南軽井沢の銀河ホテル。
イギリス風の瀟洒な洋館の一角に、「手紙室」がある。
室長の苅部文彦は、このホテルに居候する風変わりな男。
彼の手紙ワークショップを受けると、なぜか心の奥のほんとうの気持ちが見えてくる。
娘家族と最後の思い出作りにやってきた老婦人、秘密を抱えたまま仲良し三人組で卒業旅行にきた女子大生――銀河ホテルを訪れたお客さんが、手紙を書くことで人生と向き合う感動作。
ほしおさんの新しいシリーズ。今回の舞台は軽井沢のホテルで行われる手紙室でのワークショップ。
私も万年筆やインクが気になっている時期があって、色々買い集めたいなと思っていた時がありました。でも、きっと使い切れなくて固めちゃうんだろうなと思って^^;結局買えていないのですが。インクの色って本当にたくさんあるんですね。ネーミングも素敵で、それは沼にはまっちゃう人もいると思います。
「夜の沼の深い色 Baltic Memories」ホテルの跡取りである上原旬平の話。東京でブラック企業に勤めていて不注意から電車のホームに転落し怪我を負い、更に勤め先が倒産してやむなく実家へ戻ってくることになった青年。いやはや。実家が老舗ホテルで跡取りは自分しかいないとか、プレッシャーに感じちゃいますよね。色々悶々としながら実家で暮らしていく中で従業員の苅部さんが行っているワークショップを行って見ることに。そこで、幼い時に亡くなった父のことを思い出し、父への手紙を書きます。何かが吹っ切れたようで良かった。
「ラクダと小鳥と犬とネズミと Joy Sepia」タイトルの意味が最後まで分からなかったんですけど、分かってからはとても微笑ましかったです。夫の両親と夫の介護を終えて施設でひっそりと暮らしていた主人公を、いつの間にか祖母と重ねていました。母も言っていたけど、元気なうちに祖母ともっと旅行に行きたかったなと思いながら読んでいました。
「また虹がかかる日に Sea of Illusion」卒業を控える女子大生の話。かつて映画制作を共にしてきた3人はそれぞれやりたいことに向かっていくはずだった。そんな中秘密を抱える穂乃果。自分が選んだ道がこれで良かったのか、思い悩んでいて。未来の自分への手紙が言い訳ばかりだと気づき、前向きに書き直したところがとても良かったです。何だか私も元気をもらえた気がしました。
<集英社 2024.11>2025.2.11読了