聖職者としての人生が始まる瞬間に絶世の美女の悪魔に見初められた男を描く「死霊の恋」、人妻に片思いする青年がインドの秘術を使ってその夫の肉体を乗っ取ろうと企てる「化身」、火山が残した乳房の型への恋心が青年を滅びたはずのポンペイの町に迷い込ませる「アッリア・マルケッラ」の3篇を収録。

タイトルが気になって手に取ったのですが収録されている3作とも奇想天外でありながらも絵画など美術を思わせるようななんだか幻想的なお話ばかりでした。吸血鬼にタイムスリップに魂の入れ替えですからね…凄すぎる。
「死霊の恋」は聖職者が女におぼれていく話なのかと思いきや中盤でその絶世の美女が吸血鬼であることが判明します。
「アッリア・マルケッラ」友人と3人で旅をしていたはずがいつの間にかポンペイの町に迷い込み、現代で出会った女性とその街で出会うお話。
「化身」人妻であるプラスコヴィに恋をしたオクターヴがシェルボノー医師を頼りインドの秘術を使って夫と入れ替わりを企てます。こちらが中編で長く、1番好きな作品でした。プラスコヴィは夫以外を愛そうとは思わず、肉体が変わらずともいつもと様子が違うと瞬時に分かったのがさすがだなと思いました。でもまあ、中身が変わらなくても所作でバレますよね…それほど愛していたのだということは分かりますが。そして結末が意外過ぎて驚きました。シェルボノー医師も頭がおかしいだけあっておかしいことを考えますね←1番得した人物だったかもしれません。

<光文社 2023.8>2024.1.20読了