小説家になった羽見晃が入居を決めたのは、墨田区鐘ヶ淵にある築六十年、二階建ての〈マンション フォンティーヌ〉だった。真っ白いアーチの入口、中庭には噴水と少女像、花壇もあって、フランスにありそうな建物。管理人嶌谷さんの腕には本物の入れ墨があったり、大家のリアーヌさんは七十八歳のフランス人だったり色々変わっている。三十年もいる教授や生まれた国を追われたハーフの男性とかワケありな人が多く住んでいるけれど、みんな優しくて仲がいい。ガーデンパーティ中、三号室の三科さんが元DV夫から追われていることを知り、住人たちで役割分担をして守ることに。でも同時に、思わぬ人物がマンションを訪れていて……。
フランスにある建物がそのまま建てられたようなマンションフォンテーヌ。ここに住む人たちの物語。住む人たちがそれぞれ何かしらの事情を抱えているのだけど、人間生きていれば何かしらの事情が生まれますよね。管理人の嶌谷さんやDV夫から逃げ出した三科さんは本当に事情がありましたけど。
なかなか同じ建物に住む住民がここまで仲良くなれることは稀ですが、こんな風に一致団結して支え合っていくのも素敵だなぁと思います。
色んな偶然が重なっている感じが小路作品だなぁと思いますけど(笑)特に嶌谷さんと妹との再会はちょっとうるっとしてしまいました。
<祥伝社 2023.10>2024.1.6読了