ノーラはその日人生のどん底にいた。飼っていた猫を亡くし、仕事をクビになり、いくら悲しくても話を聞いてくれる家族も友人もいない。頭をめぐるのは後悔ばかり。
「私がもっといい飼い主だったら」「両親にも亡くなる前にもっと親孝行ができていたら」「恋人と別れなければよかった」「故郷に戻らなければよかった」
生きている意味などもうないと、ノーラは衝動的に自らの命を絶とうとする。
だが目覚めたとき、目の前には不思議な図書館が佇んでいた――。
図書館でこちらの本を見つけ、ライブラリーという言葉が気になり手に取りました。この作品は有名人が読んだということでも話題になったそうですね。読んだ後に知りました(笑)
主人公のノーラは絶望の淵にいて自ら死を選ぼうとしていた。死を選んだ先にあったのは図書館でそこには懐かしい人物が司書として佇んでいた。ノーラはオリンピックを目指せるくらいの水泳の実力があり、兄とともにバンドでデビューできた可能性もあり、結婚を考えた相手もいた。でも、そのどれも選ばなかった。もしもあの時あの道を進んでいたら、自分はどうなっていたのだろう。そのもしもの道を実際に選び経験していきます。
それでもどの人生も良いところも悪いところもあり、当然自分の周りにいる人たちの人生も変わっています。
たくさんのもしもの人生を歩んでいく事で、死にたいと思って死を選んだはずなのに、死にたくないと思っている自分に気づきます。そして、かつて傷つき悩んでいた過去の真実が違っていたことも分かって行きます。
図書館司書のエルム夫人との関わりもノーラの未来にとってはとても重要なことで生きる指針へと変わっていきます。
海外作品は読みにくくて長いというイメージがあって^^;私はあまり手に取らないのですが、こちらの作品は例によって長かったですが、読んで良かったです。
結局ノーラが戻ってきた世界は何も変わっていなかったけど、ノーラの気持ちひとつで未来は変わっていく。それは私たちにとっても同じことなんですよね。人生に遅すぎるということはない。過去は絶対に戻ってこないけど、それでも未来は変えられる。ノーラの生きると決めた後の言葉の数々に、なんだか泣きそうになりました。
素晴らしかったです。
余談ですが翻訳は浅倉卓弥さんでした。「四日間の奇蹟」や「君の名残を」が大好きだったことを思い出しました。
<ハーパーコリンズ・ジャパン 2022.2>2023.5.14読了