薬剤師の毒島さんは、薬にまつわる不思議な出来事をまるで名探偵かのように鮮やかに解決する。アルコール依存症の男性が急に「酒がまずくなった」と言い出したのはなぜ? 赤ん坊のための様々な薬を、あまりにも頻繁に薬局に取りに来る若い母親。彼女の真の目的は? いつものように鮮やかな推理を見せる毒島さんだったが、しかし彼女のもとにも新型コロナウイルスの影が忍び寄っていた。毒島さんに憧れるホテルマン・爽太が、仕事中高熱を出した同僚と濃厚接触したとして、ホテルに隔離されたのである。そして、それを機にホテル従業員が相次いで高熱を出し……。

新刊で出る小説の中には未曽有の感染症がない世界を描く方もいらっしゃいますが(それがダメなわけでは決してありません。現実逃避したい時もありますし)こちらは薬がテーマで主人公の想い人が薬剤師だから、きっと書かれるだろうなと思っていました。
症状や対策が現段階でわかっている範囲で具体的に分かりやすく書かれているところもあり、物語とは違うところで勉強しているような気分でした。
物語も面白かったです。アルコール依存症の人が服用する薬なんておそらく知る機会はなかったと思うのでなるほどと思いましたし、私が毒島さんの立場だったら途中で投げ出して邪険に扱うであろう患者さんに対して^^;丁寧に優しく対応している姿はただただ尊敬でした。
爽太が隔離されたときはどうなるんだろうと思いましたけど、みんなが高熱を出した原因がそんなところにあるとは…!とびっくりでした。いろんな病気があるんですね…。でもホテル従業員の喫煙していた人たち、言動にちょっとイライラしましたよね…このご時世だからなおさらそう感じたのかな。
今回も面白く読みました。ただ気になったのは、今回爽太も体調が悪くなって、毒島さんのおかげで原因が分かって回復しましたけど、その部分とは別に頭痛が何度か起きていたような気がするのですが気のせいかな…。次巻のフラグかなと深読みしてます。
こちらのシリーズはとても好きなので次回も楽しみです。新刊がまた出ますように。

<宝島社 2021.1>2021.5.10読了