ーーわたしは愛する男のために人生を誤りたい。
風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。
ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。
生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。
ーーまともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない。
読んでいて辛くて、でも読む手が止まらなくて、ただただ暁海と櫂が幸せになってほしいと願いながら読んでいました。読んでいる間、こちらもずっと閉塞感を感じながら読んでいました。
プロローグからなんだか嫌な感じが漂っていて、暁海が今の家族を裏切るようなことをしたのだろうか…なんて思いながら暁海の17歳の頃から始まり、読み進めていきましたが、予想外過ぎましたね。そりゃそうですよね、そんな読者がすぐわかるような展開にはしないですよね←
始めはただただ暁海と櫂の境遇が辛くて。
暁海の父親が家族を裏切ったのが始まりなのに、壊れた母親の面倒を押し付けて、暁海は母親から逃れられない。
櫂もまた恋愛体質の母親に翻弄されて自分の力で自立しようともがいている。
2人は本当に優しくて良い子。でもそれは誉め言葉にはならないですよね。子供は親の所有物ではないのに。2人の境遇が歯がゆくてしょうがなかったです。自分たちが蒔いた種なのに好き勝手に自分の願望を子供に押し付けて、あああああ腹立つー!!!←
プロローグから暁海と北原先生が夫婦になることは分かっていましたが、こういう展開でしたか。こういう夫婦も良いな…。ある意味気が楽なような気がする。お互いに寄り添いはするけど縋りはしない関係ってフラットで良い気がします。また娘さんも色々としっかりされていて(笑)親子という縛りではなく、暁海と結は相性が良くていい関係なんだなと思いました。こっちの関係も好き。暁海を送り出す台詞がかっこよかったなー。まあある程度結が大人になっているというのもあるのだろうけど。
櫂は最後まで切なかったな…1度生活水準が上がってしまうと下げられないよね…。お互いに好きな気持ちはあるのに、うまくかみ合っていないのが読んでいて切なかったです。
それでも短い時間だけでもようやく2人が一緒になることが出来て、幸せな時間を持てて、良かったと思いました。2人は親には恵まれなかったけど、周りの大人には恵まれたんですよね。瞳子さんも好きだったな…。暁海が慕うのも分かる気がしました。
物語を読んでからのエピローグを読んだら、プロローグと内容は同じなのに全然見方が違うのにびっくり。凄い…。いっそ清々しさすら感じます。ここまで読んだら、周りの目なんてどうでもいいよな…なんて思いました。自分が当事者だったらそれはまた別の話だけど^^;
素晴らしい物語でした。
<講談社 2022.8>2022.10.11読了
とても悲しくてやりきれないお話でしたが、ラストは美しい景色を見せてもらって感動しました。