終盤はちょっとニヤニヤしながら読みましたよね(笑)大好きな大八木監督のエピソードもありましたし、順大の今井さんや早大の竹澤さんのエピソードに関してはその今昔物語を見たのを覚えています。締めが碓井さんの言葉なのもなんだかじんわりしちゃいますね。今でも解説席にいらっしゃいそうな気がしてしまいます。
最後のアナウンサーの座談会も面白かったです。ベテランのお2人のエピソードは分からないものもありましたが、大体は私も実際に見てきたエピソードが多くて、こっちでもニヤニヤしちゃいました(笑)
大八木監督のことや徳本監督のことは頷きが止まらなかったし、河村アナウンサーが誕生させる形になってしまった「山の神」という言葉についても言及していました。その言葉が生まれるきっかけになった「箱根の山には神がいる」とアナウンサーさんが放送の割と序盤に話していたのも覚えているし、それを言ったのがライバルの選手(日体大の北村さん)だったことも私は知っていますけど、何も知らない人はアナウンサーが考えた言葉だって思っちゃいますよね。しかもそのアナウンサーさんは若くして鬼籍に入られていて、いつもその今井選手がゴールした瞬間のその言葉が映し出される。難しいですよね。別にアナウンサーさんだって目立ちたくて言っているわけではなくて、その選手が素晴らしいということを伝えたいだけなんですから。そんな裏話も含めて面白く読みました。箱根駅伝関連の本の感想はいつも長くなって困ります(笑)

<文藝春秋 2023.12>2025.8.14読了