2013年10月13日に94歳で亡くなったマンガ家で、詩人で、『アンパンマン』の作者であるやなせたかしが自らの戦争体験を綴った本。やなせは1915年の春に召集を受け、小倉の野戦銃砲部隊に入隊。召集期間満了直前の16年12月8日の開戦により、召集延期に。その後、中国戦線に派遣され、上海郊外で終戦をむかえた。やなせは自伝などの中で簡単に戦争のことを語っているが、戦争体験だけをまとめて話すのは、これが初めて。人殺しも、団体生活も嫌だったというやなせにとっての軍隊はばかばかしいだけの世界。しかし、辛い中にも何か楽しみを見出していく持ち前の性格で、戦争と軍隊を内部から風刺していく。特攻に志願した弟との別れなど、辛く悲しい思い出にも持ち前のユーモアを交えながら語る笑いと涙の戦記。嫌いな戦争のことはあまり語りたくないと考えていたやなせが、90歳を超え、戦争体験、軍隊体験を語り継ぐことで、過去の戦争のことが未来を生きる世代の記憶に少しでも残ればいい、と亡くなる直前まで語ったラストメッセージ。
やなせさんが無くなられる直前まで語られていた自身が経験された戦争体験について書かれています。
やなせさんは戦争の最前線で戦っていたわけではないですが、それでも読んでいて辛い場面がたくさんありました。
今考えると信じられないことも多くあります。当時のやなせさんがおかしいと思っていたんですから、軍事主義というのは恐ろしいものですね。
弟さんのお話もありました。優秀な人ほど最前線に立たされ真っ先に命を失っていた戦地。本当にやり切れません。
戦争からは何も生まれない。戦争は決してやってはいけない。やなせさんの強いメッセージを感じました。読むことが出来て良かったです。
<小学館 2013.12>2025.5.17読了