spring
恩田陸
筑摩書房
2024-05-22


自らの名に無数の季節を抱く無二の舞踊家にして振付家の萬春(よろず・はる)。
少年は八歳でバレエに出会い、十五歳で海を渡った。
同時代に巡り合う、踊る者 作る者 見る者 奏でる者――
それぞれの情熱がぶつかりあい、交錯する中で彼の肖像が浮かび上がっていく。
彼は求める。舞台の神を。憎しみと錯覚するほどに。
一人の天才をめぐる傑作長編小説。

私がバレエと聞いて思い出すのは、伊吹有喜さんの「カンパニー」(イノッチが主演だったのでドラマも見た)と山岸涼子さんの「テレプシコーラ」でした。テレプシコーラは主人公がコンテンポラリーダンスの才能を見出される人物だったのでなおのこと懐かしく思い出しました。
こちらの主人公は萬春という男性で、4部作になっており、春に関わった人たちが春の印象について語っています。
深津純、志田稔、滝澤七瀬の目線と最後に春自身。最初の深津目線も良かったけど、個人的に好きだったのは叔父の稔が語る「芽吹く」でした。春がバレエを始めるきっかけが分かったことと、春が主に振付家として開花したきっかけとなったのは稔だろうと思っていたので。稔自身が博識で読んでいても面白かったし、春が梅の木を表現した時に「紅天女」の一言で片づけられたのがガラスの仮面も読んでいる身としては嬉しかったですね(笑)
バレエのことはもちろんですが様々な知識がなければここまでの作品は描けないですよね…本当に恩田さんの知識の幅の広さに脱帽です。知っているものが全然なかった…^^;もったいないですけどしょうがないですね。
3人の視点で春が語られた後の春目線。言い方があれですが普通の青年っぽさも感じられて良かったです。いや、色々全然普通じゃないんだけど(笑)
私はバレエを実際に見たことがないので、実際に観てみたいと改めて思いました。

<筑摩書房 2024.3>2024.5.6読了