幼い自分を守ってくれたガードドッグの「虎」。虎は、私が所有した唯一の愛だった。直木賞作家が満を持して描く、犬と生きる真実。
136ページの短いお話でしたが、濃い内容がぎゅっと詰まっているようでした。
どこの国のお話かは書かれていなかったけど、アフリカとか、日本からずっとずっと遠い国の話なんだろうなと思って読んでいました。千早さんが幼少期を過ごした国。治安が悪く、物を盗られたらちゃんと抱えていなかった方が悪いと言われる世界で、まどかたち家族は生きていた。塀の外は危険で、だから数匹のガードドッグを飼う必要があった。まどかが選んだ虎と名付けた犬は始めは弱々しかったが、次第に番犬として機能するようになった。それがまどかにとっては良いのかどうか分からないけど。
子どもが経験するには酷すぎたかなと思います。それでも選択しなければならなかったとも思う。人と犬の命にかかわることだから。異国の地で過ごした日々のことは分かったけど、まどかが子供を拒み、家族を拒む気持ちは分からなくて、それは私が動物を飼ったことがないからなのかなと思ったりしました。
<河出書房新社 2024.8>2024.9.17読了