清少納言を求めて、フィンランドから京都へ
ミア・カンキマキ
草思社
2021-08-17


セイ、あなたと私は驚くほど似ている――。
遠い平安朝に生きた憧れの女性「セイ」を追いかけて、ヘルシンキから京都、ロンドン、プーケットを旅する長編エッセイ。
仕事にも人生にもうんざりしたアラフォーシングルのフィンランド人「私」は、長期休暇制度を使って日本へ旅立つ。目的は「清少納言を研究する」ため――。
うだるような京都の夏の暑さ、ゴキブリだらけの「ガイジンハウス」、同居人たちとのドタバタ劇、博物館や図書館での資料探し、東日本大震災による精神的混乱、深夜のバーでの友との語らい、この世のものとは思えないほど美しい桜、女性が生きていくことの困難さ……。
新しい人生へと旅立つ期待と不安を、鮮烈に描いたデビュー作!

タイトルが気になって手に取りました。そして、あまりの本の分厚さに驚きました(笑)
著者は清少納言に魅力を感じ、京都へやってきたアラフォーの女性。著者さんがどうしてこれほどまでに清少納言に惹かれて研究をしようと思ったのか、具体的な部分は書かれていませんでしたが、それにしても丁寧に詳しく調べられていることが分かります。清少納言が残した作品だけではなく、紫式部や藤原家の人々が残した日記にも目を通しています。私は枕草子すらちゃんと読んだことはなく、こんなことが書かれていたのかと驚くことばかりで申し訳ない想いです(笑)
歴史上の人物の一人であるはずだった清少納言が、著者さんがセイと呼ぶたびに私たちと変わらない一人の女性として浮かび上がってくるような気がして、不思議でした。清少納言の生涯は紫式部以上に不明な点が多く、資料もほとんど残っていないことも知りました。確かに清少納言はあまり良い人の印象はないですが(笑)その中にどんな思いを秘めていたのか、それはとても気になりました。
清少納言の物語と同時に、著者さんのエッセイでもあったので、京都での暮らしについて書かれていたところも面白かったです。著者さんはちょうど留学中に東日本大震災に遭い、一時期日本を脱出してタイへ行っています(なぜ?としか思えなくてすみません^^;)京都は大きな被害はなかったと思いますが、フィンランドに住む家族や友人からしてみれば一つの小さな国にいることは変わらないから、それは心配したでしょうね…。そして当時アラフォーの女性が自分探しの旅をしているような感覚もまた興味深かったです。自分もちょうど同じ年代になって、やっぱりこれからの生き方を考えてしまいますよね。自国の専門家に資料を提供してもらうという選択をせず、自ら研究をしに異国の地へ赴き学んでいく姿がとても素敵で、私もこれからを生きる勇気を頂いたような気がします。

<草思社 2021.7>2024.2.12読了