「待ち伏せの岩」
渓谷で起きた水難事故で若者が亡くなる。彼は事故の直前、崖上に建つ洋館の窓から若い女に手招きされていた。一方、洋館に住む多実は、窓の外に妖しい人影を見る。
「火焔」
イビリに耐えて長年介護してきた順子には、死後も姑の罵詈雑言が聞こえる。幻聴だと思っても、姑の携帯番号から着信を受け、誰もいない家の階段で肩をつかまれ……。
「歪む家」
温かい家庭を知らない弥生は、幸せな家族を人形で再現しようとする。しかしドールハウスを作り込むうちに些細なきっかけで「歪み」が生じ、やがて異変が起こる。
「誰が袖」
典利は戸建てを新築し、第一子の出産を控えた妻と母親が暮らしている。以前に住んでいた屋敷には幽霊がいた。当時を思い返した典利はふと、あることに気付く。
「骸の浜」
河口付近の家にひとりで暮らす真琴。荒れ果てた庭の向こうには、低い垣根越しに海が見える。この街の沖で水難に遭った死体は、靄と共にこの庭にやってくるのだ。
「茨姫」
死んだ姉を偏愛していた母親が他界し、響子にとって辛い思い出が募る実家が残った。荒れ果てた家を整理するため、ツルバラで覆われた庭の小屋に入ると……。
シリーズ第三弾。
今回もいろんな想いが家の中に眠っていましたねー…。
印象的だったのは「火焔」かな。順子がただただ可哀想で、最後に多少の救いがあるのかなと思ったら想像した救いは全くなくて^^;でも、たくさん苦しんだのは事実でこれからは苦しむ必要はないから少しでも前向きに生きていってほしいなと思いました。
好きだったのは「誰が袖」ですね。とにかく奥さんが素敵。旦那の家系に不穏な影があることを発見して、それでもマイナスなことは決して言わず、旦那さんとお義母さんを信頼している感じがとても素敵で。自分を死なせたかもしれないモノに対しても悪く言わないしむしろ愛情を持っている気がして。読んだ後に1番温かい気持ちになれた気がしました。
「骸の浜」の真琴も可哀想な境遇でずっと隠れて生きてきたのかもしれないけど、これからは助けてもらいながら少しずつ明るく生きていってほしいなぁと思いました。
そして最後の「茨姫」これが毒親というんでしょうか…響子が辛かったのはもちろんだけど、お姉さんも辛かっただろうなぁと思いました。
どの作品も後ろ向きだったり何かを抱えている人に対して尾端さんは優しく丁寧に関わってくれるし同じように丁寧に家を直してくれるんですよね。その関わり方も好きだったりします。
これからも続いて行ってほしいシリーズです。
<KADOKAWA 2022.8>2022.9.13読了