14歳の少女高田奈智は、4年ぶりに磐座の地を訪れた。
これから2カ月の間、親戚が経営する旅館で世話になりながら、昼間は磐座城周辺で行われる、あるキャンプに参加することになっている。事情をよく知らぬままこの地を訪れた奈智であったが、到着の翌朝、体の変調を感じ、激しく多量に吐血してしまう。やがて奈智は、親戚の美影深志や同じキャンプに参加する天知雅樹らから、磐座でのキャンプの目的を聞くことになる。
それは、星々の世界――外海に旅立つ「虚ろ舟乗り」を育てることであった。
虚ろ舟の聖地である磐座に集められた少年少女たちは、徐々に体が変質し、やがて、歳をとらない体となる。食べ物もほとんどいらなくなり、心臓に銀の杭を打たない限り、死ぬことはない。
そのかわり変質体となると、一定期間、他人の血を飲まないと、死んでしまうという。変質の過程で初めて他人の血を飲むことを、「血切り」と呼ぶ。
深志は奈智の血切りの相手は自分だと昔から決めていたと言うが、奈智は、他人の血を飲むなどという化け物じみた行為は嫌だと、思い悩む。
そんなことなら、虚ろ舟乗りなんかに、なりたくない……と。
恩田さんの最新刊です。連載１４年？！と驚きました。１４年前って何年前？←
あらすじから吸血鬼のようなお話なのかなと思ったらだんだんお話が壮大になっていってびっくりしました。舟乗りだからこの星の中の話だと思ったら宇宙まで広がっていくとは。
主人公の高田奈智が良かったですね。皆の羨望の職業である「虚ろ舟乗り」になるためのキャンプに参加するのだけど、引き取られた先でそのことには触れられたことがないため何もわからない。それが自分の両親にも両親の死にも関わることであると、少しずつ気づいていきます。
天知雅樹の存在も良かったです。虚ろ舟乗りになるのが運命づけられて生まれてきた雅樹の俯瞰的な考えが読んでいてさらに面白さを引き立てていた気がします。
奈智をめぐる三角関係もちょっとにやにやしながら楽しんでいました←
吸血鬼や宇宙やミステリもありますが、全体的に考えると青春小説のような気もしました。
奈智と深志の甘酸っぱい関係性が可愛らしかったです。進展はあるのかと思ったら最後の最後で２人の関係性も壮大になりそうで驚きましたけども＾＾；
とても面白く読んだのだけど、気になっていたことが結局わからないまま終わってしまったところもあり（結局木霊は誰だったのか？奈智？）、まあそれも含めて恩田さんらしいなとも思いました(笑)
舞台のモデルは郡上八幡だそうですね。岐阜県は行ったことが無いんです。聖地巡礼に行きたいなー。
＜徳間書店 ２０２１．１２＞２０２２．１．２８読了
