「君からはいつも強い怒りの匂いがした」
カフェでアルバイトをしていた朝倉満は、客として来店した小川朔に、自身が暮らす洋館で働かないかと勧誘される。朔は人並外れた嗅覚を持つ調香師で、その洋館では依頼人の望む香りをオーダーメイドで作り出す仕事をしていた。
朔のもとには、香りにまつわるさまざまな執着を持った依頼人が訪れる。その欲望に向き合ううちに、やがて朔が満を仕事に誘った本当の理由が分かり……。
香りを文学へと昇華させた、第6回渡辺淳一文学賞受賞作『透明な夜の香り』に続く、ドラマチックな長編小説。

前作で物語が終わっていたような気がしたので、続編はないかと思っていました。
一香が辞めてからも相変わらず新しく雇う人は長く続く人はいなかったみたいだけど。
そんな中雇われた朝倉満。満が勤める飲食店で客としてやってきた小川朔に勧誘される。
どうして満が勧誘されたのか、それがのちに明らかになります。2人にそんなつながりがあったとは。と驚きます。
一香も変わらず登場します。愛の形はひとそれぞれで、香りに敏感すぎる朔にとってはこの距離感がちょうど良いのかもしれないですね。その距離感を一香も同じように感じていて、その分かりあっている感じが素敵でした。
朔の方は分からないけど、満は長い間苦しめられていた母親の呪縛から、少しだけ解き放たれそうですね。そして信頼できる友人に出逢えてよかった。

<集英社 2023.4>2023.6.17読了