あの日、演劇(フィクション)のような、人生が始まった。
著名な劇作家・野上が主宰する劇団の新作公演初日まで、残り3週間。
晴れてヒロインに選ばれた元国民的子役のアイドル・中野ももは、野上の厳しい指導に応えることができず、徐々に追い詰められていた。
長年売れず、端役を手にすることしかできなかったとある中年の女優は、中野ももが憔悴していく様子を気に掛ける。
そして、やってきた公演初日。
幕が上がった瞬間、二人の人生は大きく変わる!
俳優としても活躍する著者が3作目の舞台に選んだのは、「演劇」の世界。
二人の女性が織り成す関係は、ゆっくりと、繊細に、絡み合う。
現実にうちひしがれる絶望、強運を手にして舞い上がる歓び、突然やってくる予想外の衝撃。
幾つもの感情を抱えた先の終着点で、それぞれが決断した選択とは――。
「演じる」とは何かを問う、唯一無二の物語。
松井さんの作品は2作目です。小説を読んだのは初めて。
始めに出てきたのが舞台稽古のシーンだったので、松井さんが出演されていた「ミナト町純情オセロ」を思い出しましたよ…。モナっち可愛かったな…。
ずっとマル子さんの目線でのお話かと思ったらそうではなくて、舞台人目線、アイドル目線、ファン目線、裏方目線と色々あって、でも主軸となるのは元子役でアイドルの中野ももと舞台女優の坂田まち子(マル子)の二人。それぞれの仕事に対する想いが丁寧に書かれていて感情移入しまくってました。どの章も面白かった…。夢中で読みました。
再会してからの2人の会話がとても良かった。マル子さんと放送作家さんの会話もとても好き。一つの舞台が一人の人生を変える場合もあるんですよね。最初金髪の子がファン目線の子かと思ったのだけど、口調が違うなと思って。でも、この業界にやっぱりいたんだな…とニヤニヤしてしまいました。
ももの行きつけの喫茶店の店長さんが好きでした。店長さんが言った言葉になぜかボロボロ泣いてしまい^^;困りました。
マル子さんのおうちのかめちゃんの正体は何だろうってずっと思って色々想像していたんですけど、予想外過ぎました(笑)私も買って話を聞いてもらおうかな(笑)
最後のシーンがとても良かった。鳥肌が立ちました。もちろんいい意味で。
<集英社 2025.3>2025.5.5読了
「気持ちが落ち込んでいても、ご飯が食べられたらまだ頑張れる証拠。受け入れる心の余裕と、元気になりたい気持ちがあるから美味しいって思える。心が食べ物に味をつけるんだよ」