ナチュラルボーンチキン
金原ひとみ
河出書房新社
2024-10-03


毎日同じ時間に出勤退勤し、同じようなご飯とサブスク動画を詰め込む「ルーティン人生」を送る、45歳一人暮らしの「兼松書房」労務課勤務・浜野文乃(はまのあやの)。ある日、上司の指示で、「捻挫で三週間の在宅勤務」を続ける編集者・平木直理(ひらきなおり)の自宅へ行くと、そこにはホストクラブの高額レシートの束や、シャンパングラスと生ハム、そして仕事用のiPadが転がっていてーー。

金原さんは初読みです。あらすじを読んで気になっていました。45歳の主人公の雰囲気が、私に近いのではないか?と思ったのだけど、結果的に全然近くなかったです^^;私は何も経験していなかった…。浜野さんがルーティン人生を送るようになるまでの過去が読んでいて辛すぎて、それと同時に気持ちが分かる部分もあるなと思いました。子どもが大嫌いなのに子供に縋ってしまった理由も。そしてどうして女性ばかりがこんなに苦しまなければならないのかと思うところも。
始めは40歳を過ぎて10年以上気になっていて好きでしたって言ってくれる人がいて自分が言う事すべてを否定せずに受け入れてくれる人がいるなんて羨ましいなんて思ってしまったんですけど^^;読んでいくうちに2人には型にはまった形ではない愛をはぐくんで、幸せになってほしいと思いました。まさかさんは10年以上前に文乃と出会ってその時から気になっていたけど、まさかさん自身もこの10年の間に色んなことを経験して、今があるんだろうなと感じて。10年以上前の2人のことも今の2人も読み終えた後とても愛おしくなりました。私もまさかさんのような人に出会いたいなと思いつつ、無理だろうなと思いました(笑)
私も割とルーティン人生が理想で、新しいことややったことがないことをするのは苦手なのだけど、ルーティンからはみ出したなにかをすると、違う自分が見えてくるのかもしれないなと勇気をもらえた気がします。著者さんがおっしゃるようにこの作品は中年版「君たちはどう生きるか」でした。

<河出書房新社 2024.10>2024.10.29読了