青い壺 (文春文庫)
有吉佐和子
文藝春秋
2015-08-28


第一話 青磁ひとすじに制作を続ける陶芸家の省造。ある日デパートの注文品とともに焼きあがったその壺は見る者を魅了した。
第二話 定年後、家でぼんやりする夫を持てあました妻は、世話になった副社長へのお礼にデパートで青い壺を買い、夫に持たせた。
第三話 副社長である夫の部下の女性と、甥っ子を見合いさせるため二人を自宅に呼んだ芳江は、今どきの人たちに呆然とする。
第四話 青い壺に美しく花を生けようと奮闘する芳江。孫を連れた娘の雅子が急に帰ってきて、婚家の醜い遺産争いを愚痴るのだが。
第五話 老いて目が見えなくなった母親を東京の狭いマンションに引き取った千代子。思いがけず心弾む生活だったが……。
第六話 夫婦ふたりで、戦後の焼け跡から始めたこぢんまりとしたバア。医師の石田は、「御礼」と書いた細長い荷物を置いて帰った。
第七話 息子の忘れ物としてバアのマダムが届けてくれた壺をみて、老婦人は、戦時中に外務官僚だった亡き夫との思い出がよみがえり、饒舌に語りだす。
第八話 長女が嫁ぎ、長男はアメリカに留学。姑が他界したある日、夫にレストランに誘われ……
第九話 女学校の卒業から半世紀、弓香は同級生たちと久しぶりに京都で集まる。戦争を経て子育ても終えた彼女たちは、家庭の状況も経済状態もそれぞれで。
第十話 母校だったミッションスクールの初等科に栄養士として就職した、弓香の孫娘の悠子。野菜を食べさせたいと工夫を凝らすが、ある日……。
第十一話 世話になったシスターが45年ぶりにスペインに帰郷するときいた悠子は、青磁の壺をプレゼントする。壺はついに、海をわたる!
第十二話 スペイン旅行中に急性肺炎になったという入院患者の男は、病室に飾った青い壺に触られそうになると、怒鳴るのだった。
第十三話高名な美術評論家を訪ねた陶芸家の省造。スペインで見つけた「12世紀初頭」の掘り出しものとして、青い壺を見せられたが……。

100分de名著を見て、この作品を読んでみたいと思い、手に取りました。
50年近く前に出版された作品ということですが、そこまで違和感を感じずに読むことが出来ました。家族に対する悩みなどはあまり変わっていないのだなぁと読んでいて感じました。
番組の中で紹介されたお話もあったので、聞いたことがあると思いつつ読んだ作品もありましたが、私が好きだったのは第八話と第一二話でした。どちらも青い壺はそこまで重要な形で登場しないのですが、人間模様がとても好きでした。第八話は厚子という女性目線で前話で偉そうに(笑)昔話をしていた姑が亡くなり、子供も独立して孤独を感じている女性です。ある日夫が酩酊状態で上機嫌で帰ってきて、土曜日を心待ちにしており、私は正直酔っ払ってるから若い女性と会うことを奥さんに伝えてしまったのかと思ったんです←全然違いました。ごめんなさい!とってもごめんなさい←今まで自分の親によくしてくれた奥さんへの感謝を伝える食事会で、ちゃんと言葉で伝える旦那さんが何て素敵なのだろうと思いました。奥さんは3年に1度はこうして一緒に食事をしようといい、欲がないなと1年に1度くらいにしようという旦那。素敵でした…。
第十二話は孤児として育ち、現在は病院で清掃員として働くシメという女性目線。病室に飾られている枯れかけた薔薇の花びらを集めて枕を作るのが趣味の女性で何気ない1日の話がとても優しくて温かく、こちらの心が満たされるようなお話でした。
巡り巡った青い壺は最終的に作り手の目に触れることになるのですが、その作り手の性格というか雰囲気が恐らく10数年経過していると思いますが変わっていなくて安心しました。先生が情けなくてかっこ悪いなと思いましたけど(笑)面白くて夢中で読みました。読むことが出来て良かったです。

<文藝春秋 1977.4、2011.7>2025.2.5読了