草原のサーカス
彩瀬 まる
新潮社
2021-02-25


製薬業界で研究者として働く姉と、アクセサリー作家として活動する妹。二人は仕事で名声を得るも、いつしか道を踏み外していく。世間の非難を浴びた転落の末に、彼女たちの目に映る景色とは。政治、経済、感染症の拡大……移り変わりゆく社会の中で、もがきながら再生の道を探る姉妹の姿を描く、注目作家の新たなる代表作。

あらすじを読んで少し予感はしていましたけど、2人に待ち受けることが重たすぎて途中読んでいて切なくなりました。
仁胡瑠に関しては自業自得な部分もあるけど、でも焚きつけたのは相手だしなーとか言ってしまう私も少しおかしいのかな。でも100%仁胡瑠が悪いという気持ちにはなれなかったです。
依千佳に関しては途中からきっとこういう展開になるんだろうなーという予想がつきましたよね。企業に利用されるだけ利用されて捨てられる。厳密に言うと捨てられてはいないのだけど。依千佳に関しても身から出た錆だとは思えませんでした。
でも何よりも私が1番嫌だったのは夫の気持ちだったかもしれません。長く一緒にいて同棲までしていたのにどうして依千佳の想いを汲んであげられなかったのか。
結婚した後にどうして関係性を変えなければならないのか。結婚したらその後は女性は仕事をセーブして子どもを産むことが「普通」なのか。自分の事は棚上げ。ただ結婚して子供がいる家庭を持っているというのを周りに見せつけたいだけなんじゃないかな。本当に子どもが欲しいと思っているんだったら、将来子どもが出来ても送り迎えはしないとか、自分は仕事が忙しいから加味してほしいなんてバカみたいなことは言わないですよね。それで「普通」を叶えてくれない妻には見切りをつけて若い可愛い言いなりになる女の方へ走るんですよ。バカバカしい。あーバカバカしい。
・・・取り乱しましたすみません。
2人はある意味転落してしまったのかもしれない。でも、何もかもを失ったわけではない。
2人が一緒にワークショップに行って過ごした時間がその答えだったのだと思います。
良いラストだったと思います。依千佳が下した決断を私は支持したいです。

<新潮社 2021.2>2021.3.31読了