タスキ彼方
額賀澪
小学館
2023-12-08


ボストンマラソンの会場で、とある選手から古びたボロボロの日記を受け取った新米駅伝監督・成竹と学生ナンバーワンランナー神原。それは、戦時下に箱根駅伝開催に尽力したとある大学生の日記だった。その日記から過去を覗いた二人が思い知ったのは、美談でも爽やかな青春でもない、戦中戦後の彼らの壮絶な軌跡。そこには「どうしても、箱根駅伝を走ってから死にたい」という切実で一途な学生達の想いが溢れていた。
現代の「当たり前」は昔の人々が死ぬ気で勝ちとってきた想いの積み重ねと知った彼らは・・・・・・・。そして、戦時下の駅伝を調べ、追う彼らに起きた、信じられないような奇跡とは。
先人達の熱い想いが襷として繋がり、、2024年、第100回箱根駅伝は開催される。
熱涙間違いなしの青春スポーツ小説、最高傑作です。

出来れば100回大会開催前に読みたかったのですが、もうそんなことはどうでもいいです←
終盤はグスグスを鼻をすすりながら読んでいました。まっすぐな青春小説を読めて良かったです。
先日テレビで沢村投手の生涯について紹介した番組を見ました。野球がしたくても出来なくて、戦地に行ったがために野球選手としての能力が奪われて、そして国のために亡くなった姿を改めて知って、観ているこちらも辛くて哀しかったことを思い出しました。それと同様に、戦争が起きたために走りたくても走れなかった人、走った後に戦地に赴いた人、数えきれないほどのたくさんの人がいたのだろうと思いました。
大学名は架空のものになっていましたが史実に沿って描かれているので面白かったです。著者さんが日大の監督を主役にしたから100回大会頑張ってくれって言っていましたけど(語弊がありすぎる)特に往路は爪痕を残した走りをしていたので良かったです^m^
たまたまボストンマラソンに赴いていた佐竹監督が箱根駅伝に尽力した大学生の日記を受け取って低迷している大学を押し上げようみたいな展開なのかと←思いきや、まさかまさかの展開に驚きました。監督が「おいおいおい」って言った時は私も「えぇ…!」って言っちゃいましたし、監督が「えー!!!」って言った時は私も「えー!!!」と叫んじゃいました(笑)そのくらい展開が面白かった。類家進の言った言葉はとても重みのある言葉でした。国のために走るのでも死ぬために走るのでもなくただ純粋にスポーツを楽しんで欲しいという思いが詰め込まれていると思いました。
いけ好かない神原も(笑)、監督について古い日記の軌跡をたどったことで、箱根駅伝を見る目が変わって良かったです。個人的に田淵選手(弟)が好きでした。戦時中に走った選手の中に田淵選手がいたの、見逃してませんよ。繋がりは分かりませんけど^^

<小学館 2023.12>2024.2.4読了

以下にネタバレを。
監督の祖父が箱根駅伝がかかったらリビングから去っていたのは、きっと今でもずっと歴史が続いていて、選手たちが走っている姿を見たら泣いてしまうからなんじゃないかなぁと思いました。あれほど尽力した箱根駅伝を嫌うはずがないもの。
そして1区の神原の走りはどうだったのかな。佐藤選手や大迫選手のような走りをしたのでしょうか。空前絶後の区間新記録を叩き出したのでしょうか(笑)って記録最後に載っていますけども。空前絶後まではいかない区間新記録だったかな^m^またほかの区間の区間記録も絶妙すぎてさすが額賀さんとしか思えませんでしたよね。5区は区間新記録だけど神にはならなかったんだなとか(笑)2区は6分台かとか^^
また日大がシード権ぎりぎりの10位って言うのが絶妙すぎて唸りました。こちらは来年に期待ですね。
最後に、こちらの世界の第100回の箱根駅伝総合順位も載っていましたけど、駒大びいきの私としては駒大(らしき大学)が優勝していて嬉しかったです(笑)