タスキメシ 五輪
額賀 澪
小学館
2022-11-29


己との闘いは、続いていく…。
箱根駅伝を終えた千早は食品会社に就職。その会社から東京五輪選手村食堂に派遣され、偶然コーチ早馬の初恋の人、都と仕事仲間に。
主将として初出場が叶った4年次の箱根駅伝では、最後の最後で「努力に裏切られた」千早。東京五輪選手村食堂では、裏方として世界のアスリートたちを支えるが、目の回る忙しさの中、自分の仕事への情熱が呼び起こされていく。駅伝では「努力に裏切られた」が、「裏切られた後の景色も悪くない。裏切られた俺は、今、頑張ってます」と言えるまでに成長していく。前半の「祈る者」は臨場感溢れ、読み手の心をつかんで話さないお仕事小説。
一方、眞家春馬はパリ五輪を視野に入れ世界陸上に参戦。兄早馬との関係や、世界を相手に挑戦を続けるアスリートの心象風景が描かれる、後半の「選ぶ者」。春馬、そして高校時代、大学時代ともにライバル関係だった選手・助川、藤宮らはアスリートとして悩み、葛藤を繰り返しながらも競技生活を続けている。彼らの自分との闘いは、やがて、世界へ…。

箱根駅伝を見終えた後に読むのはこの作品だろう!と思い手に取りました。
箱根駅伝というよりは東京オリンピックの方が近かったですけど^^;でもこの作品の礎は箱根駅伝だから。千早のターンを読んでいると、箱根駅伝のその後の物語を読んでいるようでした。実況でも箱根駅伝を走り終えたら競技を引退して会社員になるという言葉も聞きますよね。私たちが見ることのない競技を終えた選手たちのその後の物語。また千早が配属されたところがエグすぎる…。私は多分精神を病んで辞めてますね←最後まで賛否両論が続いた東京オリンピック。1度延期になったわけだけどずっと2020年に開催する予定でいたわけで、急遽中止となったことでしわ寄せが来た人たちや企業は選手だけではないんですよね…。こうして頭を下げて回って、闘ってきた人たちがいることを忘れちゃいけないと思いました。与えられた場所で自分の仕事の意義を見つけて邁進する千早がとてもかっこよかったです。
そして春馬たちのターン。早馬と春馬って名前だから服部兄弟を思い浮かべながら今まで読んでいたところがありましたけど、実業団に入ってオレゴンで走った春馬のくだりは、大迫選手を思い浮かびましたよね。走り終えた後のインタビューの言葉、最高すぎました。6位入賞は確かに素晴らしい。でも、金メダルを獲った選手にはコテンパンにやられてそれが悔しいって思えるのって凄くかっこいいと思う。パリが楽しみ^^
1番最後、助川と藤宮と春馬が談笑しているシーンが凄く好き。藤宮の移籍先がスーパーマーケットで笑っちゃった。絶対サンベルクスかコモディイイダを思い浮かべるでしょこれは。本戦出場するのを待ってる。「年が明ければ百回目の箱根駅伝」の文章を読んで、なぜか涙が出てきたんですよね。そうか、私は今、2023年1月1日の物語を読んでいるんだって思いました。3人は皆1区を走ったんだね。誰が勝ったのかな。それを想像するのも楽しいです。
やっぱり駅伝オタクの額賀さんの作品は最高です!←ありがとうございました!今年の1冊目、そして今読むのにふさわしい作品でした!
シリーズも3作目になりましたが、前の2作は文庫化されていて1冊目の解説は柏原さんで2冊目の解説は弘山監督だって!!??マジか!!どっちも単行本で読んだから知らなかった!!!
…読まなければ。

<小学館 2022.11>2023.1.4読了