15年ぶりに再会した友人と訪れた京都。昔話に花を咲かせるが、みなそれぞれに事情を抱えていて……(「あの日の味は」)。亡くした夫との思い出を胸にひとり旅をしていた故郷・神戸で偶然出会った青年。一緒にスイーツ巡りをすることになるが(「幸福のレシピ」)。住んでいた街、懐かしい友人、大切な料理。温かな記憶をめぐる「想い出」の旅を描いた7作品を収録。優しい気持ちに満たされる、文庫オリジナルアンソロジー。
どのお話も良かったです。美味しいものを食べたいって思いましたし、旅に出たくもなりました。こちらは「思い出」編。主人公たちの思い出を含めた旅です。
「あの日の味は」柴田よしき
15年ぶりに再会した3人。本当はちゃんと話をしなければならないことがあるはずなのに、昔に思いを馳せて当時楽しんだ料理を楽しんで浸る。それはそれで良かったんじゃないかなと思いました。また数年後に3人が笑顔で会えますように。
「幸福のレシピ」福田和代
ひょんなことから若い青年一樹と旅先でスイーツ巡りを楽しむことになった琴子。2人が食べるスイーツが本当に美味しそうで羨ましかったです^^そして最後のサプライズ。まさかまさかでした。でも、夫を喪った琴子が前を向けて良かった。
「下戸の街・赤羽」矢崎存美
こっちもスイーツ巡り。若干ヤケ気味(笑)幼馴染2人でスイーツを食べまくる旅。羨ましすぎました。赤羽って多分行ったことが無いんですけど、スイーツ激戦区なんですね。行ってみたい…。
「旅の始まりの天ぷらそば」 光原百合
リスナーさんが語る旅の始まりの天ぷらそば。美味しそうでした。潮ノ道ってどこだろう…って思ったのですが、著者さんが過去にこちらの地名の小説を書かれたことがあるみたいですね…架空なのかな。著者さんの出身地である尾道市がモデルなのでしょうか。
「ゲストハウス」新津きよみ
2歳の時に別れたきりの娘は誰なのか。娘に会いにゲストハウスとなっていた元実家へやってきた小田切誠。娘を探し当てることはできるのか。騙されましたね(いきなり)答え合わせは意外なところから来るとは思っていたんですよ…。そうきたかー!と思いました。でもまあ、確かに親子としてではなくて今回と変わらない形で会うのが1番なんじゃないかな。
「からくり時計のある町で」秋川滝美
かつて友人の六花と一緒に行ったドイツに再びやってきた七緒。些細なことで喧嘩をし、思いを断ち切るためにやってきたはずなのに、2人で来た時の思い出ばかりよみがえる…。
友人関係って強固であり脆くもあるよなぁ…と読んでいて思いました。七緒はよりを戻せそうで良かった。にしても六花の結婚の馴れ初めが面白すぎるな。
「横浜アラモード」大崎梢
かつて横浜に住んでいた母の友人の姑を案内することになった明穂。コロナ禍により旅行代理店の仕事を諦めることになったため、今回の観光案内に気合が入る。
でも、読み始めた時からきっと清子さんは乗り気じゃないんだろうなって思ってしまいました。思い出が詰まった場所が変貌していたらちょっとがっかりしちゃうよね…。
それでも明穂が清子の意図を組んでお墓参りに行ったシーンは良かったな。相鉄線は乗ったことがあるので知ってる地名がいくつか出てきて嬉しかったです^^
日本から世界まで旅行をしている気分になれる作品でした。「初めて」編も楽しみです。
<KADOKAWA 2022.7>2022.9.30読了