江戸は神田の三島屋で行われている変わり百物語。美丈夫の勤番武士は国元の不思議な〈火消し〉の話を、団子屋の屋台を営む娘は母親の念を、そして鯔背な老人は木賃宿に泊まったお化けについて、富次郎に語り捨てる。
今回は3作品と少なめだったからか単行本もそこまで重くなかったですね(笑)いつも分厚くて読むのが大変で^m^どの作品も面白かったです。
「火焔太鼓」村の火事を抑える神具である太鼓。この太鼓を守るために代々守り続けているもの。そしてその秘密。めでたしめでたしだと思っていた物語の最後の真実が切なかったです。何となく予想はできましたけど…語り手のお兄さんもお姉さんも生きざまがとてもかっこよかったです。素敵でした。
「一途の念」団子売りの娘が語った物語。切ない…とても切なかった。娘の母は病気の夫と子供のために働き続けなければならなかった。だから仕方がなかった。でもだからこそ、幸せになってほしかったな…4人の子供たちが念が解けた後も変わらずに懸命に生きていることが救いでした。
「魂手形」こちらも面白かった。素敵な老人が語る自分が子供だった頃の物語。継母のお竹が本当にかっこよくて素敵でした。口が悪いのが玉に瑕だけど、それすらも救いとなったなんて本当に素敵。吉富さんも後に素敵な奥さんと結婚してお子さんもたくさん生まれて、幸せだったのだろうと感じられて、こちらもほっこりました。
そして三島屋に吉報が入りましたね。良かった。本当に良かった。めでたいですね。富次郎がいつまで聞き手として過ごしていくのか分かりませんが、これからも楽しみです。
ほっこりした後に水を差していった男のことも気になります…
<角川書店 2021.3>2021.7.19読了