たゆたえども沈まず (幻冬舎文庫)
原田マハ
幻冬舎
2020-04-08


19世紀後半、栄華を極めるパリの美術界。画商・林忠正は助手の重吉と共に流暢な仏語で浮世絵を売り込んでいた。野心溢れる彼らの前に現れたのは日本に憧れる無名画家ゴッホと、兄を献身的に支える画商のテオ。その奇跡の出会いが"世界を変える一枚"を生んだ。 読み始めたら止まらない、孤高の男たちの矜持と愛が深く胸を打つアート・フィクション。

ゴッホとテオ兄弟の物語。面白かったです。
ゴッホはずっとテオからの支援を受けて絵を描き続けていて、テオは抵抗はなかったのだろうか。嫌だと思うときはなかったのだろうかと思うことがありました。この作品を読んで、フィクションではありますがきっとテオはそんな思いでゴッホを支援していたのかな…と感じました。
そして林忠正。お名前は拝見したことがあります。でも加納って聞いたことあったかな…?と思ったらこちらは原田さんが作り上げたオリジナルの人物だったんですね。オリジナルの人物とテオを友人にさせるなんてとても大胆で、だったらいいなという思いが溢れていて小説ならではだなと思います。
ゴッホと忠正の間に交流があったかどうかというのは文献として残っていないそうですが、同じ時代に同じ場所で生きていたのですから、面識があったって不思議ではないですよね。そうであってほしい。そんな著者さんの強い想いが溢れている作品だと思いました。
ゴッホとテオの物語は悲劇だと感じてしまいます。でも、悲劇で終わらせなかったのはテオの奥様がゴッホの作品を守り続けたからこそなのかなとも思います。奥様ならもしかしたらテオが若くして亡くなったのはゴッホのせいだと思ってもおかしくないのに、それでも2人が生きた証を守り続けていて、素敵な女性だなと感じました。
ゴッホの作品はテレビ等ではよく拝見しますが現物を見たことはない気がします。一度間近で見て見たくなりました。

<幻冬舎 2017.10、2020.4>2023.11.19読了