江戸は神田三島町にある袋物屋の三島屋は、風変わりな百物語をしていることで知られている。
語り手一人に聞き手も一人、話はけっして外には漏らさず、「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」これが三島屋の変わり百物語の趣向である。
従姉妹のおちかから聞き手を受け継いだ三島屋の「小旦那」こと富次郎は、おちかの出産を控える中で障りがあってはならないと、しばらく百物語をお休みすることに決める。
休止前の最後の語り手は、商人風の老人と目の見えない彼の妻だった。老人はかつて暮らした村でおきた「ひとでなし」にまつわる顛末を語りだす――。
「賽子と虻」八百万の神というくらいですから、色んな神様がいるんですよね…。語りにやってきたのは餅太郎という笑わない男。見た目からは老人にも見えるが声を聴くと若くも感じる、年齢不詳の男。餅太郎は姉を救うため、神様が集う場所で働くことに。そこで暮らす物語も摩訶不思議で、面白かったのだけど、きっとよくない結末になるんだろうと思いつつ読み進めていくのはなかなか辛かったです。富次郎の言葉を受けて、餅太郎が前を向いて生きていって行けたら良いな…と思いました。
「土鍋女房」こちらも摩訶不思議でしたね。そしてファンタジー。でもお兄さんはきっとそれで幸せだったんだろうなぁ…とも思って。難しいですね。でもこの時代、結婚するのは当たり前ですから…。だからと言って美春と結婚しなくて良かったですよね。とんでもねぇ本性だった←
「よって件のごとし」表題作。おちかがもうすぐお母さんになるだなんて…最初から読んでいると良かったねぇ…と気持ちは親戚のおばちゃんみたいになりますよね。おちかに何かあっては大変と暫く百物語をお休みすることになり、最後の話となった今回。いや…これもこれで凄い…。語り手のご夫婦が相思相愛で素敵で、でも奥さんは目が見えなくて弱弱しい。その理由が切ない。でも、その村にい続けるよりは、きっと幸せだったんですよね。
次回作が出るときにはおちかはお母さんになっているのかな。楽しみです。
<KADOKAWA 2022.7>2022.9.27読了