スポーツ用品販売会社に勤める素子は、同じく保育園に通う子供を持つ珠理を誘って、日帰り温泉旅行に出かけることに。ずらりと食卓に並ぶのは、薬味をたっぷり添えた鰹のたたき、きのこと鮭の茶碗蒸し、栗のポタージュスープ。季節の味を堪能するうち、素子は家族を優先して「自分が食べたいもの」を忘れていたこと、母親の好物を知らないまま亡くしてしまったことに思いを巡らせ…(「ポタージュスープの海を越えて」)。彼女が大好きな枝豆パンは、“初恋の彼”との思い出の品。病に倒れた父の友人が、かつて作ってくれた鶏とカブのシチュー。―“あのひと口”の記憶が紡ぐ6つの物語。
様々な境遇の人たちが紡ぐ6つの物語。食べ物が出てくるお話だけどどれもヒリヒリと痛くなるようなお話ばかり。でも嫌な気持ちになるわけではなく、惹き付けられて読む手が止まりませんでした。
彩瀬さんが書く文章がとても温かくて優しくて好きです。読んでいるだけで癒されています。
読んでいると「食べることは生きること」という当たり前のことを再認識させられました。
特に「シュークリームタワーで待ち合わせ」が印象的でした。私は完全に夜子と同じ気持ちだから。幸の心の傷が少しでも癒えて手作りのシュークリームタワーを、二人で食べる時が来ると良いなと思いました。
<祥伝社 2020.5>2020.6.25読了
「食べることは生きること」、とても切実ですよね・・
彩瀬さんやっぱりいいなぁと思った短編集でした。