【2021年本屋大賞 翻訳小説部門 第1位】ザリガニの鳴くところ
ディーリア・オーエンズ
早川書房
2020-03-05


ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。
6歳で家族に見捨てられたときから、カイアはたったひとりで生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女を置いて去ってゆく。
以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。
しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく……
みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と交錯するとき、物語は予想を超える結末へ──。

ずっと読みたいと思っていた作品。ようやく読めました。
6歳で家族に捨てられてから、ずっと独りで生き続けたカイア。
テイトから読み書きを教わっていた時間がとても可愛らしくて、この時間がずっと続いてほしいと思っていたのだけど、テイト自身の夢を追うために離れ離れに。
カイアはここにいるだけなのに、周りが勝手に自分の元を去って行く。
カイアの言葉では表せないほどの孤独感が文面から伝わってきて、とても辛かったです。
テイトがいないくなり、妙齢の美しい女性に成長したカイアの元へチェイスが近づいてくる。
読んでいるこちら側はそいつは危険だ!関わっちゃだめだ!と思ってはいるけど、人とほとんど関わりがないカイアにとってはただ、話し相手が欲しいだけなんですよね。
周りはカイアの存在を知りつつも見て見ぬふりをして「湿地の少女」と言って蔑んで。
読んでいて辛かったです。
そんなカイアの唯一の味方だったジャンピンとメイベルの存在が本当に大きかったのだと思います。本当の両親のようにカイアを気遣っている姿が好きでした。
カイアのその後の展開は驚きましたが、学校で学んでいない分、いろんなことを純粋に吸収できたからなのかなと思います。
更に事件の展開と真相には驚きました。
ただただカイアが事件後に穏やかに幸せに生きていたのなら良いと思い、読み終えました。
余韻が残る作品でした。

<早川書房 2020.3>2023.6.9読了