幻想文学の古典、57年ぶりの完全版新訳
1872年に発表され、ブラム・ストーカー『ドラキュラ』にも影響を与えた怪奇小説。レズビアニズム色の濃密な作品でもあり、「百合族」のバイブルともされる本作が、平井呈一訳以来の完全版として美麗装幀でよみがえる!にしざかひろみによるカバー画・挿画。
少女ローラはオーストリアで、父と人里離れた城でしずかに暮らしている。ある日、突然暴走した馬車が城の前にやってきて横転し、中から気絶した美しい少女が運び出される。少女の母は、急ぎの旅の途中だからと、ローラを父に託し、自分たちの素性を探らないよう念を押して去ってゆく。
その日から少女と共に生活するようになったローラは少女に夢中になるが、いくつかの不思議な点があった。寝る時は部屋に鍵をかけ、部屋に他人が居ることを拒絶する。素性は家柄が良いことと名をカーミラということしか明かさない。たびたびローラを愛撫しながら愛を語るが、そのことばは生死に関わる謎めいた内容。起きてくるのは毎日正午過ぎで、食事はチョコレート1杯だけ。賛美歌に異常な嫌悪感を表す。
やがて、城周辺の村で異変が起きるようになる。何人かの女性が相次ぎ死亡し、熱病の流行が噂される。そして、いつしか、ローラ自身も体調の不良を訴えるようになる…
私がこの作品を知ったのは「ガラスの仮面」です。マヤが貶められて芸能界から追放され、主犯である女優を姫川さんが演技で完膚なきまでに叩きのめした作品という印象(笑)
こちらは57年ぶりの新訳ということで現代の文章だったのでとても読みやすかったです。ありがたい(笑)ガラスの仮面の中では部分的にしかあらすじが分からなかったので、全編を読むことが出来て良かったです。カーミラの正体もちゃんと分りました。父親の知り合いが長期間遊びに来るから楽しみにしていたのに、不幸があって来れなくなってしまったというのが伏線だったんですね。ローラが無事で良かった。こちらの作品は1872年に発表された作品で、吸血鬼ドラキュラよりも四半世紀も先に発表された作品だそうで。吸血鬼作品のパイオニアだったのでしょうか。
こちらは百合小説と言われているそうですけど、そこまでそうとは感じなかったかなぁ。美しい女性を見て見惚れるって同性でもあると思うし…。まあ著者さんはカーミラは吸血鬼で性別はないからレズビアン小説ではないという回答をしたそうなので私の考えとは違うような気がしますが^^;
海外作品もたくさん読みたいと思っているのですが、読み進めるのが私は大変で敬遠しがちなのですがこちらは読みやすくて良かったです。他にもたくさんの海外作品を読んでいきたいと思います。
<亜紀書房 2015.1>2024.5.27読了