その男の絵は、怖くて、美しくて、すべてを暴く。
大きな料理屋「しの田」のひとり娘である真阿。十二のときに胸を病んでいると言われ、それからは部屋にこもり、絵草紙や赤本を読む毎日だ。あるとき「しの田」の二階に、有名な絵師の火狂が居候をすることになる。「怖がらせるのが仕事」と言う彼は、怖い絵を描くだけではなく、普通の人には見えないものが見えているようだ。絵の犬に取り憑かれた男、“帰りたい”という女の声に悩む旅人、誰にも言えない本心を絵に込めて死んだ姫君……。幽霊たちとの出会いが、生きる実感のなかった真阿を変えていく。
読んでいて江戸時代のような感じがしたのだけど、東京になったと言っていたから明治初期が舞台なのでしょうか。主人公である真阿がとても聡明で良い子でした。12歳から14歳までの2年間、肺を病んでいると医師に言われたことで家に引きこもる生活を送っていたわけだけど、興四郎と出会ったことで真阿は変わっていきましたね。興四郎のお陰で家に閉じこもった生活も終わりを迎えることが出来たわけですし。2人が絵に対する謎解きをしていくのが面白かったです。
真阿も興四郎もワケありなわけですが、だからこそ絵に秘めたる想いに気づくことが出来るんですかね…。2人のコンビは可愛らしいのでまだまだ読んでいたいな…
『悲しまない男』の最後の一文『赤の他人を信じることができたら、急に世の中が優しく感じられるのだ』が好きでした。男も気づけて良かった。
序章と終章の真阿を見守る女形の登場の仕方も良かった。興四郎にはしばらくいてほしいからもう少し真阿を見守っていてください^^
<KADOKAWA 2022.6>2022.8.2読了