夜の向こうの蛹たち
近藤史恵
祥伝社
2020-06-11


小説家の織部妙は順調にキャリアを積む一方、どこか退屈さも感じていた。そんなある日、“美人作家”として話題の新人、橋本さなぎの処女作に衝撃を受ける。しかし、文学賞のパーティで対面した橋本の完璧すぎる受け答えに、なぜか幻滅してしまう。織部の興味を惹いたのは、橋本の秘書である初芝祐という女性だった。初芝への気持ちを持て余す織部は、やがて「橋本さなぎ」の存在に違和感を抱くようになる。その小さな疑惑は開けてはならない、女同士の満たされぬ欲望の渦への入り口だった…。「第13回エキナカ書店大賞」受賞作家の最新作。

美人作家と呼ばれる新人、橋本さなぎの事が気になる妙、でもそれ以上に気になったのがさなぎの秘書である初芝祐だった。妙は祐に対して好意を持ち少しずつ距離を近づけていこうとする。それと同時に橋本さなぎという作家に対して疑念を持つようにもなる。
レズビアンである妙、コンプレックスの塊の祐、美人作家を完璧に演じているさなぎ。
3人の関係が少しずつ交わっていくにつれて様々な感情も交差するようになっていきます。
妙は言い方が何だけど本当に「上手く」生きてきたんだろうなと思います。容姿に恵まれて、レズビアンだから男に言い寄られても何の感情も持たないから適当にあしらうこともできる、仕事も持っていて食べるのにも困らない。だから「退屈」だと思っていたのかな。
さなぎと祐はまだ模索している最中のようでした。危なっかしい2人。始めは祐の方を応援していたのだけど、最後の方になったら2人ともちゃんと幸せになれば良いなぁという気持ちに変わっていました。
読み終えた後にも余韻の残る作品でした。

<祥伝社 2020.6>2020.7.14読了