掌に眠る舞台
小川 洋子
集英社
2022-09-05


「だって人は誰でも、失敗をする生きものですものね。だから役者さんには身代わりが必要なの。私みたいな」
交通事故の保険金で帝国劇場の『レ・ミゼラブル』全公演に通い始めた私が出会った、劇場に暮らす「失敗係」の彼女。
金属加工工場の片隅、工具箱の上でペンチやスパナたちが演じるバレエ『ラ・シルフィード』。
お金持ちの老人が自分のためだけに屋敷の奥に建てた小さな劇場で、装飾用の役者として生活することになった私。
演じること、観ること、観られること。ステージの此方と彼方で生まれる特別な関係性を描き出す、極上の短編集。

舞台がテーマの短編集。小川さんの独特の世界観が舞台の儚さと合っていてたまりませんでした。
どのお話も夢か現か読み進めていけばいくほどわからなくなります。
でもそれが心地よくて、余韻に浸れます。
本当に舞台を観た後のような余韻。
「ラ・シルフィールド」も「ガラスの動物園」も物語を知らなかったのでまずは読んでみたいです。
そして印象的だったのは花柄さん。花柄さんは、幸せだったのかな…幸せだったならいいな。

<集英社 2022.9>2022.12.5読了