大学入学直前のピップに、不審な出来事がいくつも起きていた。無言電話に匿名のメール。首を切られたハトが敷地内で見つかり、私道にはチョークで首のない棒人間を書かれた。調べた結果、6年前の連続殺人事件との類似点に気づく。犯人は服役中だが無実を訴えていた。ピップのストーカーの行為が、この連続殺人の被害者に起きたことと似ているのはなぜなのか。ミステリ史上最も衝撃的な『自由研究には向かない殺人』三部作の完結編!

いやー…衝撃でした。確かに1番衝撃を受けた作品かもしれないです…。
第1作目の「自由研究には向かない殺人」はピップの正義感が強くて最後は最高のヒロインになって終わっていました。第2作目はその時の地位と名誉から相談を受け再び事件かもしれない調査に乗り出す。そして今回の第3作目。第2作目のトラウマか、ピップは自分の手が血まみれに感じる錯覚を覚え、薬がないと眠れない状況に陥っていきます。更に前作で無罪判決を受けたマックスから賠償請求を命じられ、ピップは何者かに嫌がらせを受けるようになります。その行動が6年前の連続殺人事件に似ていることからピップはその犯人の母親や関係者とコンタクトをとるようになります。そして。
本当にそして。です。今回は第一部と第二部に分かれているのですが第一部の最後が本当に衝撃的。ここで物語が終わるのか夢なのかと思いました。でも、物語は終わらない。ピップやラヴィの行動が細かく描かれそしてその行動が終わってから改めて時が動いていくような。うまく表現できないですが。
何でこんな展開になったのだろうと思ったのだけど、解説を読んでいると著者さんは警察などに良い印象を持っていないようですね。警察に対するアンチテーゼのような作品なのかなと思いました。
ピップも第2作目で自分は関わりたくないからとホーキング警部に捜査を依頼しましたが断られ、少しずつ警察に対して不信感を抱いていきます。そして今回。あれは布石だったのかなと感じました。ピップが自分の命を助けるために行動し、助かったけど、私はもしも助かったら逆に警察は何も信じてくれないんじゃない?って読みながら思ったんですよね。実際ピップもそう考えた。そして行動を起こした。ラヴィは家族を失っているからどう思うのだろうと思ったけど、ピップのことを本当に大事に想っているのだと分かる選択でした。ただ、それが全面的に正しいのかどうかは分からないけど…
これは賛否両論を生むだろうなと思います。私も力いっぱい面白かった!とは言えないです^^;でも夢中で読みましたし引き込まれました。著者さんはこの三部作を20代で書かれたそうで驚きです。これからどんな物語を描いていくのか、とても楽しみです。

<東京創元社 2023.7>2024.6.5読了