先日、大学の同級生だった中川君と偶然再会した。彼と私は、どうやら別の東京を生きている。向こうの世界では世界規模の感染症が広がり…。切なくもすがすがしい、パラレルフィクション。
感想を一言で言うのはとても難しい物語でした。
主人公の波間はある日通り魔と遭遇する。そこで偶然出会ったのは大学の同級生の中川君。具合が悪くなった波間に中川君はジャケットを貸してくれ、2人は連絡先を交換した。時間が経ち2人は待ち合わせをするも出会えない。2人は別の世界に生きていることに気づく。まず通り魔に遭遇して綺麗な女性が被害に遭ったこともキーになっていて。加害者は幸せそうな女性を狙っていた。波間はすれ違ったけど襲われなかった。自分は幸せそうに見えなかったのだろうか?そして被害者もSNSの中で誹謗中傷を受けることになる。波間は波間で乳がんを患い療養中で、兄や友人の楓に助けられながら生きている。そして中川君が生きている世界では新型コロナという感染症が蔓延し、大変な状況になっている。周りで起きるニュースのこと、自分の闘病について、そして感染症。いろんなことが渦巻きながらも物語が進んで行きます。そんな中で感じたのは波間の強さと兄や楓の優しさでした。波間は病気になったことで周りの自分を見る目が変わったことに気づきます。ショックを受けつつも冷静に受け止めて日々を生きている姿にとても強さを感じました。どこか諦めをもってどこかもがきながら生きているような姿。
上手く感想を書けないのがもどかしいです。でも、自分がどう生きたいのか、どう生きていけばいいのか、読み終えた後に自問自答したくなるような物語でした。
<河出書房新社 2023.4>2023.7.17読了