手話通訳士・荒井尚人は、結婚後も主夫業のかたわら通訳の仕事を続けていた。そんなある日、ろうの妊婦から産婦人科での通訳を依頼される。荒井の通訳は依頼者夫婦の信頼を得られたようだったが、翌日に緊急のSOSが入り―。(「慟哭は聴こえない」)旧知のNPO法人から、荒井に民事裁判の法廷通訳をしてほしいという依頼が舞い込んだ。原告はろう者の女性で、勤め先を「雇用差別」で訴えているという。かつて似たような立場を経験した荒井の脳裏に、当時の苦い記憶が蘇る。法廷ではあくまで冷静に自分の務めを果たそうとするのだが―。(「法廷のさざめき」)コーダである手話通訳士・荒井尚人が関わる四つの事件を描く、温かいまなざしに満ちた連作ミステリ。『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』『龍の耳を君に デフ・ヴォイス新章』に連なるシリーズ最新作。
連作短編集です。このお話の中で6年の歳月が流れるのでちょっとびっくりしますが^^;著者さん曰く1作目と2作目の刊行スパンが開いたのでその月日を埋めるためだったそうです。
小学生だった美和が中学生になりました。そして可愛い妹も生まれました。
前半の作品は誰もかれもが報われなくて読んでいてとても辛くて哀しかったです。SOSを発していても聞き取ってもらえない。突然の災難に見舞われたとき、救いの手がどこに差し伸べられているのか分からない。妊婦さんとその夫、そしてろう者の芸能人、どちらの話も辛かった。そして荒井一家のことも甥っ子のことも。最初から荒井の兄は嫌いだったんですけど、本当にもうダメですね。登場してほしくないくらいに嫌いになりました。そりゃあ子供も荒れますよ。でも、荒井が今まで手話通訳士をしていたからこそ培われたネットワークで救い出せそうで本当に良かったです。
そして美和のこと。あんなに素直で可愛かった美和も思春期になって色々思うところがあったんですよね。私も長女だから少しだけ分かるところがあると思います。でも、久々に登場した英知くんが素敵に成長していてそのお陰で美和のことも分かって、こっちまで少しホッとしました^^;
美和と瞳美の成長を読みながら見守っていきたいです。
<東京創元社 2019.6>2023.3.20読了