晴明は、物憂げな博雅に尋ねると、雅楽寮の主とも言われる橘花麻呂の娘である透子姫の姿が消えたと言う。満開の桜の元で、父の琴を弾いているうちに、琴の音は止まぬまま、姫はいなくなってしまったと言うが――「桜闇、女の首。」
雨で月の見えぬ夜に、一条戻橋の晴明の屋敷で、晴明と博雅が酒を飲んでいると、若き藤原道長が晴明の屋敷を訪ねてやって来た。なんでも今をときめく父の太政大臣、藤原兼家の首から下が突然なくなってしまったという。道長とともに白木の箱に納められてやってきた首のみの兼家は、奇妙な痛みを体に感じると、首のみの姿で語り始めるが――「首大臣」。
東三条殿の南の築山に夜になると「早う望月にならばや……」と一人ごちながら徘徊する五位の装束を着た太った男が都に現れた。烏帽子も眼も鼻も口もないというその男の正体とは?――「望月の五位」。
五条大橋まで野辺送りのために来た屍体が入った棺桶に、いつのまにか蓬髪の老人が入り込んでいた……。老人は、その家族に酒を馳走になるかわり、奇妙な約束をする……蘆屋道満のある日の出来事を描く――「道満、酒を馳走されて死人と添い寝する語」。
朱雀院近くの四条大路で、虎が白楽天の詩を吟じながら人を喰らうという奇妙な事件が起こり――「新山月記」。
ほか、「銅酒の飲む女」「めなし」「牛怪」「夜叉婆あ」を含む全十編を収録。
今回は冬から春にかけての物語なのでしょうか。季節が移ろいで行く様が清明様の庭が感じ取れるようでした。そしてそんな庭を見てお酒を飲んでいたら博雅が突然清明様に愛の告白か?と思うような言葉をさらりと言うのだから油断なりません←
今回はなかなかに想像すると怖い物語ばかりでしたね。
兼家が首だけにされたとか、目を抜かれて目無しになってるとか母親が子供たち(成人している)を食らおうとしてるとか…
そして今回は蘆屋道満が多めに登場していましたね^^良いこともしてました。珍しく←
更に山月記のようなお話もあって興味深かったです。っていうかタイトルが「新山月記」でしたね(笑)
今回も楽しく読みました。
<文藝春秋 2012.10、2015.1>2023.5.31読了