20年前、兄が言ったんだ。「誰かが<のっぺらぼう>を見るようになったら呼んでほしい――」。みんなの顔が<のっぺらぼう>に見える――。息子がそう言ったとき、僕は20年前に姿を消した兄に連絡を取った。家族みんなで暮らした懐かしいパルプ町。桜咲く<サクラバ>や六角交番、タンカス山など、あの町で起こった不思議な事件の真相を兄が語り始める。懐かしさがこみ上げるメフィスト賞受賞作。

小路さんデビュー作品。メフィスト賞が始まりって何だか意外な気がします。
今の作風を考えるとこの作品はなかなかにダークな気もします。
読み終えた後に知ったカタカナの町、旭川市にあるんですね。小路さんは旭川出身だそうなので、地元をイメージされたのでしょうか。
息子がみんながのっぺらぼうに見えると告白し、20年ぶりに会った兄。そしてその兄が語る20年以上前の出来事。結構なダーク具合に驚きました。小学生が抱えるには重すぎないか…?
そしてすべての謎が解き明かされて現代に戻ってきてからのラスト。
何だかかつての恩田さんみを感じる、少し拍子抜けのような…。
現代のこれからは読者の想像に任せる感じなのでしょうか。
今と少し作風の異なる小路さんの作品を読めて良かったです。

<講談社 2003.4、2007.5>2025.5.16読了