月の立つ林で
青山美智子
ポプラ社
2022-11-07


長年勤めた病院を辞めた元看護師、売れないながらも夢を諦めきれない芸人、娘や妻との関係の変化に寂しさを抱える二輪自動車整備士、親から離れて早く自立したいと願う女子高生、仕事が順調になるにつれ家族とのバランスに悩むアクセサリー作家――。
つまずいてばかりの日常の中、それぞれが耳にしたのはタケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』だった。
月に関する語りに心を寄せながら、彼ら自身も彼らの想いも満ち欠けを繰り返し、新しくてかけがえのない毎日を紡いでいく――。
最後に仕掛けられた驚きの事実と、読後に気づく見えない繋がりが胸を打つ、心震える傑作小説。

青山さんの作品は本当に大好きです。出てくる人みんなが優しくて悪い人が出てこなくて、読んでいるこちらが救われる気持ちになります。
そしていつも、物語の中の人たちは繋がっていて人と人との関わりの大切さを教えてもらっている気がします。出てくる人たちはみんな頑張りたくてもがいていてでもどこか上手くいかなくて。頑張れと思いつつ分かる分かるという部分もあってみんなを応援したくなりました。
最初に登場する元看護師は年齢が近いこともあって1番感情移入してしまったかも。優しいこの人ならきっと、必要とされる職業があるはずだと思ったら最後の方に登場して嬉しくなったり。
連作短編ですべてに登場するタケトリ・オキナ。この人かなと途中で思った人がいたんですけど、微妙に間違ってました^^;改めて、人と人との関わりは、どんなに強固なものでもちゃんと言葉にしないと伝わらないんだなと思いました。
読み終えた後の余韻がとてもあたたかいです。大好きな作品がまた増えました。

<ポプラ社 2022.11>2023.1.18読了