僕が働く喫茶店には、不思議な常連さんがいる。必ず木曜日に来て、同じ席でココアを頼み、エアメールを書く。僕は、その女性を「ココアさん」と呼んでいる。ある木曜日、いつものようにやって来たココアさんは、しかし手紙を書かずに俯いている。心配に思っていると、ココアさんは、ぽろりと涙をこぼしたのだった。主夫の旦那の代わりに初めて息子のお弁当を作ることになったキャリアウーマン。厳しいお局先生のいる幼稚園で働く新米先生。誰にも認められなくても、自分の好きな絵を描き続ける女の子。銀行を辞めて、サンドイッチ屋をシドニーに開業した男性。人知れず頑張っている人たちを応援する、一杯のココアから始まる温かい12色の物語。
また素敵な物語に出会いました。ココアのように心の温まる物語でした。
12の物語が少しずつ繋がっていて、最初と最後も繋がっていて、大きな円になっているかのよう。
「僕」がとってもいい子で、お客様たちもとてもいい人ばかりで、こんな喫茶店が近くにあればいいのになーなんて思いながら読んでいました。どうして舞台が東京とシドニーなんだろうと思っていましたが、著者さんがオーストラリアにお住まいだったことがあるからなんですね、多分。
本当にどの人も素敵だったなー。シドニーに旅行に来たご夫婦が特に素敵だったなー。なれそめも可愛いし、お互いを大事にしているのが伝わってきて本当に素敵。
そして喫茶店の僕とココアさん。最後のお話が素敵すぎます…。人との関わりって温かくて素敵だな…と思えた作品でした。
青山さんの作品に最近癒されています。
<宝島社 2017.8>2021.10.15読了